グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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Extra life06 魔法少女?魔王少女だろ?

とある休日。

 

「行きたい行きたい行きたいぃぃぃぃぃ!」

 

「お姉様、今回は我慢してください!」

 

「やだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

俺━━ロイはセラとソーナの姉妹喧嘩を見させられていた。

ソーナから話があると聞かされて来てみれば、こんな感じだった。

俺はため息を吐き、セラに訊く。

 

「なあ、そんなにすごいのか?その『ミルキー』っての」

 

「ロイも見ればきっとわかるわ!素晴らしい作品なのよ!」

 

不機嫌顔で言うセラ。

セラは時々、魔法少女のような格好をしているのだが、その元のアニメが『ミルキー』というのだ。

ちなみに、セラは基本的にリアスたちと大して変わらない年齢の姿をしているため、一部のヒト(主にイッセー)からは『魔王少女』と呼ばれていたりする。

俺が呆れ気味に言う。

 

「………で、そのミルキーを実写映画にするから、そのオーディションに参加したいと………」

 

「さっきからそう言ってるじゃない!」

 

セラが来週に迫ったオーディションを前にしてワクワク状態となり、ソーナがそれを察知、俺と協力して辞退してもらおうとしているわけだ。

ただですらセラは忙しく、『禍の団(カオス・ブリゲード)』に所属するはぐれ魔法使いに狙われていることもあり、俺としても見えている危険に飛び込んで欲しくない。

俺たちの考えを知りもしないセラは叫ぶ。

 

「行かしてくれなかったら、もうお仕事しないぃぃぃぃぃ!」

 

「「ッ!」」

 

セラの叫びに反応して、俺とソーナは小声で話し始める。

 

「(どうするよ。セラのことだから本当に仕事しなくなるぞ)」

 

「(それは厄介です。どうしてお姉様は………)」

 

俺たちが困っていると、セラがさらに爆弾を投下してくる。

 

「書類選考は通ったのよ!」

 

「「………………はぁ!?」」

 

俺とソーナは同時に間の抜けた声を出してセラに目を向ける。セラは不機嫌そうに頬を膨らませながら、目でドヤ顔をしている。

いつもなら「かわいい」とかで済ませるが、今回ばかりはそうはいかない。準備が良すぎるんだよ…………!

俺は諦めたようにため息を吐き、ソーナに言う。

 

「ソーナ、この際おまえも参加しろ。それでセラを守れ」

 

「……………え!?」

 

「いや、だから━━━」

 

「聞いていましたし、聞こえていました!な、なぜですか!?」

 

さすがに困惑するソーナ。こんな顔を真っ赤にしているソーナは結構珍しいな。

俺は咳払いをしてソーナに言う。

 

「オーディションに参加するってことは、それだけでセラが何をするかわかったもんじゃない。だから、ブレーキ役になれ」

 

「………………」

 

ソーナは困惑しながら目を泳がせる。かなり考えているようだ。

しばらく考えたソーナは、覚悟を決めたように口を開く。

 

「わ、わかりました………!私がどうにかしてみせます!」

 

「その言葉、待ってたのよ☆もうソーたんと眷属の皆の書類は送ってあって、みんな審査は通っているのよ☆」

 

セラはそう言うと、魔方陣を出現させてそこから何かを取り出し、俺たちに見せびらかしてくる。これは、フリフリな衣装…………?

俺が首をかしげている横で、ソーナは顔面蒼白となって小さく震え始めた。

 

「これがソーたんの衣装よ☆私とは色違いになってるの☆」

 

それを見たソーナは目に涙を溜めながら震える声を出す。

 

「ロ、ロイ様………わ、私は…………」

 

俺はソーナの肩に手を置きながら提案する。

 

「まあ、なんだ。リアスたちにも手伝ってもらおうぜ?」

 

「………は、はい」

 

「そう言うと思って、リアスちゃんと眷属の皆の分の書類も送ってあるのよ☆」

 

