刺突刃とか槍とか、クルスニク式双剣とか大剣とか……きりがなかった。
コレットたち(本人から“さん”はいらないと言われた)を見送り、イセリアの村長さんに挨拶したところ、すでにクラトスさんから話は聞いていたとのこと。
そして現在、俺はコレットの家に来ていた。
「そうか、お前さんは昼頃に出るのか」
「コレットたちと一緒じゃなくて良かったのかい?」
「記憶がない俺と一緒の方が危険だと思ったので。それに、世界再生の旅は重要な旅なんでしょ? そんな旅に着いていかない方が良いと思ったから」
「そうか」
コレットの祖母であるファイドラさんがそう呟くと同時に背後の扉が開き、二人の少年が入ってくる。
「よく来たのう、ロイド」
「ん、お前は……それよりばーさん! コレットがいっちまったって本当か?」
「本当じゃ」
「コレットの奴、俺に時間を間違えて教えたのか?」
「……そのことでコレットから手紙を預かってるよ」
ロイドという少年はコレットの父親のフランクさんから手紙を受け取り目を走らせる。
そして読み終えたのか体が震えていた。
「……何だよ……こんなのまるで遺書みたいじゃないか……」
「遺書だと」
「遺書……。そうかも知れないね」
「それ、どういうことなの?」
「ロイド。ジーニアス。キミたちにも、村のみんなにも隠していたことがあるんだよ。コレットは、いや神子さまは、もう……」
フランクさんが何かを言いかけると同時に轟音が響く。
「うわっ!!」
「何だ!?」
コレットの家から二人が飛び出す。俺は一度フランクさんたちを見てから後を追った。
「なっ!」
俺たちが目にしたのは、燃え上がる家々だった。
「ロイド・アーヴィング! 出てこい!」
「入り口の方だ」
ロイドは自分の名前が呼ばれた方へ走っていく。俺たちは慌てて後に続く。
「また、村を襲いに来たのか! いいかげんにしろ!」
「何を言ってるんだ?」
「戯言だ、放っておけ。聞け、劣悪種ども。我が名はフォシテス。ディザイアンが五聖刃の一人。優良種たるハーフエルフとして、愚劣な人間どもを培養するファームの主」
「……ハーフエルフ」
ジーニアスが何かを呟いた。が、すぐに意識をフォシテスに向ける。
「ロイドよ! お前は人でありながら不可侵契約を破る罪を犯した。よって貴様とこの村に制裁を加える!」
「契約違反はそっちも同じだろ! 神子の命を狙ったくせに!」
「我々が、神子を? ふはははは! なるほど。奴らが神子を狙っているのか」
「奴ら? コレットを襲った連中とお前たちは違うって言うのか?」
「劣悪種に語ることは何もない。それより貴様だ、ロイド。貴様が培養体F192に接触し、我らの同士を消滅させたことは、すでに照会済みなのだからな」
それを聞いた村長がロイドの前に行って叱る。
「なんということだ! 牧場には関わるなとあれほど念を押したのに!」
「……ごめん」
ロイドは村長の言葉に項垂れた。
「貴様の罪にふさわしい相手を用意した!」
フォシテスの号令に従い、恐ろしい姿をした怪物が引き出される。
「……なんだ、こいつは!」
「さあ、引き裂かれるがいい!」
怪物が巨大な腕を振り下ろす。ロイドはとっさに身構えて防御するが、左手の包帯が裂ける。
「くそっ!」
「ロイド、ボクも協力する!」
「悪いが俺も手を出すぞ!」
「お前、戦えるのか?」
「たぶんな。……来るぞ!」
俺の言葉の直後に怪物が巨大な腕を横に振る。俺とロイドはバックステップで回避する。
俺は着地と同時にクラトスさんから返してもらったモノを取り出す。“それ”は片手に収まるような大きさで、ボタンが付いていた。俺は迷わずそのボタンを押す。すると“それ”から1本の剣が出てくる。
“それ”をしまい、剣を取り抜刀する。その剣は漆黒の刀身に緑色の刃をしている不思議な剣だった。そしてなにより、手に馴染む。
「行くぞ!」
「……ああ!」
俺とロイドは左右から同時攻撃を仕掛ける。怪物は知力が低いのか、あるいは俺の方が厄介と判断したのか、俺の方を向き腕を振り下ろす。
俺は体を捻らせて、攻撃を横にかわす。そしてそのままがら空きの胴体を斬る。ロイドも背後から斬りつけ、俺と同時に距離をとる。するとそこに、
「ストーンブラスト!」
ジーニアスが剣玉を使うと、地面から勢いよく石つぶてが噴出し、怪物を打つ。
「「魔神剣!」」
さらに追い討ちで俺とロイドの魔神剣を食らい、怪物は倒れた。
「フォシテスさま! やはりあの小僧、エクスフィアを装備しています!」
「……やはり我々が探していたエンジェルス計画のものかっ! それをよこせ!」
「いやだ! これはお前らに殺された母さんの形見だ!」
「何を言うか! お前の母は……」
フォシテスがそこまで言うと倒れていた怪物がフォシテスに抱きついた。
「逃げな……さい……ジーニアス、ロイド……それからあなたも……」
「へ?」
「な、何、今の声……。ま……まさか、マーブルさん……?」
