グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life07 現状確認

あれからしばらく経ち、アーシアの治療してもらった俺━━ロイと木場は、曹操が言った通りに出現した死神一行を偵察していた。今は駐車場の偵察だ。

 

「中々の数だな」

 

「はい。これを突破するのは厳しいと思います」

 

「とにかく、一旦戻るぞ。作戦を練らねぇと」

 

「わかりました」

 

ある程度の偵察を済ませたところで、俺たちは下手に手を出さずにリアスたちが待機している部屋まで戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

「………ハーデスの野郎、本格的に動き出したってわけか!」

 

俺たちの報告と今の状況を見たアザぜルが憎々しげに吐き捨てる。

現在、俺たちは六十階建てのホテルの真ん中、三十階に移動し、その階をルフェイの防御結界で覆うことで陣地としていた。

曹操の攻撃で負傷したメンバーの怪我は完治している。ただ一人ヴァーリはサマエルの呪いに今も苦しんでいるそうだ。

ルフェイ曰く『解呪の魔法を使ったが大した効果がなく、処置はやれるだけやったのでしばらくしたら解ける』とのことだ。

ヴァーリであれだ。もし、イッセーがくらっていたら、間違いなく死んでいたと思う。

アーシアは回復の力を連続で使ったため、仮眠をとらせている。

アザぜル曰く、この空間は『絶霧(ディメンション・ロスト)』の禁手(バランス・ブレイカー)、『霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)』で創られたもの、だそうだ。

ホテルと駐車場、その近辺の風景ごと創りだす。聞いただけではすごい規模に思えるが、京都では二条城とそれを中心とした町を創っていたからか、まだ小規模に思える。

今動けるメンバーが集まっている部屋で、ルフェイが嘆息していた。

 

「本部から正式に通達が来たようです。まとめますと『ヴァーリチームはクーデターを企て、オーフィスを騙して組織を自分のものにしようとしたところを英雄派が阻止、オーフィスはこの時救出。ヴァーリチームは発見次第始末せよ』だそうです」

 

あいつら的に言えば向こうのオーフィスが本物で、こっちのは偽物ってことになっているんだろ。手が早いな。

 

「そういうことになったか。オーフィスを英雄派から守ろうとして、願いを叶えようとしたヴァーリチームの末路がこれとは。難儀だな」

 

俺は息を吐きながら言った。

ヴァーリチームはもう『裏切り者』になったわけだ。

今まで好き勝手やってたからこうなったのかもしれないが、今は英雄派をどうにかしないとな。

ルフェイはガックリきたようにうなだれた。

 

「私たちは世界の謎を調べたり、伝説の強者を探したり、オーフィス様の願いを叶えたりしていただけなんですけどね。グレートレッドさんの秘密に始まり、滅んだ文明、異世界のことを調べたりしていました。時々組織の仕事(テロ)もこなしました」

 

「冒険家みたいだな」

 

イッセーの呟きにルフェイが反応する。

 

「はい、毎日が大冒険ですよ!」

 

こいつら、色々やっていたんだな。やっていることは暇人がやるレベルな気がするが………。

俺がそう思っていると、ルフェイが続ける。

 

「ヴァーリ様の探求心は総督様の影響だと思います」

 

それを聞いたアザぜルは息を吐いて目元を細めていた。なんとなく、イタズラ小僧の話を聞く父親の顔をしているように思える。

 

「それにしても総督様、最近は神滅具(ロンギヌス)祭りですね。『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』の方はお元気ですか?」

 

それを訊かれたアザぜルは天井を見上げる。

 

狗神(スラッシュドッグ)か。あいつには別任務に当たらせている。そっちも厄介な事件だ。それにあいつ、ヴァーリのことが嫌いでなぁ」

 

「はい、お話はうかがっております」

 

ルフェイはクスクスと笑っているが、俺はイリナに話題を振る。

 

「ところでイリナ、理論上二番目に強い神滅具(ロンギヌス)、『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』の持ち主━━ジョーカーはどうしているんだ?」

 

イリナは首をひねりながら答える。

 

「デュリオ様ですか?確か各地を放浪しながら、美味しいもの巡りをしていると………」

 

……………………は?

