遊戯王―NEXT GX―   作:ZEROⅡ

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第五話です。



デュエルの指摘などがありましたら、遠慮なく仰ってください!!(出来ればオブラートに包んで……)


感想お待ちしております!!


あと、前回の登場人物紹介の千代と凛の設定を少々変更しておきました。

それと、同じく登場人物紹介に主要キャラ達のイメージ声優も追加しておきました。

よろしければ、両方ご確認ください。


試験デュエル!ヒーローVS巨大ロボ

 

月一試験による実技試験のデュエルは着々と進んで行き、その中の1つであるレイジ対クリスのデュエルも、両者引き分けという形で終了した。

 

そしてデュエルを終えた2人は、友人である千代と凛のデュエルを観戦するために観客席へと向かっていた。

 

 

「あ、2人共おつかれ。いいデュエルだったね」

 

 

その途中の廊下で、これから会場に向かうのであろう凛と遭遇した。

 

 

「よう凛、次はお前と千代のデュエルだよな。いいデュエル期待してるぜ」

 

 

「うん。あの入学試験のデュエルを見て以来、千代ちゃんにも少し興味があったからね。彼女とのデュエルがどうなるのか、凄くゾクゾクするよ」

 

 

レイジの言葉に凛が少し楽しそうな声でそう返すと、辺りをキョロキョロと見ていたクリスが首を傾げながら口を開く。

 

 

「あれ? 千代は一緒じゃないの?」

 

 

「うん、何だかすごく緊張してるみたいで、お手洗いに言ってくるってさ」

 

 

「あはは……千代の緊張しいも相変わらずだね」

 

 

凛の言葉を聞いて、苦笑いを浮かべるクリス。そんなクリスに、レイジが問い掛ける。

 

 

「千代ってそんなに緊張しいなのか?」

 

 

「うーん…と言うより結構な上がり症って言えばいいのかな? 千代はとにかく目立つ事が苦手だから、入学試験の時や今日みたいなたくさんの観客がいる中でデュエルする時は、いつも緊張でガチガチになっちゃうんだよ」

 

 

「あー…何か大体予想がつくな……観客の歓声にオロオロしている姿とか……」

 

 

普段の千代の態度から、容易にその姿が想像できてしまうことに苦笑を浮かべるレイジ。

 

 

「でも、デュエルが始まればあの子の集中力はとんでもないよ。目の前の対戦相手以外の言葉は全然耳に入らないくらいにね」

 

 

「ふーん……まぁ何にせよ、千代と凛のデュエルを見るのは初めてだからな。楽しみだぜ」

 

 

「じゃあ僕も、期待に添えられるように頑張るとするよ」

 

 

そう言うと、凛はPADで時間を確認する。

 

 

「それじゃ、そろそろ時間だから」

 

 

「おう! 頑張れよ!」

 

 

「観客席で応援してるからね!」

 

 

背中から聞こえるレイジとクリスの言葉を、凛は片手を上げるだけで応え、そのまま会場へと歩いていく。

 

 

 

「遊城千代……プロの父さんが生涯勝てなかったデュエリスト…遊城十代先生の娘……ある意味、この組み合わせは因縁の対決と言ってもいいかもね♪」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃……

 

 

「あうぅ…お手洗いに篭ってたら遅くなっちゃったよ~」

 

 

廊下を小走りで進み、急いで会場へと向かっている千代。

 

 

「うぅ……あんな大勢の人の前でデュエルするの嫌だなぁ……」

 

 

目立つ事が苦手な千代は表情を暗くしながらそう呟く。すると……

 

 

『クリクリ~』

 

 

「わっ…ハネクリボー……」

 

 

彼女の精霊である『ハネクリボー』がデッキから出てきて、千代は立ち止まる。

 

 

『クリ?クリクリ~』

 

 

暗い表情の千代を想ってか、心配そうな声で鳴くハネクリボー。

 

 

「ハネクリボー……うん、ゴメンね? 心配かけて……でも大丈夫だから」

 

 

『クリー!』

 

 

千代のその言葉を聞いて、今度は嬉しそうに鳴くハネクリボー。

 

 

「心配してくれてありがとう、ハネクリボー。私がんばるから、あなたも力を貸してね?」

 

 

『クリ!』

 

 

ハネクリボーは任せろと言いたげに自分の胸をポンッと叩く。そんなハネクリボーの姿を見て、千代は微笑む。

 

 

「じゃあ、急いで会場に向かわないとね!」

 

 

『クリクリー』

 

 

そう言うと千代は再び小走りで走り出し、ハネクリボーはデッキの中へと戻る。

 

 

そして、しばらく走っていると……

 

 

ドンッ!

