グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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mission10 突入

俺━━兵藤一誠を含めた『D×D』は、エリックさんとルフェイが見つけた内側に大きな空間のある山の目の前に移動し終えていた。

エリックさんとルフェイが入り口を探そうと魔方陣を展開すると、ロイさんが目元を寄せて険しい表情を浮かべながら、右胸を掻いていた。

 

「あの、どうかしましたか?」

 

ロスヴァイセさんが訊くと、ロイさんは少し表情を和らげながら言う。

 

「いや、あいつがいるのを感じてな。この距離まで近づかなきゃわからねぇとは思わなかったが……」

 

ロイさんの言う「あいつ」というのは気になるが、何かを感じ取ったようだ。

少し不気味な笑みを浮かべていたロイさんだが、突然笑みを消すと迷う様子もなく歩き始めた。

 

「……ああ、感じるぞ。そこか、そこにいるんだな?」

 

一度こちらに振り向くと一度頷き、翼を展開して飛び立っていく。

「ついてこい」ってことなのか?俺たちは困惑しながら顔を見合せ、ロイさんの後を追って飛び立っていく。

ロイさんがどこを目指したのかはわからないけど、何か意味のあっての行動なんだろう。文字通り一刻を争うこの状況で、無駄なことはしないはずだ。

 

 

 

 

 

追うこと数分。

ロイさんは山肌を睨み付けながら右手の手元に魔力を集めていた。俺たちが追い付くのを待っていたようだ。

俺たちが追い付いたことを横目で確認すると、手元に集めていた魔力を解き放ち、山肌に叩きつけた!

物を強引に削り取る音が山に響き渡るが、放たれた滅びの魔力で舞った砂塵は全て消し飛んでいく。

削り取られた山肌。そこから現れたのは━━、

 

「これだな」

 

近代的な様相をした廊下だった!扉はロイさんに消し飛ばされたのか、削り取られた場所の断面からはバチバチと火花が散っている。

どうやって見つけたのと訊きたいところだけど、いきなり過ぎて声も出ないよ!事前の説明なしでこんなことをいきなりするんだからさ!

ロイさんは右拳を開いたり閉じたりしながら感覚を確かめると、ソーナ前会長と黒歌に言う。

 

「ソーナたちはここを固めて、黒歌はリリスと一緒に残ってくれ。ジルたちはこいつらの援護を頼む。ルフェイは『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』も来るだろうから、早めに連絡をつけておいてくれ。ついでにゴクマゴグは目印代わりで、フェンリルは内側から何かが出てきた時のために残ってもらいたい。いいか?」

 

早口で捲し立てるロイさんに、ソーナ前会長が訊く。

 

「それはよろしいのですが、戦力は大丈夫なのですか?この先に何がいるのかは完全に未知数です」

 

「ああ、それもそうなんだが……」

 

頼もしいものを見るような目で俺たちを一瞥し、最後にロスヴァイセさんに目を向けると、不敵に笑んだ。

 

「こいつらならどうにかなるだろ。最悪おれが守るからよ」

 

いつもの調子で言うロイさん。

 

「いや、死なれちゃ困るのよ。わかってるの?」

 

それに対して、黒歌が少しイラついた様子で返した。毎回そう言って、時々重症になるから、心配なのだろう。

ロイさんの表情が苦笑に変わり、頬をかいた。

 

「わかってるよ。ったく、そんなに信用ないか?」

 

「ええ」

 

「はい」

 

「ロセまで……」

 

黒歌とロスヴァイセさんに即答され、項垂れるロイさん。

 

「マ、マスター……」

 

そんなロイさんに、眷属であるアリサさんが少し不安げに声をかけた。

ロイさんは顔を上げ、そんな彼女の頭を少し乱暴に撫でる。

 

「大丈夫だ。そこまで無茶するつもりはねぇよ」

 

「気を付けてください……」

 

眷属からの心配の声に、ロイさんは確かに頷いて返した。

リアスが言う。

 

「お兄様、急がなければなりません」

 

「おう。そんじゃ、リリスとここを頼んだぞ」

 

「任されたにゃ」

 

「「はい」」

 

「任せてくれ」

 

「死ぬなよ」

 

黒歌と眷属、仲間たちからの返しにロイさんは頷き、表情を引き締めた。

 

「さて、行くぞ……」

 

『はい!』

 

真っ先に進んで行ったロイさんに続いて、俺たちも剥き出しになった廊下に飛び込んで行った━━━。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

そんなこんなで、俺━━ロイを先頭にする形で突き進んでいるなか、リアスが訊いてきた。

 

「お兄様。どうやってこの施設の入り口を見つけたのですか?私たちではまったくわからなかったのですが」

 

「言ったろ。感じるんだよ、あいつをな」

 

「あいつとは、リゼヴィムのことなのですか?」

 

「いや」

 