震えながら頷くソーナとドヤ顔のセラ。ソーナには後でフォローしてやらないとダメだな…………。セラには軽く説教しないとダメかもしれん。

俺は息を吐き、衣装を受け取ったソーナを連れて退出しようとすると、急に服の袖を引っ張られた。

俺が疑問符を浮かべながら振り向くと、満面の笑みのセラが俺を見つめてきていた。

 

「まだなんかあるのか?」

 

俺が訊くとセラは頷き、俺に何かを見せつけてくる。また衣装を取り出したようだ。今度は(あお)いラインが入った黒いロングコート。サイズから見て男ものだ。

 

「こっちはロイの分よ☆主役のミルキー役だけじゃなくて、『ヒーロー役』のオーディションもおこなわれるの☆………ね?」

 

ウインクしながら「ね?」じゃねぇよ!これはあれか!俺も参加しろってことなのか!?

俺が口の端を引くつかせていると、セラがトドメと言わんばかりに告げてくる。

 

「ロイの書類も通ったから、よろしくね☆」

 

こ、これは面倒なことになったな…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━てなわけで、リアス頼む」

 

「リアス、私からもお願い」

 

ところかわって兵藤宅のVIPルーム。

俺とソーナはセラを連れてここに移動し、リアスたちに頭を下げていた。

俺たちは緊張しながらリアスの答えを待っていると、リアスは大きく息を吐いた。

 

「ロイお兄様、ソーナも顔をあげて。わかりました。私もオーディションに参加するわ」

 

「本当か!ありがとう、本当にありがとう!」

 

「……リアス。ありがとう……」

 

俺は心の底からの感謝の言葉をリアスに送り、ソーナも目元をうるうるさせながらリアスに礼を言っていた。

 

「百合百合だわ!ソーたんとリアスちゃんの百合百合だわ☆」

 

セラにはいい加減自重してほしい。

そんなことを思っているとイッセーが訊いてきた。

 

「………で、俺たちもですか?聞いた感じだとその『ヒーロー役』ってのもやるんですよね?」

 

「ああ。俺と木場、イッセー、匙。この四人はそっちに参加だ」

 

そう答えると、三人が大きく狼狽えた。

 

「俺たちが参加する意味ってあるんですか!?」

 

「悪魔になってから、本当に退屈しないね……」

 

「俺も?何で………?」

 

三人がそれぞれリアクションをしているが、すでに決まったことだ。

俺は改めて三人に言う。

 

「セラのこれは今に始まったことじゃないからな。……本当にすまん」

 

俺は三人に頭を下げた。

 

「ロイ先生、わかりました!俺たちも俺たちなりに頑張ってみます!」

 

イッセーが胸を『ドン』と叩きながらそう宣言してくれた。本当に頼もしいやつだ。

 

「イッセーくんだけにやらせられないね。僕も参加させていただきます」

 

木場がイッセーに続いて言ってくれた。

 

「こうなったらやけくそです!行けるところまで行ってやりますよ!」

 

匙も答えてくた。

俺は顔を上げて笑顔を作ると三人に言う。

 

「おまえら、本当にありがとうな」

 

こうして、俺たちは『魔法少女ミルキー』の『ヒーロー役』のオーディションに参加することになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでオーディション当日。

俺たちは都内のある高層ビルのホールに集まっていた。

ホールにはオーディションに参加する女の子、もしくは男の子がたくさんいる。番号を記したプレートを衣服につけている少年少女がざっと三百人だ。女の子の方が多いな。

そこまではいいのだが、問題は年齢だ。見た感じだと、周りは小学校高学年から中学生くらいが中心だ。で、俺たちは俺とセラ、ロスヴァイセを除いたら高校生だ。と、言ってもロスヴァイセも年齢だけで言えば高校生ぐらいなのだが……。

それにしても、周りからの視線が痛い。明らかに俺たちをバカにしたようなものも感じる。

 

「……これは己との戦いね」

 

フリフリな魔法少女の衣装に身を包んだリアスがそう呟いた。

兄としてはかわいいと思うが、年齢的にはかなり無茶しているようにしか見えない。まあ、二十歳に近い魔法少女も有りだと思うぜ?

