俺、アザゼル、ロスヴァイセは嵐山周辺の捜索をおこなっていた。
三人で別行動を取り、怪しい場所や気配を探ったが、何かが見つかることもなく、無駄な時間が流れてしまった。
合流した俺たちは各々報告を済ませると、俺は溜め息を吐く。
「やっぱり見つからないもんだな」
「そう言うなよ、ロイ。簡単に見つかったら苦労しないって」
「そうですよ。探し物は根気が大切です!」
「確かに婚期は大切だな」
「うっ!そ、それは今関係ないじゃないですかぁぁぁぁぁっ!」
アザゼルの言葉にロスヴァイセが狼狽える。まったく、この二人は成長しないな。
俺は涙目のロスヴァイセの肩に手を置きながら言う。
「だから、あんまり
「ストレスが溜まりまくりだぜ、まったくよ!とりあえず、あの店で休憩といこうぜ?ちょっと疲れた」
アザゼルは視線の先にある店を指差しながら言った。俺は頷き、ロスヴァイセに言う。
「ほら、しっかりしろ。これからまた忙しくなるんだからよ」
「うぅ……。私だって、私だって………」
いまだに涙目のロスヴァイセ。これはしばらく引きずりそうだな。
それからしばらくその店で湯豆腐を食べていると、そこに一誠たちが現れた。
「あれ、ロイ先生?どうしてこんなところに?」
「一誠か、そっちは楽しそうで何よりだ。こっちは━━」
「色々と調査中だよ。今は休憩だけどな」
アザゼルが俺の言葉を遮るように言うと、日本酒の入った杯をあおる。
それを見た一誠が言う。
「アザゼル先生!教師が昼酒はいかんでしょう」
「言っても聞かないんだよな」
「そうなんですよ!生徒の手前、しっかりしてくださいと言っているのですが………」
ロスヴァイセが額に青筋を立てながら言う。アザゼルはそれを軽く無視して日本酒をあおると、ロスヴァイセに言う。
「そうは言うがな、ロスヴァイセ。ちったぁ、要領よくいかないとよ、彼氏はできないぜ?」
アザゼルの発言を聞いた途端に、ロスヴァイセが我慢の限界を迎えたようでテーブルを叩きながら立ち上がる。
「か、か、彼氏は関係ないでしょう!バカにしないでください!もう、あなたが飲むぐらいなら私が!」
ロスヴァイセがアザゼルの杯を奪い取り、そのまま日本酒をあおる。見事な飲みっぷりだ。
「ぷはー。……だいたいれすね、あなたたちはふだんからたいどがダメなんれすよ………」
「おい、ロスヴァイセ、まさか………」
「一杯で酔っぱらいやがったのか?」
俺たちのことなぞお構いなしに二杯目をあおるロスヴァイセ。完全に目が座ってやがる。
完璧に酔っぱらった様子のロスヴァイセが俺とアザゼルに絡んでくる。
「わらしはよっぱらってきやしないのれすよ。だいたいれすね、私はおーでぃんのクソジジイのおつきをしてきることから、おさけにつきあっていたりしててれすね━━」
うわ、面倒くせぇ。アルコールが入った途端に愚痴が溢れ始めたぞ。こいつも苦労しているんだな。
俺は黙ってロスヴァイセの愚痴を聞きながら溜め息を吐く。苦労はわかるが、こんな面倒は勘弁してもらいたい。
「━━わたしなんか、おーでぃんのクソジジイのかいごヴァルキリーだなんていわれててれすね、やすいおきゅうきんでジジイのせわをしてたんれすよ?そのせいで、そのせいで!かれしはできないし、かれしはできないし、かれしはできないんれすよぉぉぉぉぉ!うおおおおおおおん!」
号泣し始めちまったよ、まったく。
俺はロスヴァイセの背中を優しく
「わかったから、おまえの愚痴に付き合ってやるよ。ほら、話してみろ」
俺がそう言うとロスヴァイセは急に明るい表情になった。
「ほんとうれすか?ロイせんせー、いがいにいいところあるじゃないれすか。てんいんさーん、おさけ、もうじゅっぽんついかでー」
また飲むつもりのようだ。これは、面倒事に自分から首を突っ込んじまったか。まさか、ここまで酒癖が悪いとはな。セラもここまでじゃ………いや、こんぐらいかもしれないな。
「アザゼル、一誠たちも、ここは俺にまかせて先に行け!」
「ロ、ロイ先生!?なんか死んじゃいそうなんですけど!?」
「ここは任せたぜ!」
ツッコミをいれてくれる一誠をよそに、アザゼルは足早に去っていく。それを見て困惑気味に俺を見てくる一誠に俺は頷いてみせた。一誠たちは軽く頭を下げながら店から出ていく。
俺がロスヴァイセに視線を戻すと、すでに空になった酒瓶が二本!?
