俺━━ロイは気配を殺しながら校内を歩き回っていた。俺の前方にはこそこそしながら歩くアザゼル。俺はあいつを尾行しているのだ。
ここ最近、あいつが突然いなくなることや少し遅れて現れることが多いため、その理由を探るためだ。今のところは問題ない。
それにしても、アザゼルはどこに行こうとしてやがる。この先にはプールの用具庫しかないぞ。
俺は首をかしげながらもアザゼルを尾行していく。すると、アザゼルは周囲を警戒しながらもプールの用具庫に入っていった。
プールの用具庫に何が………。
俺は少し待ってからプールの用具庫に潜入する。アザゼルに一言申してやろうと思ったが、中には誰もいない!?
「あの野郎………ッ!どこ行きやがった!?」
思わず一人で愚痴ってしまったが、本当にどこに行った!出入口は一つしかないし、窓も人が通れるほど大きなものはない。出てきていれば、すぐに気づくはずだ。
俺は用具庫の中を見渡す。何か手掛かりは━━━━、
「あった」
まず気づかないであろう場所に何かのボタンらしきものを発見した。俺は警戒しながらもそのボタンを押す。すると、床の一部がスライドして地下に続く階段が現れた。
俺はゆっくりとその階段を覗きこむ。電気はきているようで照明はついている。
「はぁ………ったく、面倒だな」
俺は溜め息を吐きながら地下に向かう。多分だが、この先にアザゼルの野郎がいるんだろう。
進むこと数分。
「なんだこれ、ふざけてんのか」
俺の前にはアダムスキー型のUFOが鎮座していた。中に続くと思われる階段はしごが下から伸びている。
俺は再び溜め息を吐き、UFOの中に入ってみる。アザゼルがいるかどうかは別として、興味が湧いたからだ。
俺が乗り込んだ瞬間、階段はしごが収納されて入り口が閉じてしまった!
「マジかよ…………」
俺は苦笑した。ここまで来たら降りられないし、アザゼルがいることがほぼ確定したからだ。
体を襲う浮遊感を感じながら、俺はUFOの操縦席を目指して歩き始めた。
「アザゼル、見つけたぞ」
「よっ!おまえも乗り込んでいたとは、気づかなかったぜ!」
操縦席に座り、妙にテンションの高い白衣姿のアザゼルが前方の画面から目を外さずに言った。操縦に集中しているようだ。
俺は背後からアザゼルに近づき、その画面を覗きこむ。周囲の景色が映されているようだ。
「外装もそうだが、存外、内装もしっかり作ってあるんだな」
「ああ。やるからには手抜きはしない。失敗して痛い目を見るのは俺だからな」
「そう思うなら、初めからやらないで欲しいがな」
「そう言うなよ。たまには趣味に没頭させろ」
アザゼルはそう言いながら操縦していく。結構慣れた様子なのを見ると、しっかりと練習をしていたようだ。
俺も黙って画面を見ていると、そこに一誠とアーシア、イリナ、ゼノヴィアが映る。
「アザゼル、一誠たちがいるぞ。気づいてはいるようだな」
「そうみたいだな」
俺とアザゼルはそう言いながら、こちらを指さしている一誠を見た。
「………なあ、ロイ」
「なんだ?」
「イタズラしていいか?」
「いいぜ。━━━って言うと思うか!」
俺は素早く銃剣を取り出してアザゼルに斬りかかろうとするが、アザゼルが急にUFOを斜めにしたせいで俺は態勢を崩して床を滑る。アザゼルはベルトをしているようで影響はなさそうだ。そんなことを確認しているうちにUFOの態勢が水平に戻る。
俺が態勢を整えた矢先にアザゼルが何かのスイッチを押した!すると、ビーム的な何かが発射される音が聞こえ、その後に誰かの叫び声が聞こえてきた!
「アザゼル!何をしやがった!」
「イッセーに攻撃したのさ!どうなるかはわからないがな!」
アザゼルはそう言いながら別のスイッチを押す。すると、UFOが自動操縦になったのかアザゼルが席を立った。
「さて、少しだけ相手してやるよ。だが、手は抜いてくれよ?死んじまうからな」
「了解、半殺しに留めてやるよ。その考えを叩き直す!」
「さあ!来い!」
こうして、俺とアザゼルは真っ正面から激突することになった!
数十分後。
「はぁ………はぁ………」
「ぜぇ………ぜぇ………」
俺とアザゼルは肩で息をしていた。場所がよければもっと楽なんだがな。
俺がそう思った理由は簡単だ。ここはアザゼルが作ったUFOの中。つまり、アザゼルにとって有利な形で戦うことができるのだ。いきなり壁や天井から砲台が出てきたり、急に斜めになったり、想像以上にやりにくい。
銃剣から弾丸を撃ってもいいんだが、万が一に外れてUFOに致命的なダメージが入ってしまうと、俺も死ぬかもしれない。
俺が次の一手を考えていると、突然UFOが揺れた!アザゼルは驚きながら画面を確認する。俺も一旦銃剣をしまってその画面を覗きこむ。そこにはデュランダルを構えるゼノヴィアと、光の槍を構えるイリナ、そして段ボールが置いてある。あれ、ギャスパーだよな?それはともかく、
「あいつら、報復に来てんじゃねぇか!だから止めとけって言ったんだ!」
「知るかよ!ロイ、おまえはそこの席につけ!外の砲台を動かせる!」
「くそっ!面倒なことになりやがったな!」
俺は愚痴りながらも席につき、とりあえずスイッチを押してみる。すると、ゼノヴィアに向かってビームが発射された!だが、ゼノヴィアはそれを余裕で避けてみせる。
俺はボタンの横にあるレバーを動かして照準を合わせて攻撃していくが、全て照準からずれた場所に着弾する!おかげで当たる気配がない!