それを聞いた俺は間の抜けた表情になる。

 

「仮にもセラフ候補にも選ばれるかもしれない転生天使の才児だろ!天界の切り札(ジョーカー)だろうが!ミカエルとかガブリエルは何してるんだよ!?」

 

「そ、それを私に言われても」

 

俺の言葉にイリナも困り気味に返してくる。

なんで各勢力(悪魔含め)の上の連中は、こう、大事などこかが抜けてやがるんだ!

 

「そのヒトも強いんですか?」

 

イッセーの質問にアザぜル、ではなくルフェイが答える。

 

「ヴァーリ様の戦いたい方リストの上位に載っているほどです。教会最強のエクソシストだそうですよ」

 

その一言にイッセーは驚いているが、その間にゼノヴィアが追加情報をくれる。

 

「デュリオ・ジェズアルド、教会でも有名だった。会ったことはなかったが、凶悪な魔物や上級悪魔を専門に駆り出されていたよ」

 

まあ、神滅具(ロンギヌス)所有者だからな。強いだろうよ。

アザぜルが口を開く。

 

神滅具(ロンギヌス)とは『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』を始めとした━━━」

 

長くなりそうだから聞き流そう。細かく聞かれたら困るが、最低限のことは知っているしな。

そこでアザぜルが何かに気付いたような顔になる。

 

「どうしたアザぜル、何か策でも浮かんだか?」

 

「いや、俺は現世の神滅具(ロンギヌス)所有者の共通点を見つけたぞ!どいつもこいつも考えていることがまるでわからん!これは後でメモだな、くそったれ!」

 

少しでも期待した俺が、いや俺たちがバカだったよ。

俺たちが呆れた顔をしているなかでアザぜルが続ける。

 

「それともう一つ、共通点を見つけた。神滅具(ロンギヌス)の使い方が従来通りじゃない。ほとんどの連中が今までの所有者と違う面で力を高めている。現代っ子だからか?………いや、しかし」

 

アザぜルの独り言が始まってしまった。

そこにオーフィスが戻ってきた。さっき、

 

『この階層を見て回る』

 

とだけ言ってどこかに行ったオーフィス。それがようやく帰ってきたのだ。

 

「で、どうだ、オーフィス」

 

俺がオーフィスに訊く。

 

「弱まった。今の我、全盛期の二天龍より二回り『強い』」

 

「随分と………弱くなったな」

 

「いやいや、十分に強い、てか強すぎるでしょ!」

 

俺の言葉にイッセーが突っ込みを入れてくる。にしても、全盛期の二天龍より二回り強いぐらいか。

 

「まあ、全勢力最強の存在だからな」

 

それを聞いてイッセーは黙りこんでしまったが、すぐに持ち直してオーフィスに訊く。

 

「オーフィス、訊きたいことがあるんだ。なんで、あのときアーシアとイリナ、ついでに俺を助けてくれたんだ?」

 

それを聞いてオーフィスが口を開く。

 

「紅茶、くれた。トランプ、した。あと、近くにいた」

 

紅茶とトランプって、いつのことだ?黒歌たちの監視のせいであんまり関われてなかったからな。

 

「そ、それだけで?」

 

イッセーの言葉にオーフィスは頷くだけだ。

もしかしたらこいつ悪いやつじゃないのでは………?

俺がそんなことを思っているなか、イリナがオーフィスの前に出た。

 

「ありがとうございます、オーフィスさん!」

 

そういえばイリナはまだ礼を言っていなかったな。

するとアザぜルがあごに手をやっていた。何となく、なに考えているかはわかるが、

 

「二天龍の二回り強いぐらいか。妙だな。曹操は今のオーフィスを絞りかすと言わんばかりだったが、正直これだけの力が残っていれば十分ともいえる」

 

アザぜルの言う通りだ。死神やジークフリートがいてもオーフィスにそれだけの力があれば突破できる。

するとオーフィスが挙手しながら言う。

 

「曹操、多分、気づいてない。我、サマエルに力取られる間、我の力、蛇にして別空間に逃がした。それ回収してきた。だから強い」

 