少ししつこく訊いてくるリアスの質問に手短に答え、俺は速度を緩め、最終的に立ち止まる。

長い廊下を抜けた先にあったのは、半球型の大きな部屋であり、視線の先には奥に続いているであろう扉があった。問題は━━、

 

「久しぶりだな、少年」

 

「まって、いたぞ……!」

 

大量の怪物どもと、例の少年がいることだ。様々な形状をした怪物どもは唸り声をあげながら不気味な眼光を放ち、少年はアロンダイトを背負い、俺とロセを睨み付けてきていた。

俺は小さくため息を吐き、美猴に声をかける。

 

「美猴。俺はあの少年の面倒を見なきゃならねぇ。気にはかけるが、怪物どもを何体か頼めるか?具体的に言うと、三分の二ぐらいを━━だが」

 

「……その数を一人で捌けっての?」

 

「出来なきゃ、何人か巻き添えにして死ぬだけだが?」

 

美猴の不満に、俺は即答で返す。少年の相手をする以上、リアスたちは守りきれないだろう。最低限のフォローはするが、各自で死なないように頑張ってもらいたい。

 

「あんた、そんなに鬼だったか!?」

 

「悪魔ではあるが、鬼じゃねぇよ」

 

「そういう意味じゃ。ああ、もう、やりゃいいんだろ!」

 

美猴が自棄になりながら叫ぶと、目を閉じて集中し始めた。

さて、俺もやらねぇとな。一度瞑目して集中、手元に直剣を生成しながら怪物どもの(コア)を探っておく。

俺たちが戦闘態勢に入ったからか、少年はアロンダイトを構えると、刀身を手で撫でながら深紅のオーラで包み込んでいった。

……前に会った時よりも魔力の質が上がってやがる。油断は出来ねぇな。

少年が深紅に染まったアロンダイトの切っ先をこちらに向けた瞬間、怪物どもが一斉に飛び出してきた。姿はバラバラではあるが、またある程度の統制が取れていることだろう。

 

「さて、とりあえず片付けるかね。俺はあの少年の相手するから、最悪置いていってくれ」

 

「……わかりました」

 

リアスは渋々と言った様子で頷くが、

 

「嫌です……!」

 

ロセは首を横に振った。まあ、おまえのことだろうからそう来るとは思っていたけどな。

俺が言い返そうとするが、それよりも先に怪物が飛び付いてきた。

 

「フッ━━!」

 

短く息を吐きながら踵落としで床に叩きつけ、(コア)を貫く。怪物は『ビクンッ!』と一度身体を跳ねさせると、いつも通りヘドロになっていった。

 

「まあ、ロセは残ってくれて構わねぇよ。そのほうが俺もやり易い」

 

俺は仕方ないとして、リアスたちに足を止めてもらうわけにもいかないので、そう言うことにした。それに対して、ロセは一度頷いて返す。

怪物を一体切り伏せ、リアスに言う。

 

「そう言う訳だ。しばらくロセを借りることになるかもしれん」

 

「……っ!その話は後にしてください!」

 

怪物に滅びの魔力を放ち、(コア)とか関係なしに全身を一気に消し飛ばそうとしているが、魔力に全身が呑み込まれる直前に広い空間の片隅に(コア)だけを吐き出されてしまう。

他の怪物はそれを群がり、再生までの時間を稼ごうとしていた。

その結果にリアスは小さく舌打ちをする。

 

「美猴、フォローしてやれ!こっちもちょっと忙しくなってきた!」

 

纏めて五体を切り伏せ、ヘドロに還していく。こいつらは、外を固めていた『新型』じゃないだろう。いや、ただの時間稼ぎなら、それで十分か。

小さくため息を吐いて、今度は三体斬る。はっきり言って、弱いな。俺を止めるには━━。

そんな考えを持った瞬間、俺は神速で駆け出した。目指す先にいるのはロセだが、彼女の死角に回り込むように動く深紅の軌跡が見えたのだ。

リアスやイッセーたちも怪物どもに苦戦しているが、最優先はこっちだ。あいつらなら大丈夫だろう。

 

「ロセ、しゃがめ!」

 

「ッ!」

 

俺の叫びに反射的にその場にしゃがみこむロセ。

彼女の首のあった場所で、二つの深紅の軌跡がぶつかり合った。

 

「俺を無視してロセを狙うか……。覚悟は出来てんだよな」

 

俺の威圧を真正面から受けた少年は、眉を寄せながら俺を睨む。前までは何の感情も籠っていなかった瞳に、確かな殺意が宿っている。

そうだ。それでいい。感情もなしに誰かと戦うなんて愚の骨頂だ。そんなもの、無人兵器となにも変わらない。何でもいい、何かしらの感情が宿れば、こいつはまだヒトになれる。

なんてお節介なことを心中に宿しながら、上段回し蹴りで少年の顔面を蹴りにいくが、その場を飛び退いて避けられた。

 

「ロセ、怪我は?」

 

「大丈夫です。ちょっと怖かったですけど……」

 

