リトルアーモリー Lust Bullet   作:早坂 将

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これまでと違ってPCじゃないから書きにくい…。スマホェ…。



内回り
Mission:0


「ハァッ、ハァッ、ハァッ…!」

 

激しい喉の乾きと、全身の疲労感のせいで今すぐ止まって座り込みたいと叫ぶ弱気を、俺は根性でねじ伏せる。

崩壊したオフィスビルや民家だった物の瓦礫を踏み越え飛び越え、俺はひたすら走り続けている。

着ている学ランは汗に濡れて乾いているところがないし、この状況を打開しうる能力のある銃は、既に弾切れとなり、ただの重りと化して、スリングで背中に固定されている。あぁ、本当にツイてない。

何を一生懸命走っているのかといえば、後ろを見れば一目瞭然だ。

 

タタッ! タタッ!

 

規則正しく聞こえてくる複数の足音。

 

グルルゥ! グルルゥ!

 

足音に紛れて聞こえてくる、犬系の動物が発する威嚇の声。

 

「クッソォ!こういう時に限って当たって欲しくない予感が当たるんだよなぁ!俺が何したってんだよ!?」

 

悪態をつきながらも走るのは止めない。犬っころに食われるのだけは、死んでもゴメンだ。

なんでこんな事になったかといえば、5時間前まで遡る。

 

 

‡ ‡ ‡

 

 

「おーい、シュウ、午後暇かー?」

 

そう言いながら帰り支度をしている俺、谷岳周紀(たにだけしゅうき)に近づいてきたのは、望月嵩弥(もちづきたかや)。クラスメイトであり、何かと行動を共にする事が多い相棒の1人である。

 

「確かに暇だが…、“クエスト”行くのか?」

 

「その通りだ!話が早くて助かるぜ!」

 

わざとらしい笑顔を浮かべてサムズアップをする。正直イラつくからやめて欲しい。

1週間のうち、火曜日と金曜日の2日間は、午前中で授業が終わる。それを利用して“小遣い稼ぎ”をしようというのだ。

これは別に悪いことではない。むしろ学校から強く勧められている事だ。さらに俺らの成績にも反映される。

 

「また金欠かお前…。余計な“装備”を無駄に集めるからそうなるんだぞ? んで、場所と内容は…?」

 

内心溜息をつきながらも情報を求める。

 

「しょーがねーだろ!?新しいのが次から次へと出てくるんだからよぉ! あー、えっと、“旧市街地”北Eエリアの“偵察”と、…“落し物”拾いだ」

 

「…………落し物か……、分かった。行く」

 

“クエスト”、“旧市街地”、“偵察”。

これらは俺らが厨二病を発症して、話を盛り上げている訳では無い。周りの奴ら、もしくは、この学校と同じように、ある制度を導入している他の学校で、“日常的に”行われている会話である。

 

「装備はどうする?Eだし、落し物拾いだから軽装でいいか?」

 

「まぁ、そうだな。“UMP”で事足りるだろ」

 

「了解。準備すっから受注しといてくれ。他に誰か誘ったか?」

 

「いや、今回は俺らだけ。急ぎってわけじゃないから、1時間後、車庫集合な」

 

“装備”、“UMP”。

ここでの装備とは、戦うための服装や武器を指す。

“UMP”とは、ドイツのH&K(ヘッケラーアンドコッホ)社が制作した強力な45口径弾を使用するサブマシンガンである。

何やら会話が物騒だと思うだろう。間違いじゃない。 俺たちはサバゲーに行くのではない。文字通り、一歩間違えれば死ぬ事になる戦場に行くのだ。

 

「ほいほい。また後でな」

 

軽い挨拶の後、俺らは別れて各自支度をする。

支度と言っても今着ている学ランの上からチェストリグを着けて、小火器庫へ向かい、預けてある銃を受領するだけだから、正直1時間も要らない。

案の定30分もかからずに支度を終えた俺は一足先に車庫へ向かう。

数10台のハンビィがズラリと並ぶ光景は壮観だが、運転するとなると、日本の道路は狭いから正直避けたい。

 

「おまたせ」

 

俺が車庫に着いて10分もしないうちに、王者の風格と言うより三下の風格で現れた望月を鼻で笑い、不満を垂れるのを他所に割り当てられたハンビィの助手席に乗り込む。

 

「お前が受注責任者だから、運転しろよー」

 

「ヘイヘイ、分かってらい」

 

望月の運転でドナドナされる事1時間、専用の高速道路を使い山を越え、目的地に着いた。

5年ほど前のイクシスの大規模襲撃により戦場となり放棄された旧市街地は、長年管理されていないため、ツタなどの植物が建物を多い、なんというか、世紀末感が漂っている。

 

「よっし、いつも通り、落し物拾い始めっか」

 

「おう」

 

車から降りて銃にマガジンを差し込み、薬室に装填して安全装置を掛けるところまでを流れる動作で行い、仕事にかかる。

今日のクエストの目的の1つである“落し物拾い”とは、はっきり言ってしまえば遺骨や遺品などの回収である。

 