 

 

「きゃっ!」

 

 

「っ………」

 

 

曲がり角で誰かとぶつかってしまい、千代はその場で尻餅をつく。

 

 

「あっ…ごめんなさい! ぶつかって……しまっ…て……!!」

 

 

―ドクンッ!!―

 

 

そう謝罪をしながら顔を上げ、ぶつかった青年へと視線を向ける千代。しかし、その青年の顔を見た瞬間……彼女の心臓が大きく飛び跳ね、表情が変わった。

 

 

「あっ…あ……あぁ…!!」

 

 

その表情は恐怖の色へと染まり、千代は怯えたようにその青年を見上げていた。

 

 

その瞬間、千代の脳裏に……とある記憶が蘇る。

 

 

それは……千代が目の前にいる青年にデュエルで敗北し、両膝をついた状態で青年を涙目で見上げていた記憶だった。

 

 

そして、その記憶の中の青年は見下したような眼差しで千代に言い放つ。

 

 

 

 

 

『俺が怖いか? ならば覚えておくといい……デュエルとは決して楽しいものではない。勝者は称えられ、敗者は惨めに地べたを這い蹲る…ただそれだけの世界だ。貴様のように〝デュエルは楽しければいい〟などという考えを持つ者は決して生き残れない……この程度で恐怖を感じているのならば、悪いことは言わん…………デュエルをやめろ』

 

 

 

 

 

鋭い眼光と冷血な言葉に、千代は恐怖で体が震えていたのを覚えている。それ以来、千代にとってその青年は恐怖の対象でしかなかった。

 

 

そして今……その青年が目の前にいる。ただそれだけで、千代の身体はガクガクと小刻みに震え始めた。

 

 

「……ふん、お前か……アカデミアに入学したと聞いていたが、まさかこんな所で会うとはな」

 

 

そんな千代を、青年は金色に輝く瞳で冷たく見下ろしながらそう言う。

 

その青年はアカデミアの制服ではない真っ黒に染まったロングコートのような上着を着ており、その服の要所には青いラインが入っていることから、ブルーに所属する生徒であることが窺える。

 

 

「こうして会うのは2年ぶりか……まだデュエルをやめていなかったとはな」

 

 

「ひっ……!!」

 

 

青年の射殺すような視線に、千代は小さく悲鳴を上げる。

 

 

「……ふん」

 

 

そんな千代を見て、青年は興味を失ったかのように視線を外し、そのままどこかへと歩いていった。

 

 

「うっ……うぅ……!!」

 

 

そしてその場には、床に座り込みながら自分の身体を力一杯抱き締め、怯えるように震えている千代だけが取り残されたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は移りデュエル会場では、すでに周りの生徒がデュエルを始めている中、千代の対戦相手である凛と、実技監督である十代だけが彼女を待っていた。

 

 

「千代ちゃん……遅いな」

 

 

「おかしいな……千代なら開始5分前には来ているハズなのに」

 

 

そう言いながら腕時計で時間を確認する十代。

 

 

「マズイな……実技テスト開始からすでに5分経過……10分以内に来なかった場合、テストと放棄と見なされて失格になるぞ」

 

 

「あと5分……何とかなりませんか?」

 

 

「何とかしてやりたいのは山々だが、一応俺も教師だからな。仕事に私情を持ち込むわけにもいかねぇ。だからあと5分以内に千代が来なかったら、残念だがアイツは失格。凛には後日別の相手で実技試験を行なってもらうことになる」

 

 

「そうですか……(一体どうしたんだろう…千代ちゃん……)」

 

 

十代の言葉を聞いて、複雑な気持ちになりながら千代を待つ凛。

 

 

しかし、それから2分経っても3分経っても千代は来なかった。

 

 

「4分経過……あと1分だ」

 

 

十代が腕時計を見ながらそう告げる。

 

 

「……………」

 

 

それを聞きながらも、凛は千代が来ると信じて入場口の方を凝視する。すると……

 

 

「………来たっ」

 

 

「!!」

 

 

凛の言葉を聞いて、十代も入場口の方へと視線を向ける。

 

そこには確かに、千代が顔を俯かせながらこちらへと歩いてきていた。

 

 

「残り30秒……ギリギリだな」

 

 

安心したようにそう呟くと、十代は千代のもとへと歩み寄る。

 

 

「千代、時間ギリギリだぞ」

 

 

「はい……申し訳ありません」

 

 

十代の注意に、千代は淡々とした口調で謝罪すると、そのまま自分の立ち位置へと移動した。

 

 

「?」

 

 

そんな千代の態度に十代は首を傾げながらも、気にせず自分の持ち場へと戻った。

 

 

「凛君、待たせてゴメンね」

 

 

「いいよ。さぁ、デュエルを始めよう」

 

 

「………うん」

 

 

ディスクを構えながらそう言う凛に対して、千代も小さく頷きながらディスクを構える。

 

 

「?」

 

 

そんな千代の様子を見て、凛は不振に思ったが、気にせずデュエルを始めることにした。

 

 

 

「デュエル!!」

 

 

「……デュエル」

 

 

 

先攻

遊城千代

LP:4000

 

後攻

万丈目凛

LP:4000

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「私の先攻…ドロー……えっと、『E・HEROフェザーマン』を攻撃表示で召喚します」

 

 

E・HEROフェザーマン

LV:3

ATK:1000

 

 

「ターンエンドです」

 

 

千代

LP:4000

フェザーマン(ATK:1000)

伏せカード:0枚

手札:5枚

 

 

「僕のターン、ドロー」

 

 

カードをドローした凛は、千代のフィールドをジッと観察する。

 

 

「(攻撃力1000で、特殊効果を持っていないフェザーマンを攻撃表示? もしかして攻撃を誘って……いや、それならリバースカードを伏せるはずだ。そもそも『E・HERO』は魔法や罠カードとの連携で威力を発揮するカード……何を考えてるんだ?)」