「それは悪かったな。……しばらく背中を頼む」

 

「任せてください」

 

簡単なやり取りを終え、直剣に込める魔力を上げる。下手をすれば、剣が折られかねない。

俺と少年の滅びの魔力はほぼ同質ではあるが、俺の魔力には少し()()()()()()()からな。はっきり言って、純度に欠ける。純粋な滅びの魔力と、混ざりものがある滅びの魔力など、本来なら勝負にならないだろう。

まあ、その混ざりものをうまく使ってやれば、純粋なものよりも強力にすることも出来るだろう。今は試行錯誤中だけどな。

ゆっくりと息を吐き、右足を後ろに下げて半身になりながら重心を落とす。剣は右脇に構えた。

少年のほうは、前と同じように『霞の構え』に似た態勢に入った。

怪物どもの唸り声も、周りの戦闘音も、俺たちの耳には届かない。お互いに極限まで集中し、そして━━━、

 

「「━━ッ!」」

 

同時に飛び出した。

少年は加速の勢いを乗せた突きを放ってくるが、振り上げた剣で弾き、そのまま兜割りの要領で一気に振り下ろす。

少年は無理やりアロンダイトを引き戻し、俺の振り下ろしを防いで見せるが、

 

「ッ!」」

 

思わぬ重さに歯を食い縛りながら片ひざをついた。

こちとら死神から逃げながら、毎日山の中で身体を鍛えているんだ。前よりも少しだけだかパワフルになってるよ。

少しずつ剣を押し返して立ち上がり始める少年が、振り払おうと一番力を込めるタイミングを見計らって剣を一度消し、体勢を崩させる。

体勢が崩れたら、無防備は顔面に左足で膝蹴りを放った。

確かに膝蹴りを放った。だが、少年は吹き飛ばない。とっさに展開した悪魔の翼で、器用にも俺の足を防いで見せたのだ。

それを察知した俺は反射的に上に軽く跳び、右足で回り蹴りを叩き込む。うまく腰の回転が入らなかったら、そこまでの威力はないだろう。

 

━━まあ、軽く吹っ飛ぶくらいの威力はあるが。

 

現に蹴りを顔面にくらった少年は吹っ飛ばされ、床を転がった。その勢いを止めて、ふらつきながらもすぐに立ち上がり、口の周りにべったりとついた鼻血を拭う。

 

「……ッ!」

 

少年は文句ありげに睨んできた。まるで「正面から勝負しろ」と言わんばかりだ。

 

「いいか、少年。殺し合いに卑怯も何もねぇんだよ。勝つ(生きる)負ける(死ぬ)かだ。負けた(死んだ)ら何もねぇからな」

 

言い聞かせるように少年に言うと、何か得心するところがあったのか、一度瞑目した。

 

かつ(いきる)まける(しぬ)か。……知ったことか」

 

急に流暢に言葉を紡ぎだした少年は、ゆっくりと目を開く。

アロンダイトを両手で握り直し、『正眼の構え』を取った。

 

勝つ(殺す)負ける(殺させれる)か。それだけだ」

 

少年はそう呟き、今までとは比にならない殺気を放ち始めた。

俺は思わず笑みをこぼす。

 

「いい殺気を出しやがる。盛り上がってきたな……」

 

今の俺は生きること━━未来も含めて見ているが、少年は殺すこと━━今この瞬間だけを見ている、か。

昔の俺はあんな感じだったのか。……なかなか問題有りだな。よく恋人できたもんだ。

俺は横目でリアスたちに目を向ける。ちょうど怪物どもを蹴散らしたようで、少し荒れた息を整えていた。

リアスとヴァーリに目を向け、続けて先に続いているであろう扉に一瞬目を向けて、小さく頷いてやる。

リアスとヴァーリは頷き返し、眷属や仲間たちを連れてその扉に向かって走り出した。

残ったのは俺とロセ、少年だけだ。

少年は俺に集中したいのか、リアスたちを追う素振りは見せない。まあ、追いかけようとしたらソッコーで邪魔をさせてもらうがな。

リアスたちが扉の向こうに消えていき、次第に気配も小さくなっていく。

それを感じながら、俺は一度肩を回す。

 

「さて、邪魔者は消えたな」

 

「……もう一人いるが?」

 

少年がロセを睨みながら言うが、俺は苦笑する。

 

「後ろに守りたい奴がいるほうが強くなれる。━━なんてな」

 

「……どちらでもいい。殺すだけだ」

 

少年はそう告げると、更に魔力を高めたのか、深紅のオーラを放ち始めた。

 

()らせねぇよ……」

 

少年に答えるように俺も深紅のオーラを放つ。

二つの深紅のオーラが空気中でぶつかり合い、火花を散らす。

 

「さあ、行くぜ?」

 

「来い……!」

 

その言葉を合図に、俺たちはロセの視界から消え失せたのだった━━━。

 

 

 

 

 

 

 




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