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Mission:1
砂煙を巻き上げながら深夜の砂漠を走るトラックに揺られて、もう2時間は経つだろうか。
普段移動中は無駄口を叩いて騒がしい連中も、珍しく大人しい。
「下車用意」
抑揚のない男の声に反応して、全員が薬室に弾を込めて戦いの準備を整える。
「……今」
終始変わる事がなかった感情が感じられない声音を聞いた俺達は、トラックが止まった瞬間、扉を開けて素早く、かつ音を立てずに飛び降りる。
外の景色を見る事が許されていなかったため、集結地点の近代的な空港から、突然そこそこの規模がある砂漠の集落に景色が変わったことに軽く驚くが、余計な感情を捨てて建物の影に身を潜める。
《イーグルよりフォックス各員、配置完了を確認した。通信チェック、送れ》
荷物を下ろしたトラックが走り去るのを横目で見ていたところに、無線で通信が来る。
「フォックス1から5、感あり」
《フォックス6から10、感あり》
《フォックス11から15、感あり》
《了解、全ユニットからの通信を確認した。状況を開始せよ》
カチカチと、通話ボタンを2回押して『了解』を示すと、ここから先も一切会話もなく進む。
目指す先にあるのは、真っ暗な集落の真ん中にある、一際明るい日干しレンガで作られた大きな2階建ての建物。
数週間前、中東やヨーロッパで猛威を振るっているテロ組織に占領され、強奪や虐殺があったこの集落は、今やそのテロ組織の補給拠点として機能している。
全員ブラックマルチカムの学ランの上から、同色のプレートキャリアーを着て、アサルトライフルやバトルライフル、スナイパーライフルを持ち、暗視スコープ越しに見える緑の世界を進んでいく。
日干しレンガの小さな無人の家の壁に張り付き、通りの様子を窺うと、人影が2つ、フラフラと話しながら近づいてくる。
後ろの仲間にハンドサインで合図し、家の角を通り過ぎるタイミングで俺ともう1人が同時に2つの影に襲いかかる。
口を塞ぎ、影が持っている武器を押さえて首を切り裂くと、穴の空いたホースから水が漏れ出すように血が吹き出てくる。
無人の民家に出来上がった2つの死体を隠し、更に敵の拠点に近づく。
今回初参加の仲間は少し震えているようだが、気にしている暇はない。この作戦は、スピードが命なのだ。
(ここがヤバい学校だって知ってはいただろうけど、まさかこんな仕事までやるとは驚きだろうなぁ)
“1人”を切り殺した感触を思い出す。川の流れのようにこなせるようになった自分の成長を褒めるべきか悲しむべきか。
何を隠そう、今日の敵はいつものイクシスではない。“人間”なのだ。
‡ ‡ ‡
「諸君らの入学を歓迎するとともに、今後の活躍を期待します。以上!」
体育館に並べられたパイプ椅子に座って理事長の演説を聞き流すこと約5分。人によってはもっと長く感じている人もいるだろうけど、左手首につけた入学祝に兄から送られた軍用腕時計で時間を確認した俺は、眠気でコクコクと頭を揺らしてる奴だらけの中で数少ないしっかり起きてる奴だった。
壇上を降りた理事長が着席して司会が閉会の言葉を言い、新入学生が割り振られた教室へ並んで向かう。
体育館と繋がっている武道場と部室棟の階段を上り4階へ上がり、渡り廊下を通って校舎へ移動する。
入学式の受付で渡された紙に書いてあるクラス表と教室前に張り出された座席表を見て、名前があることと席を確認して教室のドアをくぐる。
通常の指定防衛校は女子が内回りで男子が外回りという役目の違いのためクラスが分けられ共学なのに女子校や男子校のような雰囲気になりがちだが、この私立武学高校は、外回りに行きたいか、内回りに行きたいかを男女問わずアンケートを取り、成績や一身上の都合に問題が無ければ希望通りになるため、俺が希望した外回りのクラスにも少数だが女子生徒が見られた。
8列ある内の廊下から4列目の1番後ろの席に座った俺は荷物を机の左側に掛けて一息つく。
チラッと周りを見るが、全員初対面であるため会話はなく、小さな物音が響くくらいの静寂に包まれている。
時間になると担任が教室に入ってきて、軽い自己紹介の後、1人1挺づつ銃が手渡されていく。
『G36K』と『USP』の9mmモデル。ドイツ連邦陸軍の標準と言える装備が配られ、チェストリグやポーチの類も同時に渡された。
