あれから三日後。
俺たちは本部の転移室でシャルバから作戦を聞かされていた。
「これから作戦を始める。分担は━━」
作戦をざっくり説明すると、まずディオドラとリアスがフィールドに転移してきたら俺の隊を含めた数十人がそこに転移、そのまま攻撃。
他の隊は他の場所でゲームを観戦に来ていた神話のトップ陣を攻撃。
そして、あるタイミングで全員で一旦離脱するらしいが、そのタイミングは実際にそれが起こるときに伝えるとのこと。
いつものことだが、ざっくりとしすぎだな。兄さんに伝えることも特にないぞ…………。
俺が小さく溜め息を吐くと、シャルバが言う。
「では、作戦を始める!諸君の奮闘を期待する!」
『ハッ!』
俺たちは勢いよく返事をすると、転移用魔方陣が起動し光を放ち始める。
俺はちらりとジルを見て小さく頷くと、ジルも微笑しながら頷き返す。
俺とジルは打ち合わせ通りにクリスとアリサを新魔王派に引き込む、もしくは投降させる。作戦中にそんな隙があるかわからないけどな。
俺がそんな事を考えているうちに俺たちは魔方陣の光に包まれ、戦場に転移した。
…………で、
「こ、これはちょっとヤバくないですか!?」
「リーダー、どうします!殺されますよ!?」
俺の耳にアリサとクリスの動揺の声が聞こえてくる。それと同時に爆音なんかも聞こえてきている。
俺たちは転移して早々に殺されかけていた。
俺たちが相手をしているのは、北欧神話の主神━━オーディンだ。それが強いのなんのって、一撃目で攻撃隊の半分くらい消し飛んだからな!
一応、俺と俺の隊のメンバーの特徴は直前に伝えたから大丈夫だとは思いたいが、多分知らずに攻撃してきているだろ!
「とりあえず、ここには攻撃が来ていない。流石の主神でも魔法力は無限じゃない筈だ。バテたら一気に仕掛けるぞ」
「「了解!」」
「了解です!」
ジルとクリス、アリサはいつもの通りに返事をしてきた。俺は物陰から顔を出す。
オーディンが攻撃しているのは俺たち四人がいない方向ばかりだ。先程は知らずにやっていると思ったが、案外俺たちの位置はわかっているのかもしれない。
俺がそう思い始めると、オーディンの背後にある神殿から天に向かって光の柱が飛び出してきた!その柱はゆっくりと倒れていき、当たった全てのものを蒸発させていく………。
聖なるオーラを感じたところを見ると、聖剣の一撃、だったらあのデュランダル使いだろう。
俺がそう目星をつけると、俺の耳元に連絡用の魔方陣が展開された。警戒しながら耳を傾けると、そこから聞こえてきたのはシャルバの声だ。
『ジャック、聞こえているか?』
「はい。少々厳しい状況ですが、無事です」
『ならば、貴様は隊から離れて神殿の奥に来い。そこで私と共にリアス・グレモリーを討つ!』
「隊と別れて、ですか?」
『ああ、貴様だけで来るんだ。隊の連中はオーディンに特攻させろ。目的達成のために犠牲はつきものだろう?』
「………わかりました」
俺が返事をすると連絡用魔方陣が消える。そして、真横でそれを聞いていたアリサとクリスの表情が暗くなっており、ジルだけは呆れと侮蔑を感じる表情になっていた。まあ、こいつらの忠誠心を折るためにわざと聞かせたんだがな。
俺は嘆息しながら三人に指示を出す。
「聞いた通りだ。俺はこれからシャルバ様の援護に向かう。おまえらは━━━」
俺は三人の顔を見て、安心させるように笑みを浮かべて言葉を続ける。
「何としても生き残れ。特攻はしなくていい」
「え?」
アリサは意外そうに声を漏らす。基本的に命令に忠実な俺が命令を無視したのだ、きっと驚いているのだろう。
「だから、何としても生き残れ。ここで死んでも意味はない」
俺はそう言うと翼を展開する。あとは飛び立って神殿に向かうだけだ。
俺はジルを見ながら言う。
「ジル、例のやつ、頼んだぞ」
「ええ、任せてください。二人は死なせませんよ」
「おまえが言うなら大丈夫だろうな。アリサ、クリス、おまえらはジルの指示に従え。最悪、投降すれば死なずには済むさ………」
「た、隊長はどうするんですか!?シャルバ様の近くでは、投降することは━━━」
「ああ、
アリサの声を遮るように俺は言った。アリサは泣きそうになるが、俺は構わずに翼を動かして体を浮かせる。
「それじゃ、死ぬなよ!」
「隊長!」
アリサの叫びを無視して俺は物陰から飛び出した!あとはジルに任せるしかない。俺はこっちを終わらせる!
