~HERO、初めるから~   作:秋告ウサギ

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さて此処で本当のプロローグ。主人公となる者たちの前日…。

なお、本作では現実感を出させる為に実在するアニメ・漫画・小説作品のタイトルが登場します。



第0話「《世界》が始まるまで」

夕暮れ 眺月市通り

 

「ま、待ってよ姉さん」

「ほらほら、早くしないと置いてくぞ?」

 

帽子を深く被ったボーイッシュな女子高生は走っていくのを何処か少女の様な顔つきをした少年が追いかけていた。

 

「姉さんってば、これ以上寄り道してたらまた母さんに怒られるよ?」

「もう、ゲーセン行きたい言ったのは《明由(あゆ)》だよ?良いじゃん♪かあいいヌイグルミもらったし」

 

そう、勉強ばかりで遊ぶ事が少なかった明由は目の前の姉、《逢恵(あいえ)》に頼んで連れ出してもらったのだ。姉の有り余る元気ぶりに男としての自身をなくしかけたが初めてのクレーンで見事ヤクうさ(ヤクザスタイルのウサギ)ちゃんグルミ・頬傷スーツ版を手にとり、

 

「かあいいいいよぉッ、お持ち帰り~♡」と某光速券少女の如くはしゃいでしまい、大爆笑されてしまった。

今思い出してもめちゃくちゃ恥ずかしい。姉さんのエネルギッシュさに男の自信をなくしそうに…いや、実際ヌイグルミで大はしゃぎした時点で無いと宣言してしまったようなものだ。そんな思考がグルグル頭を回っている最中、ふと黄色い声が聞こえて其方に目を向く。

 

「ねえねえ、今度の休み一緒にお昼食べようよ♪いい店見つけてきたからさぁ」

「おいおい、その日彼と私は青春TOWERで新作聴きに行く約束だぞ」「ふぇ!?服の着替え選んで貰おうと思ったのにぃ」

「ごめんごめん、でも…約束破る様な俺って好きかい?」「「「「むぅ、それ反則だよ(ぞ)~♡」」」

 

「…なんだありゃあ(呆然)」

「また凄いねえ(感)」

 

なんて言ってたら見入っていた姉さんと余所見していた額中心の髪だけを深く切ったプレイボーイが思い切り正面衝突した。だああああああ!?心で絶叫しつつ姉さんが落とした帽子を拾い上げて相手に謝る。

 

「失礼しました。せっかくの良いとこ…じゃない!姉が迷惑を」

「ああ、いや我々も話に夢中になってしまって(汗)」

「あっはは、やっちったよ。すいませ…」

 

ん。と続くはずだった口が止まり、クリクリした眼で男の顔を見ていた。その理由は男が地面に落としたカードを凝視していたからだ。

 

「『運命の輪』が中心、『吊るされた男』に『恋人』は…『搭』と『審判』?」

「タロットカード、ですか?」

 

帽子を被り直した少女に男は震えそうな声で語りかけた。

 

「元気っ娘ちゃん…君、恋に落ちるよ」

「はい?…それってナン「(残念だが)僕じゃないよ相手は」っと?」

「僕と君の未来は違う方向にある。でも縁があれば…いや、それよりも君は近い内に何か大事な事しなきゃいけない」

「大事なこと「できなければ最大の好機を逃す」な、何で!?」

「君と僕がぶつかって落ちた五枚の『未来』。共通する一枚に異なる道が二枚、それぞれ向いている理由だ。近く君は恋の相手に出会って、そして大きな壁にぶつかる」

 

さっきまでのプレイボーイな少年は何処へ行ったのか、いま目の前にいるのは…なんというか少年の姿を借りた幻想的な予言者だ。その雰囲気の変わりように一緒にいた女性らも心配そうに眺める。

 

「まあどう選択するべきかなんて今会った俺に言えないが「そのへんは心配ないです」お?」

「何起きるかわからない未来の選択(さき)なんて上手く行く確信なくて当たり前でしょう♪」

「!」「それに占いは信じない派ですから。でも親切に有難うございます」

 

そう言いながら拾い集めたタロットを渡すと頭を下げて立ち去ろうとしたが、ふと振り向いて聞いてみる。

 

「月詠、出逢いに恵まれると書いて逢恵です。弟は明由。あなたは?」

「《揚羽 一翔(あげは、かずと)》です、元気なお嬢さん。名前に相応しい一時(じんせい)を」

(…そういえばこの人、一翔さん側に落ちたタロットは一体何の暗示だったんだろう?)

