連合軍と量産型邪龍、偽赤龍帝軍団の戦いが続くなか、戦場を深紅の軌跡が通りすぎ、それを掠めた邪龍と偽赤龍帝が次々と細切れにされていく。
戦場を縦横無尽に駆け抜ける深紅の影━━ロイは、斬っては加速を繰り返し、味方の援護をおこないながらも確実にアポプスへ近づいていく。
遠目から敵陣を掻き乱すロイの姿を視認した『D×D』の面々は驚愕し、一様に眼を見開く。意識不明だった彼が前線に現れ、暴れ始めたのだ。驚きもするだろう。
そんな彼らの元にガブリエルが現れる。
「ガブリエル様!いつこちらに!?」
一番近くのリアスが訊くと、ガブリエルはロイの動きを眼で追いながら言う。
「彼に同行して参りました。少々不安定でして……」
そう言う彼女の首に
そんな中、太陽を隠す影に異変が起こる。ヴァルキリー部隊が必死に押し止めていた影が、突如消え失せたのだ。
リアスが再び視線をロイのいる方向に戻すと、黒い
━━━━━
「らぁ!」
彼━━ロイは加速の勢いのまま邪龍の群れを突破し、祭服を着た褐色肌の青年━━アポプスの人間態に迫る!
彼の接近を察知していたアポプスは自身を守るために盾として影を産み出すが、ロイはそんなものお構いなしにアロンダイトを振り抜く!
深紅のオーラを纏ったアロンダイトは、容易く影を両断してアポプスに迫っていくが、紙一重で避けられる。
《━ッ!》
『原初の水』の発動に集中し、防御に回すオーラが少なかったとはいえ、あっさりと突破されたことに驚愕の表情を浮かべる。
ロイはそのまま連撃に持ち込もうとするが、アポプスは刹那的に『原初の水』の発動を中止すると、至近距離から先程よりもオーラを込められた影を撃ち放つ!
ロイは身体を捻って回避するが、影が掠めた籠手が削り取られる。並大抵の者ならそれを気にするんだろうが、ロイは一切気にした様子はない。━━むしろ、楽しげな笑みを浮かべている程だ。
籠手の損傷を瞬時に修復すると、ロイは被弾覚悟で連撃に持ち込む。
アポプスの放つ影がロイを貫こうとするが、ロイは時には避け、時にはアロンダイトで受け流し、削られるのは鎧だけに留める。
ロイの放つ高速の剣撃も同じく、アポプスは体捌きで避け、影で防ぐ。だが、こちらは捌ききれずに確実にアポプスの身体に傷をつけ、少しずつだが消耗させていく。
アロンダイトによる連撃を避けるアポプスの腹部に衝撃が走る。アロンダイトの連撃に紛れ込ませたブローが、的確に彼の腹部を捉えたのだ。
一瞬だが動きが止まるアポプス。ロイは作り出した隙を逃がすほど甘くはなく、渾身の力を込めたアロンダイトを振り降ろすが、アポプスに当たる間際に彼の背中に魔力弾が直撃して弾き飛ばされる。
ようやく作り出せた隙を潰され、舌打ちをするロイ。そのまま体勢を整えて地面に着地すると、魔力弾を放ったであろう敵を睨み付ける。
上空で、アポプスを守るように大量の魔方陣を展開するアジ・ダハーカが邪悪な笑みを浮かべているのだ。
ロイが砕かれた背部装甲を修復した瞬間、アジ・ダハーカがフルバーストを放つ!
ロイは背中の魔力噴出口から魔力を放出してその場を飛び出して回避すると、そのままアジ・ダハーカに向かっていく!
数えることが愚かに思えるほどの数の魔力弾がロイに迫っていくが、その隙間を縫い、時には切り払いながらアジ・ダハーカに肉薄していく!
弾幕を突破したロイがアロンダイトで斬りかかるが、アジ・ダハーカの展開した障壁に阻まれる。アロンダイトと障壁がぶつかり合い、激しく火花を散らす!
「はああああああああっ!」
ロイが気合い一閃と共にアロンダイトを強引に振り抜く!儚い音と共に障壁が砕かれるが、ロイが切り返そうとした瞬間にアジ・ダハーカの首の一本がロイに食らいつく!
