僕━━木場祐斗の前で、怒りの感情を隠そうともしないヘラクレスと、ただ静かに紅のオーラを発するロイさんが睨みあっていた。
まったく動かないロイさんに、ヘラクレスが哄笑をあげる。
「へっ!大口叩いておいて、俺の
ヘラクレスが飛び出し、オーラを込めた拳を振るう!
まっすぐ放たれた拳はロイさんに吸い込まれるように直撃した!?
盛大な爆音と共に爆煙がロイさんとヘラクレスを包み込む。
今の一撃、直撃したのか!?ロイさんの防御力では耐えられない、いや、避けられたはずだ!?
僕たちの驚愕を払拭するように声が響く。
「………で、どこを狙っている」
「━━━ッ!」
ヘラクレスは驚愕しながら声の主に目を向ける。そこには無傷のロイさんの姿が!
「な、なんでそこに居やがる!さっき殴ったのは………!」
驚愕するヘラクレスにロイさんは言う。
「おまえが殴ったのは残像とそこに仕込んだ直刀だ。それはそれとして、隙だらけだったぞ。おまえ、本当なら一回死んでる」
ロイさんがそう言った刹那、ヘラクレスの体に幾重もの切り傷が生まれた!時間差でダメージが発生したのか!
ヘラクレスはそれを意に返すことなく、青筋を立てる。
「テメェ、わざと止めを差さなかったな!舐めやがって!」
ヘラクレスは再び飛び出すと、先程よりもオーラを込めた拳を、今度は路面に連続で繰り出す!すると、路面を走るようにロイさんに向かって大爆発が起こった!
ロイさんはそれを跳躍して避け、翼を展開して滞空する。
冷たい目でヘラクレスを見下ろすロイさん。ヘラクレスはあのヒトを見ながら舌打ちをした。
「どうした!逃げてばっかりかよ!」
ヘラクレスの挑発を無視して、ロイさんはあごに手をやりながら呟く。
「おまえの場合、その拳だけ注意すればいいだけだ。一定の間合いを保ち、ヒットアンドアウェーでやればいい」
ロイさんが言うと、ヘラクレスはさらにイラついた様子で全身を輝かせる!あれは、
ロイさんは特に気にした様子もなく、手に持つ剣の刀身を軽く撫でる。
「だったらこれで木っ端微塵だァァァァァァァァッ!」
ヘラクレスの叫びと共に大量のミサイルが放たれる!それに対してロイさんは、
「フッ!」
短く息を吐きながら剣を投げた!投げた瞬間に次の剣を生み出し、次々と放っていく!
投げられた剣の全てがミサイルに当たり、空中で連続した爆発が発生する!
全てのミサイルを撃墜され、ヘラクレスは焦りの表情を浮かべる。その瞬間、ロイさんが動いた!
高速でヘラクレスに接近、背後に回り込むと剣を大上段から振り下ろす!
ヘラクレスは、速度に対応しきれていない!
ズバッ!
肉が斬れる音が響く。ロイさんがヘラクレスの背中を袈裟懸けに切り裂いたのだ。
「━━━ッ!」」
ヘラクレスは苦悶の表情になりながら振り向き様に拳を振るう。だが、ロイさんは余裕でそれを避け、距離を取った。
距離を取ったロイさんに再びミサイルが放たれるが、ロイさんは剣を構えてその段幕に高速で突撃した!
次々とミサイルをは切り裂かれ、時間をおいてから爆発する。
ロイさんが速すぎて、ミサイルの爆発にラグが発生しているようだ。
時折、こちらにミサイルが飛んできそうになるが、ロイさんはそれらを最優先で処理していき、再びミサイルを全て切り裂いてみせた。
ロイさんが心底残念そうに息を吐いた。
「はぁ…………。おまえ、火力だけか?よくそんなんで英雄を名乗れるな」
「な、なんだと…………ッ!」
怒るヘラクレスだが、ミサイルの撃ちすぎたのか、息が荒い。
ロイさんはそれを見ながら言う。
「どちらにしろ、おまえの負けは決まっているんだがな………」
ロイさんの言葉に僕たちは疑問符を浮かべる。
確かに、このままいけばロイさんが勝つだろう。だが、さすがに油断のしすぎではないのだろうか。
ロイさんは続ける。
「どんなにタフだろうが、火力があろうが━━━」
ロイさんはヘラクレスを、いや、ヘラクレスにつけた傷を指差す。
「血がなけりゃ、動けねぇからな」
━━━━ッ!
ロイさんの狙いはそれなのか。多少時間はかかるだろうけど、確実に敵を倒せる方法。
夏休みに僕たちとソーナ会長がレーティングゲームをした際、イッセーくんをリタイアまでに追い込んだ作戦だ!
だが、ヘラクレスはそれを鼻で笑う。
「だったら、ぶっ倒れる前にぶっ飛ばしてやるよ!」
装填を済ませたミサイルを再び放つヘラクレス。ロイさんはそれらを切り裂きながら上空に移動していく。
ヘラクレスはもはや意地だけでロイさんを倒そうとしているように見える。そして、ロイさんはヘラクレスの全てを封じて倒そうとしている。
ロイさんはある程度の上空まで移動すると、突然翼を消した!
