life01 転生したはいいが………
俺はなぜかMs.神様に興味を持たれて転生とやらをした。
Ms.神様の言っていた通りに、物心ついた(だいたい五才)頃に俺としての意識がはっきりしてきた。
それで、最初は驚いたが、今の俺は『悪魔』のようだ。だが、それは一年もしないうちに慣れた。あの神様に会ったあとだからな。
それはそれとして、今の俺は六歳だ。周りからはかなり落ち着いた子供だと思われている。その周りってのは、別にご近所さんではない。『メイド』と『執事』の皆さんだ。
どうやら、俺が生まれた家はかなりいいとこらしい。
「ここ、どこだっけ?」
俺は、自分が住む屋敷で軽く迷子になっているのだ!自慢じゃないが、一年そこらで広大な屋敷を覚えるのは無理だった。時々改築、改装しやがって!余計にわからなくなったよ!
「はぁ……面倒なことになったな……」
溜め息を吐きながら周囲を見渡す。長い廊下と無数の扉、これは面倒だ。
後頭部をかきながら再び溜め息を吐く。昔ならタバコを吸っているところだが、今は子供だし、そもそも禁煙だろうし……。とりあえず部屋に戻るか。
俺は戻れるかもわからない自分の部屋を目指そうと踵を返すが、
「あ、いたいた。ロイ!探したよ」
「サーゼクス兄さん、助かりました……」
俺に声をかけてきた少年━━サーゼクス・グレモリーは俺の兄だ。多分、俺を探してくれていたのだろう。ちなみに『ロイ・グレモリー』が今の俺の名前だ。
「まったく、ロイは方向音痴なのかい?」
「もう少し細かい地図が欲しいところです」
兄さんの質問に苦笑しながら答える。本当に地図をくれ。地図さえあれば一日で完璧に叩き込める。この際自分で作るか?六歳の子供がやっていたら怪しまれそうだけどな。
俺がそんな事を考えていると兄さんが言った。
「お母様が呼んでいたよ。お勉強の時間だ」
最近は勉強をしていることが多い。体も動かしているがな。
「わかっていますが、迷ったんです」
「今度から迎えにいくか、迎えがくるまで部屋にいてくれ」
「わかりました」
兄さんの苦笑混じりの言葉に返事を返す。次からは部屋で待つことにしよう。で、そのうち地図を作る。
俺が決心しているなかで兄さんは俺の手を引いた。
「ほら、行くよ」
「はい」
俺は手を引かれるままに歩くが、兄さんの表情をチラッと見る。
「兄さん、何で笑っているんです?」
なぜか兄さんは笑っていた。俺をバカにしたような笑みではなく、どこか嬉しそうな表情だ。
「世話のかかる弟がいると退屈しないからね」
その表情のまま俺の質問に返す兄さん。多分、兄にしかわからない何かなんだろう。俺にも下に誰かいるとわかるのかな?
そんな話をしながら勉強部屋に、兄さんがノックしてから部屋に入るが、ドアの先には、
「ロイ、説明を………」
青筋を立てている亜麻色の髪の美人、もとい俺の母親━━━ヴェネラナ・グレモリーが立っていた。表情はニコニコとしているが、プレッシャーが凄まじい。髪の毛がウネウネうごめいているし……。
「えと、また迷子になりました」
俺が申し訳なさそうに言うと、母さんがニコニコ顔のまま近づいてくる。
「そう、あなたはいつになったら屋敷の間取りを覚えてくれるのかしら?」
「………いつになりますかね?」
俺が苦笑しながらそう返した瞬間、母さんの手が俺の頭を掴んできた!そして力をこめてくるっ!
「いだだだだだだだっ!」
このヒト、割りと容赦ないんだよね!実際問題かなり痛い!
数秒後、ようやく解放された。まだジンジンと痛むが、そのうち引く筈だ。
「まったく、今度地図をあげます。その時にしっかり覚えなさい。わかりましたか?」
「は、はい……」
「あはははは………」
頭を押さえながら返事をする俺と、それを見て苦笑する兄さん。兄さんにもこういう時代があった筈だ。わからないけど……。
俺が苦笑している兄さんを半目で睨んでいると母さんが手を叩いた。
「少し遅れてしまいましたが、早速始めますよ」
「「はい」」
返事と共に席につき、母さんが俺たちに対面するように設置された席に座る。
という訳で勉強タイムだ!
