life01 突然の始まり
リアスとサイラオーグのゲームからしばらく経ち、今俺は、
「遅いぞ!もっと気張れ!」
「は、はいぃぃぃぃぃ!」
ギャスパーの朝練に付き合っていた。走り込みから筋トレ、やることは様々だ。今は走り込みだがな。
ギャスパーはサイラオーグとのゲームで自分の力不足を痛感し、一から体を鍛え始めたのだ。
俺はそれをハードワークにならないように気を配りながら見てやっている。
まあ、俺も俺で横で走ったり筋トレしたりはしているがな。こいつと一緒にいい汗流しているよ。
最近の休日はこんな感じであり、ギャスパーに付き合って俺も鍛えている。
俺も、倒さないといけない奴がいるからな…………。
俺の脳裏にある侍がよぎるなか、弱々しいギャスパーの声が聞こえてくる。
「も、もう限界ですぅぅぅ」
ついに燃え尽きたギャスパー。少しやり過ぎたか?
「ま、ノルマはクリアだな」
俺は息を吐き、今日の朝練はお開きとなった。
その日の深夜。兵藤宅VIPルームにて。
俺たちはある理由で訪ねてきた兄さん、
リアスの眷属も全員揃っており、全員固い表情になっていた。
全員を一瞥しながら兄さんが言う。
「イッセーくん、木場くん、朱乃くんの三名に昇格の推薦が発せられる」
おー、昇格か。それはめでたいな。
説明しておくと、イッセーたちを始めとした転生悪魔は、最初は下級悪魔だ。そこからレーティングゲームなどで名を挙げることで昇格試験に挑戦、それに合格すれば中級悪魔になれる。
で、イッセーたちはその昇格試験に参加できるのだ。
そんな三人にリアスが心底嬉しそうに笑みながら言う。
「昇格推薦おめでとう、イッセー、朱乃、祐斗。あなたたちは自慢の眷属だわ」
「ま、他のメンバーにもそのうちくると思うぜ?実力でいえば上級クラスだからな」
俺の言葉に兄さんは頷き、付け加える。
「三人には上級悪魔相当の昇格が妥当なのだが、昇格のシステム上、中級悪魔の試験を受けてもらいたかったんだ」
上のヒトたちは頭が固いからな。融通が利かなかったか。
それはそれとして、いい加減応えてもらわなければ………。
木場と朱乃が立ち上がり、一歩前に出ると、兄さんに一礼した。
「リアス・グレモリー眷属の『
「私もグレモリー眷属の『
二人がしっかりと応えたが、イッセーが驚いた顔で固まっていた。
そんなイッセーに兄さんは声をかける。
「イッセーくんはどうだろうか?」
それを受けたイッセーは慌てて立ち上がり、深々と頭を下げる。
「もちろん、お受けいたします!リ………部長にと応えられて俺も満足です!」
兄さんの前で遠慮したのか、リアスを「部長」と呼ぶイッセー。俺は前に「気にするな」と言っておいたからいいが、兄さんにはまだだったか。
それを気にしたのか、兄さんが言う。
「おやおや、イッセーくん。私の手前でもリアスのことは名前で呼んでくれてかまわないよ」
「いえ、しかし…………」
かしこまるイッセーに、兄さんは嬉々として言う。
「ハハハ、むしろ呼んでくれたまえ!私も嬉しいし、見ていて幸せな気持ちになれる」
「サ、サーゼクスお兄様!茶化さないでください!」
リアスは顔を真っ赤にしながら怒るが、俺を含めて『かわいい』としか思われていなさそうだな。
「いいではないか。なあ、グレイフィア」
義姉さんに振る。相変わらずクールな表情で義姉さんは続ける。
「この場の雰囲気ならば差し支えないかと」
義姉さんの言葉に二人とも黙り込んでしまった。
「よしよし。それならば━━━」
「
「…………」
「言うつもりだったのかよ!そのうちで良いだろ!」
「ロイ様の言う通りです」
俺のツッコミに義姉さんも続いてくれた。兄さん、やはりどこかずれていると言うか、急ぎすぎると言うか………。
兄さんは渋々頷きながら言う。
「…そ、そうだな。性急すぎるのがグレモリー男子の…」
「俺は性急じゃないぜ」
俺がそう返すと、兄さんは意外そうな顔をする。
「そうなのかい?私やお母様の前でセラフォルーに告白したというのに」
「………ッ!今さらそれを言うのかよ!?」
「もしかすると、ロイの方が性急じゃないか。やはりグレモリー男子は性急すぎるのが悪い癖だ」
「………………」
俺は絶句し、ちらりとリアスたちに目を向ける。少し驚いたような、軽蔑したような、なんとも言えない表情だ。
アザゼルが一瞬だけ同情するような目を俺に向けると、すぐに視線をイッセーたちに戻して口を開く。
「てなわけで、試験は来週だ。それが一番近い試験日だからな」
アザゼルもそれなりに性急だと思うんだが、別に気にすることでもないか。
アザゼルの言葉に木場は眉を寄せながら言う。
「来週ですか。急ですね………」
木場に続くように、朱乃が思い出しながら言う。
「中級悪魔の試験って、確か、レポート作成と筆記と実技でしたわよね?実技はともかく、レポートと筆記試験は大丈夫かしら」
木場と朱乃副部長の言葉にイッセーは不安そうな表情になった。
「木場と朱乃は筆記に関しては問題ないと思うぞ。レポートは━━━何を書くんですか?」
俺が義姉さんに訊くと説明を始める。
いかんせんこっちを離れてた時期が長かったからな。その離れてた時に内容が変わってると、アドバイスしようにも何にも言えん。
「砕いて説明しますと『中級悪魔になってから何をしたいか』をテーマにして『これまで得たもの』と絡めて書いていくのがポピュラーですね」
なるほどね。昔と大分変わってるな。レポートなんてあったか?
