リアスとサイラオーグたちのゲームが終わり、待ちに待った学園祭となった。
俺━━ロイは模擬店で勝った焼きそばをすすりながら、旧校舎の一階の奥にある部屋に来ていた。一誠に伝言があるからだ。
「で、おまえ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」
なぜか頬が赤く腫れている一誠を心配しながら、焼きそばをすする。存外いい出来ばえだ、美味い。
俺は一気に焼きそばを平らげ、一誠に言う。
「それでだ。話ってのは、サイラオーグについてだ」
「サイラオーグさんに何かあったんですか!?」
サイラオーグの名前が出たことで急に真剣になる一誠。こいつ的に言わせれば、サイラオーグは憧れの存在なんだろう。次も勝てるかと訊いたら、「無理」と即答された。
俺は咳払いをして、一誠に言う。
「ああ、サイラオーグと繋がっていた上層部の連中、一斉に手を引きやがった」
「………そんな」
急に元気がなくなる一誠。自分が勝ったせいで、とか考えているんだろう。
サイラオーグは己の夢の実現のために、様々な悪魔とパイプを持っていた。だが、今回の敗北でそれを全て失った。
「一誠、忘れるな。悪魔は実力が全てであり、負けた奴の利用価値はない。それを未練なく、あっさり捨てられる。そういうのが昔から生きる悪魔であり、悪魔の形のひとつだ」
「あんなに立派に戦ったのに………」
「悔やむなよ。あいつと殴りあったおまえが心配なんて、やっちゃいけないことだ。そのうちおまえもそこに飛び込むことになるんだ、腹くくっとけ」
「次期当主の座は?」
「そっちは問題ない。実力も世論もある、そう簡単には揺るがないさ」
それを聞いた一誠はホッと息を吐く。ようやく安心したようだ。
俺が一通り話終え、リアスについて訊こうと口を開く。
「一誠、ところで━━━」
「おー、イッセー。ここにいたのか」
それを遮るようにアザゼルが入ってきた。こいつがいたら訊くに訊けねぇな。
俺はため息を吐き、アザゼルに言う。
「ったく、相変わらず気配を感じなかったぞ」
「ま、そこは年の功ってやつだ。イッセーを借りるぞ」
「わかった。一誠、後でな」
「え?あ、はい!」
俺は一誠の返事を聞いて部屋を後にする。次は新校舎だ。ソーナに軽く話をしたい。
しばらく歩き、新校舎に到着。各クラスの出し物を横目に見ながら、生徒会室に入る。
「すまん、邪魔するぞ」
「ロイ先生、お疲れ様です」
書類を確認していたと思われるソーナが顔をあげる。ソーナは基本的に俺を『様』で呼ぶが、学校生活では『先生』呼びだ。オフの時ぐらいは『お
それを口には出さず、俺はソーナに返す。
「お疲れさんっと。聞いたぜ、そっちは旗とりをしたんだってな」
そうなのだ。ソーナもリアスたちと同じ日にゲームを行っており、相手はシーグヴァイラ・アガレスというソーナと同年代の女子悪魔だ。眼鏡をかけているし、少し固いところもあり、雰囲気は結構似ていると思う。
ソーナが表情を固くしながら言う。
「大変でしたし、評価もあまり良かったとは………」
「匙、暴走したんだってな。ったく、焦りすぎなんだよ」
「彼を止めるのも、私の役割なのですが………」
「それもそうだが、何で『
「………………」
立て続けの言葉に、ソーナは黙りこんでしまう。俺は息を吐いて話題を変える。
「ま、それはそれだ。これから頑張っていけばいい。話は変わるが、いつになったら『お
「………へ?」
俺の言葉にソーナは間の抜けた表情になる。まぁ、その表情を見せてくれるだけで信頼はされているんだろうな。
俺は改めて言う。
「だから、いつになったら『お
「な、な、何を言い出すんですか!?」
珍しく慌てる、いや照れるソーナ。こういうところは変わらないな。いじるとすぐに冷静さを欠く。
俺は続ける。
「だってよ、昔は『おにーたま!』とか言ってくれてたのによ。今じゃ『様』だの『先生』だぜ?オフの時ぐらい『お
「そそそ、それはあれです!お姉様と結婚なさってから………」