ロスヴァイセが俺を肩を組むようにして捕まえると、満面の笑みで、
「ひゃくえんショップ、サイコーれすよ!アハハハハ!」
なんて叫んできやがった!もうやだこいつ!アザゼル、やっぱり戻ってきてくれぇぇぇぇぇぇぇっ!
数分後。
「えへへ、ひゃくえんショップ~」
酔い潰れて寝言を言うロスヴァイセに着ていたパーカーを被せてやる。よだれとかで汚れないかとか、そんな心配をしている場合じゃない。
「はぁ……まったく、面倒なことになりやがった」
俺は溜め息を吐きながらそう漏らした。理由は簡単、この店には店員を含めて誰もいないからだ。気持ち悪い霧に包まれたと思ったらこれだ。どうなってやがる。
俺は簡単な結界でロスヴァイセを包み込んでやり、店の外に出る。外にも誰もいないどころか、空の色が白い。まるでレーティングゲームのフィールドだな。
俺が警戒しながら周囲を見渡していると、
「さて、噂の切り裂き魔とやらはお
「━━ッ!誰だ!」
俺は声のした方向に目を向けると、そこには━━、
「いやなに、怪しい者ではない。ただのテロリスト、というやつだ」
身の丈程の太刀を背中に背負った男が立っていた。腰ぐらい程まで長い黒い髪を侍のようにまとめており、格好も侍のようだ。
俺は銃剣を取り出しながらその男に言う。
「ただのテロリストを俺たちは怪しい奴って呼ぶんだ。知らなかったか?」
「む?そうであったな。呼ばれる側になると自覚が薄くなってしまうものよ」
あごに手をやりながら苦笑する男。だが、隙は見つからない。何となく、口調まで昔っぽいな。
俺は男を睨みながら訊く。
「で、おまえは何者だ?いまさら『ただの通りすがりだ』じゃ済まないぜ?」
俺の言葉に男は不敵に笑む。
「そうさな、名乗っておくか。『
「佐々木小次郎……宮本武蔵とどっかの島で決闘をしたっていうあれか」
「あれと呼ばれるのは気になるが、それが一番分かりやすいだろうさ」
「で、何のようだ?」
俺が改めて訊くと小次郎は太刀をゆっくりと引き抜くと曇りのない刃があらわとなり、構えをとる。すると、先程までの声音とはうってかわり、迫力ある声で俺に訊く。
「強者が目の前にいる。これ以外の理由がいるか?」
「確かに、それもそうかもな………」
俺は銃剣を二刀流モードにして構える。俺がこの調子なら、一誠やアザゼルの方も敵と遭遇しているんだろうな。
俺はゆっくりと息を吐き、そして━━━、
「はぁっ!」
一気に懐に飛び込んで突きを放った!
小次郎は焦った様子もなく太刀でそれを受け流し、俺の背後をとると、そのまま太刀を振り下ろしてくる!
俺は剣を背中に回してそれを防ぐと、前に転がり少し距離をとる。
こいつ、強いっ!
今の一瞬でそう確信した俺は再び構え、小次郎を睨む。小次郎は不敵に笑みながら俺を見据えている。
「まるで獣よな。眼光だけで殺すつもりか?」
「それで
俺は軽くそう返し、再び正面から斬りかかる!小次郎も口の端を愉快そうに歪めるとそれ受け入れてくる!
その激突を皮切りに、俺と小次郎は文字通りの一進一退の攻防を展開していく!
俺の突きが受け流され、小次郎の横凪ぎを右の剣で受け止めてカウンターを狙っていく!