「っ!ごは……っ!」
ただですら薄い鎧はあっさりと突破され、アジ・ダハーカの牙はロイの肉体に達する!ロイは血を吐きながらも脱出しようとするが、彼をくわえたアジ・ダハーカは自身の身体を回転させて遠心力を乗せると、そのまま近くの山に向けて投げ飛ばす!
放たれた矢のようにまっすぐ飛ばされたロイは頭から山に突っ込み、爆音に似た音を響かせる。そこにアジ・ダハーカは追撃としてフルバーストを放った!
「がああああああっ!━━ハハハハハハハハハッ!」
様々な属性が乗せられたオーラの塊がロイに襲いかかり、彼の鎧と身体を砕いていく!が、ロイの口からは激痛による絶叫ではなく笑い声が漏れる。
フルバーストは放たれ続けるが、ロイは鎧の修復を早々に魔力噴出口から魔力を放出し、再び突撃する!先程と違うことがあるとするば、それは直線的な軌道であり、被弾しようとお構いなしになっていることだ。
鎧を砕かれ、身体から大量の血を撒き散らしても止まることなく、減速回避一切なしの最短距離で間合いを詰めにかかる。
アジ・ダハーカはそんな彼に攻勢を強めていくが、結果は変わらず、ついにアロンダイトの間合いに入る!
ロイの一閃を読んだアジ・ダハーカは先程よりも強力な障壁を展開させるが、ロイはアロンダイトを持っていない手で渾身の拳を撃ち放つ!
同時に腕から大量の血が吹き出すが、お構いなしに振り抜いた一撃で障壁を強引に破ると、アジ・ダハーカが反応するよりも早くアロンダイトで胴体を貫く!
アジ・ダハーカの三つ首は苦痛で表情を歪めるが、すぐさま急降下して、自身の身体ごとロイを地面に叩きつける!
肉が潰れる鈍い音と骨が砕ける乾いた音がアジ・ダハーカの下から漏れるが、同時に彼の身体を深紅の刃が貫ぬく!刃から体内に直接滅びの魔力を流し込まれ、悶絶するアジ・ダハーカ。彼は自身のみを短距離転移させて一旦間合いを離す。
アジ・ダハーカは全ての首から血の塊を吐き出すと、狂喜的な笑みを浮かべてロイを睨む。それを受けたロイはふらふらと立ち上がり、満身創痍の身体とは裏腹に、絶大なまでの闘気と殺気を放ちながらアロンダイトの切っ先を向ける。
彼の銀色に染まる右目の瞳は狂気、深紅に染まる左目の瞳は覚悟の色に染まり、全身からは深紅のオーラを、鎧に填まる宝玉からは深緑色のオーラを迸らせる。
ロイが魔力噴出口から一気に魔力を放出させ、アジ・ダハーカに肉薄する!それを受けたアジ・ダハーカは再び短距離転移、無防備なロイの背中に大量の魔力弾を撃ち放つ!
ロイはアロンダイトを地面に突き立てて無理やり方向転換すると、空いている手に深紅の直剣を生成して二刀流の構えを取ると、迫り来る大量の魔力弾を片っ端から切り伏せていく!
ロイは高速で迫り来る弾幕を超高速で切り捌いていくなか、ついに通り抜けられる穴を見つける。彼に迷っている余裕もなく、そのまま飛び出していく!
ようやく見つけた穴を通り抜けた瞬間、彼の眼前に迫ったアジ・ダハーカの中央の首が魔方陣が展開し、そのまま至近距離で魔力弾を放つ!
「ッ!」
貫通力を高めた魔力弾によって腹を貫かれ、アロンダイトが手から離れる。そのまま意識も飛びそうになるが歯を食い縛ったロイはそのままアジ・ダハーカの頭に掴みかかり、
「らぁっ!」
その眼球に腕を捩じ込む!
『ぐああああああああああああああっ!?』
『ぎゃあああああああああああああっ!』
『いてぇぇぇええええええええええっ!?』
ついにアジ・ダハーカが痛みに悶える。ロイを剥がそうとじたばたと暴れ始めるが、ようやくアジ・ダハーカを捕まえた彼がそう簡単に離れることはなく、そして、
「ぬぅらぁっ!」
捩じ込んだ腕ごとアジ・ダハーカの脳の一部を引きずり出す!
