グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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停止教室のヴァンパイア
mission01 行動開始


 

「暑いぃぃぃ~」

 

アジトの日陰でだらしなく伸びてアリサがぼやく。格好も旧魔王派規定のローブではなく、とてもラフなものになっており、大胆に覗かせる太ももが眩しい。

そう思う俺もズボンこそシャカパンだが、上は紺色のタンクトップだ。

コカビエルとの決着からしばらく経ち、季節は夏の始めとなり、時刻も昼過ぎ。この時期の俺たちは少し涼しい格好を心がけている。

冥界ならもう少しマシなんだろうが、生憎ここは人間界、季節は悪魔でもどうしようもない。

奥から出てきたジルは、間抜けに伸びるアリサを見て溜め息を吐き、その隣に腰をかけると手元に魔方陣を展開、そこから冷気を放ち始める。

 

「あ~~~、気持ちいい~~~」

 

表情を緩めながらアリサはそう言うが、ジルは特に気にすることなく俺に訊いてくる。

 

「リーダー、その傷は消さないのですか?」

 

「あ?ああ、これか………」

 

俺は左肩の傷に軽く触れながら、少し考える。

この傷はコカビエルとの因縁の証みたいなものだ。だが、そのコカビエルとの決着はついた。もう消してしまっても問題はないか………。

 

「そうだな。まあ、タイミングを見て消すさ」

 

俺が苦笑しながら返すと、ジルは「そうですか」と返して器用に片手で本を読み始める。

クリスは今頃体を動かしているのだろう。あいつは魔力を持ちながら体も鍛える珍しい悪魔だ。俺も時々付き合っている。

夏の始めは毎年こんな感じだ。その年にどんな大きな作戦があろうと気にせず、俺たちはこれを貫き通してきた。

俺はアリサとジルを一瞥すると、先日の連絡を思い出した。

 

 

 

 

 

『ジャック、あなたたちの思惑通り、三竦みのトップ会談が行われるようです』

 

「そうですか、それでその日時はいつ頃です?」

 

『もう少し先ですが、いつでも動けるように準備だけは怠らないようにしなさい。あなたたちはその町に潜伏する唯一の部隊なのですから』

 

「わかっています。こちらはいつでも大丈夫ですので、連絡をお待ちしております」

 

『ええ、では、また連絡します』

 

「了解しました」

 

 

 

 

 

何て事があったが、俺たちは気にすることもなくのんびりと過ごしている。

俺がボケッと座っていると、外から汗だくでクリスが戻ってくる。相変わらず、すごい体しているな。二メートル近い身長で筋肉隆々、道でぶつかったら無意識に謝りそうだ。

俺が視線を向けたことに気づいたのか、クリスが俺に笑みを見せながら近づいてくる。

 

「リーダー、どうですか?外で動くのも気分がいいですよ?」

 

「いや、辞めとく。いい汗かけそうだが、今はそんな気分じゃない。てか、こっちにくるな!暑苦しい!」

 

「な、なんですと!?リーダーにはこの汗の素晴らしさがわかると思っていたのに!」

 

「わからなくはないが、シャワーを浴びてこい!その方が気分もいいだろ!」

 

「それもそうですね。シャワー浴びてきます!」

 

なぜか俺の言葉にショックを受けた様子だったが、クリスは特に引きずる様子もなくシャワー室に走っていく。あいつ、本当に暑さを知らないのか?

俺が首をかしげると、ジルが言ってくる。

 

「本部からの連絡も最近ありませんね」

 

「確かに、ギリギリまで連絡しないつもりなのかもしれないな」

 

俺とジルが真剣な話をしていると、アリサが口を挟んでくる。

 

「本部のヒトたちは、私たちに裏切り者がいると思っているんですかね?結構重要拠点ですよ?ここ」

 

「「………………」」

 

アリサの言葉に俺とジルは一瞬黙りこむが、すぐに口を開く。

 

「まぁ、警戒しておいて損はないだろう。成功するかどうかは別として、次の作戦はかなり重要なものになることは間違いない」

 

「そうですね。下手をすれば、私たちが終わるかもしれません」

 

「だ、大丈夫………ですよね?」

 

俺とジルの言葉に不安そうになるアリサ。ジルは微笑みながらアリサを優しく撫でる。

「大丈夫よ。最悪の場合に備えて逃げる準備もしておくから」

 

「あはは………、抜かりありませんね………」

 

アリサの表情が少しだけいつものに戻ると、俺は最近起こった出来事を確認する。

 

「それにしても、最近この町の動きは凄まじいな。堕天使総督アザゼルにセラフのミカエル、相当入り込んで来てるぞ」

 

俺の言葉にジルが続く。

 

「リアス・グレモリーの眷族も増えたようです。例のデュランダル使い、そしてハーフ吸血鬼の少女、この吸血鬼のほうの神器(セイクリッド・ギア)はなかなか面白いものですね」

 

「視界に映ったモノの時間を止める、だったか。あまり使えなさそうだがな」

 

「リーダーなら、写らない速度で動けますからね」

 

「ああ」

 

俺は頷くが、心の中で溜め息を吐いた。

あのデュランダル使いの女子、悪魔に転生したのだ。見聞を広めろとは言ったが、まさか人間辞めるとは………。

俺のそれを知らないアリサが口を開く。

 

「でもですよ?万が一映ってしまったら、完全にアウトですよね?」

 

神器(セイクリッド・ギア)程度で止められるほど俺は弱くないがな」

 

「それもそうですね」

 

アリサの言葉も一理あるが、映らなければいいのだ。映ってしまったら、その時はその時だな。

俺がそんな事を考えていると、俺たちの前に連絡用魔方陣が展開された!

