グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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mission04 禁手

「リアス先輩。学園を大きな結界で覆っています。これでよほどのことがない限りは外に被害は出ません」

 

俺、兵藤一誠の前で、先日レストランで語り合った同期の悪魔、匙元士郎が部長にそう報告した。

俺たちが通う『駒王学園』の目と鼻の先にある公園で、俺たちは集まっていた。だが、あいつだけがいない、どこにいるんだ?

負傷したイリナはソーナ・シトリー生徒会長のお家で休ませるそうだ。アーシアの力で最悪の結果は回避できたから、とりあえずは安心だろう。

学園を覆う結界は会長の眷属である現生徒会メンバーが維持しているとのこと。中で戦闘をして、流れ弾が近所の家に当たれば大事になってしまう。それを避けるための配慮だ。

 

「あの結界は周辺への被害を抑えるためのものです。正直言ってしまえば、あの程度ではコカビエルを押さえることは出来ないでしょう。最悪、この町が崩壊します」

 

会長の言葉を聞いたメンバーは絶句した。堕天使の幹部って、そんな次元の話なのか!?

なんて傍迷惑な幹部だよ!俺たちの住む町を、ロイってヒトとの決戦をしたいがために破壊する気なのか!?ふざけんな!

俺が怒りを溜めていると、ふと、今のうちにそのロイってヒトの事を知っておいた方がいいのでは?という考えがよぎった。

 

「あの、部長」

 

「何かしら、イッセー」

 

匙から結界の説明を受けた部長に声をかけ、単刀直入に訊く。

 

「その、コカビエルが言っていたロイって、どういうヒトなんですか?」

 

部長は俺の質問に少し驚いた表情をするが、いつもの微笑を浮かべると少し懐かしむように俺に言ってきた。

 

「コカビエルの言っていたロイ・グレモリーは、サーゼクスお兄様の弟で、私のもう一人の兄よ」

 

今さらだけど、部長って三人兄妹の末っ子っていうことなのか。

俺が頷いていると、会長が部長に続く。

 

「兵藤くん。コカビエルの翼を見ましたか?見たのなら、それが何枚か覚えていますか?」

 

「え?ああ、はい。確か九枚でした」

 

俺は少し前の事を思い出しながら答えると、会長が再び訊いてきた。

 

「それを見て、少し違和感を覚えませんでしたか?」

 

「…………」

 

俺は思い出しながら少し考えると、確かに違和感を感じた。本来翼なら一対ずつが普通の筈だ。奇数であるはすがない。

俺がそう考えたのが顔に出ていたのか、会長が言った。

 

「コカビエルの翼の一枚を落とし、左目を潰したのがロイ様です」

 

会長が当然のように言ってきた言葉で俺は仰天した!

 

「か、幹部の翼を落とした!?それに左目を潰したって、何者ですか!?そりゃ因縁つけられますよ!?」

 

「けれど、ロイお兄様はとても優しいのよ?子供の頃はよく遊んでもらったわ」

 

部長が懐かしそうにそう言うが、本当に何者なんですか!?案外ムキムキのマッチョマンなのか!?

俺が勝手にロイさんの事を考えていると、部長が少し声のトーンを落としながら言った。

 

「けれど、ロイお兄様もその時に右目を潰されて、左肩にも深い傷をつけられてしまったの。百年以上たっても時々痛がっていたわ」

 

「それはリアスが叩くからでしょう?」

 

「ちょっと、ソーナ!?あなただって叩いていたでしょう!?」

 

「あなたのように加減なしに叩いたことはありません」

 

「いいえ、絶対に全力だったわ!」

 

「そんな事はありません!」

 

部長と会長が何か言い合いを始めてしまったが、おかげで少しだけ場の空気が和んだ気がする。

いまだに口論を続けているお二人は、俺たちの視線に気がついたのか、同時に咳払いをして話を戻した。

 

「それで、ロイお兄様は行方不明なの。ある任務中に消息を絶ってしまったらしいわ」

 

行方不明。コカビエルはそのロイさんを誘きだすためにこの町に来たってことなのか?

 

「その、すいません……」

 

俺は振ってはいけない話題かもしれないと思い、部長に謝るが、部長は笑みを浮かべた。

 

「いいのよ。ロイお兄様はきっと生きているわ。あの時、約束したもの………」

 

再び懐かしむように言う部長。これ以上は踏み込まないほうがいいかもしれない。

俺はそう判断して、「ありがとうございました」と言って話題を終了させる。

それを確認した部長の『女王(クイーン)』である姫島朱乃副部長が部長に言った。

 

「この状況はサーゼクス様に打診しましたわ」

 

それを聞いた部長は頷く。

 

「ありがとう、朱乃。出来ればサーゼクスお兄様に迷惑はかけたくないのだけれどね………」

 

「ご理解していただきありがとうございます。サーゼクス様の加勢が到着するのは一時間後だそうです」

 

「一時間……。わかりました、その間、私たち生徒会は結界を張り続けてみせます」

 

会長の決意を聞き、部長も覚悟を決めた様子だ。

 

「………一時間ね。さて、私の下僕悪魔たち。これは死戦よ!それでも死ぬことは許さない!生きて帰ってあの学園に通うわよ、皆!」

 

『はい!』

 

部長同様に俺たちも覚悟を決め、気合いを込めた声で部長に答えた!