 

 

先ほどの千代の行動に疑問を抱きながら、凛は手札からカードを抜き取った。

 

 

「僕は『V―タイガー・ジェット』を召喚」

 

 

V―タイガー・ジェット

LV:4

ATK:1600

 

 

「そして永続魔法『前線基地』を発動。1ターンに1度、手札のユニオンモンスターを一体特殊召喚することができる。僕はこの効果で『W―ウィング・カタパルト』を特殊召喚」

 

 

W―ウィング・カタパルト

LV:4

ATK:1300

 

 

「W―ウィング・カタパルトでフェザーマンを攻撃。ウィング・ショット!」

 

 

W―ウィング・カタパルトの攻撃に、フェザーマンは成す術なく破壊される。

 

 

「うっ……」

 

 

千代

LP:4000→3700

 

 

「そしてV―タイガー・ジェットでダイレクトアタック。タイガー・ミサイル!」

 

 

続いてV―タイガー・ジェットの攻撃が、容赦なく千代を襲う。

 

 

「きゃぁぁああ!」

 

 

千代

LP:3700→2100

 

 

「そしてメインフェイズ2で、V―タイガー・ジェットとW―ウィング・カタパルトをゲームから除外して、『VW―タイガー・カタパルト』を融合召喚!」

 

 

VW―タイガー・カタパルト

LV:6

ATK:2000

 

 

「カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

 

LP:4000

VW―タイガー・カタパルト(ATK:2000)

前線基地(発動中)

伏せカード:1枚

手札:2枚

 

 

「私のターン、ドロー…えっと……!」

 

 

千代はデッキからカードをドローして手札に加えたあと、迷ったような素振りを見せる。

 

 

「(いけない……今は大事なデュエル…集中しないと……集中……!)」

 

 

そう自分に言い聞かせて集中力を高めようとする千代。しかし……

 

 

 

―俺が怖いか?―

 

 

 

「っ……!!」

 

 

あの日の青年の言葉……それが脳裏で反響し、千代の身体は小刻みに震える。

 

 

「(ダメ……! 集中しようとすればするほど…あの人の言葉が……!! 集中しないといけないのに!!)」

 

 

脳裏に響く言葉を必死に消そうとする千代。すると、そんな千代に凛が声をかける。

 

 

「千代ちゃん? どうしたの?」

 

 

「えっ!? あ…大丈夫です! えっと…私は『E・HEROクレイマン』を召喚します!」

 

 

凛に声をかけられ、千代は慌ててデュエルを続行し、手札のカードをディスクにセットする。

 

 

しかし……

 

 

E・HEROクレイマン

LV:4

ATK:800

 

 

「え……?」

 

 

「あぁっ!!」

 

 

召喚したクレイマンの表示形式を見て、凛は目を丸くし、千代は「しまった!」と言いたげな表情をする。

 

 

それを見て、この会場に居る誰もがこの言葉を連想した。

 

 

―プレイングミス―

 

 

クレイマンは攻撃力が800に対し、守備力が2000と言う守備専門のヒーローである。それを攻撃表示……しかも自分が不利と言う状況で出すと言うのは、自殺行為に等しかった。

 

 

「(お…落ち着いて……私の手札には『クレイ・チャージ』がある。このカードを使えば、次の凛君のターンに800ポイントのダメージを与えて、上手くいけばタイガー・カタパルトも破壊できる)」

 

 

そう考えた千代はすぐに行動に移す。

 

 

「私はカードを1枚セットして、ターンエンドです」

 

 

千代

LP:2100

クレイマン(ATK:800)

伏せカード:1枚

手札:4枚

 

 

 

 

 

場所は移り、観客席。

 

そこで千代の様子を見ていたレイジとクリスは首を傾げる。

 

 

「千代のヤツ…どうしたんだ?」

 

 

「さあ……でも、あんなプレイングミスをするなんて……全然千代らしくない」

 

 

そこまで言うと、クリスは「それに……」と言って、さらに言葉を続けた。

 

 

「今の千代……デュエルにまったく集中できてない」

 

 

「おいおい……デュエルの時の千代の集中力は凄まじいんじゃなかったのかよ?」

 

 

「そのハズなんだけどね……千代の集中力があそこまで乱れるなんて、一体何が…………っ!!? もしかして!!」

 

 

「? クリス?」

 

 

何か思うところがあるのか、突然席から立ち上がって会場の観客席をキョロキョロと見回し始めるクリス。そんなクリスにレイジは疑問符を浮かべるが、クリスは気にせず会場を見回した。

 

 

「あっ……!!」

 

 

そして見つけた……赤・黄・青、そしてブルー女子の白の制服を着た生徒達で埋め尽くされた観客席……そこにポツンっと、1人だけ真っ黒な制服に身を包んだ生徒を……

 

 

「やっぱり……兜魔(とうま)さん……!!」

 

 

「? どうしたクリス?」

 

 

その青年の名前をクリスがポツリと呟く。そんなクリスに、レイジはどうしたのかと問い掛ける。

 

 

「ごめんレイジ君、ボクちょっと席を外すね!」

 

 

「え? あ、おいクリス!?」

 

