グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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7/30 20:35頃、前話の最後に描写を追加しました。


mission02 紅髪の聖剣使い

俺━━ロイがリリスを連れて病院を飛び出した翌日。

冥界の森の中にひっそりとある廃屋敷の中で、

 

「ほいっと。お待たせ」

 

「ごはん♪ごはん♪」

 

存外のんびりさせてもらっていた。すぐに追っ手が来るものとばかり思っていたが、どうにも今回は違うようだ。まあ、それが不気味ではあるのだが……。

話を戻して、今俺たちは食事をとろうとしていた。森で捕ってきた冥界の猪、それで簡単にまた肉鍋を作ったのだ。ちなみに、料理も『先生』に教えてもらった。

 

「いただきます」

 

「いただきまーす!」

 

てなわけで早速一口いったわけだが、若干生臭さが抜けていないようが気がする。昔は割とどうでもいいって感じで食っていたが、自分で作った手前、(こだわ)りたい。

俺が眉を寄せて小さく首を傾げている横で、リリスはお構い無しと言わんばかりにがっついていた。食べ滓で口元が大変なことに……。

俺は苦笑しながらも食べ進めていく。まあ、慣れれば結構いけるか。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

同じく冥界、グレモリー領。

とある山の頂上に、悪魔たちの住まう冥界には不釣り合いな純白の翼を携え、濃密ながら優しい光のオーラを放つ女性が来ていた。

墓に名を刻まれた本人は無事であったが、すぐに行方不明となってしまった。一目も会うことが出来なかった彼女は、せめてもの思いで無事の帰還を祈りに来たのだが━━、

 

「こ、これは……!」

 

その女性━━ガブリエルは到着と同時に異変を察知して警戒を強める。

ロイの墓石は無残にも砕かれ、アロンダイトがなくなっている。墓石だけなら彼に恨みのある誰かという可能性があるが、アロンダイトまで持ち去られているのは不可解だ。

ロイとオーラを同調させた結界、彼にしか振れず、彼以外が触れれば身を焼かれる代物と成ったものを持ち去るなど、損はあっても得はない。ならば、なぜ……?

ガブリエルは思考を一旦切り上げ、緊急連絡用の魔方陣を展開、ミカエルと連絡を取る。

 

『ガブリエル、どうしました?これを使うということは━━』

 

「彼の墓が破壊され、アロンダイトが持ち去られています」

 

『ッ!状況を』

 

いつもと違う間延びしない声のガブリエルに、ミカエルも表情を引き締める。

ガブリエルは周囲を見渡しながら、ミカエルに伝える。

 

「持ち去った犯人は見当たりません。けれど、その者と思われる足跡が残っています」

 

『足跡ですか?』

 

ガブリエルはしゃがみこみ、地面に残された足跡に触れる。

 

「大きさからすると、男だとしか……。私は専門家ではありませんので」

 

『それもそうですね。すぐに調査に向かわせます。それまでは現場の保護を』

 

「わかりました」

 

ガブリエルはそう返すと連絡用魔方陣を消す。先ほどまで凛としていた表情が崩れ、不安げなものに変わるのはすぐのことだった。

 

━━一体誰が、どうしてこんなことを……!

 

怒りと不安が彼女の内を渦巻き、純白の翼が白黒に点滅を始める。彼女もそれを自覚したのか、何度か深呼吸をして落ち着きを取り戻そうとした。

彼女がある程度落ち着きを取り戻したのと、天使と堕天使の合わせて五人の調査班が到着したのはそれとほぼ同時だった。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

時を同じくして、罪人たちが収容、封印されている地獄の最下層━━コキュートスへと続く道を守る関所。

相当なバカか愚か者でもなければまず攻め込まないその場所は、完全に戦場と化していた。

深紅の軌跡が陣を組む衛兵たちの隙間を通りすぎ、一瞬の間を開けて衛兵たちが倒れる。だが、死人は出ていないようで、足や腕を押さえてのたうち回っていた。

 

「くそ!何がどうなってんだよ!?」

 

