オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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97 奇妙な共闘

鈴木照夫という少年の生涯は、総じて見ればその大半が幸せな時間だったのだろう。

優しい両親、経済的に問題なく、コミュニケーション能力に欠けるという事も無く。

友人にもそれなりに恵まれ、よく学び、よく遊び、健やかに成長を重ね続ける事ができていた。

十年そこらの人生ではあったが、概ね順風満帆だったと言っていいだろう。

歳をとった人間が、薄れた記憶を良いものと錯覚するのとは違う。

彼の頭の中には、今でも幸せだった自分の記憶が残されている。

残されていたのだ。

最早、思い返される事すら無いとしても。

 

不幸は何処からか。

火災からか。

火災で両親が死んでからか。

親戚の家に預けられてからか。

親戚の家に馴染めず持て余されてからか。

親戚の家に預けられる事で生活圏が変わった事か。

新しい友達を作るのが、今の照夫にとって難しかった事か。

 

それは、或いは時間に任せれば薄れていく辛さだったのかもしれない。

或いは、優しい誰かが傍にいれば、徐々に癒えていく傷だったのかもしれない。

 

真の不幸は、照夫には素養があったことだろう。

その素養さえ無ければ、傷付きながらも生きていく中で、新たな一歩を踏み出す事ができたかもしれない。

だが、引き金は引かれた。

おおよそ、照夫という少年が短い生の中で自覚できていた、自分が持っていた何もかも。

それが炎の中に消えていったあの日、照夫という少年の魂はひび割れ、その隙間から、新たな生命が顔を覗かせ始めた。

 

人間、鈴木照夫は未だ生きている。

しかし、鈴木照夫という器の主導権ですら、新たな生命が握り、掴み直す事すらできない。

 

いや……。

仮に、照夫が自らの現状を理解したとして。

泣き叫ぶ事も、悲しむ事も、怒る事も、抵抗する事もなかっただろう。

そうするだけの気力は、既に照夫の中には無い。

あったとして……、運命を覆す力も無い。

 

夢を見ている。

懐かしい両親の夢でも、幸せだった時間の夢でも無い。

何かを食べている夢。

暗い殻の中から、外の景色を透かし見る夢。

薄く、柔らかな殻は、徐々にひび割れ、外からの光が入り込み……。

 

眼が、合う。

冷たい光を宿す、巨大な黄金の瞳。

感情の乗らない、実験動物を見るような、冷静ですらない、平静な眼差し。

 

絶望から掬い上げるヒーローが訪れる事も無く。

王の素養を持っているというだけの一人の少年の命は、無情な観察者だけを目撃者として、新たな生命の糧として食い破られた。

 

―――――――――――――――――――

 

ずん、と、白に近い灰の身体を持つ飛蝗に似た怪人が着地する。

器である鈴木照夫の肉体を食い破り、ついに現世に実体化したオルフェノクの王、アークオルフェノク。

アーク(方舟)の名を冠する通りにオルフェノクという種族を生き永らえさせる事のできる、唯一である筈の救い主。

人間態を持たず、人間としての知識すら持たず、本能的な動作のみを行うアークオルフェノクは、生まれ落ちてまず、周囲の状況を確認した。

配下であるオルフェノクが存在するか。

 

危険があるか、という確認をしているわけではない。

オルフェノクの王であるアークオルフェノクにとって、大概の生き物にとっての危機は危機足り得ない。

また、人間としての記憶を持たない純粋なオルフェノクでるため、その行動は基本的に本能に忠実だ。

では、オルフェノクの本能とは?

無論、仲間を増やし、人間を減らすこと、それに尽きる。

 

()()()()()()()()()()、ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()

王と言えば聞こえは良いが……、その実態は天使が人間に植え込んだ呪いの塊だ。

食事やセックスを必要とせず、死なない。

その様な存在が人間に成り代わり跋扈する世界は、少なくとも今の世界とはまるで異なるものとなるだろう。

天使の似姿であるオルフェノクによる人類滅亡。

アギトとは異なる、人間の姿かたちすら地球上に残らない完全な滅亡。

それこそが、人間を憎み、妬み、疎んじた天使達の望む結末だ。

 

仲間を増やさなければならない。

その本能に従い、周囲を見回すアークオルフェノク。

何処かの建物の中か。

窓一つ無い真っ白な壁面、床、天井。

入り口すら無い密室の中には、外へと繋がる道らしきものは無く、通気孔らしき小さく細い穴が転々と開いているのみ。

 