「……そんなバカな!」
え、この怪物ってこいつらの知り合い? いや、反応からして知り合いが怪物にされたのか。
「ウ……ウゥ……グウゥ……離れて……早く……っ! ジーニアス……。新しい孫ができたみたいで嬉しかったわ。さようなら……」
そう言い終えると怪物となったマーブルさんは自爆した。爆風によって何かがジーニアスの足元に転がる。
「……くっ!」
至近距離で爆発を受けたフォシテスは深手を負ったのか膝を付いていた。
「……まずい。フォシテスさまをお助けしろ」
「……ロイドよ。その左腕のエクスフィアがある限り、お前は我々に狙われる……。覚えておけ!」
フォシテスはそう言うと、部下と共に姿を消した。
「マ、マーブルさん……! マーブルさんっ!! うわぁぁぁぁぁ!」
戦いが終わったからか人が集まってきた。すると村長が口を開いた。
「大変なことをしてくれたな。見ろ! この村の惨状を! ……お前のせいだ」
「ごめん……なさい」
「謝って済む問題じゃない。奴らはお前を敵と認定した。お前がいる限り、この村の平和はないのだ。……わかるな?」
「ちょっと待ってよ! それってロイドを追い出すってこと!?」
「そうだ」
「そんな! ロイドは悪くない。ただマーブルさんを助けただけなのに……」
「牧場に関わるすべてが禁忌だ。例外はない」
「じゃあ、村を守るためなら人間牧場の人は死んでもいいの!?」
「どうせ牧場の人間なんてあそこで朽ち果てる運命じゃないの」
「……人間なんて、汚い」
「もうよせ、ジーニアス。今回のことは確かに俺が悪かったんだ」
ロイドはジーニアスの肩に手を置いてそう言う。そして村長の前に行く。
「……出ていきます」
「村長。こんな子供にそこまで厳しくしなくても……」
「何を言ってるんだ。こいつのせいでたくさんの人間が死んだんだぞ!」
「ロイドは悪くない! 牧場に誘ったのはボクだ。だからボクが悪いんだ!」
「それでもディザイアンが狙っているのはロイドだ。それにロイドは元々村の人間じゃない。ドワーフに育てられた、よそ者だ」
「それはあんまりじゃ……」
「部外者は黙っていろ!」
口を挟んだら怒鳴られてしまった。俺は溜め息をつきながら肩を竦める。
「だったら、ボクも出ていく。ボクも同罪だ!」
「ジーニアス、お前……」
「……ならば、仕方ない。村長権限でここに宣言する。ただいまをもって、ロイドとジーニアスを追放処分とする」
村長の宣言の直後、村人たちは「出ていけ!!」と連呼してどこかへ去っていった。残ったのはファイドラさんとフランクさんだけだった。
「迷惑かけて、すまなかった」
「その気持ちがあるのなら、どうか神子さまを追いかけて守ってやっておくれ。そうすることで世界が救われれば、きっと皆の気持ちも変わるじゃろう」
「コレットも……それを望む筈だ」
「……ああ。償いはする。俺のせいで亡くなった人のためにも、必ずコレットを守るよ」
「……ボクは、ロイドについていくよ。ロイドが追放されたのはボクのせいだもん。だから……ずっとついていくから」
「そうか……。あんたはどうするんだ」
唐突に話を振ってくるな、コイツ。
「俺? まあ、元々自分探しの旅に出る気だったし……旅は道連れって言うからな。俺もついていっていいか?」
「……ああ」
ロイドとジーニアスが何やら話し出す。その間に俺はファイドラさんたちと話をする。
「すみません。結局、彼女の旅に参加することになってしまいました」
「いや。実は昨晩、コレットはキミのことを心配していたんだ」
「そうですか」
「どうかキミも、コレットの力になってあげてくれ」
「……わかりました」
「おーい、行くぞ」
「あいよ」
ロイドが入り口から声をかける。俺が返事をしてロイドの元へ来ると見たことのない生物がいた。
「……なぁにこれぇ」
「ん? ああ、ノイシュって言って……犬だ」
「え、犬?」
「犬だ」
「さいですか」
「命を粗末にするんじゃないよ」
「キミたちに、マーテルさまのご加護がありますように」
ファイドラさんとフランクさんの言葉を受け、俺たちは村を出た。
「そういえば自己紹介してないな。俺はロイド。ロイド・アーヴィングってんだ」
「ボクはジーニアス・セイジ!」
「レンだ。言っとくが記憶喪失だ」
「き、記憶喪失!?」
「ああ、だから自分探しの旅に出るつもりだったんだ」
「そうか。これからよろしくな、レン!」
ロイドはそう言って右手を出す。
「ああ、よろしく!」
俺はその右手をとり、握手した。
スキット[ロイドの疑問]
ロイド「なあ、レンは記憶喪失なんだよな」
レン「ああ、そうだが?」
ロイド「なら、なんであそこまで動けたんだ?」
ジーニアス「確かに、ボクも気になる」
レン「それか、なんかコレを握ったときにこう……ピーン! って来たんだよ」
ロイド「そっか、ピーン! って来たのか」
ジーニアス「なんでロイドはそれで通じるのさ」