次の休日。
俺━━ロイは一人、転移室に来ていた。正確には来させられたのほうが正しいがな。
理由はもうわかっていると思うが、あの『アザゼルクエスト』に参加するためだ。アザゼル曰く、幸彦が選んだジョブに俺が合致したとのこと。
イッセーを生け贄にしたつもりが、まさかこんな形で関わることになるとはな。面倒なことになっちまったもんだ。
なんて思っていると、俺の前にある転移魔方陣が輝きだした。どうやら、お仕事開始の時間のようだ。さて、面倒だが、頑張りますかねっと。
俺は軽い感じで覚悟を決めて、転移魔方陣に乗り、光に包まれた。
光が晴れると、そこは緑広がる草原だった。なかなか広いな、地平線まで見渡せるぞ。
「ロイ先生!なんでロイ先生が!?」
俺の後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。振り向くと、そこには制服姿のイッセーとシスター服姿のアーシア、
『一人目のメンバーは、戦士のロイだ!』
どこからかアザゼルの野郎の声が聞こえた。どこにもいないし、多分別室でニヤニヤしながら、観察しているのだろう。
てか、銃剣使いの戦士っているのか?まあ、直刀を使えばいいか………。
「まあ、なんだ。戦士、ロイ・グレモリーだ。面倒だが、よろしく頼むぜ」
軽く右手を挙げて二人に言う。
「よろしくお願いします!」
幸彦が元気よく礼をしてくれた。冒険するなら元気でないとな。
『次に魔法使い!』
アザゼルの声と共に、転移魔方陣が展開され輝きだした。
魔法使いだろ?オカ研メンバーでそれっぽいのは朱乃か、ロスヴァイセか、はたまたリアスか。
なんて思慮していた俺は、すぐにその考えの甘さを痛感した!
「はーい!魔法使いのレヴィアたんでーす☆」
現れたのはセラだったからだ!何やってんだ!?仕事は!?
俺が目を丸くして固まっていると、セラは俺に飛び付いてきた!
「ロイィィィィィィィッ!」
「ごうはっ!」
突然飛び付いてきたセラに反応できず、そのまま押し倒される俺。すると、
『ロイは500のダメージを受けた』
アザゼルがそんなことを言ってきた!セラの体当たりが地味に強い気がするんだが!?
驚愕しながらも、俺の胸に顔を埋めてくるセラの頭を撫でる。やれやれ、これは、退屈しないだろうな。
俺は一度セラに退いてもらい立ち上がると、小さく溜め息を吐いた。すると、再び転移魔方陣が展開される。
『最後は………これだ!』
アザゼルが言い終わると同時に、魔方陣が輝き、そこから現れたのは!
「フハハハハ!私は遊び人ことサタンレッドだ!」
「「…………………」」
俺とイッセーは最後に現れたヒトを見て、目を見開いたまま固まってしまった。
当たり前だろう、現れたのがサタンレッドの格好をした兄さんだったからだ!
また、サタンレンジャーか!って、何やってんだよ!?セラといい、兄さんといい、仕事はどうしたんだ!?眷属に任せてきたのか!?てか『遊び人』!?なんか、アザゼルの人選がベストすぎるだろ!
「幸彦!遊び人って、なんでだ?何で選んだ!?」
「いやー、冒険に遊びも大事かなって」
なんて返してくる幸彦!確かに息抜きは大事だ!だが、こう、他になかったのか!?
「回復職がいない気がするんだけど……」
イッセーが幸彦くんに不安げにそう言うが、
「なんか、こう勢いで押すことも大事だと思うんです!」
幸彦くんは右手でガッツポーズをしながら、そう言った。
俺はイッセーに言う。
「このパーティだったら、楽勝でクリア出来ると思うぞ。てか、出来なかったら難易度の問題だ。それに、最悪アーシアがいるから大丈夫だろ」
俺がそう言うと、アザゼルが告げてくる。
『おっと、アーシアとイッセーは万が一のデバッカーだ。あまり頼りにするなよ?まあ、幸彦くんに危険があったら、回復してやるぐらいならいいがな』
なるほど、イッセーとアーシアはあまり頼りに出来ないと。頼ることがあるかも分からないがな。
俺たちがそんなことを話していると、
「あら、サタンレッドじゃないの☆」
「ふふふ、そういうキミこそ、マジカル☆レヴィアたんじゃないか。今日はよろしく頼む。今日の私は遊び人なのだ!」
「私は魔法使いよ☆うふふ、お互い楽しそうなゲームにお呼ばれされちゃったものね☆私、アジュカちゃんのゲームにとても参加してみたかったのよね!」
「全くその通りだ。アジュカの技術もすごいが、ここまでのものを作り上げるアザゼルもなかなかのものだ」
楽しげに話す魔王二人組!
