では、どうぞ!
「『
コカビエルとの決着をつけた俺━━ジャックは俺を見下ろす白い
コカビエルはピクリと動かないが、下の術式はまだ動いているようだ。やはり、とどめを指さないとダメか。だが………。
俺はその隙を探すが、あの『
ゆっくりと降下してくる『
俺としては戦いたくない。全快ならともかく、少し疲れているこのタイミングで仕掛けられたら少々辛いからな。
俺の頬に嫌な汗が流れていることを自覚しながら、俺は言う。
「その鎧、
俺の質問に答えることなく、そいつは俺の視界から消えた!すぐさまオーラで場所を探る。
━━━後ろだな!
俺は振り向きながら銃剣を振り、背後を取ろうとした『
俺の銃剣の刃と籠手が火花を散らすが、『
俺は咄嗟にバク宙のようにして避けるが、その余波でフードが外れてしまった!
着地を決めてフードを戻そうとするが、『
俺はそれを銃剣をクロスして受けるが、拳の勢いのまま吹き飛ばされ、そのまま校舎に突っ込んでしまった!
てか、このまま隠れていよう。このまま続けたら殺されちまう。あいつ、俺やコカビエルよりも強いぞ。これは、面倒なことになったな。
俺は溜め息を吐きながら気配を消し、近くの物陰に身を潜めた。
━━━━
俺━━兵藤一誠は困惑していた。
コカビエルが倒れたと思ったら何か変な奴が降りてきて、コカビエルを倒してくれたヒトを殴り飛ばしたのか?まったく何なんだよ!
俺たちが白い奴を警戒していると、そいつが言った。
「さて、コカビエルは倒れてしまっている、か。出来れば俺が戦いたかったが、まあいい」
そう言いながらコカビエルのもとまで歩き、膝をついてコカビエルに軽く手を触れる。
「念のためだ。恨むなよ?と言っても、聞こえていないか」
『Divide!』
白い奴から突然音声が聞こえると、ただですら消えかけていたコカビエルのオーラが感じ取れなくなった。
まぁ、今の俺じゃ、大きな変化じゃないとわからないけどな。
そのおかげなのか、校庭に張られていた魔方陣も消失したようだ。これで、この町が破壊されることはなくなった。
白い奴はコカビエルを肩に担ぐ。
「さて、あとはフリードもか。聞きださないといけないこともあるからな」
倒れこみフリードのもとにも足を運び、そのまま腕に抱える。
白い奴は光の翼を展開して空に飛び立とうとする。すると、俺の籠手の宝玉から勝手に光が放たれ、俺には聞きなれた声が発せられた。
『無視か、白いの』
ドライグが何かを知っているように白い奴に声をかけると、向こうの鎧の宝玉からも光が放たれる。
『起きていたか、赤いの』
『せっかく出会ったのにこの状況ではな』
『いいさ、いずれは「戦う運命」だ。こういうこともある』
『しかし、白いの。以前のような敵意を感じられないが?』
『赤いの、それはそちらもだろう』
『お互い、戦い以外の興味対象があるということか』
『そういうことだ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くはないだろう?』
『それもまた一興か。じゃあな』
お、おう。ドライグが何かわからないが、俺にとって重要そうな話をしている。話についていけないが、何か戦う運命とか何とか言ってなかったか?
俺が疑問を感じながら突っ立っていると、白い奴が俺に言った。
「さて、名乗っておこうか。我が名は『アルビオン』。いずれキミと戦う宿敵さ。覚えておいてくれ」
白い奴、もといアルビオンはそう言うと白い閃光となって空に飛びったっていった………。
な、何か訳もわからないまま始まって終わった気がする……。
回りを見ると、皆一様に疲れた表情になっているが、髪にメッシュを入れた女子━━ゼノヴィアとアーシア、木場は衝撃を受けたような表情になった。
「コカビエルの言葉、本当なのか?
ゼノヴィアが激しく動揺しながらそう漏らした。
そうだ!コカビエルの野郎、魔王と神は死んだって言っていたんだった!状況が変わりすぎて気にする余裕がなかった!
遅れて俺たちにも困惑が広がり始めると、崩れた校舎の壁から誰かが出てくる。
見てみると、先ほど吹っ飛ばされたローブの男性だった。ちらりと黒髪なのが見えたが、顔はしっかり確認できなかった。
ローブの男性は懐からタバコ箱を取り出し、その内の一本を口にくわえて魔力で火をつける。って、学校でタバコ吸うんじゃねぇ!