「アザゼル!もっと当てやすいのはないのか!?当たる気配がないぞ!?」
「急ピッチで作ったせいでそこら辺は適当なんだ!どうにかしろ!」
「おまえな!なんで大事なところが適当なんだよ!どうにもならないぞ!?」
「それは悪かったな!」
俺とアザゼルが言いたいながらも攻撃と回避を分担して行う。そんな中、俺が放った一撃が、照準から大きくずれて━━━、
ドカンッ!
「ギャァァァァァァァァァァッ!?」
段ボール箱に直撃した!やべ、ギャスパー、悪い!
俺が心の中で謝った瞬間、今まで以上の衝撃と振動が俺たちを襲った!
「しまった、直撃した!ロイ、歯を食いしばれ!落ちるぞ!」
「ふざけんなよ!このくそ野郎がぁぁぁぁぁぁぁっ!」
俺はアザゼルに愚痴りながらも踏ん張る。くそ、こんなことになるんだったら放置しておけば良かったよ!
俺が後悔していると、再び激しい衝撃に襲われ、今度は意識を持っていかれてしまった……………。
「━━━に━━さま!お兄━━ま!お兄様!大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。すごい頭痛いけどな………」
リアスの声に起こされ、俺は体を起こす。視線の先には壊れたUFOが転がっている。
「アザゼルの野郎はどうなった?」
「部室に拘束しています。イッセーを治してもらわないといけませんから」
「一誠がどうかしたのか?」
俺が訊くと、その一誠が奥から駆け寄ってくる。輝くほどの笑顔を作りながら………。
「ロイ先生!ご無事でなによりです!」
「あ、ああ。心配かけて悪いな」
「いえいえ、話を聞く限りでは、僕のために頑張ってくれていたんですよね?ありがとうございます」
「ん?おい、リアス。一誠の一人称って、俺だったよな?だが、今、こいつ━━━」
「はい。僕と言いましたわ」
リアスはそう言うと不安な表情になり、口を開いた。
「お兄様、イッセーは真面目になってしまったんです」
「真面目になった…………だと」
俺は驚きながら一誠を見る。相変わらずのニコニコ顔だ。なんか、気持ち悪いな…………。
真面目になるのはいいことかもしれないが、リアス的には嫌なのだろう。そうでなければあんな不安な表情にはならない。
俺が首をかしげていると、旧校舎の方から木場が駆け寄ってくる。
「部長、ロイ先生。アザゼル先生が吐きました。戻すほうもどうにかなりそうです」
「そう!それは良かったわ!」
「何かよくわからんが、了解だ。一誠も戻るぞ」
「はい!」
こうして、真面目な一誠を連れて一旦旧校舎に戻る。
そして、
『出してぇぇぇぇぇぇっ!』
謎のカプセルに一誠を放り込んだ。アザゼル曰く、
「ドッペルゲンガーのスケベなデータを投射する」
そうだ。どうなるかはわからないが、これしか手が見つからなかったとのこと。
「で、大丈夫なんだろうな?余計におかしく、いや、今回はまともになるか?それはそれで大変だがな、色々な意味で」
「大丈夫だって!俺を信じ━━━」
『無理です』
「無理だな」
胸を張って主張するアザゼルに全員が冷たい視線を送る。一誠はいまだにカプセルから出ようと暴れているようだ。
それに構わずアザゼルはスイッチに手を伸ばし、一気に押し込んだ!そして━━━━、
ドッゴォォォォォォォンッ!
大爆発した!?俺たちはとっさに物陰に退避したが
部屋の中がメチャクチャになってるじゃねぇか!
「おい、アザゼル!何が信じろだ!爆発してんじゃねぇか!」
「あれ、おかしいな?」
当のアザゼルは首をかしげているが、マジでふざけんなよ!
俺がアザゼルを怒鳴っていると、カプセルが開く。そこには━━━。
「オパパパ、オッパイィィィィィィンッ!」
謎の絶叫を上げる一誠の姿が!
「余計にぶっ壊れてんじゃねぇか!どうすんだよこれ!?」
「俺は知らん!あばよ!」
「逃げんなこらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は逃げ出したアザゼルを追う!あの野郎、全力全開で一発殴らせろっ!
一誠が戻ったのは次の日になってからだった。
家でリアスに抱かれながら寝たら治っていたそうだ。
「なあ、木場」
「なんでしょうか?」
「最近、リアスがわからん」
「ははは、僕もです…………」
偶然にも遭遇した俺と木場とそんな会話をしていた。巻き込まれる側の苦労は同じような奴にしかわからないだろう。
「木場!見てくれよこれって、ロイ先生!?」
「よー、一誠。その手に持っているもんは没収させてもらうぜ?」
「これは譲れません!」
「おまえも逃げんじゃねぇよ!」
エロ本を抱えて逃げる一誠を追う。あいつはああでないと調子狂うかもな。
幕間②はここまでです。
次回からは修学旅行はパンデモニウムに突入していきます!
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