最強の遊び人と最強の魔法使いって、俺の出る幕ないよな。戦士だけど後ろにいろってことなのか?面倒は嫌いだが、それはそれで切なくなるぞ………!
『よし、パーティが全員揃ったな。軽く説明するぞ』
さすがはアザゼル。このメンツを揃えただけはある。一切気にしていない。てか、どうやってこの二人を呼びやがったんだ!義姉さんとソーナの目を掻い潜って、どうやって二人を呼びやがったんだ!?
『説明は簡単だ。今日一日この空間を冒険してくれ。敵を倒してレベルを上げて、最終的に龍王を倒せばゲームクリアだ!』
なんて、説明をしてくるが、俺たちに倒される龍王が哀れに思えてくるぞ………。
『ちなみに、初期レベルだが、このゲームのシステムに当てはめると、幸彦くんのレベルが5としたら、戦士は4500、魔法使いと遊び人は5000ぐらいだ。まあ、システムがまだ完成していないから、適当なんだがな』
なるほど、なるほど。俺は4500ね。普通、レベルマックスって99とかじゃないのか?そこは完成していないから問題ないってか?
それを気にしてか、イッセーが叫ぶ。
「全員が別次元すぎますって!なんですか!?幸彦くんを除いても、最低で4500って!クリア後の隠しボスも一撃で倒せるんじゃないですか!何を求めて旅をしているんですか、このご一行はぁぁぁぁぁっ!」
イッセーの叫びは虚しく草原に響き渡った。元気がいいもんだねぇ………。
『さぁ、勇者一行よ!龍王を倒して世界に平和をもたらしてくれ!』
アザゼルはイッセーの叫びを無視すると、それっぽいことを言って、旅を開始させようとしていた。オープニング的な曲が………。
『アザゼルメグル、アザゼルメグル、アザゼルクエ━━』
「黙らっしゃい!」
なんか、やってはいけないことをした気がするが、こうなったら
「勇者よ、今日は共に冒険をしよう!」
「龍王なんて滅ぼしてしまいましょう☆」
「やるからにはノーコンティニューでクリアしてやろうぜ!」
遊び人のサタンレッド、魔法使いのセラ、そして、戦士の俺の順に勇者の幸彦に語りかけると、この子もその気になったのか、
「はい!俺、勇者として今日は頑張ります!」
勇者の気合いも十分!イッセーは何となくやる気がないようだが、ここまで来たんだ、最後まで付き合ってもらおう。
こうして、俺たち四人(内二人が魔王)の旅が始まったのだった。
広大な草原を歩き始めて数分。
『スライムが現れた』
アザゼルの声と同時に魔方陣が展開され、ゲル状の生き物が複数体出現した。
魔物はこうやって出現するのか。最初はスライムってのは、お馴染みだよな。
俺がゲームシステムに感心していると、幸彦が
「とおっ!」
ズバッ!っと幸彦の剣がスライムを切り裂いた!
『スライムに20のダメージを与えた。スライムを倒した』
ダメージまで言ってくれるのか、ありがたいような、迷惑なような。てか、今ので20って、セラの体当たりどんだけ強かったんだよ!
それはともかく、幸彦、なかなかいい動きするな。これは将来楽しみだな。
俺がそちらにも感心していると、セラが一歩前に出てスティックを突きだした!
「やるわね、勇者くん!私も負けてられないわ!くらいなさい、ファイヤーショット!」
セラのスティックの先端が輝いた瞬間、俺は咄嗟に幸彦の前に移動し盾を展開、衝撃に備えた!防御の態勢に入った瞬間!
グゴォォォォォォンッ!
俺たちの前方で、この空間を揺らすほどの衝撃と地獄の業火が巻き起こった!盾越しにでも伝わる熱気!なんてもん撃ってんだよ!
炎が止んだことを確認して、盾を消して周囲を見渡す。先程まであったキレイな草原が焦土とかしていた!スライム一匹に何てことをしてやがる!
『スライムに6300万のダメージを与えた。スライムを倒した』
アザゼルは冷静にそう言ってきやがった!あまりやらないからわからないが、ゲームでそんなダメージを叩き出すキャラなんかいねぇよ!てか、セラはスライムに恨みでもあるのか!?
「うむ、さすがは魔法使いだ。序盤の魔法でも十分にスライムを倒してくれる」
何てことを言う兄さん。そう言う兄さんも残ったスライムの前に立った。
「私も負けていられないな!遊び人として芸を見せようじゃないか!」
手元から滅びの球体をいくつも作り出していく。球体は縦横無尽に動き回り、スライムの方へと向かっていった。
「ここに取り出したのは、謎の球体。これをジャグラーのように回していき、敵に当てていく。すると……」
ギュパンッ!
