~HERO、初めるから~   作:秋告ウサギ

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(時系列から)最初の戦闘まで問題なく書けまして…。

とりあえずはドキドキして進めよう(感)非日常に入っていきますよ。


第1話「契が繋がった日」

見崎都 蒼月学園の登校道

 

「おい統我、何でそんなスッゲェ隈できてんぞ」「い、いや…ちょっとな(笑)」

 

顔を逸らしつつも、顔を整えて話す。

 

「昨日のオーロラにテンション上がって、消えるのに約三時間近く外で走り回ってたんだ」

「……そこは、なんでもないって隠すのが王道じゃないか?」

「そんな小説みたいな展開、期待させられてもねぇ」

「数秒前の発言を見直せ馬鹿!!」

 

たった三行で何言ってるんだこいつは。オーロラを求めて外を走る少年なんてメルヘンにも程があるというのに変な部分で現実的な台詞を語る、情緒不安定とはこういう奴を言うのではないか。

しかし、昨夜出現したオーロラの輪が此処や周辺の街で軽いパニックを作ったのは確かだ。

 

「そ・れ・よ・り♥アレの話はどうにゃってるのかにゃ~ん?」

「が、学校に来たらソレ考える時間くれるんじゃないの!?」

「考える時間はあげたよ、でもその長く待つとはいってにゃあい♪」

「き、貴様ァ」

 

この子悪魔め。本来なら女の萌え要素面なのに何処かマッチしている感があるのがまたムカつく。

 

「…さて、どうしたものか」

 

そんな彼は空を見上げる。実を言うと《仮面と懐中時計》の台本は滞っている。最も困難を極めているのはヒロイン像なのだ。

人々の日々を脅かす怪人を追う主人公を支える女性。しかしどう絡めていく?

それも劇という形なのだから限られた時間で纏められないといけない。今の僕に…何処まで出来る?

 

「…出会いか」

 

眺月市 とある家

 

「ただいま」

「おかえりなさい、今日は遅かったわね」

「ごめん、ちょっと寄り道」

「また何か本でも買ったの?」「えへへ」「もう、また遅くなるわね」

 

と呆れたように言いつつも母の声には楽しさがにじみ出ている。そんな何でもない会話をしながら少年《山下 裕次》は階段を登って自室に向かう。

 

…確かに母さんの言うとおり、僕は新しい本を外で読んでいるからいつも帰りは遅くなる。でも今回はそれだけじゃない…と思ったのは内緒だ。いつもと違う《こどものけいかく》にウキウキしていた。

 

見崎町 路地裏

 

カツカツとけたましい靴音を鳴らしながら額中心の髪が目立つ少年は走る。

 

「ははは、まさかこんな事になるとは」

 

約一時間前

 

「…カードがない」

 

一翔は女のナンパによく使っているタロットカードが足りないことに気づいた。実はこの間もなくなっている物があったのに遅れて分かったのでこれ以上は減らすまいとしていたのだが。

 

(デート代を残しておかなきゃならないのに、買溜めなんてしていられない!!)

 

なんて不順なことを考えていたのが今日一番の不幸の引き金だった。なんせ心当たりのある思い出(逢引)の場所に取りに行ったら…。

 

続いて川原

 

(昨日、逢恵ちゃん達とぶつかってカードを落とした時…)

 

あの時、表側に落ちたタロットが暗示していたのは俺と彼女の未来だ。その結果に戸惑いつつ顔に出さないようにしていたが。

 

(茂みに注意が向かなかったんじゃ、受け入れられなかったのかな)

 

タロットが示す選択は真実だけだと信じていた。それが揺らいでしまう程の《未来(げんじつ)》。

そんな風に振り返る中、何か気配を感じて無意識に振り返った。

 

「!?」

 

そこには仮面が《居た》。そう居たのだ。影のような物体支えられてⅢと刻まれ女性が冠を被ったようなデザインの仮面が、その粘りを感じさせる身体を軟体生物のように動かしながら…。

 

うわあああああ!!とも、一翔は声を上げる事もできずに走り去るしかなかった。

 

 

夕方 東風宅

 

 

