グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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幕間編④
Extra life01 人魚を求めて


とある休日。

 

「……暑い」

 

俺━━ロイは一人っきりで、大量の汗を流しながら白い砂浜に立ち尽くしていた。

休日ではあるが休暇ではなく、仕事をしに来たのだ。

本来なら、リアスたちかソーナたちの仕事なのだが、リアスはグレモリー領に現れた『リアスたちの偽物』を退治をしに向かい、ソーナたちは予定が空いていなかったそうだ。

そんなわけで、暇をしていた俺に白羽の矢が立っちまったわけだ。こうして何もせずに汗を流しているんだが、個人的にはその『偽物』ってのに興味があったんだがな。仕方ない。

てか、日本は秋だってのにこっちは真夏とか、こんな調子じゃ体調崩すぜ…………。

 

「はぁ…………」

 

俺はため息を吐きながら仕事だと割り切り、ある人物に会うために移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩くこと数分。

俺は先程の砂浜から離れ、波打ち際の岩礁に来ていた。

俺は周囲を見渡しながら歩き、目的の人物と思われる女性を発見した。

鮮やかな緑色の長髪の美人だが、性別とは別に俺とは決定的に違うものがある。彼女の下半身が魚のようになっているのだ。つまり、俺の目の前には『人魚』がいる。

まあ、マジの魚に人間の手足が生えただけの人魚もいるが、出来ることならそんな化け物には会いたくない。

俺はその人魚に声をかける。

 

「よっ。あんたが保護を求めているヒトだな?」

 

俺の問いかけに、人魚は髪を弄りながら恥ずかしそうに頷く。

俺も頷き返し、自己紹介する。

 

「俺はロイ、ロイ・グレモリーだ。話は聞いているぜ」

 

「わ、私はリリティファ・ウェパルです。は、はじめまして………」

 

リリティファが見た目通りのかわいらしい声で自己紹介をしてくれた。よし、情報通りだな。

ちなみに、ウェパル家は断絶したはずの一族だ。ソロモン七二(ななじゅうふた)(ばしら)の悪魔たちは、三大勢力の戦争や二天龍との戦い、そして旧魔王派とのいざこざのせいでだいぶ数を減らし、今では『元七二柱』なんて呼ばれているのだ。

魔王様たちは、その断絶したと思われていた一族の生き残りは発見しだい接触、場合によっては保護することを人間界に住む悪魔のルールとしている。今回は保護を求めてきたので助けようとしているわけだ。

ある意味、俺に白羽の矢が立って当たり前だな。完全に俺向きの任務だ。

俺は魔方陣でマニュアルを取りだし、メモを取る準備をしてリリティファに言う。

 

「それじゃ、いくつか質問させてもらうぜ」

 

「はい」

 

リリティファの返事を聞き、俺は質問を始める。内容としては、今までどうやって暮らしてきたのか。現悪魔業界をどう思っているか。生活面での不満、不便はあるのか。など、簡単なものだ。

そして、俺が最後に『現在、不安なこと』を訊いたとき、リリティファが表情を曇らせる。これは、問題ありのようだ。

 

「リリティファ、素直に言ってくれ。出来る限りの対処はさせてもらう」

 

俺ができるだけ優しい声で言うと、リリティファはもじもじしながら口を開く。

 

「……え、えっと………実は……怖いヒトに脅されてまして………」

 

脅されている。………これは、面倒の予感だ。

俺がそんな事を思ってしまったからなのか、周囲に黒い霧のようなものに覆われてしまった。

この霧、魔力で作り出しているようだ。微量だが、魔力を感じとれる。

霧の魔力を感じて、リリティファは怯えて小さく震えだした。

俺が周囲を警戒していると、不気味にきしむ音が周りに木霊(こだま)する。

 

『見つけたぞ、ウェパルの人魚』

 

不気味な声と共に現れたのは、大型の帆船だ。海賊━━いや、それにしてはボロボロすぎるから幽霊船か。

その幽霊船は岩礁に停留する。

 

「我こそはキャプテン・グラッグ!」

 

船首に身を乗り出し、声高々と吼えたのは海賊風の格好をした怪人だった! なんとなくだが、チョウチンアンコウみたいな顔してやがるな。左目に眼帯、手にはサーベルを持っている。