王の誕生を迎える部屋として見れば殺風景極まりない。

これならばスマートブレイン地下に存在する施設の方がまだ神殿らしくもあっただろう。

この部屋を別の何かに例えるなら……実験室だろうか。

 

ふつ、と、殺風景な部屋の中に、もう一体の異形が現れる。

白い体色に黄金の角を頂くその異形こそ、王に仕えるべき無数のオルフェノクを屠った怨敵、未確認生命体二十二号である。

無論、それをアークオルフェノクが知る事は無いが……。

 

アークオルフェノクが手を掲げ、光弾を放つ。

黄に青、白も混ざるそれは性質としてフォトンブラッドに近い。

いや、過去に現れたアークオルフェノクの情報を元に作られたライダーズギア、それに利用されているフォトンブラッドこそ、アークオルフェノクの力を模して作られたものなのだろう。

 

天使達──マラークの持つ超能力と比べても直接的な破壊能力。

或いは強化されたエルロードにすら匹敵するだろうか。

テオスにより何かしらの役目を与えられた天使と比べて、人類を滅ぼす呪いとして作られたからこその高い戦闘能力。

 

並のマラークであれば粉々に砕けてもおかしくない威力の光弾が二十二号に迫る。

対する二十二号はアークオルフェノクの鏡写しの様に片手を掲げ、光弾に手を向ける。

するとどうだろう、恐るべき威力を秘めていたオリジナルのフォトンブラッドとも呼べるものが、みるみる内に縮んでいく。

念動力にて光弾をキャッチし、圧縮しているのだ。

 

アークオルフェノクが光弾を連続で放ちながら、二十二号に歩み寄る。

二十二号は光弾を圧縮し傍らにストックしながら、アークオルフェノクへと歩み寄る。

互いの距離が10メートルを切った時点で動きが変わる。

アークオルフェノクが光弾を放ちながら、見るからに弱点に見える二十二号のベルト、オルタリングへノーモーションで光の触手を放つ。

速度としては光弾よりも僅かに早いか。

エネルギーを射出するよりも、優れた身体能力を持つ故に、肉体の一部である触手を伸ばす方が速度はあるのか。

放たれた触手がオルタリングに突き刺さるまで一呼吸の半分も無い。

 

だが、遅い。

それがアークオルフェノクの持てる全力であったかは定かではない。

煩わしい外敵を腕で軽く払うつもりの動きだったのか、目障りな敵を殺す為の殺意を込めた一撃だったのか。

或いは、既に二十二号という存在が人間からかけ離れ始めているからこそ、人を滅ぼす事を遠回りな使命として与えられたアークオルフェノクの側に殺意がわかなかったのか。

このレベルの存在が放つには余りに無造作すぎる動き。

 

光の触手が二十二号に掴まれ、ぐん、と、引かれる。

半エネルギー、半実体の触手は消すも出すもオルフェノクの意思一つ。

逆に、消さなければ、という意識が発生しない限りそう切れるものではない。

 

アークオルフェノクの身体が宙を舞う。

ほぼ真横、進行方向への移動を加速させられた形だ。

だが、知性も理性も人間と異なるアークオルフェノクに焦る、という感情の動きは無い。

引き寄せられるまま、しかし自らの能力で軌道を安定させ、拳を握る。

光弾は放たない。

その代わりと言わんばかりに握られた拳が眩い光を湛えている。

全身の力を一点に集めた、バイタルチャージ。

威力は光弾の比ではない。

本能的に強敵として認識したのだろう。

 

飛翔するアークオルフェノクの身体を何かが貫く。

二十二号が放つのは圧縮した光弾、フォトンブラッドの礫。

アークオルフェノクの放つそれこそ、現存するフォトンブラッド関連技術では成し得ない最高純度のフォトンブラッドであり、その威力もまた並ではない。

それを喰らえばアークオルフェノクですら無事では済まないだろうが……。

礫がアークオルフェノクの身体を貫き、しかしアークオルフェノクの勢いは止まらない。

アークオルフェノクと二十二号のシルエットが交差し、輝く拳が振り抜かれる。

 

重い一撃。

鈍い音が響き、二十二号の胸板にアークオルフェノクの拳が減り込む。

僅かに遅れて、ぼと、と、何かが落ちる音。

ごろりと特殊合金製の床に転がるのは、アークオルフェノクの生首。

カウンターの桜花の型が綺麗に素っ首を切り落としたのである。

 

青白い炎が燃え上がり、アークオルフェノクの肉体は灰に。

多くのオルフェノクのそれと同じく、標本の一つすら残さず、真のオルフェノクの王は呆気なく死を迎え──。

 