 

 

 

━━━━

 

 

 

俺━━ジャックは学園に結界を張る悪魔たちを監視していた。ジルの術式が完成したら即突入することになるだろう。

中で少し様子を見るかもしれないが、戦闘になることは間違いない。

俺は腕輪のボタンを押し、兄さんに連絡を取る。

 

『兄さん、これからリアスたちに加勢する。時間の猶予は?』

 

『あと一時間ほどだ。それが過ぎたらそちらに到着する予定になっている。それまでにタイミングを見て加勢してくれ』

 

『了解。まぁ、一時間も待っているなんて面倒だからな』

 

『リアスのこと、頼む』

 

『任せろ。こっちもリアスとの約束があるんでな』

 

そう返してボタンを再び押し、通信を終える。さて、あとはジルの術式完成を待つだけだ。

 

 

 

 

 

待つこと数分。

俺のインカムに通信が入る。

 

『リーダー、完成しました、今送ります』

 

その言葉が終わると共に俺の手元に魔方陣が描かれた紙切れが転送されてきた。俺はそれを懐にしまい、ジルに伝える。

 

「これからしばらく連絡は出来ない。脱出のタイミングになったらこっちから連絡するから、アリサにも言っておいてくれ」

 

『そのぐらい、自分で言っていただきたいのですが……わかりました』

 

それと同時に通信が切れる。

俺は結界に目を向けると、そこには監視していた髪にメッシュを入れた聖剣使いの女の子が悪魔たちと話し込んでいるところだった。

結界を張っている悪魔たちがそちらに注目しているうちに俺は跳躍して結界の上部から侵入、結界と体が当たる瞬間に紙切れが一瞬光り、結界を無効化してくれた。

俺はそのまま校舎の屋上に着地する。

俺は屋上の柵に手をかけて下を見ると、そこには破壊された体育館と思われるものと、その近くの校庭で三つの頭部を持つ犬━━ケルベロスと戦うリアスたちの姿が見てとれた。

それを確認すると次は上を見上げる。そこには、俺に気づいていないであろう宿敵(コカビエル)の姿。白濁した左目でリアスたちを見下している。

俺は気配を殺して奴の左側の校舎の屋上にいた。両目が見えていればコカビエルは俺に気づいただろうが、あいにく俺は奴の死角にいるわけだ。

俺がそれを確認して下に視線を戻すと、先ほどの聖剣使いが参戦していた。

茶髪の男子悪魔がリアスと黒髪ポニーテールの女子に触れると二人のオーラが一気に高まった!

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の能力、譲渡か!

あの籠手には高めた力を他人に渡せる能力があるらしい。

オーラを高めたリアスと黒髪女子悪魔がケルベロスを攻撃していくと、そこに金髪イケメン悪魔が参戦し、一気に攻勢に出ていく!

勢いのままケルベロスを全て屠ると、リアスが巨大な滅びの塊をコカビエルに向けて放った!

なかなかの大きさだが、まだまだ甘い………。

俺と同じ事を考えたのか、コカビエルはそれを片手で防ぎ、上空に受け流した。だが、奴の手からは煙が……。

コカビエルはそれを見て嬉しそうに笑うと、校庭の真ん中で発光現象が起こった。目を凝らしてみれば、そこには四本の聖剣が浮いていた。見ると、コカビエルが拍手をしているようだ。

俺が首をかしげていると、四本の聖剣が一つとなり青白い聖なるオーラを放ちはじめた。かつての戦争で折れた聖剣、エクスカリバー。それは七つに分けられ復元されたらしいが、そのうちの四本を元に戻したのか………。

俺が納得していると、コカビエルの声が聞こえてきた。

 

「これで術式が完成した。あと二十分もすればこの町は崩壊するだろう。解除したければ、俺を倒すしかないぞ?」

 

━━━ッ!

 

これは、リアスたちには荷が重いな。兄さんたちが到着するまであと五十分はある、間に合わない!

俺が少し焦り始めると、下では昼に見かけた神父が一つになったエクスカリバーでイケメン金髪悪魔と聖剣使いの女の子と対峙し、睨みあっていた。

すると、奥にいた初老の神父が謎の結晶をイケメン金髪悪魔に見せる。何かはわからないが、あの悪魔くんには何か思い入れがあるもののようだ。

初老の神父の言葉は聞き取れないが、実験とかなんとか言っているな。距離がありすぎて読唇術も使えない。

だが、イケメン金髪悪魔の迫力が増した気がする。怒りから生み出された魔力のオーラがイケメン悪魔くんの体を覆う。昔の俺を見ているようだ。

初老の神父は謎の結晶をイケメン金髪悪魔の足元に投げる。悪魔くんはそれを大事そうに手に取り、哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに撫でる。

悪魔くんが涙を流し始めると、その結晶から光が放たれ、校庭を包み込んでいく。上から見ると、まるで雪でも降っているかのようであり、優しい光が悪魔くんを囲んでいく。その光はやがて人の形となっていく。

何かはわからないが、あの悪魔くんにとっては大切な人たちなのだろう。

俺はそうとしかわからないが、突然俺の耳に聖歌が聞こえた。まるで、唯一の希望のように、生きる糧がこれしかないというように、例の悪魔くんも聖歌を口ずさんでいる。

俺が聞き入っていると、次は子供の声が聞こえてきた。

 

『僕らは、一人ではダメだった』

 

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど……』

 

『皆が集まれば、きっと大丈夫……』

 

聖歌は本来悪魔にダメージを与えるものだ、だが、苦しくはなかった。この学園に充満する様々な力のせいなのか、それはわからないが、とても温かいものだった。

俺は笑みを浮かべながらリアスの『騎士(ナイト)』を見る。

今の彼なら至れるだろう。神器(セイクリッド・ギア)は所有者の想いに応える。その想いが、願いが、この世界の(ことわり)にすら逆らうほどに転じた時、あれは起こる!

 

「━━━禁手(バランス・ブレイカー)

 

俺は無意識のうちにそう呟いていた。視線の先にいるリアスの騎士(ナイト)の手には、聖なるオーラと魔のオーラを放つ一本の剣が握られている。

どうやら、もう少し様子を見たほうが良さそうだ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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