あの間にそんなことをしていたのか………。

 

「英雄派の連中はオーフィスを舐めすぎたな」

 

俺の言葉を尻目にオーフィスが指先に黒い蛇を巻きつけて出現させていた。

 

「力、こうやって蛇に変えた。それ、回収した。でも、ここからは出られない。我捕らえる何かがある」

 

それを聞いて笑みを浮かべていたアザぜルが息を吐いた。

 

「ま、死神が来たってことは、ある程度オーフィスが抵抗することを想定していたんだろ。オーフィスは今、有限だ。あちらはサマエル以外にオーフィス封じの策があるんだろうさ」

 

アザぜルに続いて俺がルフェイと黒歌に訊く。

 

「二人は空間に関する魔法に秀でていたよな。どうにかして外に助けを呼べないか?もしくは何人かここから抜け出させることができないか?」

 

「あることはありますが…………」

 

「ちょっと厳しいと思うにゃ。さっき一回やっちゃってるから強固になってるだろうし、私とルフェイのことも知ってるだろうし、出来てルフェイと一緒に二人だけで一回きりにゃ」

 

「何でルフェイと?」

 

今のを聞いてイッセーが訊く。

 

「術者も一緒のほうが強力なのができるにゃ」

 

黒歌が当然のことのように答える。

 

「この状況でオーフィスを逃がすのはキツいだろうしな」

 

「確かにな、ロイ。オーフィスの話だと、この空間はオーフィスを捕らえる特別な結界のようだ。オーフィスを逃がしたければ結界を破壊して共に脱出しかない。それに死神は想像以上に危険だからな。あいつらの鎌は生命力を刈り取る。生命力を回復中のイッセーが下手に攻撃を受けると死ぬぞ。それに、オーフィスも有限だからな。斬られまくると弱ってしまうだろう。こいつの力がこれ以上流失したら、問題が余計に大きくなる。つまり、オーフィスは死守しなければならないわけだ」

 

死神の鎌には本当に気を付けないとな。

それは当たらなければいいとして、問題は誰を外に出すかだが、

 

「イリナ、お前は先に脱出して兄さんや天界に今回のことを伝えてくれ」

 

「で、でも!先に出るのはレイヴェルさんのほうが……」

 

「そのレイヴェルが自分は後でいいって言ったんだよ。相手は確実にオーフィスとイッセーたち二天龍を殺しにくる。こっちのオーフィスは何としても守らないといけない。ハーデスが何するかわからんからな」

 

俺の言葉にイリナは何か言いたげだったが、言葉を飲み込んで頷いてくれた。

仲間想いのこいつのことだから、最後まで戦いたいんだろうが、自分の役目を理解してくれたようだ。

そこにアザぜルが続く。

 

「護衛としてゼノヴィアを連れていけ。エクス・デュランダルはダメになったが、デュランダルだけならまだいけるだろく。結界の外にやつらの構成員か死神がいるだろうからな」

 

「………護衛か」

 

目を細めるゼノヴィア。

さっきアザゼルが言った通り、エクス・デュランダルは破壊されてしまった。これではゼノヴィアが本来の力で戦えない。

それを理解しているゼノヴィアの表情は悔しそうなものだった。

 

「護衛も立派な任務だ。それに、天界の研究も結論を出す頃だ。それも打診してこい。ついでにデュランダルの修理もな。これからも戦いはあるだろうからな。そっちに備えてくれ」

 

アザぜルの言葉にゼノヴィアは頷いた。

てなわけで、ルフェイとイリナ、ゼノヴィアが脱出し、この状況を外部に伝えることになった。

ルフェイが転移魔方陣を構築するためにその三人は別室に行くことになったんだが、その前にルフェイがイリナに聖なるオーラを放つ一本の剣を手渡した。

 

「こ、これは!」

 

驚くイリナにルフェイは微笑む。この剣は確か………。

 

「これを、支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)を持っていってください。兄から預かって来たものです。タイミングが掴めずに今になってしまいました」

 

「いいのか?」

 

ゼノヴィアが訊くのルフェイは頷く。

 