「人間界の試験みたいですね」
イッセーが言ったことにアザぜルが反応し兄さんに訊く。
「ま、倣ってんだろ?」
「転生悪魔は人間が多い。そのため、人間界の試験を倣わせてもらい作成している」
なるほどね。確かに転生悪魔は人間が多いからな。
俺は立ち上がりながら言う。
「何はともあれ、レポートはどうせ試験日が締め切りだろうから、それを最優先だな」
その言葉にアザぜルが続く。
「何するかも知らなかった奴が言うなよ、まぁその通りだがな。だがイッセー!」
「は、はい?」
アザぜルに指差されたイッセーは驚いてるが、指差さてれ当たり前だよな。
「お前はレポートだけじゃなく筆記試験のために勉強だ!基礎はできてるからな、応用問題もできるようにしろ!周りの奴も手伝ってやれ!」
「任せなさい、イッセー」
「僕も再確認したいから一緒にやろう」
「あらあら、私も一緒にやりますわ」
いい友情だな。ヴィンセントの奴は元気だろうか………。
俺がイッセーたちを見ながらそう思っていると、イッセーが訊いてくる。
「実技はどうしましょう?」
「「「「……………」」」」
黙りこんだ俺、兄さん、義姉さん、アザゼルを見て、イッセーがさらに訊いてくる。
「え?俺、変なこと訊きましたか?」
「いや、変じゃないが………大丈夫だろ」
俺が言うが、イッセーは不安そうに返してくる。
「でも、俺的に一番稼げそうなところなんですけど………」
「だから大丈夫だって。ぶっつけ本番にしとけ。木場と朱乃もだ。実技はいいからレポートに集中しろ」
「「はい」」
俺の言葉に二人とも返事をしてくれるが、イッセーは相変わらずわかってないようで、首をかしげていた。
するとイッセーがゆっくり手をあげて質問する。
「あのー、もし落ちたらどうなるんですか?やはり推薦取り下げですか?」
それに兄さんは答える。
「いいや、そんなことはないよ。一度挙げられた推薦はよほどの事がなければ取り下がらないよ」
それを聞いてイッセーは少し安心したような表情になった。それを見て兄さんは続ける。
「それに私はイッセーくんが合格すると確信している。不安を感じているかもしれないが、問題ないのではないかな」
イッセーはそれを聞いて、ようやく自信が出てきたようだ。
「はい!俺、がんばります!」
その話の後、ロスヴァイセが一旦ヴァルハラに戻るという話になったが、その時にロスヴァイセが言った「テストは作ってありますのでご心配なく」に、再びイッセーが不安そうな表情になってしまった。
イッセーの奴は、今日はいつにも増してコロコロ表情が変わるな。
すると、兄さんがレイヴェルに言う。
「レイヴェル、例の件を承諾してくれるだろうか?」
「もちろんですわ、サーゼクス様!」
レイヴェルが快諾したが、イッセーがわかってないのか、「例の件ってなんですか?」と兄さんに訊く。
「レイヴェルにイッセーくんのアシスタントいわゆる『マネージャー』を頼もうと思っていてね」
あー、そういえば、そんな事を言っていたような言っていなかったような…………。
うろ覚えの俺をよそに、兄さんは続ける。
「これからイッセーくんは忙しくなるだろう。グレイフィアだけではまかなえきれない部分もある。それならば冥界に精通し、人間界でも勉強中のレイヴェルをマネージャーに推薦したのだよ」
確かにこれからイッセーは特に大変だろうからな。マネージャーとかはいた方がいいだろう。
俺がそう思っていると兄さんは続ける。
「さっそくで悪いのだが、レイヴェル。中級悪魔の試験についてサポートしてあげてほしい」
兄さんの言葉にレイヴェルは立ち上がり、自信満々に手をあげた。
「わかりました。このレイヴェル・フェニックスめにお任せくださいませ!さっそく必要になりそうな資料を集めてきますわ!」
そう言うとすぐに部屋を飛び出していった。
「レイヴェルにとっちゃ、将来の自分にも大きな意味を持つからな」
アザぜルが言うが確かにその通りだな。
リアスに聞いた感じだと、フェニックスの親御さんはそのうちレイヴェルをイッセーの眷属にしたいんだろうし。
「小猫も、油断しているとイッセー取られちまうぜ?」
俺ががらにもなく小猫を煽ってみるが、
「……………」
ノーリアクションだった。いつもなら何かしら反応すると思うんだが………。
やっぱり、慣れないことはやらないほうがいいか。
『?』
それはそれとして、小猫の反応にイッセーたちも不思議そうにしていた。
俺たちは変な不安を感じながら、今日はここで解散となったのだった。
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