 

そう言い残して早足でどこかへと向かっていくクリス。そんなクリスの背中を、レイジは呆然と見つめることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「僕のターン、ドロー」

 

 

ターンが回ってきた凛は、デッキからカードをドローすると同時に「ふぅ…」小さく溜息をついた。

 

 

「(なんだか拍子抜けだな……もういいや、さっさと終わらせよう)」

 

 

この時点で、凛の千代に対する興味はほとんど失われていた。

 

 

「僕はVW―タイガー・カタパルトのモンスター効果を発動。手札を1枚捨てることで、相手モンスターの表示形式を変更する。僕は手札の『おジャマジック』を捨てて効果を発動。クレイマンを攻撃表示から守備表示に変更する」

 

 

「え?」

 

 

「カタパルト・ショック」

 

 

タイガー・カタパルトから電気ショックが放たれ、それを受けたクレイマンは攻撃態勢から防御体勢へと変わった。

 

 

E・HEROクレイマン

DEF:2000

 

 

「どうしてクレイマンを守備表示に……?」

 

 

それを見た千代は、何故わざわざ守備力が高いクレイマンを守備表示に変更したのかに首を傾げていた。

 

 

「そしてこの効果で墓地へと送った『おジャマジック』の効果発動。このカードが手札、またはフィールド上から墓地へ送られた時、自分のデッキから『おジャマ・グリーン』『おジャマ・イエロー』『おジャマ・ブラック』をそれぞれ1体ずつ手札に加える」

 

 

そう言うと、凛はデッキから3枚のカードを抜き出して、手札に加えた。

 

 

「さらに手札から魔法カード『シールドクラッシュ』を発動。フィールド上に守備表示で存在するモンスター1体を選択して破壊する。クレイマンを破壊」

 

 

「えっ!?」

 

 

予想外の方法でクレイマンを破壊され、驚愕する千代。

 

 

「タイガー・カタパルトでダイレクトアタック。タイガー・ブレイク」

 

 

「きゃぁぁああああ!!」

 

 

千代

LP:2100→100

 

 

「ターンエンド」

 

 

LP:4000

VW―タイガー・カタパルト(ATK:2000)

伏せカード:1枚

手札:4枚

 

 

「うぅ……私の…ターン……」

 

 

カードをドローせずに呆然と立ちすくむ千代。すると……

 

 

『クリクリー!』

 

 

「っ……ハネクリボー……」

 

 

千代のデッキから、半透明のハネクリボーが現れる。

 

 

『クリ~…クリ!クリ!』

 

 

ハネクリボーは何とか千代を励まそうとしているが、それでも千代の表情は晴れない。

 

 

「ごめんね、ハネクリボー……でも無理だよ…怖いの……あの人に会ってから、あの人の言葉や目付きが頭に浮かんでくるの……! がんばるって言ったけど……私はもう……!!」

 

 

『クリ~……』

 

 

弱々しく呟く千代に、ハネクリボーも目じりを下げる。

 

 

その時……

 

 

 

 

 

『千代ォーーーーーー!!!』

 

 

 

 

 

観客席から、レイジの声が響いた。

 

 

 

 

 

時は少々遡り、凛がエンド宣言をした頃……

 

 

「ライフ残り100……どうすんだ千代、もうあとがねぇぞ」

 

 

そう呟きながら千代へと視線を移すレイジ。すると、そんなレイジの目に、千代の傍に現れた半透明のハネクリボーの姿が映る。

 

 

「あれはハネクリボー……千代の精霊か……」

 

 

蓮との真夜中デュエルのあと、千代とクリスもカードの精霊が見えることは聞いていたが、実際に千代のデッキに宿る精霊を見たのは今回が初めてである。

 

 

そしてそのハネクリボーは千代を励まそうと必死に彼女の周りを飛び回っているが、それでも千代の表情は晴れなかった。

 

 

「……ったく、しょうがねぇな……」

 

 

それを見ていたレイジは席から立ち上がると、「スゥ~」っと、大きく息を吸い込む。そして……

 

 

 

 

 

「千代ォーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

観客席から彼女に向かって、思いっきり叫んだ。

 

 

 

 

 

「レイジ君……?」

 

 

「レイジ?」

 

 

突然聞こえてきたレイジの叫び声に、千代と凛は観客席のレイジへと視線を移す。そしてレイジは、人目もはばからず、大声で千代に言った。

 

 

 

「よく聞け千代!! デュエルが始まる前に、お前に何があったかなんざ俺は知らねぇ!! だけどな、1度デュエルが始まったらそんなこと関係ねぇんだよっ!!

 

デュエル中に余計なことをごちゃごちゃ考えんなっ!!

 

デュエルが始まったら、全力でプレイすることだけを考えろ!!

 

それがデュエルへの礼儀であり、デュエルしている相手への礼儀!!

 

そして…一緒に戦ってくれているカード達への礼儀だ!!!

