どうにかロキを撤退させた俺たちは、深夜の駒王学園近くの公園に来ていた。
俺たちは公園の真ん中に集まりながら、ヴァーリの言葉に耳を傾ける。
「オーディンの会談を成功させるにはロキを撃退しなければいけないのだろう?」
ヴァーリは俺たちを見渡すと、遠慮なしに言う。
「このメンバーでは無理だろうな。しかも英雄派の活動のせいで冥界も天界もヴァルハラも大騒ぎだ。こちら人材を割くわけにもいかない」
確かに、ヴァーリの言うとおりだ。俺たちだけではロキとフェンリルの撃破は難しいし、増援も期待できない。
すると、失血で倒れた一誠と、一誠を治療していたアーシアと小猫が馬車から出てきた。ヴァーリは彼らを見ながら苦笑する。
「………で、ヴァーリ。おまえならロキを倒せるって言いたいのか?」
俺が訊くとヴァーリは肩をすくめる。
「残念ながら、今の俺でもロキとフェンリルを同時には相手にできない」
『今の』、か。そのうち一人でもやれるようになるつもりらしいな。
「だが━━」
ヴァーリは一誠を見ながら言葉を続ける。
「二天龍が手を組めば話は別だ」
『━━っ!』
その提案に俺たちは驚きを隠せなかった!ヴァーリの仲間は当然のようにしているが、いきなり聞かされたら驚きもするぞ!
驚く俺たちをよそにヴァーリは続ける。
「今回の一戦、俺は兵藤一誠と共に戦ってもいいと言っている」
翌日、兵藤宅の地下一階の大広間に昨日ロキと戦った俺たち、急に集まってもらったソーナとその眷族、そしてヴァーリチームが集まっていた。
一誠の家にヴァーリたちがいるってのは何とも言えないが、今は緊急事態だ、仕方ない。
オーディンとロスヴァイセは別室で本国と連絡中らしい。その二人を待たずに俺たちは話し始める。
まず確認したのは、俺たちが会談終了までオーディンを守ることになったこと。
次に確認したのは増援が望めないことだ。英雄派による攻撃を警戒しているため、下手に戦力を割けないとのことだ。
神を相手にしなければならない今回は、少なからず犠牲が出てしまうだろう。せめて、その犠牲を減らすための作戦を練っている最中だ。
「まずは、ヴァーリ。俺たちと協力する理由は?」
ホワイトボードの前に立つアザゼルがヴァーリに訊く。
確かに俺も気になることだが、こいつなら、
「ロキとフェンリルと戦ってみたいだけだ。美猴たちも了承済みだ。これでは不服か?」
そう言うと思ったよ。こいつは戦闘狂、戦う理由なんてそれで充分なのだろう。
それを聞いたアザゼルは怪訝そうに眉根を寄せる。
「まあ、不服だな。だが、戦力として欲しいのは確かだ。おまえの性格上、英雄派とは繋がっていないんだろう?」
「ああ、彼らとはお互い不干渉ということになっている。俺はそちらと組まなくてもロキとフェンリルと戦うつもりだ。━━その場合はそちらを巻き込んででも参戦させてもらう」
組むなら俺たちと一緒に戦い、組まないなら俺たちを無視してやるってことか。できれば前者がいいがな。
「兄さんも結構悩んでいる様子だったな。前魔王のルシファーの血を引くおまえの申し出を無視することはできないと判断したらしい。まぁ、俺個人としては、申し出てくれた以上、協力してもらうのがいいとは思っている」
「納得できないことのほうが多いですがね」
リアスはあまり乗り気ではない。だが、兄さんの、魔王の意志ならばと我慢しているのだろう。ソーナも同様な感じで不満顔だ。リアスとソーナの眷族も文句ありげだが渋々応じているように見える。
アザゼルがヴァーリをじっと見ながら言う。
「何か企んでいるんだろうな」
「さてね」
「怪しい行動をすれば、誰でもおまえを刺せることしておけば問題ないだろうな」
「そんなことをするつもりは毛頭ないが、かかってくるならば、ただでは刺されないさ」