お互いの攻撃がぶつかりあいながら散っていく火花と金属同士がぶつかり合う甲高い音が周辺を支配する。
俺の二刀による大上段からの一撃を小次郎が受け止めところでつばぜり合いになる。
「いやはや、なかなか愉快なものよ!」
「楽しそうでなりよりだが、俺はおまえの楽しみに付き合っているほど暇じゃねぇんだよ!」
俺は一気に力を込めて小次郎を押し飛ばし、左の剣を投げつけた!
小次郎は一瞬驚いたように目を見開くがすぐに不敵な笑みを浮かべると、俺が投げつけた剣をはるか上空まで弾き飛ばした。
俺はその隙に一刀流で小次郎に斬りかかっていく!小次郎は素早く太刀を戻して再びのつばぜり合いになった。
「刀を捨てるとは、恐れ入る………」
「おまえみたいに一本だけで勝負しているわけじゃねぇからな!」
そう言うと、俺と小次郎は再び斬りあっていく!
俺が大上段から振り下ろせばそれを止められ、代わりと言わんばかりに放ってきた突きをギリギリで受け流す!
すると、小次郎が後ろに飛び退いた。
俺が首をかしげると、小次郎が構えを変えた。太刀を地面と水平に持ち、まるで俺に背中を見せるように立つ。
「佐々木小次郎と言われて、お主は何を思い浮かべる?」
小次郎からの突然の問いに俺は考える。
佐々木小次郎といえば、それは確か━━━ッ!
「『
「ご名答。ならば見せよう、我が秘剣━━━」
小次郎がまさに技を放とうとした時だ。
「もう、誰れすか?人が気分良く寝ているところを、ガンガンギャンギャンキンキンと、うるさいんれすよ!」
先ほどの店から千鳥足のロスヴァイセが出てきた。まだ酔いは抜けていないようだが、俺のパーカーを大事そうに羽織っている。
俺はすぐさま意識を小次郎に戻したが、あいつは苦笑しながら息を吐き、構えを解いた。
「まさか、女人がいたとは、少々興が削がれたな」
小次郎はそう言うと落下してきた剣を俺の方に弾き飛ばしてきた。チッ、バレていたか。
俺が戻ってきた剣をキャッチすると小次郎は言う。
「では、また後ほど続きといこう。案ずるな、すぐに機会は訪れるさ」
「おい、おまえら、何をするつもりだ?」
「それは━━━」
小次郎が何かを言おうとすると、突然俺たちを振動が襲った!
「ウェ!?」
「あのバカが!」
転びそうになっていたロスヴァイセを支えてやる。再び小次郎のいた場所に視線を向けると、
「うむ、あちらでも何かあったようだ。ではな」
そう言って
「あ~、待ってくらはいぃぃっ!」
腰にロスヴァイセが抱きついてきて走り出せなくなってしまった。
「ああ、くそっ!」
俺は短く吐き捨てながら銃剣をしまい、ロスヴァイセをお姫様抱っこの要領で持ち上げるとそのまま小次郎を追って駆け出した!
で、渡月橋に到着したが、なんか荒れ放題になってしまっている。
ロスヴァイセは顔を赤くしながらも俺にしっかりくっつきながら寝ている。人に抱えられながら寝るって、こいつ、なかなかやるな!
俺が視線を前に向けると、小次郎の横に立つ嫌な気配を感じる槍を持った青年が笑みを浮かべながら言う。
「我々は今夜この京都という力場と九尾の御大将を使い、二条城で大きな実験をする!ぜひとも制止するために我らの祭りに参加してくれ!」
青年が言うと、霧が濃くなってきた。一気に体を包み込むまでの濃さになるとアザゼルの叫びが聞こえてきた。
「おまえら、武装を解除しろ!空間が元に戻るぞ!」
アザゼルの言葉を受けたが、武器は何もないんだよな。
…………。
一拍あけて霧が晴れると、そこは何ともない渡月橋周辺だった。さっきのはやはり別空間だったようだ。
それにしても、実験とか言っていたが、あいつら何をするつもりだ?
「ロイ、一旦戻るぞ。セラフォルーにも連絡しなきゃならない」
「あ、ああ。わかった」
「えへへ~」
いまだに寝ているロスヴァイセ。まったく、緊急事態だっていうのによ。
俺は溜め息を吐くと、ロスヴァイセを抱えたままホテルに戻ったのだった。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。