リトルアーモリー Lust Bullet   作:早坂 将

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【求】作戦立案能力


Mission:12

 午前中の訓練兼レクであるチーム対抗障害物競争を無難な成績で終えると、午後からは順次模擬戦が始まっていく。

 日中作戦会議をやっている間にも、勝利の喜びを噛み締めながら笑顔で帰ってくるチームもあれば、反対に悔し涙を流しながら帰ってくるチームも見受けられた。

 中には慣れない森林地帯での作戦でケガをしたり、蛇や毒虫の被害を受けてメディックのお世話になる生徒も。これも演習の醍醐味だと割り切って強く生きてほしい。

 俺が寝る前に考えた作戦を伝えたところ少しというか、今までで一番引かれてしまったが、相手も相手だし、教科書通りのことをやっても意味がない。

最終的には出し合った意見を得意不得意でまとめて、未世たちでも遂行可能なものが出来上がった。途中で別行動となる予定のため、直前までは俺が分隊長として行動し、以降は経験のためにも未世に引き継ぐ予定だ。

 程よい緊張感に身を包まれながら念入りにそれぞれの立ち回りを確認し、装備の確認を済ませたのち、陸自が用意したトラックに乗り込む。

 頭を戦闘モードに切り替えて、座り心地最悪なタクシーに揺さぶられながら、到着を待った。

 

 

 

‡   ‡   ‡

 

 

 

 普段の数倍暗いホームに降りた俺たちは思わず辺りを見渡す。

 

「ヤな雰囲気だな…」

 

意外とこういう雰囲気には慣れていないのか、幽霊よりもよっぽど恐ろしい軽機関銃をぶら下げてる張本人がつぶやいた。

 ホラー苦手疑惑と可愛い物好きが発覚した芙蓉さんが珍しくいじられ、ついでに何ニヤけてんだと肩パンされたことで空気が和み、相変わらず椎名さんはポーっとしてる。

 開始まであと10分しかないが、地形を確認することになり、地図を見ながらそろって歩き回る。

 地下鉄という施設は侵攻ルートにも限りがあるし、防衛側が有利にも思える。

特に今回の駅は地上の出入り口が2か所、改札は1か所しかなく、ホームに降りるには必然的に遮蔽物のない長い通路を通ることになる。

 

「間違いなく改札からはこないだろうなぁ」

 

「そうかなぁ。敢えてリスクを取ってでも裏の裏の裏とかを考えようとするかも」

 

「裏の裏の裏ってただの裏じゃねぇか」

 

「表面的にはそうだけど、裏と裏の裏の裏は違うよ」

 

「ニュアンスはなんとなく伝わるけど、予想の斜め上的な?」

 

「よくわかんねぇよ」

 

 いかん。伽鳥先輩が混乱してるようだ。

 

「オレもよくわかんねぇけど、次の展開とか考えるときに違ってくるんじゃねぇのか」

 

「あー」

 

「どちらにしろ駅に進入した後の選択肢は限られてるし、このメンバーなら臨機応変に対応できると思うけど」

 

「罠だろうと待ち伏せだろうと、対処して返り討ちにすれば問題ないよ」

 

「それがホイホイできるのはキミと椎名さんくらいでしょ」

 

 沢城さんの言葉にみんなが頷く。珍しく椎名さんと意見が被ったと思ったらすぐ人外みたいな扱いされた。悲しいなぁ。

 

「ちなみにお前はどっちからくると思ってんだ?」

 

「とにかく予想だにしない場所から攻めてくることだけはわかります」

 

「だからそれがどこだって聞いてんだ」

 

伽鳥先輩が眉をひそめて答えをせかす。

 

「ボクはこっちから来る可能性もあると思ってる。勘だけど」

 

 そういって指さした方向を見てみんなが疑いの声を上げる。

 確かにありえそうではあるが、ルーキーだらけのチームでほとんど隠れる場所もないルートを選ぶとは思えない。

結局答えは出なかったが、蓮星さんの一声で一応の作戦は決まった。

 この判断が吉と出るか凶と出るかは、まだだれにもわからない。

 

 

 

‡   ‡   ‡

 

 

 

 月と街灯に照らされる深夜の市街地に降り立った俺たちは開始時間前ではあるが移動を始める。

愛さんは軽機関銃を市街地戦向きのパラトルーパー装備に変えてはいるようだが、鞠亜の対物ライフル《バレット》は何とかならなかったのか…。謎のこだわりを感じる。

 