重力に任せて落下するロイさん!迎撃をするつもりはないようだ!
そんなロイさんに、ミサイルは容赦なく殺到する。そして、ミサイルが当たりそうになった瞬間、ロイさんは体をひねる。
体に当たるギリギリでミサイルを回避したロイさんは、そのまま落下していく!
何度もミサイルに当たりそうになるが、全て最小限の動きで避けていく!まるでミサイルの軌道が完全にわかっているようだ!
そして、ヘラクレスが放った最後の一発。ロイさんはそれを体を捻ってそれを避けると、
「借りるぞ」
そのミサイルが爆発しないように両手で抱えると、ミサイルを無理やり方向転換させてヘラクレスに向け、手を離す。
解放されたミサイルはまっすぐヘラクレスの方に進んでいき、
ドゴォォォォォォォンッ!
ヘラクレスに直撃して大爆発した!不幸なことに、急いで発射の準備をしていたミサイルにも誘爆したようだ!
あのミサイル、どうやら単純な動きしか出来ないようだ。そのような能力なのか、その弱点を改善していなかったのか………。ヘラクレスの性格からして、後者の可能性が高い気がする。
爆煙が晴れると、そこにはボロボロのヘラクレスが立っていた。膝も笑い、先程よりも多くの血を流している。
ロイさんがボロボロになった路面に足をつけながら言う。
「ミサイルも脅威じゃねぇな…………」
剣を肩に担ぎ、ヘラクレスを睨む。
ロイさんに睨まれたヘラクレスの表情が、ついに恐怖と絶望を感じるものに変わる。
しかし、懐に手を入れて何かを取り出した。
━━━ピストル型の注射器とフェニックスの涙だった。
まさか…………!
「ロイさん!気をつけてください!『
「なんだその、『カオスなんとか』って………」
首をかしげるロイさん。あのヒトはあれの力を知らない!
あれは━━━!
僕が警告しようとした矢先、ヘラクレスはフェニックスの涙を頭からかぶり、注射器を首もとに突き刺してしまった!
ヘラクレスの体の至るところがボコボコと音を立てながら隆起していき、両足がまるで有機的なロケットのように代わり、火を吹く!
その勢いでヘラクレスの体は宙に浮き、体から生えるミサイルの数もさらに多くなっていく!
あれは、
ヘラクレスは顔中の血管が浮かび上がらせながら、険しい表情となる。ジークフリートと同じだ、このままでは………!
僕たちが助太刀に動こうとすると、ロイさんはそれを手で制する。
ロイさんは剣にさらに魔力を込めていき、紅の刀身がさらに濃く、いや、黒くなっていく…………。
ヘラクレスが苦しそうに叫ぶ!
『テメェら、全員塵になりやがれェェェェェェェッ!』
そして放たれる大量のミサイル!もう十や二十ではきかない数だ!
ロイは剣を右脇に構え、そのミサイルによる段幕に突撃していった!ヘラクレスは上空にいる、翼を展開させずに行くつもりなのか!?
僕たちが困惑していると、ロイさんは跳躍し、自分に接近してくるミサイルの上に乗った!
そのミサイルを足場に再び跳躍、次のミサイルへ跳び、そして、再び次のミサイルへ、次のミサイルへと高速で跳び移っていく!
ロイさんに踏まれたミサイルは進路をずらされ、建物や路面に激闘、次々と爆発していった!
ミサイルを足場に高速で飛び出していったロイさんは、ついにヘラクレスの眼前にまで迫る!
『ちくしょぉぉぉぉおおおおおおおおおっ!』
ヘラクレスは右拳を引き、肘からジェット噴射のように火を吹き出させると、泣き叫びながら凄まじい速度で拳を放った!
その拳はロイさんに向かっていくが、
「フンッ!」
ロイさんは剣でそれを上で弾きあげてみせた!そして、ヘラクレスが無防備になった一瞬の隙に剣の刃にさらに魔力を込める。
僕がそれを確認した刹那、
グシャ!
肉が裂ける音が響き渡る。
ヘラクレスは自分の体に袈裟懸けにつけられた今まで以上に深い切り傷、いや、肉を削り取られたような傷から大量の血を吹き出し、そのまま落下していく。
ロイさんは少し遅れて着地し、絶望しきった表情で倒れるヘラクレスを一瞥する。
「英雄ってのは、自分で名乗るもんじゃねぇよ………」
ロイさんは返り血を拭いながらそう漏らすと、剣の切っ先をゲオルグに向ける。
あれが、部長の兄であり、戦争を生き抜いたヒト。今さらだけど、その事実を痛感させられた………。
敵となったものをどこまでも追い詰め、二度と立ち上がらないように心を含めて殺す。
戦時中もこの様子だとしたら、天使や堕天使から恐怖の対象として見られて当然だろう。
僕たちの視界の先で、返り血で全身を紅く染めるロイさんの姿は、まるで僕たちの知るヒトとは全く違うヒトのように見えてしまった…………。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。