「タイムベント」

 

──巻き戻す様に、灰から産まれ直した。

巻き戻された、という自覚があるのか無いのか、殴り合うには僅かに遠い距離で、アークオルフェノクは剣と盾を両手に構える。

対する二十二号もまた、黒く染まったライジングタイタンを正眼に構えた。

 

―――――――――――――――――――

 

絶命の度に僅かに時を巻き戻し、アークオルフェノクの性能確認作業を繰り返す。

スマートブレイン製ライダーを圧倒する事から中々の強豪怪人として描写されるが、性能だけを見ればそれほど優れた個体、という訳でもない。

体感で言えば……恐らく、一段か二段程進化を重ねたアギトであれば、苦戦しつつも倒すことは難しくない、という程度か。

攻撃手段に特殊なものは無い。

少し距離を取って、格闘距離から少し離れた場所で触手を掴んだり切り落としたりしていると武器を取り出して来る程度か。

 

頻度から見て、剣に、槍、盾を好むらしい。

武器を切り落とす度、絡め取って遠くに捨てる度、新たに武器を精製する辺り、念動力の類は無いと見ていい。

何度かハンドボール大の爆弾らしきものを取り出し周囲を自分ごと焼き尽くし、その中でも動き続けた辺り、生存に際してそれほど酸素を必要としないのか、我慢強いのか。

汎ゆるオルフェノクの武器を作り出し使用できる、というが、それもメリットかと言えばそうも思えない。

 

まぁ、爆弾の類を延々精製して爆発させ続けたなら、周辺被害は大変なものになるかもしれないが……。

一度に大量の爆弾を精製して威力を高めようとか隙を作ろうとしないのは、一度に大量の武器は精製できない、と、こちらに思い込ませる為か、実際にそうなのか。

これでオルフェノクの武器にマラークの武器と同じ様に特殊な効果が存在するというなら話は別なのだが……、オルフェノクの武器は意外とそういう感じの武器が少ない。

また、単純に全てのオルフェノクの持つ特殊能力を備える、という訳でも無さそうだ。

アークオルフェノクはあくまでもアークオルフェノク、という事なのだろう。

 

が、タイムベント十回目を超えた辺りから唐突に加速を始めた辺り、生まれたてであるが故に色々とおぼつかないだけで、高位のオルフェノクが備える様な特殊能力は基本性能として備えているのかもしれない。

加速を覚えてから徐々にサイズ感が増してきているのも気になる。

或いは激情態やら飛翔態、疾走態の様な特殊形態を備えているのか、生き抜くのに相応しい形を目指しているのか。

しかし、身の丈三メートルを超えた時点で巨大化が収まり、その後も肉体的変化が現れる事はなかった。

性能限界があるのか?

アークオルフェノクの特殊能力はあくまで、他のオルフェノクに人間部分を捨てさせて永遠の命を与えること、というものに限定されるのかもしれない。

 

また、肉体強度に関してはそれほど改善が見られなかった。

エルロードと張れそうな火力に対し、肉体強度は平均的ゴ階級程度か。

マラークに見られる念動力の壁は見受けられない。

試しに撃ってみた、ミラーワールド製ライダーの召喚武器から技術を引っ張ってきた純粋科学で製造できる銃器の類で十分にダメージを与えられる。

リボルビングバスターキャノンくらいの火力があれば、腕とまでは行かなくとも手や足(脚にあらず)程度なら簡単に破壊できる。

ダメージを与えられるだけで止めを刺せるかは未知数だが……、野良アギトが存在し、警察にアギト部隊が存在する以上、殺せない、という程の脅威ではないだろう。

 

ただし、捕獲に関しては難しいのではないだろうか。

さっきは手から光弾を発射していたが、手足を切り落として別の実験に移そうとした際には、手足をフォトンブラッドで補填し始め、全身の何処からでも光弾を発し始めた。

これを拘束する……というだけなら、強めのモンスターに契約させた拘束用デッキで抑え込めるだろうが、投薬や解剖となると難しい。

一度、強めの麻酔を戦闘中に体内に注入してみたが、効果が現れたようには見えなかった。

根本的に、肉の器を得たマラークと同じで、厳密には生命体という訳でもないのだろう。

魂主体なのか。

魂というよりは呪いの塊にも見えるが……。

 