俺がその言葉を発しようとすると、それを遮るようにゼノヴィアがその男性に詰め寄り、そのまま胸ぐらを掴む。
「おまえ、さっきの話は本当なのか!?私が信じてきた
冷静さを欠いているゼノヴィアに、ローブの男性は紫煙がゼノヴィアにかからないように吐き出すと、隠そうともせずに断言した。
「ああ、聖書の神はとっくの昔に死んでる」
「━━━ッ!」
ゼノヴィアは目を見開いて驚愕の表情を浮かべると、そのまま膝から崩れ落ちた。
「嘘だ………嘘だ………」
そんなゼノヴィアを見て、ローブの男性はタバコをくわえ直し、俺たちには近づきながら声を掛けてきた。
「まあ、何だ。とりあえず無事で何よりだ。って、大丈夫か、そこのお二人さん」
男性の声を聞いて俺はアーシアと木場に目を向けた。二人もゼノヴィアと同じように狼狽え、瞳が揺らいでいる。アーシアは全身を震わせるほどの衝撃を受けてしまっている。
ローブの男性はアーシアと木場、ゼノヴィアを一瞥すると、俺たちに言った。
「戦争と二天龍との戦いで魔王様だけでなく、聖書の神も死んじまった。もしかしたら、その聖魔剣もそのせいで生まれたのかもな………」
木場はその言葉で手に握る聖魔剣を見つめる。神様もいないからあの剣が生まれたのか………?
俺たちの中に大きな衝撃が生まれているが、ローブの男性はまだ続ける。
「まあ、
ローブの男性はそう言いながらゼノヴィアに目を向ける。俺たちに背を向けるように膝をつきながら俯き、表情を見ることは出来ない。
だが、ゼノヴィアは覇気のない声で答えた。
「どうする?だと………?どうしようもないさ………。今まで信じてきたものが、なかったんだぞ………?これから何を信じて生きていけば………」
戦っている最中や初めて会ったときからは想像出来ないほど弱々しい声だった。俺たちがかける言葉を探していると、ローブの男性はタバコを携帯灰皿に押し込み、ゼノヴィアの正面にまわった。
「お嬢ちゃん、顔を上げな」
「……………」
男性の言葉に少しだけ顔を上げるゼノヴィア。ここからだと表情は見えないが、涙を浮かべていることだろう。
男性は片膝をつき、ゼノヴィアと視線を合わせると言った。
「信じるものはこれから探していけばいい。おまえは若いからな、まだどうにかなるだろ」
男性はそう言うが、ゼノヴィアは何も返さない。今の言葉をただの他人事だと流されてしまったらそれまでだが、今のゼノヴィアにはそれは出来ないだろう。
「信じるものを探す、か。確かに、今の私にはうってつけの罰かもしれないな………」
「罰って、おまえな。見聞を広めるのも大事なことだ。おまえは世界を見て回ってこい。それぐらいなら出来るだろ」
「ふっ。それも悪くない、かもな」
ゼノヴィアの言葉に少しだけ生気が戻ったような気がする。ローブの男性はフードの下で笑みを浮かべると立ち上がり、こちらに目を向けた。
「おまえらもよく頑張ったな。そんじゃ、俺は行くぜ」
そう言うとローブの男性は踵を返して歩きだそうとする。すると、その男性を部長が呼び止めた。
「待って!………ください」
「何だ?」
男性は頭だけこちらを向く。すると、部長は姿勢を正すと男性に頭を下げた。
「助けていただき、ありがとうございました。このお礼は必ず………」
「…………」
ローブの男性は黙ってこちらを向くと俺の視界から消えた!転移したわけでもなく、ただ高速で移動したのか!?
俺が驚愕していると、気配を感じて部長のほうを向く。そこには━━━、
「………………」
黙って部長の頭を撫でるローブの男性の姿が。
すごい優しい笑みを浮かべているように見えるが、部長と何か関係が?
部長もそのヒトに黙って撫でられており、抵抗することもない。
男性は部長を撫でるのを止めると、フードの下で再び笑った。
「ま、とりあえずはこれでいいさ。礼は出世払いで頼む」
男性はそう言うと再び消える。俺たちが周囲を見回していると、学校の屋上からその男性の声が聞こえてきた。
「さて、また会おう!」
男性が右手を上げながらそう叫ぶと、転移の光に包まれて消えていった。
何か、嵐のようなヒトだったな。妙にフレンドリーでいて、大人びているというか………。
俺たちの町で突然始まった戦いは、突然現れた二人の乱入者の力で全員無事に終了したのだった。
━━━━
俺、ジャックはアジトのベンチで座り込んでいた。さすがに今回の戦闘は疲れた。さすがはコカビエルだが、あの『
俺がそんなことを思っていると、アジトに入ってくる数人の悪魔。クリスから聞いた別任務の連中だろう。
「おまえら、何をしにきたんだ?」
前を通りすぎようとした悪魔に訊くと、
「魔王様から直々の極秘任務です。いくらあなたであっても、言うことはできません」
「そうか。まあ、成功はしたんだろう?」
「はい。問題なく」
悪魔はそう言うと足早に転移室に入っていった。
「隊長!お怪我はありませんか?ありましたら私に言ってください!」
悪魔たちがいなくなったことを見計らって、元気そうな様子のアリサが俺に駆け寄ってくる。指には緑色の指輪がはまっている。
「ハーフの悪魔にも
「そうですか?私はありがたいですけどね。怪我で病院のお世話にならないのは大きいです」
アリサはそう言いながら指輪を撫でる。アリサは人間と悪魔のハーフだ。だから
旧魔王派は純血主義者がほとんどのため、前にいた部隊では除け者にされていたようで、俺の隊に来た頃はだいぶ暗いやつだった。
俺の隊にそんなやつはおらず、むしろ人手不足だったのでだいぶ助かっているしかわいがっているのが本音だ。
俺はアリサを手招きする。ニコニコ顔で近づいてきたアリサに俺もニコニコ顔で返し、頭にアイアンクローをくらわせる!