装備を既に持っている者は申請をした後その装備を使っていい事や、余裕が出来たら個人で銃を買っていいなど基本的な説明や武器の取り扱いの説明だけで午前中が終わり、クラスメイトで自己紹介をして1度銃を返納した後今日は解散となった。
色んな奴がいた。
銃を手に取り緊張する奴もいれば、テンション上がってその場で怒られた奴も。
むしろ、淡々と銃を受け取り席に戻った俺を、担任と教官は珍しいものを見る目で見ていた。そして、不意にあった目を見て、何か納得したような顔をしたのを覚えている。
実をいうと、俺は既に実戦を経験している。
5歳上の兄貴が高卒で先輩が開設したというPMCに入り、俺も中学1年の時から任務に付いて行っていたからだ。
もちろん俺が見学したのは最前線ではなく、旧市街地辺りの警備活動だったが、“戦い”というのもを実感するのには充分すぎるものだった。
基礎訓練を半年間ほど受けたあと、中1の秋に初陣を迎えた俺は、その時初めて生き物に対し引き金を引いた。
流石に吐きはしなかったが、気にしないようにしても思い出してしまって、何日間かは食が細くなった。
つまるところ、俺は周りの新入生と比べて2年以上キャリアが長いのだ。
「なぁ、お前、実戦経験してるだろ」
「そういうお前こそ」
と言ったように、そういう人間は多くを語らなくとも自然と察し合えるので、後に相棒となる望月や、クラスは違ったが戦友となる波瀬と関口ともお互いの経験や銃などの知識を通じて仲良くなった。
入学して2週間、ある程度この学校にもなれてきた頃、任務など2人1組で行動するためのペアを作ることとなり、周りが悩む中、俺は同じクラスであった望月と申請をした。
「お前達2人か、よかろう」
紙が配られて真っ先に担任に提出すると、やっぱりなみたいな顔ですぐに承認された。
「お前達は教官方も期待してるから、頑張んな」
「はい」
「うっす」
熱い言葉を貰って席につくと、先生が思い出したかのように爆弾を投下した。
「言い忘れてた。今回組むペアで、タッグマッチをやってもらうからそのつもりで。要するに、ペア以外は敵として、模擬弾で撃ち合ってもらう。成績とか、配置に関わってくるから手を抜いたりふざけたりはしないようにな」
静かだった教室がにわかに騒がしくなる。
少し離れた席に座る望月と目線を合わせ、面白くなってきたと2人で笑をこぼした。
‡ ‡ ‡
頭の片隅に残る入学したばかりの頃の記憶。
経験があったから周りより射撃も格闘も上手い自覚はあったし評価もされていたから、俺達は更に訓練を重ねて夏に行われた武学高校の総合テストでそこそこ優秀な成績を残した。
その結果が、“これ”である。
「こちらフォックス1、“お焚き上げ”は無事成功。エリアカラーブルー」
《こちらイーグル、…確認した。速やかに回収ポイントまで撤収されたし》
「フォックス1了解。終わり」
撤収を全員に伝え、集合してその場を離れる。
離れる前に、風に乗ってきた異臭に顔を歪めて最後にもう1度だけ燃え盛るモノを見る。
燃えているのは集落の真ん中にあった大きな建物。
そして、その建物を守るために配置されていた見張りの武装集団と、彼らの資金源である麻薬と密輸武器。
(イクシスと戦うつもりで入学したのに、人間とも戦うことになるとはね)
そこまで考えた後、深く考えることをやめて俺は仲間とこの場を離れる事に集中するため、銃を握る手に力を込めた。
ここもまた、人類の戦場なのだ。
こんばんは、早坂です。
機能テストと実践を兼ねて小話を少し挟んでいこうと思います。原作に追いついてストップしないための時間稼ぎとも言いますね。
その場の思いつき6割で書いているのでなかなか進まないと思いますが、こちらも楽しんで頂けたら幸いです。
この前Twitterを見ていたら今年の12月にようやく第2巻が発売予定のようです。文化祭回があると書いてあったので楽しみですが、1年に1巻ペースかぁ…(白目)
あと、個人的にイチオシのネット小説が今月遂にラノベ化して発売されるとあって、テンション爆上げでございます。リトアモも件のラノベも発売日が待ち遠しいです。
ちなみに銃は買えてません。土日祝日が休業という鬼畜すぎる営業形態のせいで平日の外出に制限がある身としては、実習が終わるまで諦めざるを得ない状況になってしまいました。まぁ、12月下旬くらいにはマルイがUSP9mmのガスブロを出すようなので、多少はね?(震え声)
とまぁ、そんな感じで進めていこうと思います。よろしくお願いします。
ではまたーノシ