 

「「「ッ!」」」

 

俺たちは素早く立ち上がり姿勢を正す。

それと同時に音声だけであるがカテレアからの指令が飛ばされてきた。

 

『本日、三竦みのトップ会談が行われます。あなたたちはそこの襲撃に参加しなさい。私もこれからそちらに向かいます。到着次第詳しい作戦を伝えます。いつでも行けるように準備を整えておきなさい!』

 

「「「ハッ!」」」

 

俺たちは応答すると連絡用魔方陣が消える。カテレア自ら出てくるとはな………意外だ。

俺はジルに目で合図を送り、ジルは頷くと腕輪に手を伸ばす。アリサが怪しまないように俺は指示を出す。

 

「アリサ、装備の点検と転移魔方陣に魔力流しておけ。ジルは結界に穴がないか最終確認だ。クリス!聞こえてるか!」

 

「はい!お待たせしました!」

 

俺が呼ぶと髪を湿らせたままのクリスが奥から戻ってくる。俺は頷いてクリスに伝える。

 

「カテレア様がここにくる。失礼のないように身だしなみを整えておけ。二人もだぞ!いいな!」

 

「「「わかりました!」」」

 

「よし、行け!」

 

俺たちは持ち場に別れ、それぞれの準備に入る。俺はローブと銃剣を取りに、アリサは転移魔方陣の準備に、ジルは結界の確認に、クリスは着替えと武装を取りに。

それぞれがバラバラに散り、装備を整えた俺はジルに声をかける。

 

「ジル、どうだ?」

 

「結界も問題ありません。後は何事もないと祈るだけです」

 

「了解だ。結界の確認が済んだらおまえも着替えてこい。流石にこの格好だと怒られるからな」

 

「わかっていますよ」

 

ジルの連絡は既に済んでいるようだ。後は、兄さんたちが警戒する事、俺とジルはギリギリになったらもう一度連絡するだけだな。

俺は深く息を吐き、カテレア到着を汗を流しながら待ち続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜中。アジトの転移室。

俺たちは規定のローブに身を包み、転移魔方陣の前に待機していた。

 

「わ、私、カテレア様に会うのは初めてです!」

 

少し興奮した様子のアリサに俺は言う。

 

「俺は隊長として時々会うが、まぁ、下手な事を言わなければ問題ないさ」

 

俺がそういい終えると転移魔方陣が光輝き、一気に弾ける。光が止むとそこにいたのは、

 

「ジャック、お久しぶりですね」

 

妖艶な笑みを浮かべる女性。胸元を大きく開け、深いスリットの入ったドレスに身を包んでいる。

俺たち四人は跪き、カテレアに頭を下げる。俺は頭を下げながら、隊を代表して言う。

 

「カテレア様、お待ちしておりました。我々の準備は完了しております」

 

「ええ、そのようですね。頭をおあげなさい」

 

俺たちはその言葉を受けて顔をあげてカテレアと視線を合わせる。

 

「では、早速作戦を説明しましょう」

 

カテレアがそう言うと再び転移魔方陣が起動し、そこから黒いローブに身を包んだ大量の人間━━魔術師━━が現れた。

カテレアはそれを確認すると俺たちに言ってきた。

 

「私たちは『禍の団(カオス・ブリゲード)』に協力することに決めました。これはそれを憎き新魔王派に伝える場でもあります。彼らは今回の協力者である魔術師たちです。これからも転移してくるので、誰か一人はここに残ってください」

 

「ジル、おまえはここで魔方陣の制御をしてくれ」

 

「わかりました、リーダー」

 

俺はジルと別れることにした。下手に一緒に行ってどっちも戦死となったら潜入した意味がなくなるからだ。

 

「残念ながら、ここにいる魔術師にも、あなたたちにも細かな作戦を伝えることは出来ません。理由はわかりますね?」

 

カテレアのわざとらしい質問に俺は頷き、あえて口にする。

 

「裏切り者を見つけることが出来ていない以上、仕方ありません。我々は我々の仕事に集中します」

 

「わかっているのなら、いいです。一人は万が一に備えてここの防御をお願いします」

 

「クリス、頼む」

 

「わかりました!任せてください!」

 

防御はクリスの仕事だ。一応トラップは仕掛けてあるが、完璧な防御なんてものは絶対にあり得ない。様々な状況に素早く対応出来るようにしておかなければならない。

 

「さて、ではジャックともう一人は私と共にこの町の学園を目指します。ジャックと私は突入しますが、あなたは万が一に備えて退却用の転移魔方陣をお願いします」

 

「わ、わかりました!お任せください!」

 

アリサは緊張しながらもカテレアに返す。こいつが俺とカテレアの生命線ってのは、少々怖いがな。

俺は内心そう思いながら頷き、カテレアに訊く。

 

「作戦は今にでも始められますが、いかがなさいますか?」

 

「ええ、すぐに始めましょう。移動しますよ!」

 

「「ハッ!」」

 

俺とアリサはカテレアに返すと、歩き出したカテレアの後ろについて歩き始める。同時にジルに目で合図し、今の情報を伝えてもらうように頼む。ジルは小さく頷き、魔方陣に意識を戻した。

俺の横を歩くアリサの表情は固いが、瞳にはやる気が満ちている。空回りしなければいいが………。

俺は様々な心配をしながらも、三竦みトップ会談への襲撃作戦を開始するために行動を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 




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