「はい、フェンリルちゃんを手に入れましたから。デュランダルの修理に使ってください」

 

それを聞いてイリナは深く頭を下げた。

 

「あ、ありがとうございます!英雄の血を引く方は怖い人ばかりだと思ってましたけど、いい人もいるんですね!」

 

「恐縮です。兄と共に変人とは言われますけど」

 

そのやり取りをしたあと、転移魔方陣構築のために部屋を移動した。

 

全てのエクスカリバーとデュランダルを一つにするのか。どうなることやら……。

そこでアザぜルが膝を叩いた。

 

「さて、グレモリー兄妹。脱出作戦を練るぞ。オーフィスを連れて全員で脱出するのが目的だ」

 

「ええ」

 

「おう!」

 

こうして一旦解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通りプランがまとまったところで、俺は別室で休憩していた。

作戦の立案はアザゼルのほうが得意だからな。細かいところはリアスとアザゼルに任せる。

俺は懐からタバコ箱を取りだし、そこから取りだした一本を口にくわえ、火をつける。

俺は紫煙を吐き出して壁に体を預けると、部屋の入口に目を向ける。

 

「…………で、何か用か?」

 

「別に、ここに休みに来ただけにゃん」

 

イタズラっぽい笑みを浮かべながら入口に立つ黒歌。

あいつが部屋に入ってくるまで気配が感じられなかったが、仙術の応用なのだろう。

俺は部屋の椅子に腰かけた黒歌に訊く。

 

「おまえ、小猫を助けようとしたよな」

 

「たまたまにゃん」

 

名前を叫んでいたが、それをたまたまね………。

俺は続ける。

 

「おまえ、小猫のこと、気にしているだろ?」

 

「さーてね。ご想像にお任せするにゃん」

 

適当に返してくる黒歌。いちおうだが、こいつ『はぐれ悪魔』なんだよな。

俺と黒歌の間に嫌な沈黙が訪れる。別に、前の『現魔王の血』発言のことを気にしているわけでもないんだがな………。

俺は紫煙を吐き出し、黒歌に言う。

 

「前の主のこと、調べさせてもらった」

 

「そう。で、どう思ったの?」

 

急に真剣になる黒歌。まあ、変わったのは表情だけかもしれないがな。

 

「能力向上のために、かなり無茶なことをしていたらしいな。眷属だけじゃなく、その身内にまで」

 

黒歌は主を殺してはぐれになった。だが、何十人というはぐれを見てきた俺から言わせてみれば、何か違和感を覚える。

なんと言えばいいかわからないが、力を持ちすぎて暴走しただけには思えない。なにか、暴走しないための最後の支えがあるように思える。

それは、まず間違いなく小猫だろう。

 

「おまえ、小猫のことを守りたいんだろ?」

 

「その根拠は?」

 

真剣に訊いてくる黒歌に、俺はイタズラっぽく笑みながら返す。

 

「俺にも妹がいるからだ」

 

黒歌は一瞬間の抜けた顔になるが、すぐにおかしそうに笑う。

 

「にゃははは、ふざけてるにゃ?」

 

「俺はいつでも真剣だが?」

 

「あら、そうなの?」

 

「ああ」

 

俺は頷きながら紫煙を吐き出し、携帯灰皿に灰を落として再びくわえようとすると、

 

「隙ありにゃん」

 

「あぁ!?」

 

黒歌に奪われ、そのまま吸われてしまった。が、黒歌はすぐにむせる。

 

「けほけほっ!よくこんなもの吸えるわね………」

 

「ま、リラックスにはちょうどいいさ」

 

俺はそう言いながら携帯灰皿を差し出し、黒歌はそこにタバコを押し込んだ。

すると、不意に顔を近づけてくる黒歌。俺が何かを言う前に押し飛ばそうとすると、小さいながら優しい声で、

 

「さっきはあんがとね………」

 

とだけ言ってきた。さっきってのは、あのヴァーリの一撃を止めた時か。

俺が何かを言い返そうとすると、黒歌はそれを待たずに部屋を出ていった。

あいつ、本当に何がしたいんだ………?

 

 

 

 

 

 

 




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