統我は食事を早めに済ませて出かける事にした。街を覆う不確かな気配が薄れていっているからだ。

ひょっとしたら人生最大の機会を逃すかもしれない。そう心からの予感に突き動かされて。

 

歯をしっかりと磨き、一風呂浴びて髪を乾かし、顔を洗い、ヒゲを剃るとジュースを飲んで準備は万端。

 

引き出しから出したのはお気に入りのサバイバルホラーゲームのコラボで発売されたTシャツ。主人公のガスマスクで顔を隠し、戦闘服を見に包んだ女性的なラインの姿をプリントした柄だ。同ゲームの限定購入特典でもらっている腕時計も取り付け、外灯に照らされた道に出る。

 

商店街通り

 

 

前の方から近づく不規則な足音を耳にして角に目を向ける。

 

「うぉっと!」

「ぐぅ!」

 

誰かとぶつかってしまったが、そのまま走り去ってしまったので顔の確認も出来なかった。

 

向かう方向と反対だった事もあって、そのまま目的地に足を動かす。

 

(…あの場所なら)

 

十数分後 崎中央公園

 

ここで一番、街を見渡せる場所。公園というには改修を加えられていないのは「峠の湧水」とそこで大切にされている大きな《星登の樹》があるからだ。

 

「ここが…」

 

何か…風が全て自分に向かってくる様な奇妙な感覚。それは胸の高鳴りを沈めていった。

 

─汝は何を求め、ここにいる?

 

─其のように衝動に駆られるがまま、此処に立ったか。

 

─何かを求めて来たならば曝け出せ。

 

─さあ、望みを叶えてやろう。それに見合う代償と引き換えに…

 

「…君は何処から来たんだ」

 

─聞きたいのは望みだ

 

「知ること、それが僕の望みだ」

 

一歩踏み出して心のままに述べていく。

 

「君は誰なんだ?僕たちが生きていた日常の中で何が隠れている」

 

「平凡な日常の裏には、恐ろしい罠がある。それは何時どこに潜んでいるか分からない」

 

「そして牙を向いた時に立ち向かえば、自身の知らない一面も見える」

 

「確かにあったんだ。世界にも《一面》というものが」

 

「世界の姿、誰も知らない場所、触れてみたい」

 

世界の知られざる真実を、掴む力が欲しい 自分の手で!!

 

ありったけの言葉を慟哭にし、前を見据えた。

 

─…一度しかない機会をそんな事に使う気か

 

「そんな事?違うな。探究心枯らさないのは命かけるのに十分だよ」

 

─ふ、ふふふふ。はははははははは

 

─いいだろう。だが私にもお前の心の内を見せてもらう。

 

─その選択で、この先どんな真実に直面しようと向き合えるのなら、

 

─暴いてみるがいい。私も、世界も。

 

─代償と楽しみの一環に、心の内を頂こう。

 

質問する間もなく抜かれた。何が、とは答えれない。ただ体に手を入れられた感覚がして、余りにも自然に抜かれた。痛みも不快感もない。

 

そうして僕は言葉を失う。目の前に無音のまま現れたのは。

 

…仮面に顔を覆われたような姿の…怪物。赤銅色の体表に包まれた《仮面の怪人》。

僕が思案していた《仮面と懐中時計》。ここに理想と言える姿があった。

 

「手を見てみろ。私がした事は私にも、お前にも、周囲にも変化を与えた」

「!、これは…」

 

視覚して初めて重みが伝わった。銃だ。38口径(9mm)の回転式拳銃が白く輝いている。当然の如く本物の銃なんて見るのも初めてだ。

 

「どうやら妙なものもついてきたみたいだな。まあ試してみろ」

 

は?と聞き返す前に奇妙な声が遮った。「あ」とも「お」とも形容できない音に嫌な予感が膨れ上がった。サバイバルホラーで定番としか言い様がない呻きだったからだ。

 

 

 

 

暗闇から現れたのはゾンビだった。しかも唯のゾンビではなく手に血の付着した斧を握っており、体から木の枝が突き出たり、口があるべき場所に花が咲いていたりしている。

 

「《インフェ・アクス》!?」

 