(俺らみたいな子供が銃持って彷徨くなんて、世はまさしく世紀末って感じだよなぁ)

 

などと周りの景色を眺めて、民家跡で瓦礫をどかしながら思ってみたりする。

20世紀末にユーラシアを皮切りに世界中にイクシスが出現し、そこから人類と異世界とも異次元ともつかない存在との戦いが始まった。

なんの前触れもなく、あまりに突然すぎたその襲撃は世界を混乱の渦に陥れ、特に人口密集地に至っては物的、人的被害は大規模災害を超えるレベルに達した。

軍はいつどこに現れるか分からないイクシスが現れる穴、空間の亀裂とも言うべき“ネスト”の探知や捜索に手間取り、初期の戦闘は悲惨な結果となったが、初戦から20年が経とうとしている今日、ネストの探知技術の向上と、徹底した敵情分析の結果、かなりの精度で安全な迎撃体制を整える事が出来るようになり、最初期のような悲劇が起きる事はなくなった。

だが、数年前の大規模襲撃の際、従来の獣型を操る人型のイクシスが確認され、危うく前線が突発されかけた事から、敵もこちらを研究・分析し、進化していると考えて油断は禁物であるというのが、世界の常識となっている。

イクシスの襲撃に備えて街を警備するにあたって、軍や警察だけでは人手不足ということもあり、日本ではある特殊な制度が採用された。

 

“指定防衛高等学校”

 

この制度に加盟している学校は、生徒に武装させ、正当に訓練し、通う生徒は、男子生徒は有事の際は軍隊と共に最前線へ、女子生徒は男達が留守の間、街を守る事が義務付けられている。

俺らが通う私立武学高校も例に漏れず、というか“武装学徒”の略とかいう安直過ぎて名前からして丸わかりだけど、防衛指定校の1つだ。

こうした学校は学校毎に特色があり、アメリカ海兵隊基準だったり、自衛隊基準だったりするのだが、武学高校は支給される武器こそドイツのH&K社製に限られているが、訓練に関してはいろんな国の軍隊から教官を呼んで教務をしている。めんどくさいから統一すればいいだろって思ったけど、どうせならいいとこ取りして強くなろうぜって事らしい。こんな校風だから派閥が出来て“1番危ない防衛指定校”なんて言われるんだよ。マジメに過ごしてる生徒への熱い風評被害とかどうにかして欲しいぜ。全く。

 

「あ。遺骨だ」

 

歴史の時間に教わった事を思い返しつつ学校に対する文句を考えながら瓦礫をどかし続けること2時間程。本日最初の遺骨を見つけた。

若い男だろうか、比較的原型を留めているそのご遺体は、ズボンのポケットには財布と思われる革製の物が入っており、身元を特定する上で重要な証拠となる。

 

「望月、1体見つけた。状態が良いからこの方を収容したら車で待ってるぞ」

 

発見したら連絡して収容。マニュアル通りにことを進める。

 

《りょーかい。俺は遺品をいくつか見つけた。そろそろいい時間だし、俺ももど……っ!》

 

中途半端なところで言葉を止めた。嫌な予感がする。

 

「……どうした?」

 

《ネストだっ!小規模だが、もう点滅が始まってる!》

 

「やっぱりかー! 連絡済みだよな!?手はず通りに逃げるぞ!」

 

《もちろんだ!分かってる!》

 

収容途中のご遺体を遺族の元に届けるのは残念ながらまだ先になりそうだ。

場所を地図に記録して車まで走る。

その途中、ふと、崩れたオフィスビルの中から何かが飛び出てきた。

望月かと思ったが、違う。

骨のような尻尾に、2メートルはあろうかという巨躯。口から唾液を垂れ流しながらその中心から覗いている2つの目。

俺らが日頃から“犬っころ”と呼んでいるイクシス。“K9”。数は2つ。

 

「…………っ!!」

 

反射的に銃を片手で構え、安全装置をフルオートに切り替えばら撒く。

反動の強い45口径弾をフルオートで撃つのは、西洋人と比べ小柄で非力な日本人がやってもまともに当たらないため、普段は使わない。まして、俺らみたいなガキなら尚更。

それでもギャンギャン言いながら体液を撒き散らしてK9が倒れていくのは、俺の腕がいいわけではない。単純に距離が近すぎるためだ。

本当に心臓に悪すぎる。死角から飛びたすのだけは勘弁して欲しい。

サプレッサーも付けていない銃をフルオートで撃ったことで、出現したK9はこっちに向かって来るだろう。

さっき飛び出してきたヤツらは、偶然近くにいた“はぐれ”だろうから1人で全部片付けられたけど、恐らく次は俺1人では、いや、望月と2人でも撃退は難しいだろう。

(火薬の臭いと体臭を消さないと…!)