捩じ込んだ腕には脳の肉片がこびりつき、彼の身体を帰り血で赤黒く染め上げる。だが、ロイの表情は狂喜的な笑みに染まっており、腹に風穴が空いているとは思えないものだ。
アジ・ダハーカは中央の首の活動が止まるが、残った二つの首のうち右の首がロイにかじりつき、そのまま強引に投げ飛ばす!
投げ飛ばされたロイは四肢を使って上手く勢いを殺すと、そのまま拳を構える。が、すぐに大量の血を吐いて片ひざをつく。
それでも足を踏ん張り立ち上がるが、完全に膝が笑っており、これ以上の戦闘は不可能に近いだろう。
お互いに腹に風穴が空き、片や首を潰されてなお戦闘意欲は消えず、片や満身創痍でありながら無理にでも戦闘を継続しようとする。
産まれながらの邪龍と後天的に邪龍を宿した者、一体と一人の戦いは前者有利で進んでいた。
このままいけば、ロイは負けるだろう。まだ完全に力を制御しきれていない彼一人では荷が重い相手だ。そう、
アジ・ダハーカが魔方陣を展開した瞬間、北欧式のフルバースト、妖術と仙術の混成砲撃、極太の光の槍が襲いかかる!
それを察知したアジ・ダハーカは攻撃魔方陣を障壁に変更、それらを真正面から受け止めると、それらを放った者たちを睨む。
『ドラゴン同士の戦いを邪魔するんじゃねぇよ!』
『ま、俺たちもアポプスから横取りしたんだけどね☆』
アジ・ダハーカの首二本がそう言うが、彼女たちは怯んだ様子もなく返す。
「また無茶をした恋人を助けて何が悪いんですか!」
「ドラゴン同士のってのは、ヴァーリ相手に言いなさい!そいつはまだ中途半端でしょうが!」
「そもそも、そのまま死んでもらっては困ります!」
ロスヴァイセ、黒歌、ガブリエルが救援に駆けつけたのだ。ロイが真っ先にアポプスに挑み、『原初の水』を阻止したからこそ合流できたのだ。
「お、おまえら……」
ロイは立っているのがやっとであり、眼も虚ろになっている。見るまでもなく、治療が遅れれば確実に死んでしまう状態なのは確かだった。
どうにか彼を助けたい三人に加勢するように、白銀の閃光がロイとアジ・ダハーカの間に舞い降りる。
「なら、俺と一対一で勝負だ。不足はあるまい」
『ドラゴン
ヴァーリとアルビオンがアジ・ダハーカを煽る。ロイは彼の後ろで構えを解かずに睨み続けていた。
ヴァーリたちに意識を向けたアジ・ダハーカは楽しげに笑みを浮かべるが、すぐにトライヘキサの
強力な複数の神性がそちらから感じ取れ、戦局を変えることのできる増援が連合軍に到着したことは確かだった。
今の彼らが知るよしもないが、インド神話と阿修羅神族が増援として駆けつけ、一気に攻勢に出ているのだ。それでもトライヘキサを倒すことは出来てはいないが、量産型邪龍と偽赤龍帝軍団は文字通り駆逐されていっていた。
アジ・ダハーカの耳元に連絡用魔方陣が展開され、二三やり取りをすると、転移魔方陣を展開する。
『残念☆時間切れみたいだ☆』
『次は白龍皇と遊びたいな!』
アジ・ダハーカはそう言い残すと転移していく。少し間を開けて、量産型邪龍と偽赤龍帝軍団、アポプス、トライヘキサの
それを見届けたロイは鎧の解除と共に崩れ落ちるが、ヴァーリに受け止められた。
「まったく、無茶をするものだな」
「まあ、何とかなっただろ……?」
二人が小声でそんなやり取りをしていると、彼の恋人三人が彼らに駆け寄る。
「ロイさん!しっかりしてください!」
「あーもう!何で毎回こうなるのよ!しっかりしなさい!」
「ロイ様!聞こえますか!ロイ様!?」
彼女らの心配をよそに、ロイの意識は暗闇へと落ちていく。
トライヘキサ復活から五日目となったこの日。北欧戦線はトライヘキサと邪龍軍団の突然の撤退という形で連合軍の
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