サバイバルホラー作品《PRBV GARDEN》。捕食する庭園と名付けられたそれは《BIO HAZARD》シリーズと並ばれる不動の名作ゲームであり、統我が愛する作品の一つだ。植物が人類に次ぐ未知の可能性を秘めているとされた世界で、それを兵器に転用するという結果が生み出した悪魔。

 

インフェとは即ち地獄(インフェルノ)。貪欲と化した植物がより効率的に養分を得ようと、人間を移動手段に乗っ取り、誕生した獄人。ただのゾンビの様に見えるが、最大の特徴が視認できないサイズで体表が鋭くなっており、触れた生き物の血や体液をその吸引力を加えた凶器の身体全体から、獲物を喰らう怪物なのだ。

 

他者を傷つける意図などない。だが生きる為に与えられた身体がそれを許さないという《地獄で生きる人々》なのだ。故に接近戦で挑むことは禁じられている。

 

(俺が《PRBV GARDEN》から呼んじゃったのか!?インフェは植物を内包した身体の重さに筋肉ズタズタで身体の動きが遅いし、体表刃は致命傷にならない。でも斧持ちとなると現実の体じゃ掴まれた時点で即死!!)

 

周囲を見渡した統我はクズカゴに目を向けた。即座に走り出し、蹴り倒す。

入っていたゴミが転がり落ち、手で立ち上げようとする。

 

(まだ重い!!中身をもう少し外に出さないと)

「何をしているんだ?アイツは」

 

後ろからはインフェが斧を構えて迫ってくる。

 

(軽すぎたらダメだ。…良し)

 

後ろで斧を振り上げるインフェを確認した時、クズカゴを思い切り頭から被せ、蹴り上げた。

そして素早くクズカゴに入ったゴミの中で上半身をもがかせているインフェの上に乗り、

 

「必勝!!」

 

パァン!!と弾丸を放った。インフェには避ける術も思考もなく、呆気なく崩れ落ちた。

 

「…ふう」

「そんな戦法を咄嗟に思い出すとはな」

「この街は僕の庭だから、あるもので何とかするしかないよ」

 

獄人の呻き声は未だ鳴り響く。新たに三体の出現を確認した時、

 

「怖くても、此れしか出来ない」

 

銃を構え直した時、獄人が唸りを上げたのを、

 

「stop」

 

少女の声が遮った。樹の影から眠たそうに起き上がろうとした真っ黒で小柄な影は、歩き出す。

 

「ちょ、今の声って言うかその姿は」

 

流石の統我も腰を抜かす所だった。今着ているシャツにプリントされたガスマスクをした女性シルエット。それが今、目の前に現れたのだ。

 

「Japanese…日本語はこれでいいか?素人がインフェ一体倒しただけでも賞賛だぞ」

「や…やっぱりあなたは!?」

「貴重な情報源だ…除草は(プロ)に任せておけ」

 

そう言うと彼女はマシンガンをインフェに掃射した。一体が完全に沈黙した所で銃を下ろし、怯んだもう一体の体表刃に覆われた頭(・・・・・・・・・)を脚で挟みこんだ。そして地面に口の花ごと叩き落としたのだ。貼り付いた様なボディスーツに身を包んでいるものの、片足は露出していた。とても正気で行う戦い方ではない。

 

後は取り出した自動拳銃で一発。残った一体の口を潰し、立ったままのそれを蹴り倒した。

 

「さて…ここはどこなんだJapanese?」

 

黒髪に褐色の肌をした少女。間違いなかった。

 

コードネーム《エノク》。PRBV GARDENを代表する最強ヒロインだ。

 

 

 

 

「さてと、私もこの世界を楽しむか…身体の使い道も考えないとな」

 

こんなとてつもない騒動ですら、誰も知らなければ過ぎた一日でしかない。それが当たり前。

 




次回 第2話「天の牙に光を持たらす子」

その子は何も考えずにそれを拾った。

ただ何も考えずに、守ると決めた。そして変革に触れる。

さて、ここから更新不定期ゾーンに入ります。次回できるまで、覚えてもらえるかなぁ(汗)
前書き、後書きはまだ短めにしておこう。
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