問題なのはそこではなく、船の帆に描かれているものだ。帆にはよくある骸骨ではなく、魔方陣が描かれている。あの魔方陣、確か………。

 

「フォルネウス家の魔方陣。リリティファ、おまえも苦労していそうだな」

 

「は、はい」

 

俺の言葉にリリティファは頷く。怖いヒトってのは、あのチョウチンアンコウか。

フォルネウスも元七二柱に連なる上級悪魔だが、名前がわからないからチョウチンアンコウでいいよな?怪人タイプの悪魔に会うのも久しぶりだ。

俺がそんなことを思っていると、チョウチンアンコウが下僕を引き連れ、堂々ともの申してくる。

 

「ここが我がフォルネウス家の領域と知っての狼藉(ろうぜき)か!?反応からすると、我らと同じ悪魔だな?」

 

それを知ってもチョウチンアンコウの態度は変わらない。だが、部下からの一言で表情を変えた。

 

「キャプテン!この魔力の質は上級悪魔のものですよ!」

 

それを聞いて俺の髪を見てくるチョウチンアンコウ。赤く光る目を細めた。

 

「紅の髪………グレモリーか。これは失礼した。私はフォルネウス家のグラッグ・フォルネウス」

 

グレモリーの名は効果バツグンだ。おっと、俺も名乗り返さないとな。

 

「俺はロイ・グレモリーだ。あんまり知られていないがな………」

 

俺は後頭部をかきながら言う。フォルネウスは後半を無視して「フン」と鼻息をあげた。

 

「ふむ。なるほど。だが、そちらの人魚は私が捜索していた者なのだ。話し込んでいるなか申し訳ないが、引き渡してもらえぬだろうか。今日こそはその者を我が眷属に迎えようと思うのだ。ぐふふふふ」

 

こっちは大事な仕事中だってのに、その物言いとはな。そして、下品な笑い。下心丸出しだな。イッセーがいたら、どんな顔をするかな?

 

「………怖いです」

 

リリティファが俺の背中に隠れる。かなり脅されていたようだな。

俺はリリティファを庇いつつ、チョウチンアンコウに言う。

 

「フォルネウス家は語学に秀でていると聞いていたが、何事にも例外はあるようだな。なんで俺に仕事が回ってきたのか、理解できたぜ」

 

俺はわざとらしくため息を吐く。あんな奴に保護させたら、絶対に大変なことになる。

それにしても、こんなところで仕事はやれているのか?近くの島民相手に契約してまわっているのかもしれないが、もしかしたら海賊らしく剥奪とかをしているの可能性も………。

俺の態度が気に入らなかったのか、チョウチンアンコウは歯をむき出しにする。

 

「お、おのれ………!言わせておけば!他人(ひと)(さま)の縄張りに土足で踏み込んでその態度とは………!」

 

あー、面倒くせぇ。さっさと終わらせてアイス食いてぇのによ………。

俺が額の汗を拭うと、取り巻きの悪魔がチョウチンアンコウに進言する。

 

「キャプテン!ちょっと調べてみたんですけど、あ、あの方、グレモリーの中でも『謎の多く』、『影の薄い』ロイ・グレモリーですよ!」

 

「……………」

 

俺はその下僕悪魔の言葉にショックを受け、無言で口の端を引きつかせた。

『謎が多い』とか『影が薄い』とか言うなよ!結構気にしてるんだからよ!

 

「そして、『乳龍帝&スイッチ姫と七人の愉快な仲間たち+α』の『+α』ッス!」

 

なんか大変なことになってやがるっ!?なんだその長ったらしい呼び名は!『七人』がリアスの眷属で『+α』が俺とイリナか!?てか『+α』で片付けられたっ!

チョウチンアンコウはうんざりした態度で言う。

 

「その『脇役』が私の獲物を横取りしようというわけか」

 

その言葉で、俺の中の何かが切れた。

 

「誰が脇役だ!こちとら必死にやっているんだよ!」

 

俺が怒気を込めながら言うと、チョウチンアンコウが叫んだ!