「それがかなり先になりそうだから言ったんだが、まあ、いいか」
俺はそう言いながら扉の方に目を向ける。ソーナがつられるようにそちらに目を向けると、目を見開く。薄く扉が開いており、そこから室内を覗く目が複数。
俺はフッと鼻で笑い、ソーナに言う。
「たまにはキャラじゃないことをしてみるもんだな」
「ロイ様…………!」
「あばよっ!」
俺は逃げるように軽く手を挙げ、さっさと部屋を出ていく。
部屋を出た瞬間に覗きこんでいた生徒会のメンバーと目があったが、軽くウインクだけやって逃げた。
後ろから「あ、あなたち、何をしているのですか!」とか、「いえ、報告に来たら会長と先生が━━━」なんて聞こえてきたが、あえてスルーした。面倒だからな。
その後、無事に学園祭も終わり、俺はある予感がしてオカ研の部室に来ていた。正確には、部室の扉を薄く開けて中を覗いている。覗いておいてなんだが、さっきの生徒会のメンバーの気持ちがわかる気がする。
中にはリアスと一誠だけであり、告白にはもってこいの場所だろう。何を言っているかはわからないがな。
「ロイ先生、何をされているんですか?」
俺に近づいてくる気配がひとつ。そちらに目を向けると、そこにはアーシアがいた。
俺はアーシアにジェスチャーで静かにするように伝え、手招きする。アーシアは頷いてこちらに来ると、俺と同様に中を覗きこむ。
「はぅっ!リアスお姉様とイッセーさんか!」
「おっと、まだ行くなよ?様子見だ」
「はい!」
アーシアは顔を真っ赤にしながら頷く。
その後、覗く部員が増えていき、家庭科室に料理をしに行ったレイヴエル以外の部員が勢揃いしてしまった。
そんな矢先、リアスと一誠がキスをしようとし始める!
「む!イッセーとリアス部長がキスを!」
「ちょっ!ゼノヴィア、押すな!」
口に出したがもう遅く、扉がギィィと音を立てながら開いていく。何にいた二人とバッチリ目があった。
「とりあえず、おめでとさん!」
俺は笑みながら二人に言うと、
「「何をしているんですか!?」」
異口同音で返してきた。うん、息ぴったりだな。それはそれとして、俺は笑みを絶やさずに弁明する。
「妹とその想い人が二人っきり、覗くなという方が無理だろ」
「「…………………」」
俺の言葉に二人は完全に固まった。言い過ぎたか?
俺がなんてことを思っていると、
「皆様、ケーキを焼いてきましたわ!」
レイヴェルが大きなケーキを持って入室してきた。ある意味いいタイミングだな。
レイヴェルは俺たちを見渡すと、俺に訊いてくる。
「あの~、この状況は、いったい………」
「ま、気にするな」
「気になりますわ!」
俺とレイヴェルがそんなやり取りていると、リアスが突然叫んだ。
「こうなったのもイッセーのせいよ!何もここで告白しなくても!」
「え!俺のせいですか!?」
「「「「「「「「そういうことにしましょうか」」」」」」」」
「そういうことだ、諦めろ、一誠」
「そ、そんなぁぁぁぁぁ!」
イッセーの叫びと共に今日は幕切れ━━━。
「っと、訊いていなかった」
「どうかしたんですか?」
俺は一誠の目をまっすぐ見据えながら、再び訊く。
「一誠、おまえにとって、リアスは何だ?」
一誠は何かに気づき、一瞬ハッとした表情になると笑みながら返してきた。
「『リアス』は俺にとって、最高の女性です!」
「ふっ、ハハハハハッ!やっぱり最高だよ!イッセー!」
俺は爆笑しながらもイッセーの横に立つリアスを見る。顔を真っ赤にして頭から煙を吹いているが、リアスが選んだ男だ、信頼できるだろうよ。
「って、あれ?ロイ先生、今………」
「あ?イッセーって呼んだが、何か問題あるか?」
「いいえ!そんなわけないです!」
俺の呼び方の変化に喜びながら、イッセーは照れ臭そうに笑う。まったく、最初から素直になれば良かったのによ!
こうして、今度こそ学園祭は幕を閉じた。
こいつが未来の
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