 

辺りを見渡し、ひっくり返ったトラックを見つけた。

すかさず駆け寄り、燃料タンクにナイフで穴を開け、ガソリンを被る。整備担当にタコ殴りにされることを覚悟して、銃にもガソリンを掛けた。近くの瓦礫の隙間に身を潜める。

その直後、コンクリを爪で引っ掻くようなK9の足音と10頭前後の鳴き声が聞こえてきた。

 

(来やがった…!)

 

息を潜め、ひたすら待つ。

物音1つでもたてたら、その時点で俺は犬っころのディナーになっちまう。

酷いガソリンの匂いに頭が痛くなってきた頃、遠くから銃声が響く。望月が交戦してるんだっ!

 

(クッソ!)

 

一瞬考えた後、K9の後を追う。

 

(相棒を見捨てるなんて、出来るわけねぇ!)

 

だが、今日という日はどうやら俺にとっての最大の厄日であったようで。

走り出した矢先、進行方向にまた、“はぐれ”のK9が現れた。

 

グワォン!

 

と、俺の知ってる犬とは違う恐ろしい鳴き声を1つ放ち、こちらに走り込んでくる。

距離があるため銃を構える。

俺の位置がバレようが関係ない。

望月に向かった犬っころを限りなく少なくするために位置を晒してやる!

という意気込みであったのだが、現れるK9の数が10を超えた辺りで作戦変更。全力で逃げる。

置き土産に手榴弾を転がしたり、地形を使って逃げ続ける事かれこれ10分くらいといったところだが、正直、そろそろ限界だ。

散々走ってガソリン被って、疲労もそうだけど、すぐ後ろから、犬共の息遣いがはっきり聞こえてきてるんだもん。あー、泣きそう。

 

(望月は逃げ切っただろうか…?)

 

なんて事が頭を過ぎったとき、足元に払っていた注意を反らした結果、盛大に地面を転げ回った。クソ痛ぇ…。でもそれより今は……。

「フッ…!っらァ!」

 

すかさず愛用の短刀を抜き放ち、飛びかかってきた1頭のK9の足を切りつける。

1頭ずつ仕留めるのではなく、ここは文字通り出血を強いて時間稼ぎだ。

 

「来るなら来やがれ!相手になってやる!」

 

弱気を見せてはいけない。隙を見せたらその時点で終わりだ。

感覚を研ぎ澄まし、次に来るやつを見極める。………左!

 

「もらった!」

 

来るのが分かれば迎撃は楽だ。飛びかかってきたところをしゃがんで躱し、無防備な腹に短刀を突き立てる。

盛大に体液とか内臓とかがぶちまけられて頭から浴びたけど、そんな事はどうでもいい。また次が来る。

例に漏れず飛びかかってきたヤツの顔を切り裂いて引かせ、背後から襲って来る2匹のK9には、まず蹴りで1匹を沈めて残る1匹の首を切り裂く。

掠れた声で鳴き声をあげながら倒れた奴を飛び越えて更に2匹。そして右と左からもそれぞれ1匹づつ。

左から来る奴に向かい、寸前で躱してから振り向きざまに頭に尖ったコンクリ片を叩きつける。

よろけるK9を他所に続けて走り込んでくる3頭相手に、俺はまた正面から迎え撃つために踏み込んだが、割れたアスファルトに躓いて転ぶというとんでもないバカをやらかしてしまった。

 

(クッソ!痛ってぇ!)

 

顔を上げると、このチャンスを待ってたと言わんばかりに、デカい口を開いて俺に食らいつこうとしていたK9の頭が爆ぜた。

遅れて聞こえてくる1発の銃声。この音は、ライフルの音だ。

さらに続けて1発2発。犬っころが倒れるたびに聞こえてくる銃声の意味を理解した瞬間、力が抜けた。

 

(また、味方に助けられたか…)

 

安堵の溜息を1つつき、銃声がした方を見ると、救援の女子生徒達が各々の武器を持ち走り寄って来ていた。

最後まで泣く事はなかった。




どうも、初めましての方は初めまして、スティクロSSを読んで頂いている方はお久しぶりです。早坂です。
就職して教育期間という名の研修期間が終わり、実習期間に移行してどこに赴任するのかと思ったらまさかの沖縄。……おかしいな、希望には沖縄のおの字も書いてないのに……。

ずっと書きたいなーと思っていた「リトルアーモリー」のSSをこの度書かせていただきました。スティクロの方はPCで書いているので、書き溜めたデータがなく申し訳ありませんが更新出来ないです…。情報保全の関係でPCはおろかUSBメモリーすら持ち込めないの環境なので……。私の仕事について、お察しの方もいると思いますが、敢えて言いません。ただ、64式は素晴らしい銃だと言うことをこの場で叫んでおきます。ホントすっごい……、狙ったところに当たってくれる…。

誤字脱字など、訂正箇所がありましたら教えて下さると助かります。
更新は昼間仕事しながらプロット考えて夜執筆って感じになるので、ペースは不定期です。今回は5000字近くまで行きましたが、キリのいいところで終わらせていく予定なので、毎回この長さとは限りません。ご了承ください。
本作については柔軟に対応していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

それでは、次回お会いしましょう。
ではまたーノシ
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