ライザーを外に連れ出した俺━━ロイと一誠たちは、一誠が呼んだという『協力者』を待っていた。
「早速ですが、お話を━━━」
「まあ、待てって。一誠、そろそろか?」
「はい。そろそろ………あ!来ました!」
一誠が空の彼方を指差す。その方向には大きな影がひとつ。それが近づいているためか、徐々に大きくなってきている。
その大きな影はドラゴンであり、大きな地響きを立てながら庭に降り立った。
「この間ぶりだな、おまえたち」
大きなドラゴン、タンニーンが俺たちにあいさつをする。
俺がいつもの調子で返そうとすると、
「タ、タ、タ、タタタタタタンニーンッ!?どどど、どうしてここに!?」
ライザーが叫びながら俺の後ろに隠れた。俺は嘆息しながらライザーをぶん投げタンニーンの目の前に。
ガタガタと震えるライザーを見ながらタンニーンは言う。
「ライザー・フェニックスか。レーティングゲームの試合をいくつか見たことがある。将来有望と注目していたのだが、いささか問題があるようだ」
一誠が前に出てタンニーンに事の
「つまり、根性を身につけさせたいわけか」
「そうなんだ。だからさ、山に行こうと思ったんだ。俺とライザーさんの荷物は揃えてある」
「準備がいいな」
「俺にはこれしか思いつかなかったんだ。てなわけで、部長。俺はこのヒトを連れて山に行きます」
それが一誠の作戦だ。細かいことは考えずに行き当たりばったりで鍛える。
俺がうんうん頷いていると、ライザーが突然炎の翼を広げる!
「い、いやだぁぁぁぁぁぁっ!」
そのまま逃げようとした瞬間、俺とヴィンセントが飛び出して脚を掴む!
ヴィンセントがライザーに怒鳴る!
「ライザー!おまえ、いい加減にしろ!俺たちにどれだけ迷惑をかけるつもりだ!?レイヴェルが出向いてまで頼んだんだぞ!兄として恥ずかしくないのか!?」
「そうだぞ!兄なら妹にいらない心配をかけさせるな!」
俺もヴィンセントに続いて怒鳴ると、ライザーが歯を食い縛りながら頷いた。
俺とヴィンセントは手を離し、ライザーはゆっくりと着地して炎の翼を消した。
俺たちが格好よく決めたと思った矢先、リアスが俺に言う。
「ロイお兄様。失礼ですが、それはヒトの事を言えないと思います」
「リアス、それは言わないでくれよ………」
俺がうなだれていると、タンニーンが訊いてくる。
「行くのは兵藤一誠とライザー・フェニックスだけか?」
「いや、俺も行く」
『え?』
俺の一言に周りのメンバーが驚く。何も言っていなかったからな。てか、さっき決めた。
「それはいいが、装備はどうするのだ?」
「大丈夫だ。用意してある」
俺は魔方陣を展開してそこから荷物を取り出すと、サムズアップをタンニーンに送る。
「ならば、乗れ。すぐに出発するぞ」
「はい!」
「くそ………。やるしかないか………」
「おう」
一誠が自分の荷物を抱えて飛び乗り、ライザーが渋々荷物を担いで一誠に続く。俺も返事をして荷物を担いで背中に飛び乗る。その前に、
「ヴィンセント、いつものあれ、忘れてたな」
「おう、ライザーのことを頼んだ。今度、飲みにでも行こうぜ」
「そうだな。お互い忙しいが、そのうち声をかけるさ」
「待ってるぜ」
拳同士をぶつけてお互い笑む。やるのは久しぶりだな。
さて、やることもやったし、さっさと行きますかね。
俺がタンニーンの背中に飛び乗り、まさに出発しようとした瞬間、
「私も付いていきますわ!」
レイヴェルが俺たちに声をかけてきた。瞳には絶対に引かないという決意を感じ取れる。だが、山は危険だらけだ。男だけならともかく、そこに女子がいるとなると、色々と負担が増える来もする。
悩み俺たちにレイヴェルがだめ押しをするように言ってくる。
「兄を………一緒に立ち直らせたいのです!」
あの
俺はため息を吐き、困惑している一誠に言う。
「了解だ。なんかあったら、俺たちでフォローしてやろう」
「そうですね。レイヴェル、一緒に行こう」
俺たちの返答に、レイヴェルは嬉しそうに頷くと魔力で服装を変える。よくテレビで見る探検家が着ている服、サファリジャケットっていうやつだな。
「ロイ!そんじゃ、ライザーとレイヴェルを頼んだぜ!」
「おう!しっかり引率してやるよ!」
俺はヴィンセントに返すと、妙におとなしいライザーに目を向ける。
「つ、つい流れに乗ってしまったが、ド、ド、ドラゴンに乗っているのか………。いや!考えるな!考えるな!」
ライザーもライザーなりに頑張っているようだ。この調子なら、復調はすぐかもしれないな。
そんなことを思っているうちにタンニーンは飛び立つ。俺たちはタンニーンにしがみつくが、レイヴェルは一誠にしがみついていた。
「よし、タンニーン。どこに行くんだ?」
出発して早々にタンニーンに訊くと、タンニーンは少し楽しそうな声で答えた。
「俺の領地だ」
「うわー、すっげー」
横の一誠が呆気に取られながらもそう漏らした。
俺たちの視界には峡谷を飛び交うドラゴンたちの姿が映っている。
俺も初めて目にしたが、これがドラゴンの巣か。切り立った崖の各所に穴が開いていて、そこからドラゴンが飛び出したり、顔を出したり、その穴に入っていくドラゴンもいる。
俺たちは崖の一角、どうにか人が立てる場所に降ろされた。
あちこちからドラゴンが俺たちを見てきているが、人型の悪魔が珍しいのかもしれないな。
俺たちがそれぞれ周囲を見渡していると、タンニーンが口を開く。
「ここが俺の領民が住むドラゴンの巣だ。この住居は俺たちの一部に過ぎないが、おまえたちが生活できるのはこの辺りが限界だろう。それにここに住む者たちは意志疎通に言葉が扱えるドラゴンの種族だしな」
タンニーンが説明してくれた。つまり、もっと険しい場所もあるってことだな。そっちのドラゴンはあんまり頭が良くないと見るべきか?