「鞠亜はここでもバレットなんだな」

 

「FX弾の模擬弾で対物ライフルって、何か意味あるの?」

 

恵那も同じことを考えていたようだが、言葉にトゲを感じる。

トラックに乗り込む前からピリピリしてたから、やはり気を張っているのか。

 

「そりゃヴォイテクのときはこんなに頼もしい武器はないって思ったし、実際助かったし、実戦に持ち込むのは大歓迎だけど、FX弾じゃ遮蔽物は貫けないわよ?壁に色が塗れるだけで意味なんかないじゃない。先輩もそう思いますよね?」

 

「確かにそうではあるけど、入ったばっかりでいろんな銃が扱えて、かつその銃の特性を全部理解するなんて、誰にでもできることではないしな。今回くらいは使い慣れた得物がいいと思うぞ」

 

恵那の言葉で萎みかけていた鞠亜を見てフォローをいれる。

 

「そうですよ恵那ちゃん、普段使う銃で臨まなきゃ訓練の意味ってないんじゃないですかね」

 

「なるほど……、確かにそうね。ごめんなさい、ちょっと勝ちたい意識が前のめりになりすぎてたみたい。有利不利で考えすぎていたわ」

 

「現実的な話をすると、普段使ってる銃がいつも使えるとは限らないのは事実だけどな。俺も交戦中に作動不良起こして冷や汗掻いたのだって一度や二度じゃないし…」

 

今思い出しただけでも悪寒がするぜ。

 

「……未世、私たちも余裕ができたら、いろんな装備を見に行こう」

 

「その時はシュウ先輩もアドバイザーとして付いてきてきてくださいね」

 

「え、俺も?」

 

「おしゃべりはほどほどにして、そろそろ急ぎましょう……、っと、その前に、はい、これ」

 

愛さんが一人一人にミルクキャンディーを渡していく。

 

「おぉ、愛さんも携行食を持ち込んでましたか」

 

「周紀君に先越されちゃったけど、私だってずっと優等生してるわけじゃないのよ」

 

そういってウィンクしながらずらっぽく笑う愛さんにときめきかけた。奇襲攻撃はやめてください。堕ちてしまいます。

 

「さすが先輩!ありがとうございます!

 

「周紀先輩ならまだしも、西部先輩まで規則違反を…」

 

「……真面目すぎ。委員長か」

 

「ええと、み、みんなでちょっと悪いことしたりすると、結束が強まったりしますよね」

 

「そうそう。その通りだ」

 

 包み紙を破って飴玉を口に放り込むと、ほんのり甘いイチゴの味が口に広がる。

普段の演習では塩飴とか乾燥梅肉くらいしか口にしないため、こういう女子力に触れられるのも、演習に参加した甲斐があるってもんだ。役得役得。 

 

「んー、美味しいです」

 

未世たちが飴を食べたのを見て、恵那も諦めて飴を食べる。ようこそこちら側へ。

 

「まあ、細かいことに目くじらを立てても和が乱れますし、今回だけは見なかったことにします」

 

「あたし、恵那ちゃんのそういうところ、好きですよ」

 

「はあ!?」

 

「いや動揺しすぎだろ」

 

顔真っ赤にしてそっぽ向いてやがる。かわいー。

 

「そういうことは、朝戸さんに言われても嬉しくありません。年収1,000万越えの美青年に生まれ変わってから言ってください。あと周期先輩なに笑ってるんですか?後ろ弾しますよ?」

 

「おっと、撃たれる前に俺は先に鍵でも開けに行こうかな」

 

「そうね。豊崎さんがデレたところで、ちょっと急ぎましょうか」

 

「ちょ、誰がデレたって……ああもう!」

 

取り残された恵那以外が返事を返して歩くペースを上げた。

 すでに状況開始から30分ほどが経過している。俺としてはいいペースではあるが、思わぬ障害にぶつかったときの対処を考えると少し巻きのほうがいいか。

 最短ルートで行けば15分程度で駅までたどり着くため、向こうもそろそろ警戒レベルを上げる頃合いだろうし。

 

(どんな結果であれ、当たって砕けろ死力を尽くせ。奴らの糧になることを信じよう)

 

 昨日の夜から、今日トラックでドナドナされるまで考えに考え抜いた作戦を反芻しながら、前を歩くメンバーを信じて、今夜も戦い抜いて、未世たちに勝利を味合わせてやる。

 

 

 

‡   ‡   ‡

 

 

 