「ギャァァァァァァァッ!」
「覚えておけと言ったはずだが?」
「そ、そうでしたぁぁぁぁぁっ!」
俺がアリサにアイアンクローをかましているのを見ながら、クリスが豪快に笑う。
「アハハハハッ!アリサ、おまえ、バカだなぁ!」
「ク、クリスさん!笑ってないで助けてくださいぃぃぃいたたたたっ!」
「だ、そうですが、リーダー。どうしますか?」
「救援要請は却下。おまえは部屋で休め」
「了解!それでは、お疲れさまでした!」
「お疲れさん」
「クリスさぁぁぁぁんっ!」
泣きじゃくるアリサを無視してクリスは部屋に戻っていく。あいつ、パッと見た感じはがさつそうなのに、結構しっかりしてるからな。俺としては理想の部下だ。
クリスが部屋に戻っていったことを確認すると、本を読んでいたジルが本を閉じて口を開く。
「それでは、私も失礼します。リーダー、あまりやり過ぎないでくださいね」
「わかってるさ。加減はしてる」
「どこがですかぁぁぁぁ!?」
「では、お疲れさまでした」
「お疲れさん」
「ジルさぁぁぁぁんっ!見捨てないでぇぇぇぇ!」
アリサの叫びは虚しくアジトに響き渡り、ジルは部屋に戻っていく。クリスとジルが部屋に戻ったことを確認すると、俺はアリサを解放する。
「あぅぅぅ……………」
アリサは頭を押さえながらうずくまるが、俺はそんなアリサに言う。
「で、アリサ。一つ頼まれてくれるか?」
「はい?」
涙目になりながら顔を上げるアリサ。俺は彼女の前で自分の上着に手をかける。するとアリサは顔を真っ赤にしながら目線をそらす。
「ちょ!?た、隊長!わ、私………!」
「どうかしたのか?」
俺は構わずに上着をめくり、腹を見せる。腹には大きなアザが出来てしまっている。
『
「アリサ、治療頼む。いいのもらっちまった」
「え?ああ!治療ですね!わかりました!」
アリサが照れ隠しのように手早く治療を開始する。アリサの指輪から放たれる緑色の光が俺の患部に当たる。その光は暖かいもので、みるみる痛みが引いていく。
痛みが完全に引くと俺は上着をもとに戻し、アリサに礼を言う。
「ありがとうな、おかげで痛みは引いた」
「は、はい!いつでも言ってください!何でも治してみせますから!」
「そうか、ならまた何かあったら頼むかな。今日は休め。また忙しくなるだろうからな」
「わかりました!お疲れさまでしたー!」
アリサは笑顔になりながら部屋に戻っていく。とりあえず、皆戻ったか。
俺は溜め息を吐き、タバコを取り出して口にくわえる。指先に火を起こしてタバコに着火し、紫煙を吐き出した。
そのうち、クリスとアリサを見捨てるか、裏切ることになるのか………。仕事とはいえ、少々辛いかもな………。
俺が再び紫煙を吐き出すと、ここに近づいてくる気配が一つ。俺はそちらを向きながらその誰かに言う。
「ジル、どうかしたか?」
「いいや、考え事をしていそうだったからな。見にきただけだ」
「そうか。顔に出てたか?」
「私ならわかる程度には、な」
ジルだ。部下としてではなく、同僚として声をかけていることがわかる。
ジルは俺の隣に腰を降ろし、言葉を続けた。
「あの二人の事を考えていたのだろう?私も最近考えてしまうからな………」
「ああ。あいつらを見殺しには出来ないかもしれん」
「確かに、あの二人は気がいいからな。言ってしまえば、殺すには惜しい人材だ」
「……何が言いたい」
俺が訊くと、ジルは妖艶な笑みを浮かべて俺の瞳を見つめてくる。
「全ての決着がつくとき、あの二人を『
「なるほど、それはいいかもな………」
俺はそう返しながら紫煙を吐き出す。ジルは俺よりも仕事に馴れているな。誰が送り込んだのやら………。
俺がそれを考えているとジルは立ち上がり、部下としての口調で俺に言う。
「リーダー、もう時間も時間ですから、お休みになってください」
「ああ、そうする」
俺の返事を聞いてジルは部屋に戻っていき、俺はそれを見送りながらタバコを携帯灰皿に押し込み、部屋を目指して歩き出す。
ジルの提案、それなら二人を助けられるかもしれないが、その前に俺が死んだらそうも言っていられないか……。
俺は自分の部屋のベッドに倒れるように寝転び、それを考えるのは後にしようと思い、眠気に身を任せて目を閉じた………。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。