「………………あれ?」
気がつくと、俺━━兵藤一誠の目の前には部長のお顔があった。後頭部には柔らかい感覚、これは、膝枕をされているようだ。
「大丈夫?怪我はしていないようだけれど、イッセーったら、あのあとに気を失ってしまったのよ?」
「だ、大丈夫です!」
俺は体を起こして回りを見渡す。サタレンジャーは見当たらないな。
「彼らなら消えたわ。突然ね」
俺の様子を見ていた部長が言う。そうか、倒したってわけじゃなさそうだ。
『相棒、あの男、先程のドラゴンショットを斬ってみせたぞ。あれで一介の悪魔とは、恐れ入る。だが、ま、あの男とあそこまでやれたんだ、おまえも成長したということだな』
あれを斬ったのか………。ロイ先生って、本当に何者なんだ?素直に剣を使った方が強いのでは………。
「二人ともよくやったね」
サーゼクス様の声だ。そちらに目を向けると、いつものサーゼクス様とメイド服のグレイフィアさん、頬が真っ赤に腫れているロイ先生が現れた。
「ロイお兄様、何があったのですか?」
「いや、ちょっとやり過ぎた」
━━━━━
「いや、ちょっとやり過ぎた」
俺は頬を撫でながらそう言った。
一誠のドラゴンショットを斬ったまではいいが、その後無意識のうちに一誠本人も斬りに行ってしまった。
そこにすっ飛んできた
まったく、これだから加減は苦手だ。
俺は溜め息を吐きながらリアスと一誠に言う。
「さて、兄さんから結果の報告をしてもらう。二度は言わないと思うからしっかり聞けよ?」
俺の言葉を受けた二人は姿勢を正して兄さんと向き合う。そして、兄さんは二人に近づいて優しく肩に手を置いた。
「よくやった。二人とも合格だ」
その一言を受けた二人は顔を見合わせて笑った。
「これで旦那様と奥方様もご安心されることでしょう」
義姉さんがそう言う。素早く切り替えてメイドモードってわけだ。
「一誠、悪いな。いきなり儀式に巻き込んじまって」
「い、いえ!そ、そんな!結果的に━━━ッ!」
「結果的に━━━なんだ?」
俺は出来るだけの笑みを顔に貼り付けながら一誠に続きを訊く。一誠は顔を青くしながら首を何度も横に振り口を開く。
「いえ、何でもありません!」
「………それはそれとして、リアスを頼むぞ」
「はい!」
俺が真剣に訊くと、一誠も真剣な表情で返してきた。なら、大丈夫だろう。
「おめでとう、リアスちゃん!」
横から現れたセラがリアスに飛びつき、そのまま頭を撫で回す。リアスは顔を赤くしながらも嬉しそうだ。セラも嬉しそうだしな。
「……あー、やっと終わった」
ファルビウム様が溜め息混じりに現れる。仕事をしてくれているのなら、とりあえずはいいか。
次に現れたのはアジュカ様だ。一誠の左腕の籠手をマジマジと見つめている。
「少し、キミの
アジュカ様は返答を待たずに小さな魔方陣を展開、一誠の胸の前でそれを動かしていく。
「なるほど、おもしろいことをしようとしているじゃないか。
楽しそうに笑っている。ちょっと見ただけでわかるって流石だな。
「これはおもしろい━━━━」
その後も、アジュカ様の小難しい話がしばらく続いた。すると、
「ゲームの時には発動しないが、実戦向きに駒にひと工夫してみよう。ゲームでも使えたらおもしろいが、そこは対戦相手次第だな。━━身内が迷惑をかけたからね、これぐらいの礼はさせてくれ」
「い、いいんですか!?」
身内のってのは、ディオドラの野郎のことだろう。あいつ、牢獄でうなされているぜ、多分。
そんなことを思ったが、俺は疑問を口にしてみる。
「俺には入っていませんが、駒の隠し要素っていくつあるんですか?」
「眷族を持たないキミからの質問とは、だが、答えは教えられないな。隠し要素はユーザーが見つけてこそだろう?」
「確かに、そうですね?」
俺は首をかしげながらもそう言った。この人の考えていることを全て把握するのは不可能だ。
俺の質問に続いて、一誠が俺に質問してくる。
「ロイ先生。あのブラックはどうやって俺の動きを読んだんですかね?」
「ん?ああ、あれか。簡単なことだ。鎧装着型の
俺の言葉に一誠は口の端を引きつかせた。衝撃の事実だったのかもしれん。
俺は言葉を続ける。
「片目がないからな、そのおかげでオーラの流れに敏感なのかもしれん」
一誠は頷きながら溜め息を吐いた。そんなことをしているうちにアジュカ様の作業も終了した様子だ。
「さて、あくまで俺は切っ掛けをやっただけだ。これからどう成長するかはキミ次第だな」
ようするに、頑張れと。まぁ、何かあったら付き合ってやりますか。
「さて、帰るか。俺はある『ゲーム』を運営していてね。長い時間抜けていると支障が出たりする」
「アジュカ、例の一件か?それとも趣味か?」
兄さんの問いにアジュカ様は口の端を吊り上げて笑った。
「趣味は大事にしたいものだ。そうだ、赤龍帝くん、ロイ・グレモリーくん。キミたちも参加してみないか?なーに、ケータイひとつで参加可能だ」
何か、嫌な予感がするから、
「「遠慮しておきます」」
俺と一誠は異口同音で返した。それを受けたアジュカ様は苦笑する。
「それは残念だ。また会える日を楽しみにするよ。━━革新したまえ」
アジュカ様は転移魔方陣を一瞬にして展開するとそのまま消える。ファルビウム様もいつの間にか消えていたようだ。
「さて、屋敷でパーティーを催す予定だ。リアスの眷属たちもすでに呼び寄せてあるんだよ」
相変わらず、パーティーとなると仕事が早いな。
「そんじゃ、俺は一足先に屋敷に━━━」
「行く前にロイ分を補給なのよ☆」
「またかよ!?」
俺はセラに飛び付かれ、再び頬擦りされる。もう慣れたが、人目は気にして欲しいもんだ。
俺はその態勢で転移魔方陣を展開した。
「そ、そんじゃ、待ってるからな!」
「後でね~」
俺とセラは手を振りながら魔方陣の光に包まれていった。
転移が完了し、俺はセラを引き剥がす。途端にセラは不機嫌な表情になる。
「ちょっと、何するのよ!」
「今はパーティーだ。終わったら、またのんびり相手してやるよ」
俺はセラの頭を撫でてやる。セラは少し頬を膨らませていたが、すぐに笑顔になる。
「本当!なら、我慢しないとね☆」
「そういうことだ、会場に行くぞ」
「おー!」
こうして、盛大に行われたパーティーを、俺とセラは主役そっちのけで楽しんだ。
そして、パーティー終了後。俺は一晩中セラの相手をすることになった。
だが、久しぶりに会ったのだからいいだろう。俺がずっと一緒にいると誓った、俺の最愛のヒトなのだから━━。
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