「静かすぎるな…」

 

『やっぱり?なんかおかしいよね?』 

 

 独り言のはずが、無線機の設定ミスで自動入力になっていたようだ。やだ恥ずかしい。

近くのビルの上から、ナイトビジョンだとか重課金装備を駆使して周囲を偵察しても、いまだに姿はおろか、気配さえ感じない。

椎名さんも同じことを考えていたようで、本格的に沢城さんの勘が当たったかもしれないな。でも、俺の本能が最大限の警告をしてる。まるで、死神の鎌が首にかかってるかのような…。

 

「ヤな予感がする。具体的に言うと、もうすでに、懐に入り込まれているような…」

 

「はぁ?あんだけ索敵しても見つからねぇのに、もう入り込んでるなんてありえねぇだろ?入口だって罠仕掛けて塞いであんだぜ?」

 

「それはそうなんだけど、なんか見落としてる気がして…」

 

「疑心暗鬼になってしまうのも仕方ありませんわ。先ほど地図を確認しました。敵はおそらく、3駅先の地上から線路へ侵入し、直接ホームを強襲する気でしょう」

 

「3駅分もマラソンするなんて、ずいぶん頑張るな」

 

 後輩の地道な努力が面白いようで、伽鳥先輩が笑ってる。でも、相手にはシュウがいることを考えると笑えない。絶対何かある。

 

「布陣しなおしましょう。皆さん、一度集合を。伽鳥先輩は沢城さんを迎えに行ってあげてください。望月さんは椎名さんをお願いします。ついでに怪しい痕跡がないかのチェックもお願いします」

 

「りょーかい」

 

「合点承知」

 

外を警戒してる二人はそれぞれ反対側だから、実質単独行動中だ。椎名さんはともかく、スナイパーの沢城さんは近距離で襲撃されたらひとたまりもない。

 

『なるべく早く迎えに来てねー』

 

『…了解』

 

 椎名さんの返事に間があったのは気のせいということにしておこう。うん、そうしよう。

 

 

‡   ‡   ‡

 

 

「なんか、独特のにおいがしますね…」

 

「頻繁に掃除をするようなところじゃないから、塵やら埃やらが堆積してるせいでしょ」

 

「でも、だからこそ、気づかれずに接近できる」

 

「そうね。まさか、こんな作戦を思いつくなんて」

 

「誉め言葉として受け取っておきます」

 

「うぅ…、くしゃみが出そうです…」

 

「…鼻摘まんで我慢しろ」

 

 周紀君が考えた作戦。それは、地下鉄の通気口にある整備階段から駅に直接侵入し背後から攻撃するというものだった。

 通気口の鍵は周紀君が持ってたピッキングツールで簡単に開いてしまい。その手際の良さに私も含めて皆が呆気にとられた。非常識ではという豊崎さんの意見には、そんなものは砂漠に埋めてきたと返して、朝戸さんがどこで扱いを覚えたのか聞いたら、周紀君は説明書を読んだと答えた。それを聞いた豊崎さんが吹き出してた。意図せずして映画のネタが出ちゃったのかな?

 

「地下鉄は予想以上に音が響くから、こっからは声も音もなしで頼むぞ」

 

 頷いた私たちを見た周紀君は装備の音すら立てずに進んでいく。

整備階段を下りた先には汚水タンクなどのバルブが並んでおり、一層悪臭が漂っている。

豊崎さんたちが思わず顔をしかめるが、声は出さない。しっかり言いつけを守れてえらいわね。

 コンクリ打ちっぱなしの通路を進んでいくとシンプルな鉄の扉が現れた。

この扉の先は、いつ接敵してもおかしくない。いよいよ戦闘が始まる。

 

「よし。各自やることは覚えてるな?」

 

ささやくような小さな声で作戦内容を確認しあう。

手筈通りに周紀君と白根さんが自身のライフルを渡してくる。

それぞれ朝戸さんと豊崎さんが受け取るが、その顔は不安そうだ。

それでも言葉を発しないあたり、もう後には引けず、やるしかないとわかっていることの現れだろう。

 

「俺と凜でエレベーターをこじ開けてラぺリングでホームに侵入するまで、煙幕と弾幕で陽動は頼みましたよ」

 

「えぇ、任せて」

 

エレベーターは緊急時に備えて、通電していなくても手動で開くことを事前に聞かされていた。メーカーごとに違うようだが、扉のロックさえ外せれば簡単に開くそうだ。さっきのピッキングといい周紀君はどこでこんな知識を仕入れてくるのだろう。