 

ふと亜由はそんな疑問を持ちながら歩く。そして一翔も…。

 

「どうしたの?急に静かになって?」

「なんだ、あんな事言ってやはりさっきの彼女まで誘うつもりか?」

「…破壊」「…!」

 

「さっきの『塔』の絵のカードって何かが壊れるって未来が映ってるんだよね?」「「!?」」

「…確かにあの『塔』は俺に向いていた…でもね、それは不安じゃないんだよ」

 

不安なのは、もう一つの…。そう考えて言葉を飲み込む。

 

見崎都 都内裏路地

 

「…お、来たか不良生徒会さんよ」

 

肩までかかる髪をした学ランを肩に掛けた少年に声をかけられたのは、短髪で額にゴーグルの様なグラサンを引っ付けた学生服の少年。目を引いていたのは夜中でも目立つ黄色い右眼(オッドアイ)だった。

 

「その呼び方やめてくんない?」

 

「不良で十分だよ。こんな夜中に不良のたまり場に顔出して、超新星の名が泣くぜ」

「別に良い子にする為に運動や勉強している理由じゃない」

 

そうだ、人と違う結果を出し続ければ新たな世界が見えると信じ続け、ひたすら努力し続けていた。

瞳を差し引いても、普段から容姿も決して周囲に遅れないようにしていた。両親からすら「頑張りすぎる子供」と言われる程に。勘違いしないでくれ?甘えることも子供であることも忘れたワケじゃないんだ。

 

「演劇部が休みの時は学校にいる内に予習を済まして不良の仲間入り、か」

「…俺はな、ここで本を読みに来ているんだ。一番落ち着いて読めるからな」

 

そう言って手渡されたチューハイ(グレープ)のプルタブを開け、未成年は口に流し込む。

缶を階段に置いて座り、小さな本のページをめくり始める。側にいた女子学生が覗き込むが細かく書かれた文字を見ると興味を失くしたと言いたげに離れた。

 

彼が読む本はサバイバルホラーゲームが原作で、襲い来るグロテスクなクリーチャーを前にした人間達のドラマを描いた物だった。家族はともかく頭の固い教師や受験に必死な上級生に見つかったら、騒ぎを起こす口実には十分だろう。彼の周囲にそんな人間がいないという事が救いだ。

 

「まあ流石に俺が友達でも、留年する前に友の危機を救わない理由には行かないからな」

「要するに『お前いないとつまんないから学校に来い』ってことか」

「それが俺が考案した『仮面と懐中時計』をさせてもらえる条件だ」

「へぇそれはまた、確かアレって主人公は怪人で人間の未来を喰らうとかいう中二なせって…」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・(笑顔)」

「・・・・・・・・・・(汗)」

「・・・・・・・・・(満開)」

「・・・・・・・・・(極汗)」

「・・・・・・つっかま~えた♪」

 

NOOOOOOOOOOOOOOOOッ!?そんな絶叫が響く中、昏き世界は祝福するかの様に輝いた。

 

 

夜 見崎都 とあるチェーン(注;店名です)

 

「握り飯一つと、このミネラルウォーターをお願いします」

「有難うございました~♡」

 

年配のコンビニ店員とリュックを手に持った目付きの鋭い少年がやり取りしているのを見て、新米は顔を引きつらせそうになるのを必死に堪える。しかし少年の目がやたらと怖いとかそんなんじゃない。というのも、おにぎり一つに対しミネラルウォーターのペットボトルが7本と数の割合がおかしかったからだ。それも店に残っていた数を数えてガックリしていた様子を見るとまだ欲しかったらしい。そんなにリュックは入らないだろうに。

 

「有難う御座います♫」

「「有難うございました~♡」」

 

目つきに反した綺麗な声と余りに自然なスマイルで返されたのでハモって答えた。

店に出ていく。何というかああ言うのが…。

 