滅びの球体がスライムを消し飛ばした!
「はい、不思議!敵は手品によって、キレイさっぱり消えてしまいました!」
「何がキレイさっぱりだよ!完全消滅じゃねぇか!アザゼルもダメージを言わねぇぞ!測定不能ってか!?」
『ああ、これは、なんと言えばいいか……』
「知るかぁぁぁぁっ!」
俺が何てことを叫んでいると、残っていたスライムが俺に体当たりをしてきた。
ポフッ……。
『戦士は1のダメージを受けた』
まぁ、1だよな。実感的には1もくらってないような気がするけど、システム上、仕方ないよね。
溜め息をつきながら直刀を生成、そしてスライムに構えた。
「俺に斬れないものはない!」
と、言いながらスライムに斬りかかる!
ズバッ!
『スライムに5900万のダメージを与えた。スライムを倒した』
うん、だよね。俺でも万までいくよね。
パンパカパーン!
突然、軽快なファンファーレが鳴り響いた!俺とイッセーは、何事かと警戒していると、アザゼルが告げてきた。
『レベルアァァァップ!』
今までに比べて異常にテンションが高いアザゼル。どうやら、レベルアップのようだ。
『魔法使いと遊び人、戦士のレベルが上がった!魔法使いと遊び人のレベルは5001に、戦士は4501になった!』
スライムだけで俺たちのレベルが上がった!?ここは幸彦じゃないのか!?俺たちでもそれぞれ1上がったんだから、幸彦くんは10とかいってるんじゃ……。
『レベルアップ終わり!』
え、終わり?レベル上がったの俺たちだけなのか!?どうなってんだよこのゲーム!クソゲー臭しかしねぇぞ!
「皆さんお強いんですね!自分の力量の無さを痛感します」
幸彦が若干気落ちしてしまった!やり過ぎたか?幸彦もなかなかいい線いってると思ったけどな。てか、周りが強すぎるだけだ。
初戦闘はそんな感じだったが、その後の戦闘も幸彦の初々しい攻撃と俺たち三人の圧倒的な攻撃で即終わらせ、予想通りサクサクと進んでいった。
ある程度進んだところで、幸彦くんの休憩のために、村に寄ることにしたのだが……。
「ここはカラ村だぞ」
手にデュランダルを持った少女、ゼノヴィアが村の入口に立っていた。いや、何でだよ。
同じ事を思ったのか、イッセーがゼノヴィアに訊いた。
「ゼノヴィア!お、おまえ、村人役なのか?」
「ここはカラ村だぞ。と常に言えとアザゼル先生から命じられているから、ここはカラ村だぞ、といい続けるだけだ。ここはカラ村だぞ」
つまり、ゼノヴィアはゲームでいうところのNPCってやつなのか。デュランダルを持った村人がいるって、この村は平和そうだな。
とりあえず、ゼノヴィアの横を通りすぎて村に入ってみる。木造のゲームっぽい建物がいくつも並び、質素な服装の村人が歩き回っている。
このエキストラの皆さんはどこからか集めてきたのか疑問がつきないが、今は散策だな。
「村の様子も本格的だなぁ。俺、武器が欲しいっス!」
幸彦は楽しげに走り回り、剣のマークがついた看板の店に入っていった。俺たちも後を追って歩き始める。
お金は十分にある。モンスターを倒すとその場でコインに変化したんだ。ゲームのシステムもしっかりしているようだ。金が手に入らないバグとかあったら詰んでいた。
俺たちが歩いていると、セラが言う。
「それにしても、楽しそうね。あの子」
「ああ、子供は元気が一番だ。自由できるうちに自由にやっておかないと、大人になったら忙しくなっちまうからな」
「それもそうだね。今度はミリキャスとグレイフィアを連れて参加してみようかな?」
「それは楽しそうだ。
「ふふ、今度はロイとのんびりやってみたいわね」
「はは、確かに」
「できれば、そこに私たちの子供も……」
「ん?何か言ったか?」
「何でもないわ」
よく聞こえなかったが、セラの顔はその時を楽しみにしている表情になっていた。そのうちオフでももらってのんびりするか。
俺たちが話している横で、イッセーとアーシアの会話も聞こえてきた。
「イッセーさん。今度、オカルト研究部の皆さんでピクニックに行きませんか?」
「いいなそれ!って、どうしたんだ、急に?」
「いえ、皆さんと草原を歩いていると、不思議とそう思ったんです」
「なるほど、それじゃ、今度リアスに訊いてみようぜ」
「はい!」
俺たち年長者三人は、その会話を聞いてほっこりしていたりする。