現に俺も白いアンダーシャツに、その上から例の黒に碧いラインの入ったロングコートを着ている。ズボンはシャカパンだ。で、腰のホルスターにはいつもの銃剣を突っ込んでいる。

にしても、もう少しコスプレして来てもいいと思うんだけどな。コスプレしてるの俺たちだけだぞ……。

 

「まあ、今日はがんばりましょう、リアス。うふふ」

 

若干楽しげに朱乃副部長は巫女服姿だ。なんか普通のと違って露出が多い気がするんだがな。

 

「………こ、このような姿、実家の者に見られたら私は死ぬしかないわ……」

 

魔法少女衣装のソーナが全身を震わせながら開口一番にそう呟いた。胸元に大きなリボンをつけたプリティな衣装だ。結構似合っていると思うがな。

 

「ぐはっ!」

 

匙が突然鼻血を吹き出して倒れやがった!

 

「おい、どうした!」

 

俺は慌てて匙を抱える。過呼吸気味になっているが、なんか幸せそうな顔だ。

 

「か、会長の魔法少女……。も、萌える……。萌え死ぬ……。ロ、ロイ先生……お、俺、死んでもいいです……」

 

そう言えば匙はソーナラブだったな!ソーナの魔法少女姿が、こいつの好みのどストライクだったようだ!

 

「メ、メガネっ子の魔法少女……。か、会長が俺を殺しに来てます……」

 

「がんばれよ!俺だって、妹たちのコスプレ見て存外いいなって思ったけどさ!」

 

「「な、ななな、なにを言っているんですか!?」」

 

俺の言葉が聞こえていたようで、リアスとソーナが顔を真っ赤にしながら狼狽えていた。

ちなみに、倒れている匙もコスプレしている。こっちは白色に黒ラインのロングコートに右腕に『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』。

イッセーが黒に赤ラインのロングコートに左腕には『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』。

木場が黒に白ラインのロングコートに模造の刀剣を腰に帯刀している。男は全員ロングコートだな。

 

「せ、先輩……ロイ先生………」

 

そんな事を思っていると、俺たちの前に魔法少女姿のギャスパーが現れた!なんでギャスパーまで魔法少女少女姿なんだよ!おまえは男だろうが!

 

「ギャスパー、おまえ、男だよな?」

 

俺が訊くとギャスパーは頷き、こう返してきた。

 

「……レ、レヴィアタン様が僕の分まで書類を出していたそうで……。つ、通過しちゃっていたんですぅ……」

 

マジか!?セラのやつ、何してんだよ!てか、男のこいつを通過させる上の連中の頭がよくわからん!

くそ、どうしてこうなった!

生徒会の面々も合流していき、後は審査員を待つだけかと思いきや……。

 

「……悪魔さんにょ?」

 

……何だ、「にょ?」って言ったのか?俺の背後を気配もなくいつの間にか取った何かが「にょ」と言ったぞ。

俺はゆっくりと振り向き、その何かを確認する。

巨木のごとき太さの上腕、サイズが合っていないマジカルな衣装と、それを張り裂こうとしている厚い胸板。フリフリのスカートからは女性の腰回りよりも太い足が姿を現しており、頭部には猫耳………。

俺は顔を引きつかせながら、横にいるイッセーに訊いた。

 

「イッセー、何だ、この、世紀末覇者みたいな猫又は……」

 

「ミルたんです。俺のお得意様ですよ」

 

「あー、おまえのお得意様ね……」

 

イッセーのお得意様か。で、何でこの(おとこ)はこんなところにいるんだよ……。

 

「ミルたんはミルキーの大ファンなんです。たぶん、今回のオーディションにはミルキー役で参加を……」

 

イッセーがそこまで言うと、ミルたんは殺気を放つ純粋無垢な瞳で俺を睨んできた。ヤバイ、コカビエル以上の何かを感じる!

 

「悪魔さんのお知り合いかにょ?初めまして、ミルたんだにょ」

 

と言いながら丁寧に礼をしてくれるミルたん。存外いいやつなのか………?