俺が首をかしげる横ではライザーが顔を青くしていた。
そこに二匹の大型ドラゴンが姿を現す。
「お呼びですか?」
蒼い鱗のドラゴンと水色の鱗のドラゴンだ。
「うむ、この二匹は俺の配下の高位ドラゴンだ。ライザー・フェニックスをこいつらに頼もうと思っていてな」
タンニーンはそう言うと二匹に説明を始める。
「了解です」
「マジOKっす」
二匹は二つ返事で応じてくれた。蒼い鱗のドラゴンが妙に軽かった気がするが………。
「ライザー・フェニックス」
タンニーンがライザーを呼ぶと一言告げた。
「このドラゴンの峡谷近辺でおまえの心身を一から叩き直す!」
「………うぅ、なんてこった」
ライザーは首を横に振りながら顔を両手で覆っていた。いい加減、覚悟を決めてもらいたいな。多少無理をしても、不死身だから大丈夫だろう。
「兵藤一誠、ロイ・グレモリー、おまえたちもついでに鍛えていけ。まずは走り込みだな」
タンニーンが俺と一誠に目を向けながら言ってきた。
まあ、俺も鍛えないといけないからな………。
俺は一人でそう思いながら、登山装備に着替えたのだった。
「ドラゴン!ドラゴン!ほら、ライザーも声出せッ!」
「ド、ドラゴン!ドラゴンッ!」
山の雪原地帯でライザーと俺はドラゴンに追い回されていた。一誠は少し先行するように走っている。もう少しペースを上げていいが、今回はライザーに合わせている。
かれこれ三十分程走っているが、あんまり疲れないな。もっとペース上げるか?
俺はそんなことを考えながら走り続ける。ライザーは踏み慣れない雪に足をとられて何度も転びそうになっていた。その度に俺が支えてやってあるんだがな。
「ライザー殿。もっとペースを上げてください。ロイ殿の足を引っ張っておりますぞ」
レイヴェルを背中に乗せて俺たちの横を飛ぶ水色の鱗の『
「お兄様!これぐらいで音を上げてどうしますの!」
レイヴェルも厳しく
「平和だな」
「どこがですか!?」
走りながら呟くとキレのいい突っ込みが返ってくる。
なんだ、ライザーもまだまだ余裕そうだ。
一時間程走り、俺たちは軽く休憩していた。俺と一誠は水分を補給し、ライザーは肩で息をしながら倒れていた。
「………し、死ぬ………」
声も絶え絶えになっている。俺たちはまだ余裕だけどな。
「走り始めて一時間か。存外短く感じたな」
「確かに、あっという間ですね」
俺と一誠が余裕で喋っていると、ライザーが愚痴る。
「山にこもって修行など、本来野蛮人がすることだ!ロイ様はともかく、なぜ俺まで!」
「愚痴るなって。悪魔だって鍛えりゃ強くなるんだからよ」
「そうですよ。多少は泥臭いこともやっておいたほうがいいですって」
「だがな、俺は血と才能を重んじる上級悪魔なんだぞ!?そんな俺が、なぜ、なぜだ………?」
なんか真剣に考え始めてしまったので、俺は時計を確認するふりをして二人に言う。
「よし、そろそろ次行くぞ」
「はい!」
「ぐ、やってやる………!」
一誠は元気よく返事をし、ライザーは空元気のように立ち上がる。根性つけさせるならギリギリまで追い込まないとな。
こうして、ライザー立ち直り作戦第二段階。山籠りがスタートしたのだった。
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