また、当然ではあるが、赤い霧で包んでも魔石の戦士にはならなかった。

人間としての要素は本当に消えてしまっているのだろう。

切り落とした部位は灰になる為、生きたまま切り刻んでも何かしらの材料に使用する事はできなさそうだ。

腐っても天使の亜種である為、アギトの力を与えるなどすれば、或いは伝え聞くエルアギトの様に別の存在に進化する可能性もあるが……。

そこまでして活用法を見いださなければならない性能でも無い。

 

存在するだけでオルフェノクから人間として生きる可能性を奪うという点で危険な存在ではあるが、このアークオルフェノク単体で見れば、それほど脅威度が高いという訳でもないだろう。

一つ問題があるとすれば……。

 

「……」

 

タイムベントで巻き戻している間に実験室から転移で退場し、代わりに給餌用オルフェノクを与えてみても、これを仲間と認識して不死化しないところだろうか。

給餌用に改造された円筒形のオルフェノクを前に、アークオルフェノクは何をするでもなく、ぢっ、と、見つめ続けている。

餌として延々同じフォルムのものを与え続けた為に、もしかすれば、自らを完全体にするための同種の尊い生贄的なものでなく、降って湧いてくる餌の一種としか認識していないのか。

難しいものだ。

オルフェノクの形など決まりきった部分は色味と装飾のセンスくらいのものだと思うのだが。

オクラモチーフとドラゴンモチーフが同時に存在するような不可思議生物が、今更円筒形の物言わぬ餌になった程度で同種と認識できないとは嘆かわしい。

やはり、生き物としての思考能力も失ってしまっているのが悪いのか?

このままでは、一般オルフェノクを不死化したとして、どれくらいのレベルの不死なのかを計測できない。

親であるアークオルフェノクが死ぬ(放映版でカットされただけで死ぬ描写自体は存在している)以上、やはり不死は不死でも不老の延長上の不死でしかない、殺せる不死ではあると思うのだが……。

 

「作り直すかぁ」

 

幸いにして、最小限の部位でアギト化するデータばかりでなく、ドラゴンオルフェノクとゴートオルフェノクは逃げ出しても強めの怪人程度の脅威である為、色々と実験を重ねていたのだ。

あれらのデータを使えば、餌としてのオルフェノクから、アークオルフェノクに仲間と認識してもらえる程度にはそれらしいオルフェノクの形に戻せる筈だ。

 

「む」

 

拘束用のデッキを持ち、再び実験室に入ろうとしたところで、秘密基地の呼び鈴が鳴る。

インターホンで誰がやってきたか確認すれば、カメラには眼を×の形にしていてもおかしくない程度にははっきりと意識を失い、間抜けにも舌をデロンと出し、脳天にたんこぶを拵えた、実験装備をこの秘密基地から盗み出してまんまと逃走中の何故か豪雷に瓜二つの謎の少女が、首根っこを掴まれて吊るされた状態で映されている。

次いで、少女の顔が斜めしたにスライドし、歳を重ねてなお野生の肉食獣に似た美しさを持つ義経師範の顔面が映し出された。

よく見なくともこめかみなどに分厚い青筋が浮かんでいる。

歳を取ると皮膚のコラーゲンが少なくなって血管が見えやすくなるからな、仕方がない。

 

『お前の関係者だろう、引き取りに来い』

 

「なんでそう思ったんで?」

 

『炊事場に忍び込んで食料を漁る、景色に溶け込む色のロボットなぞ、お前の作るガラクタ以外に思い当たらん。良いから、来い』

 

ドスの利いた声だなぁ。

ああいう声を意識的に出し続けると喉に癖がついてしまうから、次に沖一也氏に会う時に喉がガラガラになっていないか心配だ。

 

―――――――――――――――――――

 

はぐはぐはぐはぐ。

擬音で表すならそういう音が出ているのではないかと錯覚する程の勢いで、謎の少女が食事を摂っている。

本堂の隅には見事に武装を剥がされて強制解放スイッチを押されて中身を引きずり出された機動外殻が転がされている。

一応、アクセルフォーム相当の手早さが無いと理論上引きずり出せない筈だったのだが……。

機械人形相手の戦闘にも慣れてきているんだなぁ、師範。

 

「路銀はどうした?」

 

むしゃあ、と、手元のおにぎりを食べきった謎の少女が、真っ直ぐな瞳でこちらを見返しながら口を開く。

 

「つかいきってしまった」

 

「結構な額あったよね?」

 

「ごはんを食べに駅前にいったら、ぼきんがどうとかやっていたから」

 

「全額突っ込んだ訳でもないよね?」

 

「親とはぐれたこどもがいたから、アイスを買ってあげたりもしたな」

 

「募金やら迷子やら見かける度に似たような事をしたわけじゃないよね?」

 

問うと、首を傾げる。

 

「こまっている人が居たら、たすけるものではないのか?」

 

「間違っちゃいないが」

 

FAGの本能……?