数時間後。
「今日はここまでにしましょう」
母さんが壁にかかった時計で時間を確認しながら言った。
「はい、お母様」
兄さんはまだ余裕そうに答えるが、
「あ、ありがとうございました」
俺は若干ショート気味だ。悪魔とグレモリーの歴史、わからん。わかろうとは思っているのだが、わからん。やはり、体を動かしている方が楽だし合っていると思うんだ。
「まだご飯まで時間がありますから、二人で何かしてらっしゃい」
母さんが頭から煙を出している俺を見ながら言った。多分、気分転換してこいと言いたいのだろう。
「はい。ロイ、いつものやろう」
「はい!行きましょう!」
兄さんの誘いに即答で答える。俺たちは裏庭でよく『魔力』の扱い方を練習しているのだ。兄さんも俺くらいの時からやっているらしく、なかなか上手である。
てなわけで、移動!
移動完了っと。グレモリー家のメインの屋敷の裏にある学校の校庭ほどのスペース。俺と兄さんは動きやすい格好に着替えてそこに来ていた。
「ロイ、いいかい?魔力の使用で大事なことはイメージだ。創造力、想像力を使ってどうしたいか、どうさせたいかを考えるんだ」
「前にも言っていましたね。変な球体しか出来ませんでしたけど……」
前にもやったのだが、歪な球体がいくつか出来ただけだった。まあ、そんな急いでいるわけじゃないからいいんだけどな。
「前よりももっと細かく、具体的に考えるんだ」
兄さんは簡単そうに言うが、実際はかなり難しい。何もないところに、イメージだけで物を作れというのだ。単純に放つだけなら楽なんだがな。
「もっと細かく、具体的に………」
兄さんの言葉を復唱しながら右手を前に出して、目を閉じて集中する。この際何でもいい!イメージ、イメージ、イメージ………!
ふと脳裏に前世で愛用していたコンバットナイフが浮かんだ。
「……これは」
兄さんの呟きが俺の耳に届いた。俺が恐る恐る目を開けると━━━、
「おお!」
俺の右手には紅のコンバットナイフが握られていた。なんだ、前世のことを生かせば存外イメージって簡単かもしれんな。
魔力で出来ているおかげなのか、非常に軽い。試しに振ってみると紅の残像を残している。見た目の割には派手な気がするな。
「面白いね、ナイフと言えばいいのかな?」
「多分そうですね」
一旦振るのを止めて兄さんに視線を送る。兄さんはあごに手をやって何かを考えているようだ。
「あの、何か?」
「いや、球体からいきなりそうなったからね。ちょっと驚いただけさ」
兄さんはいつもの笑顔で俺に言った。
「試しに何か切ってみるかい?」
兄さんの言葉に頷いて周囲を見回す。近くには木くらいしかないな。母さんには何か壊すかもとは言ってあるから問題ない筈だ。
「とりあえず、あの木を」
「やってみるといい」
兄さんの許しを得てその木の近くに移動する。高さは三メートルくらいの低めの木だ。
その木の根元に行き、ナイフを順手に構える。念のため刃の部分に魔力を込めておく。切れないとは思うが、やるだけやっておきたい。
「ふぅぅぅ……」
ゆっくりと息を吐き、腰を少し落としながら左足を引き、ナイフを顔の前に持っていく。そして、
「ハッ!」
気合いの掛け声と共にナイフを水平に振り抜く!
「…………」
「…………」
俺と兄さんは沈黙に包まれていた。理由は簡単だ。
「……めりこんだ?」
「……めりこんだね」
ナイフが木にめりこんでいるのだ。引っ張ったり押したりしてもびくともしない。完璧に芯に食い込んでしまっているようだ。
俺は溜め息を吐きながら手を離す。するとナイフも塵になるように消えた。
「まあ、最初はこんなものだよ」
「そうですかね?」
二人して何とも言えない空気が流れていたが、「もう少しやってみる」ということで練習を続ける俺と兄さんなのだった。
誤字脱字、アドバイス、感想などありましたら、よろしくお願いします。