 

「では、行きましょう」

 

 細心の注意を払って無音で鍵を開けた周紀君が先頭に立ち通路の安全を確保する。

“進め”のハンドサインを見た私たちは、慎重に後に続く。

 無人の駅は電源と空調機械の音だけが響いていて、小さな足音でも響いてしまいそうなほど静かだ。

周辺住民も外出規制により演習中は近寄れないため、駅の中というより、駅周辺ごと静寂に包まれている。人の気配がない町というのがこれほど不気味とは思わなかった。

 駅員室にたどり着くと、これまた周紀君が鍵を開け、全員で部屋に入る。演習の都合上、警報装置が一部解除されていることを逆手にとって、監視カメラで相手の位置を把握するためだ。

 

「カメラは…、よし、動いてる」

 

 窓口からは死角になっている部屋の奥。駅構内にあるすべての監視カメラをモニターしている端末を操作し、正常に機能していることを確認した私たちは、いよいよ本格的に作戦を開始する。

 

「うわぁ、これは反則もいいところですねぇ」

 

 ホーム内のカメラに映った相手チームを見た未世が思わず零す。

 

「使えるものは何でも使うのさ。だが、4人いないな」

 

カメラに写っているには、陣地構築する相手チームの分隊長である蓮星さんとガンナーの芙蓉さんの二人だけ。後の4人はどこに?

 

「あ、改札から2人接近中です!駅員室の前を通ります!」

 

注意深くモニターを観ていた豊崎さんが小声で教えてくれた。

 

「待ち伏せて仕留める。凜、ついてこい。銃は使うな」

 

「了解」

 

訓練用の斧を手に取った周紀君は、銃を抜こうとした白根さんにサイレントキルを指示して動き出す。

 

「相手は伽鳥先輩と沢城先輩です。お気をつけて」

 

 シルエットから相手を特定した豊崎さんの情報をもとに、周紀君が伽鳥さんを、白根さんが沢城さんを相手にすることが決まったようだ。

 改札側からは窪みになっていて見えないドアから二人が外へ出る。

ある程度警戒しているようだが、まさか駅員室に全員いることなど想像もしていない二人が、ゆっくりと、だが着実に近づいてくる。

足音が近づくにつれて、鼓動も早くなるのを感じる。こんなに緊張する演習は初めてかも。

 部屋に残ってる朝戸さんたちも緊張と不安が混ざった表情を浮かべていた。

 先輩として安心させるために、微笑みを浮かべて、口パクで『大丈夫よ』と伝える。

伝わったかは分からないが、ここで私も不安そうな雰囲気を出してはいけないし、見せてもいけない。

 

「結局、ホームを直接強襲してくる作戦なんだね」

 

「残り時間的にも、そう考えるのが妥当だろうな。あと1時間足らずで時間切れだ」

 

「でも、本当に来るかな?前も話したけど、裏の裏の裏をかいて正面突破してくるかも」

 

「もうこっちの布陣は決まったんだ。あっちがどう仕掛けてこようとやることは変わらねぇよ」

 

「案外もう侵入されてたりして。ほら、そこの角とか―!?」

 

「?馬鹿な事言ってねぇで、さっさと合―っ!」

 

 さっさと合流しようと言おうとしたであろう伽鳥さんの口は、周紀君の手によって塞がれ、その首筋には無慈悲にも斧が振るわれ、後続の白根さんも沢城さんに肉薄し、訓練用ナイフを首に突き付けたことで、相手チームは一度に2名の脱落者を出した。




活動再開と言っておきながら大変長らくお待たせしました。ナメクジ並みのペースで書き進めてようやく続きが出せました。
戦闘回と言っておきながら、オリジナル展開を書いていたら一話じゃ収まらなくなったので、区切りのいいところで投稿させていただきました。オリジナル展開から原作との辻褄合わせって難しい…。
次の投稿もいつになるかわかりませんが頑張って書いていこうと思います。本編の終わらせ方とかの構想はできているので、あとは私の気力次第です。仕事に負けそう…。
久々に原作読んだり他者様のSS読んでモチベ上げていこうと思います。サバゲに関しても、月一くらいで活動してます。まさか転勤先で司令に布教することになるとは思いませんでしたが…。こいつ行く先々で布教してんな。

今更ながら主人公の学校紹介などもそのうち投稿しようと思います。
次の話こそ戦闘回です。

ではまたーノシ

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