 

共に戦っている仲間(カード)達を……裏切るようなマネだけはするんじゃねぇ!!!!」

 

 

 

「!!!?」

 

 

レイジの言葉を聞いて、大きく目を見開く千代。

 

 

「余計なことを考えず、全力でプレイすることが…デュエルと、相手に対する礼儀……」

 

 

そう呟きながら目の前の相手…凛へと視線を移す千代。

 

 

「そして……私と一緒に戦ってくれているカード達への礼儀……」

 

 

『クリクリー!』

 

 

そして次に、千代は自分のデッキと傍にいるハネクリボーへと視線を移す。

 

 

「うん……そうだよね」

 

 

小さく頷きながらそう呟くと、千代は大きく深呼吸をする。

 

 

「心配かけてごめん、ハネクリボー……でも、もう大丈夫だから!!」

 

 

『クリー!』

 

 

千代のその言葉を聞いて、ハネクリボーは満足そうに笑って、デッキへと戻った。

 

 

「(もう怯えない……今はただ…全力でデュエルをすればいいんだ!!!)

 

私のターン!ドロー!!」

 

 

千代の心から恐怖心が消え、勢い良くデッキからカードをドローする千代。

 

 

「(……どうやらこのデュエル…まだ終わりそうにないね)」

 

 

そんな千代の姿を見て、凛は微笑を浮かべた。

 

 

「私は手札から魔法カード『E―エマージェンシーコール』を発動します! その効果により、デッキから『E・HERO』と名のついたモンスター1体を手札に加えます。私は『E・HEROエアーマン』を手札に加え、そのまま召喚します!」

 

 

E・HEROエアーマン

LV:4

ATK:1800

 

 

「そしてエアーマンの効果を発動します!このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『HERO』と名の付くモンスター1体を手札に加えることが出来ます。私は『E・HEROオーシャン』を手札に」

 

 

千代はデッキからカードを抜き取ると、そのまま手札に加えた。

 

 

「カードを2枚セットして、ターンエンドです」

 

 

千代

LP:100

エアーマン(ATK:1800)

伏せカード:3枚

手札:3枚

 

 

「僕のターン、ドロー。僕は『X―ヘッド・キャノン』を召喚!」

 

 

X―ヘッド・キャノン

LV:4

ATK:1800

 

 

「タイガー・カタパルトでエアーマンを攻撃! この攻撃が通れば僕の勝ちだ! タイガー・ブレイク!」

 

 

「罠発動!『エレメンタル・チャージ』! 私のフィールド上に存在する『E・HERO』1体につき、私は1000ライフポイント回復します! 私の場にはエアーマンのみ、よって1000ポイント回復です!」

 

 

千代

LP:100→1100

 

 

「だけど、バトルは続行される」

 

 

タイガー・カタパルトの攻撃がエアーマンを襲った。

 

 

「うっ…!」

 

 

千代

LP:1100→900

 

 

「この瞬間、私はさらに罠カード『ヒーロー逆襲』を発動します! 自分の場のE・HEROが戦闘で破壊された時、相手は私の手札からカードを1枚選び、それがE・HEROだった場合、私の場に特殊召喚します!さぁ凛君、選んで下さい!」

 

 

千代は凛に向かって3枚の手札を差し出す。

 

 

「……じゃあ、真ん中のカードで」

 

 

「……やった!『E・HEROザ・ヒート』を召喚!」

 

 

E・HEROザ・ヒート

LV:4

ATK:1600

 

 

「さらに、この効果で召喚に成功した時、相手モンスター1体を破壊します! タイガーカタパルトを破壊!!」

 

 

「くっ…!」

 

 

「E・HEROザ・ヒートのモンスター効果! 私のフィールド上に表側表示で存在する『E・HERO』と名のついたモンスターの数×200ポイント、ザ・ヒートの攻撃力がアップします! 私の場にはザ・ヒート自身のみ……よって200ポイントアップです!」

 

 

E・HEROザ・ヒート

ATK:1600→1800

 

 

「(X―ヘッド・キャノンの攻撃力と並んだ……このまま攻撃して相打ちに持っていってもいいけど、出来れば次ターンまで残しておきたい……だったら……)

 

僕はメインフェイズ2へと移行し、手札から魔法カード『打ち出の小槌』を発動。自分の手札を任意の枚数デッキに加えてシャッフルし、その後デッキに加えた枚数分のカードをドローする。僕は前のターンで手札に加えた、おジャマのカード3枚をデッキに加える」

 

 

3枚のカードをデッキへと戻す凛。その際にカードから『そんな~!』と聞こえてきた気がしたが、気にしないことにした。

 

 

「そして3枚をドロー。カードを1枚セットして、ターンエンド」

 

 

LP:4000

X―ヘッド・キャノン(ATK:1800)

前線基地(発動中)

伏せカード:2枚

手札:2枚

 

 

「私のターン、ドロー! 私は『E・HEROオーシャン』を召喚!」

 

 

E・HEROオーシャン

LV:4

ATK:1500

 

 

「私の場にE・HEROが増えた事により、ザ・ヒートの攻撃力はさらに200ポイントアップします」

 

 

E・HEROザ・ヒート

ATK:1800→2000

 

 

「ザ・ヒートでX―ヘッド・キャノンを攻撃! ヒート・ナックル!!」

 

 

ザ・ヒートの炎を纏った拳が、X―ヘッド・キャノンを粉砕する。

 

 

「くっ……!」

 

 

LP:4000→3800

 

 

「続けてオーシャンでダイレクトアタック! オーシャニック・ブレイク!!」

 

 