オーディンの攻撃に巻き込まれないように飛んだため、少し時間がかかったが、俺は神殿にたどり着いた。入れそうな場所を探すが、なかなか見つからないな。
俺は神殿の外壁に二丁の銃剣の銃口を向け、同時に射撃する!
二つの銃口から放たれた魔力弾は絡み合うように直進し、一つの魔力弾になると外壁に直撃、大爆発した!外壁には大きめの穴が開いている。
俺はその穴から神殿に飛び込むと━━━、
「きゅ、旧魔王派の増援か!?た、助けてくれ!」
無様に床に仰向けに倒れこむ青年━━ディオドラはふらつきながら立ち上がり、俺に懇願してくる。
部屋を見てみると、リアスとその眷族たちもいた。ディオドラは俺の登場に喜んでいるが、リアスたちは逆に警戒をしながら俺を見てくる。
「遅かったな、ジャック。ちょうど一人消した所だ」
俺の登場に驚かないのはなぜか宙に浮いているシャルバだけだ。余裕そうな笑みを浮かべて俺にそう言ってきた。待てよ、一人消したってことは、リアスの眷属が誰か殺られたのか!?
俺は驚愕を表に出さないようにシャルバに訊く。
「忌まわしい魔王の血族が二人、どちらを先に?」
「ディオドラからだ。もう用はない」
「わかりました」
俺は銃口をゆっくりとディオドラに向け、
「え?」
引き金を引いた。銃口から吐き出された魔力弾はまっすぐディオドラの眉間に突き刺さり、直撃を受けたディオドラは床に崩れ落ちる。
「哀れだな。おまえも俺たちの敵、新魔王の血族だろう」
俺はそう吐き捨てた。あとは、シャルバを倒してリアスたちを逃がすだけだが…………。
「さて、サーゼクスの妹君。貴公にも死んでいただく。理由は、もうわかるな?」
シャルバが冷たく言い放つ。殺らせるつもりはないが、ギリギリまでリアスたちの敵を演じないとな。
「貴公を殺したところで作戦は終了。結果から言って今回は私たちの負けだ。想定外のことが起こりすぎたな………。だが、失敗は生かしてこそだ。クルゼレイは死んだが問題ない」
クルゼレイってのは旧アスモデウスの血族だ。なんか、知らないうちに死んでいたようだ。誰が殺したかはわからないがな。
「直接現魔王に決闘も申し込まずにその血族から殺すなんて卑劣だわ!」
「それでいい。まずは現魔王の家族から殺す。絶望を与えなければ意味はない」
「━━外道っ!何よりもアーシアを殺した罪!絶対に許されないわッ!」
リアスは激昂しながら紅のオーラを迸られる!が、兄からしてみればまだまだかわいいものだ。母さんとか兄さんとか、マジで怖いからな。
「アーシア?アーシア?」
赤い鎧を纏っている赤龍帝の少年がふらふらと歩きながら誰かを探し始める。
あいつ、いつの間にか
「アーシア?どこに行ったんだよ?ほら、帰るぞ?家に帰るんだ……」
何か、見てられないぞ。そのアーシアって子を相当かわいがっていたようだ。
「………許さない。許さないッ!斬るっ!斬り殺してやるっ!」
デュランダル使いがもう一本の聖剣も使った二刀流でシャルバに斬りかかる!まったく、仕事しますかね!
俺はそれに素早く反応してシャルバの前に行くと、その二刀を銃剣の刃で受け止めた!そしてその二刀を弾き飛ばすと腹に蹴りをくらわせる!
ドオオンッ!
