グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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Extra life05 個人種目① パン食い競争

混沌の様相を見せると思われた運動会は()()()()()問題なく進行していた。

最初こそハラハラしていたが、存外、他の勢力も平和的に進めたかったのかもしれないな。

俺━━ロイはそんな事を思いながらヴィンセントに手伝ってもらってストレッチを行っていた。そろそろ俺の出番のはずだ。

前屈をする俺の背中を押しながらヴィンセントが言う。

 

「それにしても、この年で運動会をすることになるとはな」

 

「まったくだ。長生きするもんだなっと!」

 

俺も返事をしながら前屈を止めて立ち上がり、応援席前方に目をやる。

 

『ふれー、ふれー、あ・く・ま☆』

 

チアガール姿のセラが、同じくチアガール姿の女性悪魔と隊列を組んでパフォーマンスをしていた。魔法少女や執務服以外のセラを見るのも久しぶりだな。

俺が軽く見惚れるていると、

 

『パン食い競争に参加の選手は指定の場所に集合してください』

 

ちょうどアナウンスが流れた。さて、行きますか。

俺が移動を開始しようとすると、

 

『ロイー!頑張ってね☆』

 

セラがメガホンをこちらに向けてウインクをしながら声援を送ってくれた。

俺は笑みながら軽く右手を挙げて応えると、そのままヴィンセントに右拳を突き出す。ヴィンセントも笑みを浮かべてそこに左拳をぶつけてくる。

 

「頑張ってこいよ!」

 

「ああ。勝ってくるさ」

 

さて、頑張ってきますか!

俺はヴィンセントと別れ、指定の場所に足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選手が集合する場所に到着すると、俺に声をかけてくる奴がいた。

 

「よっ!おまえもこれか?奇遇だな」

 

「アザゼルまでいやがるのか。これは面倒なことになりそうだな」

 

「ああ。簡単には勝たせないぜ?」

 

アザゼルだ。好戦的な笑みを浮かべて俺を挑発してくる。

俺は苦笑しながらアザゼルに言う。

 

「まあ、お互い死なない程度に頑張ろうぜ?怪我だけはしたくないんでな」

 

「わかってるさ。俺もセラフォルーやサーゼクスに叱られたくはない」

 

アザゼルと談笑しながら列に並ぶ。俺とアザゼルは列の先頭、つまり第一レースだ。開始早々に決戦ってことだな。

何てことを思っているうちに入場が始まり、

 

「ロイー!頑張ってねー!」

 

「ロイお兄様!頑張って下さい!」

 

「ロイ先生!ファイトです!」

 

「ロイ、絶対に勝てよ!」

 

セラ、リアス、一誠、兄さんからの応援が俺の耳に届いた。

 

「マイマスター!頑張って下さい!」

 

「アザゼル様!我々に勝利を!」

 

「アザゼル!負けるなよ!」

 

グリゴリからの声援も聞こえてきた。なんだこれ、俺とアザゼルの一騎打ちみたいな感じになっているんだが……。

少しの不安を感じながら俺たちはスタート位置まで移動を完了、その場で待機となった。

 

『パン食い競争スタートの前に、簡単なルールを説明させていただきます』

 

移動が完了した俺たちの耳に審判役の男性悪魔の放送が届いた。どうやら、何かあるようだ。

 

『まず第一に、パンを一度くわえたら落としてはならないこと。落とした場合は失格となってしまいます』

 

なるほど、食らいついたら離すなってことだな。

 

『第二に、妨害はなしです。暴力はなしでいきましょう』

 

妨害する前提で決められたルールとか怖すぎるだろ!?

 

『第三に━━━』

 

突然審判の声が途切れた。何だ、変更事項でも見つかったのか?

パン食い競争に参加する俺たちが首を傾げていると審判が続けた。

 

『第三に、吐かないでくださいね?……以上です!』

 

審判はそう言うとマイクの電源を切った!

ちょっと待て!『吐かないでくださいね?』って何だ!?パン食っていきなり走ったら吐くかも的なやつなのか!?

周りの選手にも困惑が広がっていく!

 

『それではパン食い競争を始めます。第一レースのランナーはポジションについてください』

 

俺たちの疑問は解消されることはなく、競技が始まろうとしていた。こうなりゃやけくそだ!やってやんよ!

心の中でそう決めて俺はクラウチングスタートの態勢に入る。アザゼルを含めた他の選手もそんな感じだ。

 

『位置について、よーい………ドン!』

 

掛け声と同時に俺たちは走り出した!スタートダッシュは割りと成功!だが、アザゼルが食らいついて来てやがる!

スタートで抜き出した俺とアザゼルは一位を争いながらパンの元まで走っていく!前方に紐で吊られたパンを発見、ダッシュの勢いを極力殺さず、かつパンをくわえられるようにスピードを調節してパンに飛び付く!