ヴァーリの言葉にアザゼルは苦笑する。
「………それに関しては一旦置いておく。さて、話をロキ対策のほうに戻すぞ。それはある者に訊く予定だ」
「五大龍王の一角、『
「確かに、順当だが、俺たちの声に応えるだろうか?」
ヴァーリの疑問はもっともだ。ミドガルズオルムは北欧の海の底で常に眠っているのだ。大きいわりに怠け者というドラゴンだが、龍王としてカウントされている。
その疑問にアザゼルが答える。
「二天龍、龍王━━ファーブニル、ヴリトラ、タンニーンの力で
「お、俺もですか?」
ヴリトラの
「あくまで要素のひとつとして来てもらうだけだ。細かいところは俺とタンニーン、二天龍に任せてくれて構わん。とりあえず、タンニーンに連絡が付くまで待っていてくれ。俺はシェムハザと対策について話してくる。おまえらはそれまで待機。バラキエル、付いてきてくれ」
「了解だ」
アザゼルとバラキエルが大広間から出ていった。
残された俺たちとヴァーリチームの間には、何ともいえない空気が流れている。
「赤龍帝!」
美猴がその空気を切り裂くように手を挙げる。
「な、なんだよ」
驚きながら訊く一誠に、美猴はイタズラっぽく笑いながら言う。
「この下にある屋内プールに入っていいかい?」
……………こいつ、バカだろ?
溜め息を吐く俺の横からリアスが前に出て美猴に指を突きつける。
「ちょっと。ここは私と赤龍帝である兵藤一誠の家よ。勝手な振る舞いは許されないわ」
ここって、リアスと一誠の家でいいのか?まぁ、部屋を間借りしている俺が言えた義理ではないか………。てか、リアス、美猴が嫌いなのか?態度がキツいぞ。基本敵同士だから仕方ないとは思うがな。
「まーまー、いいじゃねぇか、スイッチ姫━━」
ベチンッ!
リアスが美猴の頭を思いっきり叩いた!結構いい音したぞ!
美猴は頭を押さえながら涙目で俺に言う。
「いってぇぇぇぇっ!ちょっと!妹が暴力を振るったぞ!これを見て、兄としてどう思うよ?」
「あ?スイッチ姫って呼び出したのはおまえだろ?リアスはそれを気にしてるんだ。ストレス発散に使われていると思って我慢しろ」
「俺のストレスが大変なことになりそうなんだけど!?」
「それをロキとフェンリルにぶつければいいだろうが」
「それを妹に言ってやれよ!」
「リアスは我慢弱いからな。昔、かくれんぼで━━」
「お、お兄様!それは言わないでください!」
リアスがとっさに俺の口を押さえる。一応、怒りの矛先をずらせたか。まったく、面倒をかけさせる。
「こ、これが失われた最後のエクスカリバーなんですね!はー、すごーい」
「ええ。ヴァーリが情報を得まして、私の家に伝わる伝承と照らし合わせて見つけたのですよ。場所は秘密です」
声のする方を見てみると、イリナとアーサーという背広の青年がエクスカリバーについて話していた。イリナの性格はこんな時に便利だよな。
その横では、木場とゼノヴィアが警戒しながらもその二人の会話に耳を傾けていた。
「………………」
「………にゃん♪」
部屋の端では小猫と、S級はぐれ悪魔である黒い着物を着崩した猫耳女性━━黒歌が対峙している。対峙といっても、小猫が睨み、黒歌がそれを軽く受け流しているだけだ。ギャスパーは小猫の後ろに隠れて震えている。
まったく、はぐれを逃がすとは情けない。当時の討伐隊は何をやっていたのやら………。それよりもギャスパー、そこは守ってやれ。
そこに一誠が近づいて両者の間に入っていった。あれで一応は大丈夫だろう。
各々がヴァーリチームと親睦を深めていくなかで、俺はリアスに口を押さえられながら溜め息を吐き、こう思った。
久しぶりに、タバコ吸いてぇな。
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