なんてことをしながらゆっくりと歩いていると、武器屋から幸彦くんが顔を出した。
「皆さん!お早く!お店の人が待ってるっス!」
「はいよ!」
「今いくわ☆」
「すまない、少し話し込んでしまったな」
俺たちは駆け出し、武器屋に入っていった。
……で、入って驚いたのだが。
「店員は木場か」
「はい。アザゼル先生から、『おまえなら、どんな聖剣でも魔剣でも用意できるだろ?』と言われまして」
若干苦笑しながらそう言う木場。こいつも苦労しているようだ。
頼めば聖魔剣も創ってくれそうだが、その手の適性とか因子がない俺たちに扱えるのかどうか。
「私は氷の魔剣が欲しいかも☆武闘派の魔法使いもいいわよね♪」
「では、私は炎の魔剣を。最近体を動かせていなくてね、攻撃力不足に悩んでいるんだ」
何て言いながら魔剣を頼む二人。二人はそんなもの要らないと思うんだけどな。さて、俺は━━━。
何て思いながら店内を見渡す。あんまりめぼしいものはねぇかな………。
俺は木場に言う。
「一番いい装備を頼む」
こうして、装備を整えた俺たちは、再びフィールドに出てモンスターを蹂躙していっていた。
因みに、俺がもらった魔剣は西洋剣を思わせる属性無しの切れ味重視のものだ。腰の後ろに回した鞘にいれて帯刀している。重さもほどよく、振りやすい。
そんなこんなで洞窟に来たわけだが、一番気をつけなければならないのは、兄さんとセラの攻撃魔法だ。火力がありすぎて洞窟が崩落しかねない。
「こんなに小さい滅びの球体を作るのは久しぶりだ」
パチンコ玉サイズの球体でモンスターを消し飛ばす兄さん。
「加減がちょっと難しいかも☆」
首をかしげながら敵を凍りつかせるセラ。それでもモンスターを蹂躙できるのは流石だな。
「俺は気にせずにいけるがな!っと」
などと言いつつ、先程買った魔剣と滅びの直刀の二刀流で敵を蹴散らす。兄さんたち程の派手さがない分、こういう時には俺の方が立ち回りやすいんだよな。
途中、宝箱から薬草のような何かも回収したが、このメンバーならノーダメージでいけるだろうから要らないと思う。まぁ、なくて困るものでもないからいいがな。
洞窟をさらに奥に進むと、少し開けた場所に出た。ゲームならここでボス戦となりそうな場所だ。
久々のような気がするアザゼルの声が洞窟に響いた。
『リザードマンが現れた』
どうやら、敵のようだ。リザードマンってことはトカゲ系の魔物か?何て思っていると、
ズゥゥン、ズゥゥン。
地鳴りをさせながら奥から現れたのは巨大なモンスター。大きな腕に、大きな脚、そして大きな翼!まさにドラゴンだ!って、こいつは!?
「……リ、リザードマン……だぞ」
恥ずかしそうにそう漏らしたのは巨大なドラゴンだ。だが、俺たちにはそのドラゴンに見覚えがあった!共闘したこともあるんだ、忘れるわけねぇだろ!
「タンニーン!?」
「タンニーンのおっさん!?」
俺とイッセーは同時に驚愕の声を出した!元龍王であり、
最上級悪魔のタンニーンが、何でこんなところに!?
「タンニーン、何でこんなところにいるんだよ?」
俺が訊いてみると、タンニーンは答えた。
「ロイ・グレモリー、兵藤一誠もいるのか。久しぶりだな。いやなに、アザゼル総督から依頼が受けてな。一人の少年を男にするために力を貸してくれと。だが、ここに赴いたら………このような役をしろと言われたのだ」
このゲーム、豪華すぎるだろ!パーティメンバーが魔王二人、ボスの一体が元龍王って、本当にすごいな!これからタンニーンと戦うのか?さすがに面倒だな………。
俺がため息を吐きながら魔剣を抜き放ち、いつものように構えようとすると、アザゼルの声が俺を制してきた。
『おっと!ここは勇者だけで挑む大事なイベントだ!他の者は手出しするなよ!』
「何だよ、早く言えよ………」
「まあまあ、ここは勇者くんに頑張ってもらいましょう」
「セラに言われるとな……。わかったよ。幸彦、頑張ってこい!」
俺は渋々後ろに下がりながら幸彦に檄をとばす!
「はい!任せてください!」
幸彦も元気に返事をして、タンニーンに挑んでいった!
こうして、勇者VS元龍王というカードが決まったのだった。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。