床に勢いよく叩きつけられるデュランダル使い。二本の聖剣も手元から離れて床に突き刺さった。
「………アーシアを返せ………。アーシアは……私の……友達なんだ………」
それでも立ち上がり、聖剣を取りに行こうとする。俺は銃口を聖剣に向けて発砲。聖剣をさらに遠くに弾き飛ばす。
俺がそれを済ませると、シャルバが赤龍帝の少年に向かって言った。
「下劣なる転生悪魔と汚物同然のドラゴン。まったくもって、グレモリーの姫君は趣味が悪い。そこの赤い汚物。あの娘は次元の彼方に消えていった。すでに体は消失しているだろう。━━死んだ、ということだ」
それを聞いた赤龍帝の少年はシャルバに視線を向ける。無表情で、じっとシャルバを見続けている様は不気味にも見える。
『リアス・グレモリー、いますぐこの場を離れろ。死にたくなければ退去したほうがいい』
『そこの悪魔、シャルバといったか?』
赤龍帝の少年はおぼつかない足取りでこちらに向かってくる。
『━━おまえは』
俺たちのほぼ真下に来たとき、心身を底冷えさせるような無感情の『
『選択を間違えた』
その時、少年から血のような赤いオーラが解き放たれた!神殿内全域を照らす勢いで放たれるそれは、かなり危険なものだということはすぐにわかる。
俺とシャルバが警戒を最大にしていると、少年の口から呪詛のような呪文が発せられる。
その声は少年のものだけではない、老若男女、様々な声が混じった不気味なものだ。
『我、目覚めるは……』
〔始まったよ〕〔始まってしまうのね〕
『覇の理を神より奪いし二天龍なり……』
〔いつだってそうでした〕〔そうじゃな、いつだってそうじゃった〕
『無限を嗤い、夢幻を憂う……』
〔世界が求めるのは〕〔世界が否定するのは〕
『我、赤き龍の覇王と成りて……』
〔いつだって力でした〕〔いつだって愛だった〕
【何度でも滅びを選択するのだな!】
少年の鎧に鋭角なフォルムが増えていき、巨大な翼まで生え始めた。両手足から爪と思われるものが伸び、兜からは角まで生える。まるで、ドラゴンだ…………。
全身の宝玉から絶叫のような声が発せられた!
「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう━━」」」
『
ゴオオオオオオオオ………。
少年の放つオーラで近くの床が、柱が、壁が、天井が破壊されていく!これは、ヤバイ!
「ぐぎゃああああああああああああッッ!」
人の言葉ではない、まるで獣のような叫びを発し、その場で四つん這いになると翼を羽ばたかせてる。そして、俺たちの視界から消えた!
俺はとっさにその場を飛び退くと、
「ぬうううううっ!」
シャルバの悲鳴が聞こえてくる。少年がシャルバの肩に食らいついていた!兜が変形して口のようなものが生まれているようだ。
俺はちらりとリアスたちを見ながら言う。
「おまえら、さっさと逃げろ。巻き込まれたら死ぬぞ」
「え?」
俺の言葉にリアスは少し驚きながら声を漏らしたが、俺はシャルバの方に目を向ける。
「ぐおっ!」
シャルバの苦痛の声。ちょうど右腕を切断されたらしく、肩の肉を食いちぎられる形で解放されていた。俺は反撃しようとするシャルバを無理やり回収して先ほど開けた穴から飛び出して逃げる!
「ジャック!?」
「あれは危険です!一旦距離を取ります!」
俺たちを追って赤龍帝が神殿から飛び出してきた。これでリアスたちは安全だな。俺は知らないが、リアスが無事なら今はそれで構わない!
俺は地面をスライドしながら着地、シャルバを下ろして二人で赤龍帝を睨む。すると、赤龍帝が口を開きそこからレーザーを発射してきた!
「「チッ!」」
俺とシャルバは舌打ちしながら左右に別れるようにして避けるが、赤龍帝はシャルバの方を狙ったようでレーザーがシャルバの左腕を吹き飛ばした!
俺はレーザーが止まったことを確認してシャルバを立ち上がらせる。両腕を失っている、これは無理だな。
俺は即座に逃げる算段をたてようとしたが、突然足が動かなくなった!見ればシャルバも同様のようだ。
赤龍帝を見ると目を不気味にも光らせながら、胸部から腹部にかけて鎧を変形させていき、そこから発射口が姿を出現させていた。
これって、確実にヤバイよな!シャルバが死ぬのはいいが俺は死にたくないぞ!足はまだまったく動かない。どうすれば━━━━!
俺が対策をたてようとしていると赤龍帝の宝玉から音声が響き始める。
『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』
『
赤龍帝の発射口から膨大な量の赤いオーラが照射された!その瞬間、俺たちの足の拘束が解けた!
俺は瞬間的にその場を待避、その砲撃の回避を試みる!
俺が回避運動をした瞬間、俺の視界は一瞬で赤く染まり、俺の意識は暗転した━━━。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。