「そうはさせない! 永続罠『正統なる血統』! このカードは、自分の墓地の通常モンスターを特殊召喚する。僕はX―ヘッド・キャノンを特殊召喚!」

 

 

X―ヘッド・キャノン

ATK:1800

 

 

「……私はオーシャンの攻撃を中断して、バトルフェイズを終了。そしてカードを2枚セットして、ターンエンドです」

 

 

千代

LP:900

ザ・ヒート(ATK:2000)

オーシャン(ATK:1500)

伏せカード:3枚

手札:1枚

 

 

「僕のターン、ドロー。僕は『Y―ドラゴン・ヘッド』を通常召喚」

 

 

Y―ドラゴン・ヘッド

LV:4

ATK:1500

 

 

「そして前線基地の効果により、手札からユニオンモンスター『Z―メタル・キャタピラー』を特殊召喚」

 

 

Z―メタル・キャタピラー

LV:4

ATK:1500

 

 

「行くよ! 僕はX・Y・Zの3体のモンスターをゲームから除外し、合体融合!!」

 

 

凛がそう言うと同時に、3体のモンスターが上空に舞い上がり、上からX・Y・Zの順番で合体する。

 

 

「合体融合召喚!『XYZ―ドラゴン・キャノン』!!」

 

 

XYZ―ドラゴン・キャノン

LV:8

ATK:2800

 

 

「ドラゴン・キャノンのモンスター効果! 手札を1枚捨てることで、相手フィールド上のカードを1枚破壊する。この効果で、僕はザ・ヒートを破壊する! ディストラクション・キャノン!」

 

 

ドラゴン・キャノンから放たれた砲撃が、ザ・ヒートを破壊した。

 

 

「ドラゴン・キャノンでオーシャンを攻撃! ドラゴニック・バーン!!」

 

 

ドラゴン・キャノンの次なる砲撃がオーシャンを襲う。

 

 

「速攻魔法『非常食』を発動します! このカード以外の自分フィールド上に存在する魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送り、送ったカード1枚につきライフを1000ポイント回復します! 私は2ターン前から伏せていた『クレイ・チャージ』を墓地へ送って、ライフを1000ポイント回復!」

 

 

千代

LP:900→1900

 

 

「だけどバトルは続行され、オーシャンは破壊される!」

 

 

「きゃあっ!!」

 

 

千代

LP:1900→600

 

 

「粘るねぇ千代ちゃん……僕はこのままターンエンド」

 

 

LP:3800

ドラゴン・キャノン(ATK:2800)

手札:0枚

伏せカード:1枚

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 

デッキからカードをドローする千代。そのカードを見て、千代は小さく「よしっ…」と呟いた。

 

 

「私は手札から魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動します! その効果により、私の墓地に存在するフェザーマンとザ・ヒートをゲームから除外して、融合召喚を行ないます!!」

 

 

「フェザーマンとザ・ヒートの融合? そんなヒーローいたっけ?」

 

 

「このヒーローは『E・HERO』と炎属性モンスターを融合することで召喚出来るヒーロー……来てっ!!『E・HEROノヴァマスター』!!!」

 

 

E・HEROノヴァマスター

LV:8

ATK:2600

 

 

「だけどノヴァマスターの攻撃力は2600……僕のドラゴン・キャノンの攻撃力には僅かに及ばないよ」

 

 

「わかってる……私はさらに魔法カード『H―ヒートハート』を発動します。私のフィールドのモンスター1体の攻撃力を、エンドフェイズまで500ポイントアップさせます!」

 

 

E・HEROノヴァマスター

ATK:2600→3100

 

 

「ノヴァマスターでドラゴン・キャノンを攻撃!! プロミネンス・ノヴァ!!」

 

 

ノヴァマスターが放った灼熱の炎がドラゴン・キャノンを焼き尽くす。

 

 

「ぐぅぅ……!!」

 

 

LP:3800→3500

 

 

「ノヴァマスターの効果発動! ノヴァマスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、デッキからカードを1枚ドローします!」

 

 

新たにカードをドローする千代。

 

 

「カードを2枚セットして、ターンエンドです。そしてこの瞬間、ノヴァマスターの攻撃力は元に戻ります」

 

 

E・HEROノヴァマスター

ATK:3100→2600

 

 

千代

LP:600

ノヴァマスター(ATK:2600)

伏せカード:2枚

手札:0枚

 

 

「……流石だね千代ちゃん。ライフが残り100の状態からここまで追い上げてくるなんて……」

 

 

「いえ……私がウジウジしていたせいで、私のカード達には凄く迷惑をかけてしまいました……だから私は全力でプレイをして、絶対にこのデュエルに勝ちます!!! 私と一緒に戦ってくれている仲間(カード)の為にも!!!」

 

 

千代のそんな言葉を聞いて、凛は口角を吊り上げる。

 

 

「いいね……やっぱり千代ちゃんも、僕の興味をそそるデュエリストだ…ゾクゾクするね♪だけど、このデュエルに勝つのは僕だ! 僕のターン、ドロー!!」

 

 

表情の変化に乏しい凛が、初めて嬉しそうな表情をしながら、カードをドローした。

 

 