若い衛兵の一人がパニックになりながら怒鳴り散らす。いつもと同じように同僚と共に暇な時間を過ごすことになると思った矢先、突然の敵襲である。多少はパニックになっても仕方ないだろう。

 

「落ち着け。敵はたったの一人だけだ」

 

そんな衛兵の肩に手を置き、落ち着かせようとする隊長と思われる男。だが、言葉とは裏腹に表情に余裕はない。そのたったの一人に、約半数の衛兵が一方的に撃破され、地面に倒れているのだ。

隊長も伊達にここを任されているのではない。三大勢力の戦争を生き残り、テロリストを相手に戦った経験もある。おそらく、この中で一番強いのは彼だろう。

隊長は残った部下を横目で見ると、敵である紅髪碧眼の男を睨み付けた。あの顔は見覚えがある。そう、見覚えがあるのだ。だが、隊長が確信を得られないのには理由があった。自分の知る彼は、あんなに()()()()()()のだ。

男の外見年齢は十五、六。つもりはまだ青年と言える。先日死亡となったあの男は、基本的に外見年齢を二十代後半にしていると聞くし、実際に見たこともある。他人の空似だとしても、あまりにも似すぎている。悪魔なら外見年齢を変えられるが、本人は死亡したはずだから違うだろうと隊長は思考していた。

隊長が警戒するなか、紅髪の青年の横に転移魔方陣が展開され、光が弾けると共にフードを深く被った男が現れる。

 

「まだやっていたのですか。早く終わらせなさい」

 

男が指示を出しているが、青年は答えない。むしろ反応すらしない。

男は何かを思い出したかのように魔方陣を展開し、それを青年に当てた。

青年は一瞬身体をビクリと反応させると、手にする()()()()()を肩に担いで衛兵たちの視界から消え伏せた。

 

「ッ!」

 

隊長だけはギリギリで手にしていた刀剣で青年の一撃を防ぐことが出来たが、部下たちはそうもいかない。青年が隊長の視界から消えると同時に次々と無力化され、地面に倒れていく。だが、死者は出ていないようだ。

 

━━わざと負傷させ、その対処に手間を取らせるつもりなのだろう。

 

隊長は青年の行動の意味をそう推理した。

相手の狙いはコキュートスへの侵入。そして、自分達を半殺しにすることで、その治療のために到着するであろう増援が、短時間でも足止めされることを狙っているのだ。

青年が少し離れた場所で立ち止まると、隊長を冷や汗を拭った。速すぎてほとんど見えない。今の一撃を防げたのは一重に勘が働いたからだ。だが、それでは攻撃に移ることができない。増援到着まで、何がなんでも耐えるしかない。

隊長は防御の姿勢を取った瞬間だった。彼の意識が微睡む。

 

「……?」

 

頭を振って無理やり意識を戻そうとするが、効果がない。それでも足を踏ん張って倒れまいとするが、

 

ドゴンッ!

 

「か……っ!」

 

一瞬にして間合いを詰め、無慈悲に放たれた青年の拳が鎧を砕き、隊長の意識を刈り取った。

青年は地面に倒れふした隊長を一瞥すると、聖剣を背負い直し、フードの男のほうに目を向けた。男の手元には怪しげに輝く魔方陣が展開されており、何かしたのは明白だった。

男は肩をすくめると、青年に言う。

 

「やれやれ。その姿に戻せたのはいいですが、色々と面倒ですね……」

 

青年に言い聞かせるように言うが、返答はない。何かを待っているかのように男を見るだけだ。

男は再びため息を吐くと、魔方陣を展開してそれを青年にぶつけた。それを受けた青年はコキュートスへと続く道を進み始める。

男はそんな青年の背中を見送ると、不気味に笑む。

 

「まあ、彼はあの剣が振れた時点で及第点(きゅうだいてん)。あとは━━」

 

その不気味な笑みが恍惚としたものに変わり、目を見開く。

 

「あのお方を救うのみ。そうすれば、きっと寵愛をいただける。ふふふふふ、ハハハハハハ………っ!」

 

男は狂ったように笑うと、青年を追って歩き始める。━━が、すぐに大量の魔方陣を展開して怪物を呼び出していく。地に足をつけるものから空を飛ぶものまで、その数は百を越えて千にも届きそうな数である。