「何、お客さんに失礼なこと考えている?」

「…そういう先輩も思っていたでしょう?」

 

鬼の形相であったろう先輩も黙った。そんな風に考えていたら。

 

「あの~」

「「あ」」

 

隣のレジで待っていた小中学程の客に気づけないでいた。どうやらさっきのて(ゲフンゲフン(;一_一))少年と入れ違いで店に入っていたらしい。

 

何でもない、戻らない毎日を過ごし続ける人々。戦争が起きている国はあるけど、不安定ながら均衡は保たれていて、《普通になりなくない》という普通の思考が世界を支配していて。

 

 

見崎都 とあるチェーンの建影

 

「ふぅ…」

 

先ほど買った《峠の湧水》を口付けると非の打ち所がない美味でもう少しとっておきたくなった。

でも今飲みたい…飲まないと身体が壊れそうだ。ああ

 

「熱くてしょうがないって顔だね「…」そんな季節じゃないと思うけど?」

 

声をかけられて向くと紅い花の飾りを頭に付けたゴシックロリータの少女が、瞳を閉じたまま歩いてくる。

彼は黙ってしまう。影から現れた彼女の、その美しさに。

 

目を閉じたまま少女は、口付けしそうになる程、顔を彼に近づけた。

 

「お兄ちゃんの熱…取ってあげようか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ク カ      ラ

           レ      カ ダ 

             ノ       デ

 

 

 

 

約十分後 見崎都 とあるチェーン前

 

先程、少年と入れ違いに入った子供は空を見上げながら峠の湧水と鶏天(とりの天ぷら)串を頬張る。

 

「…そろそろ帰らないと母さん心配するな」

 

こうやって眺月市から隣に位置する見崎都まで散歩するのは、普通の小学生一人でするものじゃない。

でもこの街で採れる峠の湧水は今のところ此処だけなので飲むなら移動するしかない、普通の天然水より安くて美味しいと感じていたこともあったがそれ以上に、彼は《非日常》を求めていた。

 

「やっぱり、キッカケ探しなんて意味ないのかな」

 

彼はすぐに知る。この場所を選んだことに誤りはなかったことに。

 

見崎都 とあるチェーンの建影

 

「そんなナリでこういう遊びは合わないのではないですか、お嬢さん」

「あらぁ…こういうの好きな人って結構、う…良く分かってくれてるけどなぁ」

(…それは余り褒められた趣味の人種ではないのでは(・・;))

 

服の上を下ろして背中を曝け出す少女の耳を甘噛みしながら思ってしまう。しかし彼女の誘いに乗った自分も大概だなと呆れながら彼女の脇の下から胸に手を伸ばす。

 

「静かすぎるね、車の音も聞こえない」

「風が音を運んでいないせいですよ、でも落ち着きます」

「…周りの音を聴きながら誰かに見つかるかもって思う方がドキドキしない?」

「そんなイケナイこと言う子供の相手はしませんよ?」

 

口で呆れつつ手は止めない。その僅かな凹凸が手に伝える弾力と、自分の行為で多少湿った肌を感じるが…。

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

(静かすぎる。空気すら動いていない?)

(これじゃ浸れないなぁ)

 

二人は服を整えると空を見上げた。その時、突然歪み始めた空に少年は目を見開き、少女は嗤う。

 

見崎都 とあるチェーン前

 

少年はペットボトルを落としそうになり、慌てて掴んで再確認する様に叫ぶ。

 

「虹色の…極光!?」

 

見崎都 とある一軒家

 

「日本にあんな極彩色のオーロラが…」

 

統我は、二階の窓から覗いたその神秘的な光景に胸が踊りそうになっていた時、それは起きた。

オーロラが突然割れた…いや、円状に開いたのだ。不自然な速度で変化するオーロラの姿に、ただ見惚れた。

 




次回
第1話「契が繋がった日」

いつもの風景に見えて、何処か慌ただしい見慣れた街を走り出す。
何も考えず、少年は知りたかった。その思いに答えたのは…

ふう、此処までは書くの順調でしたが今後は大変そう。長い目で見てくださいまし。
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