俺とアザゼルはほぼ同時にパンをくわえて着地した。普通だったら一番苦戦しそうなところをあっさりクリアできたな。だが、それはアザゼルも同じ事か!

俺とアザゼルは再び走り出そうとしたが、同時に片ひざをついた。

な…なにこれ……まず、くさっ!

食ってから若干の時間差で俺を襲ったのは強烈なまでの臭みだった!本当になんなんだこれは!?や、やばい、足がガクガクしてきたし涙も出てきた……。横を見るとアザゼルも同様のようだ。

俺とアザゼルか悶えていると他の選手もパンに食い付き、そして崩れ落ちていった。

 

『あーっと、ついに第一レースの選手全員がパンの餌食となったぁぁぁぁっ!』

 

なぜかテンション高めの実況が悶え苦しむ俺たちの頭に響いた。やばい、大音量なだけなのにダメージが……。

実況は耳を塞ぎ始めた俺たちに構わずに続ける。

 

『そのはずパンは冥界の様々な調味料をブレンドすることで作り出した特殊はクリームが入っています!そんなクリームパンの効果は絶大のようだぁぁぁぁぁっ!』

 

これがクリームパンなわけあるか!そう言い返したいが、口から落としたら失格になっちまう……!くそっ!行くしかねぇのか……。

俺は這うようにしてゴールを目指し始めた。ただパンをくわえただけなのに入院間違いなしのダメージを受けてるんだが、もうどうしようもない。

アザゼルも負けじと這いながらゴールを目指す。

他の選手は失神したのか微動だにしない。俺もああなれば楽になれる気がする……。

そんな考えが脳裏をよぎったが、歯を食い縛って意識を保とうとするが、食い縛ったせいで再びさっきの臭みに襲われて悶え苦しんだ!

その間にアザゼルが俺を抜いて一位になってしまっていた。くそ!逃がすかぁぁぁぁっ!

俺は再び歯を食い縛り立ち上がる!再び強烈な臭みに襲われるが、耐えるしかない!

 

『おおっ!ロイ選手が立ち上がったぁぁぁぁぁぁっ!必死に歯を食い縛り、涙をためながら立ち上がりましたぁぁぁぁぁぁっ!』

 

俺はふらつく足を懸命に踏ん張って一歩ずつ前に踏み出していく。少しずつだがアザゼルに追い付き、少しだけ前に出れた。もうちょい、もうちょいでゴールだ!

そう思うと同時に背後から何かが迫ってきていた。目だけで横を見るとアザゼルだった!あいつも目に涙をためながら立ち上がり、俺との距離を詰めてきていたのだ!

 

『アザゼル選手がロイ選手に追いついたぁぁぁぁっ!これはどちらが勝つのかわからないぞぉぉぉぉっ!』

 

実況が俺たちを煽ってくるが、マジでそれどころじゃない……。視界がぼやけてきた……。

 

「ロイ!負けないでぇぇぇぇ!」

 

「ロイお兄様!もう少しです!」

 

「ロイさん!頑張れぇぇぇ!」

 

みんなが俺に声援を送ってくれていた。それさえも聞き取りずらいんだが、もう頑張るしかねぇな……!

俺は一歩、また一歩とゴールに迫っていく。同時にアザゼルも前に踏み出し、ラストスパートに入っていった!

あと十五歩もあればゴールだっ!

そう思った矢先、俺は崩れ落ちた。あ、足が動かなくなってきた。このパン、もはや兵器の類いだぞ……。

アザゼルは俺よりも三歩程前に出てから崩れ落ちた。あっちも限界か……。

俺は腕の力だけで前に進み、アザゼルを追う。アザゼルは動かなかったが、俺が追い付くと同時に再び前進をし始めた。

数分後、二人の男の意地の張り合いが、俺たちの意識が落ちると同時に幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロ━━だ━じょ━ぶ!?ロイ、大丈夫!?」

 

聞き覚えのある声を聞いて俺の意識が戻った。

 

「セラ?あれ、レースは?」

 

後頭部に感じる独特の柔らかさを堪能しながら訊くと、セラは笑顔で俺の頭を撫でてきた。

 

「あなたの勝ちよ。あなたよりも先にアザゼルが意識を失ってパンを落としたの。全員失格ってことで最後まで残ったあなたの勝ちになったわ」

 

「それは、良かった……」

 

俺は安心したところでセラに訊く。

 

「で、何で俺は膝枕されてんだ?」

 

「ふふ、勝ったご褒美よ♪」

 

「そうか。なら、もう少しだけ休ませてくれ……」

 

「ええ、借り物競争の集合が始まったら声をかけるわ」

 

「……頼む」

 

俺はそう言って不安を感じながらも意識を暗闇に落としていった。

この運動会、まだ何かあるぞ………。

 

 

 




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