「リバースカードオープン!『異次元からの帰還』!! ライフを半分支払うことで、ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する! 戻って来い!!『V―タイガー・ジェット』『W―ウィング・カタパルト』『X―ヘッド・キャノン』『Y―ドラゴン・ヘッド』『Z―メタル・キャタピラー』!!!」

 

 

LP:3500→1750

 

 

V―タイガー・ジェット

LV:4

ATK:1600

 

W―ウィング・カタパルト

LV:4

ATK:1300

 

X―ヘッド・キャノン

LV:4

ATK:1800

 

Y―ドラゴン・ヘッド

LV:4

ATK:1500

 

Z―メタル・キャタピラー

LV:4

ATK:1500

 

 

「これって……まさか!?」

 

 

「そのまさかさ! V・Wの2体と、X・Y・Zの3体を合体融合!!『VW―タイガー・カタパルト』と『XYZ―ドラゴン・キャノン』!!!」

 

 

VW―タイガー・カタパルト

LV:6

ATK:2000

 

XYZ―ドラゴン・キャノン

LV:8

ATK:2800

 

 

「1ターンで、上級モンスターを2体も……」

 

 

「まだだよ!! 僕はさらにタイガー・カタパルトとドラゴン・キャノンの2体を合体融合させる!!」

 

 

凛がそう言うと同時に、2体のモンスターは上空へと舞い上がり、複雑に合体を終えて新たなモンスターへと生まれ変わる。

 

 

「究極合体融合召喚!『VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン』!!!」

 

 

VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン

LV:8

ATK:3000

 

 

「ドラゴン・カタパルトキャノンのモンスター効果発動! 1ターンに1度、相手フィールド上のカード1枚をゲームから除外する! 対象は当然、ノヴァマスターだ!! アルティメット・ディストラクション!!!」

 

 

ドラゴン・カタパルトキャノンの砲撃がノヴァマスターを襲い、大爆発が起きる。

 

 

「これで僕の勝ちだ! ドラゴン・カタパルトキャノンでダイレクト──っ!!?」

 

 

凛がダイレクトアタックを宣言しようとした瞬間、ドラゴン・キャノンが巻き上げた爆煙の中から、巨大な炎が噴出した。

 

 

「なっ…これは!?」

 

 

凛が驚愕していると、彼の耳に千代の声が聞こえてくる。

 

 

「私はドラゴン・カタパルトキャノンが効果を発動した瞬間、リバースカードを発動しました。速攻魔法『マスク・チェンジ』!!!」

 

 

「マスク……チェンジ?」

 

 

聞き覚えのないカードに、凛は首を傾げる。

 

 

「このカードは自分フィールド上の『HERO』と名のつくモンスター1体を墓地へ送ることで、墓地へ送ったヒーローと同じ属性の『M(マスクド)・HERO』をエクストラデッキから特殊召喚します!!」

 

 

「マスクド…ヒーロー……?」

 

 

「私はノヴァマスターを墓地へ送り……ノヴァマスターを変身させます!!!」

 

 

凛が疑問符を浮かべている間に、フィールドを支配していた巨大な炎は千代の前へと集まっていった。

 

 

「ヒーロー……変・身!!!」

 

 

その瞬間、巨大な炎は霧散し、そこから新たなヒーローが姿を現した。

 

 

 

「これが次世代のヒーロー……『M・HERO 剛火』!!!」

 

 

 

M・HERO 剛火

LV:6

ATK:2200

 

 

「ノヴァマスターが墓地へ送られたことにより、ドラゴン・カタパルトキャノンの効果は不発に終わりました!」

 

 

「くっ…一種のリリース・エスケープか……」

 

 

「さらにM・HERO 剛火は、私の墓地に存在する『HERO』1体につき、攻撃力を100ポイントアップさせます! 私の墓地には4体のヒーロー……よって攻撃力が400ポイントアップします!」

 

 

M・HERO 剛火

ATK:2200→2600

 

 

「それでも、まだ僕のドラゴン・カタパルトキャノンの方が攻撃力が上だよ! ドラゴン・カタパルトキャノンで、M・HERO 剛火を攻撃!! ディストラクション・バースト!!!」

 

 

ドラゴン・カタパルトキャノンから放たれた砲撃が、剛火に直撃する。しかし……

 

 

「甘いですよ凛君!! たとえどんな強敵が相手だとしても、それを打ち砕くのがヒーローなんです!! 私はこの瞬間、リバースカードオープン!! 速攻魔法『決闘融合―バトル・フュージョン』!!!」

 

 

千代がそう宣言した瞬間、剛火の身体から凄まじい炎が噴出す。

 

 

「このカードはバトルフェイズ中にのみ発動し、相手フィールドに存在する融合モンスターの攻撃力分だけ、私のフィールドの融合モンスターの攻撃力をアップさせます!!!」

 

 

「そ…そんな!!?」

 

 

 

決闘融合―バトル・フュージョン

速攻魔法

アニメオリジナル

バトルフェイズにのみ発動できる。

自分と相手のフィールドに存在する融合モンスターを1体ずつ選択する。

選択した自分の融合モンスターの攻撃力は、エンドフェイズまで、選択した相手の融合モンスターの攻撃力分アップする。

 

 

 

M・HERO 剛火

ATK:2600→5600

 

 

「攻撃力…5600!!?」

 

 

「M・HERO 剛火の反撃!!! 豪熱滅砕……バーニング・フィストォーーー!!!」

 

 

剛火による強力な炎の一撃が、ドラゴン・カタパルトキャノンを粉砕した。

 

 

「ぐぅっ…うわぁぁぁぁあああああああ!!!!」

 

 

LP:1750→0

 

 

 

 

 

―勝者―

遊城千代

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「やった……勝ったぁ!!!」

 

 

オォォオオオオオオオオ!!!