 

「ここの守備は任せますよ。もう来たようですから」

 

その発言の一拍後、上空から影が落下してくると、爆音にも似た音を響かせて着地を決めた。

右腕を薙いで土煙を払った彼は、怪物たちを睨み付ける。

 

「……また面倒なことになってやがるな」

 

現れたのは紅髪碧眼の男━━ロイだ。背中には必死にしがみつくリリスの姿もある。

ロイはコキュートスへの道を塞ぐように立ちはだかる怪物たちの奥に立っている男を睨んだ。

 

「おまえ、何者だ?七十二(ななじゅうふた)(はしら)に名がある悪魔じゃねぇな。番外の悪魔(エキストラ・デーモン)か」

 

「そこまでわかっていれば十分でしょう?私にはとても重要な責務がありますので、失礼いたします」

 

男はそう言うと、そのままコキュートスへの道を進んでいく。ロイは追いかけようとするが、怪物たちが立ち塞がった。

 

「本当に面倒だな。リリス、隠れるついでに怪我してる奴を引きずっていってくれ」

 

「はーい」

 

ロイはリリスを降ろして、近くの岩を指差す。リリスは右手を挙げて答えると、負傷者を引きずりながら岩の影に隠れ、また次の負傷者の元に駆け寄っていく。

それを確認したロイは、両手をまっくず横に伸ばし、それぞれの手に深紅の直剣を生成して身構えた。

 

「邪魔をするなら容赦はしねぇ。たとえおまえらが利用されただけの()()()だとしてもな……!」

 

憎しみをぶつけるようでありながら、どこか悲哀を込めた声音で言うと、ロイは飛び出していった。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

ロイの墓前、調査班が慌ただしく動いていくなか、ガブリエルの耳元に緊急連絡用の魔方陣が展開された。

 

「ミカエル様、どうかされましたか」

 

『少々問題のようです。現在、悪魔領のコキュートスの入り口が襲撃を受けたと連絡がありました。それに加え、ただですら辺境だというのに、近くの転移場所も破壊されたためか使えず、増援を送るのにも時間がかかってしまうそうです』

 

「ッ!わかりました。すぐに向かいます」

 

『「D×D」の皆さんにも連絡はつけていますが、到着がいつになるのかはわかりません。無茶はしないでください』

 

「わかっています」

 

ガブリエルは即答で返すと、調査班に後を任せて純白の翼を広げる。調査班の面々はそれを見て感嘆の声を漏らすが、彼女は構わずに飛び立った。

天界最強の女天使が叩き出す速度は、並の者では目で追えるものではなく、あっという間に彼女の姿が空の向こうに消えていく。

調査班の面々は彼女を見送ると、再び作業に取りかかっていった。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

人間界、兵藤家VIPルーム。

もはや『D×D』の集合場所となっているその部屋に、グレモリー眷属とシトリー眷属、ジョーカー・ジュリオ、シスター・グリゼルダ、アザゼルが集まっていた。

アザゼルが切り出す。

 

「現在、悪魔領にあるコキュートスへと続く道がある場所が、『クリフォト残党』に襲撃を受けたそうだ」

 

『ッ!』

 

驚きを隠せない面々だが、ソーナが人差し指で眼鏡の位置を直すと、アザゼルに言った。

 

「彼らの狙いはあそこに囚われている者。つまり━━」

 

「ああ、まず間違いない。奴らの狙いはリリン━━リゼヴィム・リヴァン・ルシファーだろうよ」

 

憎々しげにアザゼルが頷くと、『D×D』の面々は表情を引き締める。

彼らがやっとの思いで捕らえた男が、また出てこようとしている。それだけでもまた世界に悪影響が出るだろう。

 

「おまえたちには、これからコキュートスへの入り口に向かってもらう。近くの町までは転移でいけるが、奴らに施設を破壊されたみたいでな。そこからは自力で行くしかない」

 

「なら、急ぎましょう。リゼヴィムを出すわけにはいかないわ」

 

