「ふぅー………」
ため息と一緒にタバコの紫煙を吐き出しながら、俺━━ロイは周囲に気を配る。
警備に参加してからざっと七時間。リアスたちのゲームが始まってから二時間程。
俺の背後にあるアグレアス・ドームからは絶えず歓声が聞こえてくる。
「ふぅー……」
短く紫煙を吐き、タバコを携帯灰皿に押し込む。これを何度繰り返したか、数えるのもバカらしくなってきた。退屈だ、いや、いいことではあるがな。
俺は時計を確認する。リアスたちのゲームのルールが何かはわからないが、『
次のタバコを取りだし、口にくわえて火をつける。再び紫煙を吐き出すと、紫煙とは別の煙、いや濃い霧が頭にかかった。
気持ちの悪い霧に体を包まれ、それが晴れるころにはアグレアス・ドームの前にいた。いや、アグレアス・ドームと言ったら違うな、あの疑似京都と同じ作りもの………。
ってことは、つまりそういうことか。
俺は紫煙を吐き、目の前に立つ右目に眼帯をつけた青年を見る。
「………ったく、まさか来るとはな」
「今回はあなたに用がありましてね」
目の前に立つ青年、曹操が槍で肩を叩きながら言う。
俺はタバコを携帯灰皿に押し込み、その代わりに銃剣を取りだし、銃口を曹操に向ける。
その瞬間、俺の真横に白い閃光と共に何かが降り立った。
「言ったはずだ、邪魔をするなと」
鎧を身にまとったヴァーリだ!こいつも本当に来やがった!
「ヴァーリ、マジで来たのか………」
「ああ、自分で言ったことだからな」
驚く俺をよそに、ヴァーリは冷静に返してヴァーリは構える。俺も続くように構え、曹操を睨む。
「やれやれ、来てしまったのなら仕方ないか」
曹操は息を吐くと、槍の石突きで地面を叩く。すると、どこからか大量のアンチモンスターがわき出てきた。俺とヴァーリを囲み、不気味な唸り声をあげている。
「色々と出てきたが、ヴァーリ、他のメンバーはどうした?」
「ここに飛び込めたのは俺だけだ。あいつらは周囲を固めているころだろう」
「逆に言えば、曹操は一人、いや、ゲオルグもどこかにいるのか」
「そうだろうな」
ヴァーリは頷くと、俺に言ってくる。
「俺はゲオルグを叩く。そうすれば、この空間も解除されるからな」
「任せた。ゲオルグってか、結界系の
「任せろ」
ヴァーリはそう言うや否や、高速で動きだしてアンチモンスターを蹴散らしながらどこかに行ってしまう。
俺は息を吐き、曹操に言う。
「まったく、俺は面倒が嫌いなのによ。何をしに来た」
「あなたと手合わせしたくなっただけですよ。小次郎には悪いと思いましたが、あなたと戦ってみたくなった」
「変な奴に興味を持たれるな。なんかうぜぇ」
「そうですか?ですが、私も急いでいますので、ゲオルグが見つかる前に始めましょうか」
曹操はそう言うと、器用に槍を回して構えを取る。
静寂が俺と曹操の間を支配し、それを破るのは………。
「━━━ッ!」
もちろん俺だ。俺は弾丸を放ちながら高速で飛び出し、一気に曹操との距離を詰めていく!
曹操はそれを読んでいたかのように、全ての弾丸を弾き、突っ込んでくる俺に合わせて突きを放ってきた!
俺は右の銃剣でそれを反らし、左の銃剣で斬ろうとすると、曹操は素早くその場を飛び退く。
空を切った左の銃剣の銃口を曹操に向け、引き金を引く。放たれた弾丸はまっすぐ曹操に向かうが、槍で弾かれて俺の足元に着弾、小さく地面を抉る。
やはり、遠距離攻撃には対策済みか。
俺は銃剣を変形させ、二刀流の構えに変える。
それを見た曹操は、待っていたと言わんばかりに笑むと槍を握り直す。
俺は短く息を吐き、一気に飛び出す!
一気に肉薄した俺に、曹操は槍を右から横凪ぎに振り抜いてくる!俺はそれを右の剣で受け止めると、そのまま上に弾きあげて左の剣で斬りにいくが、素早く戻された槍に阻まれる。
ぶつかり合う剣の刃と槍の柄が激しく火花を散らし、俺と曹操は睨みあう。
「その目、やはりダメだったようだな」
「ええ。フェニックスの涙はありましたが、これは己への戒めとして残しておきました。代案は考えています」
「そりゃ、怖いな!」
俺はそう言いながら曹操を押し返し、そのまま至近距離での攻防となった!
鎧のような防御手段のない俺だと、聖槍のオーラを掠めただけでも重症になる。本体とオーラの間合いを計り、確実に避けていかなければならない!
俺は冷や汗を流しながら、曹操の攻撃を捌き、こちらも攻撃を打ち込んでいく!一瞬の油断が命取りになるな!
曹操の振り下ろしを、俺は頭上で剣をクロスするようにして受けると、爪先に滅びの刃を生成して曹操に蹴りを放つ!
曹操は目を見開きながら、それを避けるために後ろに跳ぼうとするが、俺はギリギリで刃を伸ばして距離を稼ぐ!すると、
「チッ………!」
曹操は舌打ちをして、大袈裟に後ろに飛び退く。見ると、腹の右には血が滲んでいた。少し浅かったが、当たったようだな。
俺は不敵に笑み、曹操に言う。
「やりにくいが、
「まだ死ぬわけにはいかないな…………!」
曹操は静かに、それでいて力強く言うと、槍が纏う聖なるオーラが大きくなる。ここからが本気のようだな。
俺は剣の柄頭を合わせて両剣モードに、そしてそれを投げつける!