 

 

デュエルが終了すると同時に、観客席から大歓声が上がる。

 

 

「ハァ~……負けちゃったかぁ」

 

 

床に座り込みながらそう言う凛だが、その顔はどこか清々しかった。そんな凛に、千代が歩み寄る。

 

 

「あの…凛君……」

 

 

「ん? なに?」

 

 

「序盤で失礼なデュエルをしてごめんなさい!!」

 

 

そう言って凛に頭を下げる千代。突然の謝罪の言葉に、凛は一瞬面食らうが、すぐに微笑を浮かべる。

 

 

「いいよ。途中経過はどうであれ、結果は僕の負けなんだから。勝者が敗者に謝るなんておかしいよ?」

 

 

凛がそう言うと、千代は少しだけ申し訳なさそうな表情をしながらも、顔を上げた。

 

 

「それはそうと、千代ちゃんはどうしてあんなに集中力が乱れてたの?」

 

 

「えっと…それは……」

 

 

凛の問い掛けに言いよどむ千代。

 

 

「……まぁ、言い辛いなら言わなくてもいいよ。もう大丈夫なんでしょ?」

 

 

「……うん」

 

 

そう応えると、千代は少し考えるように目を伏せる。

 

 

 

「(正直に言うと……あの人の事はまだ怖い……だけど、怖がっているだけじゃダメ。その恐怖を乗り越えるだけの勇気を身に着けなきゃ……どんな敵にも勇気を持って立ち向かう……私の大好きなヒーローのように!!!)」

 

 

 

千代は心の中で強くそう決心したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

観客席の最後尾で壁にもたれながらデュエルを観戦していた黒い制服を着た青年。

 

そしてデュエルが終わると、静かにその場から歩き去ろうとした。

 

 

「待って……兜魔さん!!」

 

 

「…………」

 

 

突然呼び止められ、青年……兜魔は足を止めて後ろを振り返る。

 

そこには、真剣な表情をしたクリスが立っていた。

 

 

「クリス・アンデルセンか……貴様も会うのは久しぶりだな」

 

 

「ボクも、ってことは……やっぱり千代は兜魔さんに会ってたんだね」

 

 

「偶然だがな」

 

 

「………千代に…何か言ったの?」

 

 

クリスはそう問い掛けるが、兜魔は口を開かず、2人の間を沈黙が支配する。

 

そしてしばらくしてから、兜魔がゆっくりと口を開く。

 

 

「別に」

 

 

それだけ言うと、兜魔はクリスから視線を外して再び前を向く。

 

 

「用件はそれだけか? ならば俺は行かせてもらうぞ」

 

 

そう言って歩み去ろうとする兜魔。そんな兜魔に、クリスは握った拳を震わせながら叫んだ。

 

 

「兜魔さんは千代をどうしたいの!!? 2年前も、千代がデュエルをやめたくなるほど追い詰めて……今日だって千代がデュエルに集中できないほど怖がらせて……どうして千代を追い詰めるの!!?」

 

 

兜魔の背中に向かってそう叫び続けるクリス。

 

 

「どうしてもっと千代に優しくしてあげないの……だって…兜魔さんは千代の……!!」

 

 

「それ以上喋るな」

 

 

「っ!!?」

 

 

尚も言葉を紡ぎ出そうとしているクリスを、兜魔が威圧感の篭った声で静止させる。

 

 

「俺がヤツにどう接しようが貴様には関係ない。文句があるのなら……俺に勝ってからにするんだな」

 

 

そう言い残し、兜魔は今度こそその場から去っていった。

 

 

俯きながら下唇を噛み、悔しそうにしているクリスをその場に残して……

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

月一試験が無事終了したその夜……レッド寮の千代&クリスの部屋では……

 

 

「そんじゃあ! 無事テスト終了を祝って、カンパーイ!」

 

 

「「「カンパーーイ!!」」」

 

 

いつものレイジ達4人が、購買で買ったジュースを片手にテスト終了の打ち上げをしていた。

 

 

「いやー昇格したヤツは出なかったけど、落第になったヤツも出なくてよかったな~! 特にクリス」

 

 

「ホントだよ~! 筆記は最悪で、実技も引き分けだったから、結果が不安でしょうがなかったよ~」

 

 

「それを言ったら、私も序盤にプレイングミスをしちゃったし……」

 

 

「じゃあそのプレイングミスをした人に負けた僕はどうなるって言うのさ?」

 

 

そんな会話をしながらワイワイと打ち上げをする4人。

 

 

「まぁ何はともあれ、テストも無事終わったことだし、また明日も楽しくデュエルやろうぜ!!」

 

 

「「「おおーー!!!」」」

 

 

 

 

 

こうして、デュエルアカデミアの月一試験は幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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