 

「そのウェパル家の者は私が先に目をつけたのだ!」

 

「知ったことか!リリティファは連れていく!俺が何としてでも守る!」

 

俺とグラッグが睨み合っている時だ。

ザッパーン!と、海が大きく水柱を立てた!今度は何だよ!って、何かが飛び出してきた!?これ以上問題を増やさないでくれ!

海中から飛び出してきた何かは、空中で何回転もしてから岩礁に降り立った。

現れたのは頭に王冠、手には三叉の矛を持った、ふんどし姿のヒゲオヤジだ。

 

「海で喧嘩はいかぁぁぁぁぁんっっ!」

 

この一帯に響き渡るほどの大声を張り上げた!くそっ!耳が、耳がぁぁぁぁぁっ!

 

「何者だ!」

 

チョウチンアンコウが指を突きつけると、ふんどしヒゲオヤジは手に持った矛を器用にくるくると回して豪快に笑った!

 

「ふははははははははっ!天にゼウス、冥府にハーデス!誰が呼んだか、海の帝王!そう!我こそはぁぁぁぁぁっ!海を愛し、海に愛された男ぉぉぉぉぉぉっ!海の守り神、ポセイドォォォォォォォォンッ!」

 

『ポセイドン!?』

 

そう名乗った男以外の、この場にいる全員が驚愕の声を発した。

 

「ポ、ポセイドン様!?ど、どうして、ここへ!?」

 

「ふははははははははっ!海は我が領域!各神話体系を相手にテロ活動が頻繁になる昨今!パトロールは当然なのだぁぁぁぁあああっ!」

 

「神自ら!?」

 

俺が驚きながらもそう返すと、ポセイドンは少し怒気を込めながら俺たちに言ってきた!

 

「神だって、安全パトロールぐらいする!偶然ここを通りかかったら、悪魔同士のいざこざを発見したのだぁぁぁっ!仲間内で喧嘩なぞ、いかん!いかんぞぉッ!」

 

そう言いながら矛を振りかざすポセイドン。元気な爺さんだな……。

俺が苦笑していると、ポセイドンは話を続けた。

 

「よくわからないが、そちらの人魚を巡って喧嘩をはじめたのだな?よぉぉぉぉぉしっ!それなら悪魔らしくゲームで勝負をつけたらいいではないかぁぁぁぁぁいっ!」

 

「「ゲーム!?」」

 

俺とチョウチンアンコウはその提案を受けて驚愕した!

チョウチンアンコウは突然言われたからだろうが、俺は独りでやるからだ。この爺さん、人数数えてんのか!?

 

「俺、一人だけ何だが……」

 

俺が不満げに言うと、ポセイドンは豪快に笑って俺の頭を撫でてきた。

 

「細かいことはいいではないか!貴様ならやれるやれる!勝負はこのポセイドォォォォォォォォンが見届け人として仲介してやろうどはないかぁぁぁぁっ!いざ、尋常にゲームで人魚をゲットしろぉぉぉぉっ!ふははははははははっ!」

 

くそっ!休日ぐらいのんびりしたかったのによ!どうしてこう、行く先々で面倒ことになるんだよ!

 

「キャ、キャプテン!とんでもないことになってきましたよ!どうするんですか!?」

 

向こうも混乱しているようだ。まあ、この状況なら仕方ないか……。

 

「うぬぬぬぬ……!ポセイドン様まで登場されては引くにも引けんし、引く気もないのだが……!よーし!」

 

向こうは覚悟が決まったようだ。チョウチンアンコウは俺を指差しながら告げてくる。

 

「グレモリー家の脇役!そのウェパル家の娘をどちらが手に入れるか勝負といこうではないかっ!」

 

やれやれ、ここまで来たら引けないか。まぁ、こっちも引く気はない!

 

「上等だ!脇役、舐めんなよっ!」

 

俺は答えるように右拳をグラッグに突き出しながら叫んだ!

 

「………私、どうなるんでしょうか?」

 

俺の後ろから不安そうな声が聞こえてきたので、俺は振り向いて笑みを浮かべ、リリティファにだけ聞こえるように言った。

 

「安心しろ。あんたは俺が守るし、あんな奴に負けねぇよ」

 

こうして、俺とグラッグの一戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 




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