高速回転しながら飛ぶそれを、曹操は余裕で避けてこちらに突貫してくる!俺は両手に直刀を生成してそれを迎え撃つ!
聖槍が残すオーラの残光と、俺の直刀が残す紅の残光が火花を散らしながら激突していく!どこをどう打ち込んでも捌かれ、俺も当たりそうなものだけ素早く捌いていく!
俺が左の直刀で突きを放つと、曹操はそれを弾かずに、俺の背中を取るように避けた!
曹操がその隙を見逃すわけもなく、俺の背中に聖槍を突き刺そうとする!
俺は翼を展開し、そこに刃を生成、無理やり聖槍の一撃を止める!
曹操は驚きながらも聖槍のオーラを解放、俺に浴びせようとしてきていた!
俺は直刀を大剣に変更、そのままオーラを纏わせて地面を殴りつける!
砂塵と共に微量の滅びが宙を舞い、曹操を下がらせることには成功したが、一応その場を飛び退く。その瞬間、俺のいた場所に聖なるオーラが放たれ、地面が抉りとられた!
危ねぇ、あと少しで消し炭になるところだった………。
俺は少し荒れた息を整え、聖なるオーラを頼りに曹操の場所を特定し、そちらに目を向ける。
曹操も肩で息をしているようだ。戦闘時間こそ短いが、ここまで疲れる戦闘もないな。
俺は息を吐き、曹操に言う。
「ったく、本当に面倒な奴だな。こっちは当たっただけでアウトだってのによ」
「異形からも恐れられたあなたに言われるのなら、それは本当なのでしょうね。一応、褒められていると受け取っておきます」
「面倒だな………」
俺が呟くと、曹操の後方から両刃剣が戻ってくるが、それも読んでいたかように避けられた。やはり、ロキみたいにはいかないか。
俺は両刃剣をキャッチし、改めて二刀流の構えを取る。
俺が曹操を睨むと、曹操はやる気を失ったように槍を肩に担ぐ。
「もう少しやりたいところですが、そろそろゲオルグが見つかったころでしょう」
それを合図にしたように、ゲオルグが短距離転移で曹操の横に現れる。ローブがボロボロになっており、肩で息をするほど消耗しきっているようだ。相当暴れたらしいな。
ゲオルグを追うように現れたヴァーリも俺の横につく。目立ったダメージはなさそうだ。そこまで心配はしていなかったがな。
「やれやれ、アンチモンスターが倍は必要だったな」
「いや。数は関係ないよ、彼には………」
曹操が言うと、ゲオルグは苦笑しながら頷く。
俺は構えを解かずに曹操に言う。
「で、まだやるか?俺は構わないが」
「俺もだ。おまえとも戦いたいからな、曹操」
俺とヴァーリの視線を受けた曹操は苦笑し、首を横に振る。
「いえ、先程も言いましたが、ここまでです。今日は退かせてもらいます」
曹操が言うや否や、俺たちを霧が包み始める。
俺たちを転移させるつもりか!逃がすかよッ!
俺とヴァーリが飛び出すと、曹操が聖槍をかざして閃光を溢れさせる!
俺とヴァーリは閃光による目眩まし、聖なるオーラによるダメージで一気に減速する。てか、これ以上近くに行ったら、体が耐えられずに消し飛んじまう!
閃光と霧が晴れると、そこは風景は変わらないアグレアス・ドーム前だった。変わったことがあるとしたら、歓声が聞こえるってぐらいか。
で、ヴァーリは白い閃光となって、どこかを目指して急速に離脱していった!今いけば、追いつけるかもしれねぇな!
俺が翼を展開、飛び出そうとすると、
「ロイ、待て!」
突然の制止の声に、俺は驚きながらも声の主に目を向ける。
「アザゼル、どうしてだ!?今いけば………」
「まぁ、待てって。次は敵とは限らねぇだろ?」
「次こそ敵かもしれねぇだろうが!あー、くそ!」
どこかずれているアザゼルに愚痴りつつ、俺はヴァーリが消えた方向に目をやる。もう見えなくなってるな。
アザゼル的には助けてくれたという恩を、見逃すという恩で返すつもりかもしれないが、バカじゃないのか!?
俺はため息を吐き、怒気を込めてアザゼルに言う。
「あのな、あいつはテロリストだぞ!?助けてもらったとはいえ、敵だってことに変わりはない!」
「どーせ、すぐに会うことになるさ。そんな予感がするんだよ」
「ったく。で、ゲームはどうなった?」
俺は気分と共に話題を変える。気になっていたことだしな。
「リアスたちが勝ったよ、ギリギリだったがな。イッセーは新しい力に目覚めた」
「そうか」
俺は返事をしながらタバコを取りだし、それをくわえて火をつける。
俺が紫煙を吸い込んだ矢先、
「あと、イッセーがリアスに告白したぞ」
何てことを言ってきやがった!
「ゴホッ!!ゲェホッ!」
思わず紫煙を吸い込みすぎて、途端にむせかえる。あいつ、告白したのか!?こんな大舞台でやらなくてもいいだろうが!
俺は涙ぐむ目を擦りながら、アザゼルに言う。
「マジかよ、ちょっと見に行けば良かったな………」
「ま、そのうちちゃんとやるだろうよ。その時に何か言ってやれ」
「ああ、そうするよ」
俺は返事をしながら改めて紫煙を吸い、ゆっくりと吐き出す。やれやれ、明日の新聞が楽しみだな。
何てことを思いつつ、俺は治療中と思われるリアスたちとは別に帰路につくことにした。
曹操とヴァーリ、次はいつ会うことになるんだろうな。
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