リアスがそう言うと、眷属たちはほぼ同時に頷く。

シスター・グリゼルダが立ち上がりながら言う。

 

「ガブリエル様が先行して向かっているそうです。それと、()()()は既に現場に到着し、戦闘に入っていると連絡がありました」

 

「協力者?一体だれなの?」

 

リアスがアザゼルに目を向けると、彼は一度肩をすくめる。

 

「行けばわかるし、おまえらのことを味方だと思ってくれているだろうよ。だから早く行け。そいつに無茶をさせるな」

 

アザゼルが急かすように言うと、リアスたちは頷いて部屋を後にする。アザゼルは彼らの背中を見送り、小さくため息を吐いた。

 

「あいつのこと、任せたぞ」

 

彼の呟きは誰にも届くことはなかったが、その声音は心から出たものであることは自覚出来ていた。

いつも無茶し、結果的には成功させる。周りのことを心配するくせに、その後のことをまったく考えない。

無鉄砲という言葉をヒトにしたような男だが、嫌いではない。

だからこそ、今度こそ全員での無事の帰還を願う。後々フォローするのも、かなり面倒なのだ。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

「フッ!」

 

短く息を吐くと同時に横一閃した直剣に切り裂かれ、三体の怪物がどす黒い色のヘドロ状のものに変わる。

返り血で服と髪を黒く染めながら、ロイは次のターゲットに向けて跳び、そのまま怪物を踏み潰しながら(コア)に刃を突き立てる。

潰した怪物がどす黒いヘドロに変わり、彼のズボンを膝まで黒く染め上げた。次に向けて跳ぼうとするが、ヘドロの(ぬめ)り気が強すぎて一瞬だが足を捕られてしまう。

その隙をついて怪物たちが一斉に飛びかかるが、上空から放たれた数百という光の槍が貫いていく。その真っ只中にいるロイには一本も当たらないあたり、図ったものは相当な腕なのだろう。

ロイがヘドロから足を引き抜き、近くの怪物を切り払うと同時に上空からそのヒトが舞い降りた。

 

「━━ガブリエル!?」

 

「はい。お待たせしました」

 

手短に挨拶を交わすと、二人は背中合わせになって構えた。

 

「おまえ、何でこんなところにいるんだよ!危ねぇだろうが!」

 

「それはこちらの台詞(せりふ)です!それよりも、私のことがわかるのですか?」

 

「………」

 

ロイは気まずそうに視線をそらした。記憶喪失でまた行方不明になったと聞いていたのに、彼はガブリエルを知っていた。

ガブリエルがさらに畳み掛けようとするが、彼女に上空から貫ぬかれ、地面に倒れていた怪物たちが立ち上がり始める。

 

(コア)を潰さねぇと死なない。教えたはずなんだが、知らずにやったわけじゃないよな?」

 

「どこかわからないので、とりあえず撃ちました」

 

彼女の発言にロイはため息を吐くが、横目で怪物を見る。確かに、ガブリエルの攻撃で何体かヘドロになっていた。当てずっぽうでも、案外行けるようだ。

 

「まあ、いい。あいつらが来るまで、付き合ってもらうぞ」

 

「その後もしっかりお付き合いします」

 

「ああ、そうかよ!」

 

「当たり前です!」

 

軽口を叩きながら、二人はほぼ同時に飛び出していく!

ガブリエルが怪物の足を止め、ロイが(コア)を潰して確実に仕留める。

手間はかかるが、二人の連携で確実に怪物たちを討ち取っていく。ロイ一人の時と比べ、撃破のペースは格段に早くなっていた。

 

「す、すごい……|

 

二人の連携を見た衛兵が感嘆の息を漏らす。

ロイの残す深紅の軌跡と、ガブリエルの残す白い軌跡。二つは絡み合いながらも決して互いを邪魔することはなく、その美しさを際立たせ、人々を魅入(みい)らせる。たとえ、それが恐ろしい『死』を運ぶものであったとしても。

二人の舞いは決して止まることなく、衛兵(かんきゃく)たちの心を奪いながら、眼前の敵を駆逐していくのであった━━━。

 

 

 

 

 




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