 

「初めまして、こいつがお世話になっているようで……。今後もよろしくお願いします。あなたもヒーロー役のオーディションに?」

 

俺が訊くと、ミルたんは顔を上げ、俺を睨んできた!

やべぇ、マジでやべぇ!俺、ここで殺されるんじゃないのか!?

と、思っていたら、ミルたんは彫りの深い顔を笑ませた。

 

「悪魔のお兄さんは冗談がうまいにょ。ミルたんは魔法少女になるために来たにょ」

 

「あなたは魔法ってよりも拳法の方が似合ってますよ」

 

何て言いながら俺は今回のオーディションの基準に頭を抱えていた。だって、男の娘とか(おとこ)とか、明らかに基準がおかしいって!

そんなことを考えていると、会場がざわつきだした。何事かと思えば、映画の関係者らしき数人が会場に入ってきたようだ。

ひと昔前のプロデューサーのように肩にセーターを羽織った業界人的な男性プロデューサーと思われる人物が俺たちに言ってきた。

 

「はーい、皆さーん。今日はお集まりいただいてありがとうございまーす」

 

そう言った男性の横には帽子、サングラス、チョビヒゲという出で立ちの怖そうな雰囲気の男性とロン毛の線の細い男性の二人が並んだ。

プロデューサー風の男性がマイクを使って俺たちに言ってきた。

 

「私は『劇場版魔法少女ミルキー』のプロデューサー、酒井でーす。そちらの帽子を被った方が監督の遠山監督、その隣にいる髪の長い方が脚本家の東海林(しようじ)先生!」

 

「…………」

 

「どーも」

 

無言の監督と軽い脚本家。

 

「見て見て、ロイ!魔法少女モノと特撮モノに定評のある遠山監督と東海林先生よ!」

 

セラが大興奮しながら俺の腕に抱きつきながら言ってきた。どうやら、その方面では有名人のようだ。あと、服越しとはいえ胸が当たっているんだが………。

プロデューサーが続ける。

 

「遠山監督や東海林先生と共に今日は映画に出演するキャストを選んでいきます。しくよろ~」

 

な、なんか軽い。とりあえず、この人たちが選考員ってことでいいんだよな?

 

『よろしくお願いします』

 

オーディション参加者の全員があいさつをした。

………と、監督が眉間にしわを寄せて、会場にいる俺たちをマジマジと見ているようだ。監督はうんうんと頷くとプロデューサーに耳打ちをしていた。

 

「ふんふん。なるほどなるほど」

 

プロデューサーは相づちを入れると、書類と照らし合わせながら俺たちのほうを見てきているようだ。

 

「えーと、いきなりですが、今回の一次試験の結果がいまここで決まりました」

 

早っ!?周りからも「ええっ!?」と驚愕の声をあげていた。いきなりだな………。

で、最初に発表されたのは女子たちで、受かったのはリアスたち、ソーナたち、セラ、そしてミルたんとあとは民間人が数人。

 

「ロイ・グレモリーさん。兵藤一誠さん。木場裕斗さん。匙元士郎さん━━━」

 

どうやら、俺たちも大丈夫だったようだ。

 

「以上です!監督はフィーリングを大切にされる方なので、すみませんがこれにて一次試験終了でーす!」

 

『えぇぇぇぇぇぇぇっ!』

 

不満と驚きの声をあげる女の子たちと男の子たち。

 

「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?こんな格好で!?」」

 

同様に驚くリアスとソーナ。ここまで来たら腹を括れ。

まぁ、俺も受かるとは思わなかったよ。もっとこう、厳しいものを想像していたんだがな……。

 

「やったー☆やっぱり、わかる人にはわかってしまうのね!」

 

大はしゃぎのセラ。本当に、どうしてこうなったのかね。

 

「それでは、ヒーロー役のオーディションを先に行います!合格者は移動してください!」

 

早速、俺たちの番のようだ。ここまで来たんだ、行くしかねぇか…………。

 

 

 

 

 

 

 

 




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