それとも轟雷の残滓かな……?

 

「あと、おみやげを買ってきたぞ」

 

ごっ、と、本堂の床に叩きつけられる、努力と掘られた石の置物。

大きめの狛犬の置物。

剣に龍が巻き付いたキーホルダー。

りんごがまるごと入ったアップルパイ(開封済みで半分ほど減っている)。

 

「名物をたべていたら、おみせの人がおすすめしてくれたんだ。すごい良いものらしいぞ」

 

ふんす、と、ふんぞり返りながら言い切る謎の少女。

うーん、この……。

 

「あと、カメラを買った。かわいい犬の写真がたくさんある」

 

「現像は?」

 

しゅん、と、しおれる様にうなだれてしまった。

 

「デジカメなら現像できると思ったが、そういう機能はないのだな……」

 

「流石になぁ」

 

「でも、あれに乗ってる間は、USB接続で中のモニターにうつせる」

 

……なるほど。

 

「交路、このガキは」

 

「うちで製造した謎の人造人間です。少し、装備一式と共に脱走して諸国を漫遊中でして」

 

「……………………なるほど」

 

腕組みをし、しばし沈黙した後、諦めたように頷く師範。

次いで、拳がにゅっと俺の後頭部に伸び、落とされる。

ごん、という音が響くが、勿論俺の頭部頭蓋骨は最新最硬の素材に置き換わっているので、痛いのは師範の拳だ。

 

「見ろ、師範が怒っているじゃないか」

 

「でも、だいしゅりょう、お金がなくなったら戻ってこいって」

 

「お金は無くなったら渡すって言ったよな?」

 

「おなかがすいて……ごはんのにおいがしたから……」

 

うる、と、眼を涙ぐませる謎の少女。

兄弟子の中の、禿頭白目の修行僧が両手を広げて割り込む。

 

「この娘、話を聞いていたところかなり頭がアレな様子。そう責める事もあるまい」

 

仲裁するのかと思いきや酷いこと言い出したなこいつ。

数珠装備してなかったらバダンの改造人間にすり替わってると見做して殴ってるところだが、一理ある。

アレというのがどういう意味であるかは謎の少女の名誉のために断言する事は無いが。

彼女の肉体には頭脳に相当するパーツが存在せず、増幅したアギトの力が肉体を動かしている様な状態であるため、脳味噌を使って行う事全般が不得手なのだ。

 

「じゃあ、今度は、お金がそろそろ無くなりそうだなって思ったら、一本電話なりメールを入れなさい。先に用意しておくから」

 

「ごはんも?」

 

「ご飯も用意しておいて貰うよ。ここはたくさんご飯を作るから一人分くらい増えても一緒だからね」

 

兄弟子らの一部が『えっ?』みたいな顔をしたが、一部除く心優しい兄弟子らが『しっ』と黙るようにジェスチャを飛ばしたのでさしたる問題にはならなかった。

割と赤心寺の台所には差し入れしてるから、経済的な面では文句は無い筈だ。

 

「わかった、たすかる」

 

「ありがとうございます、だ」

 

こくりと頷いた謎の少女に対し、師範が口を開いた。

謎の少女は『あっ』と何かに気付いた表情で、ぺこりと俺に向かって頭を下げた。

 

「しえん、ありがとう。かならず、目的をはたしてみせる」

 

「うん。頑張ってね」

 

こくりとうなずき、師範に向き直る。

 

「さきほどは、もうしわけなかった。ぶしつけなお願いだが、少し場所を貸してもらってもいいだろうか」

 

「構わん」

 

「ありがとう。……流石に、夜に襲いかかるのは、あいつにも、近くのひとたちにも迷惑だからな」

 

ぺこりと頭を下げ、外殻の荷物入れを漁り出す。

直ぐに出てきたのは、アウトドア用品店で買えば結構な値段になる高級そうな寝袋だ。

あれも店員に勧められるままに買ったのか……?

などと考えていると、師範が掌でペチンと頭を叩いてきた。

俺の頭はご機嫌な打楽器ではないのだが。

 

「甘やかすのも良いが、まずはちゃんとモノを教えろ」

 

「善処しますよ」

 

まぁ、モノを教えたところで轟雷の魂と頭脳を統合されたら消え失せるだろう人格だからなぁ。

今回の様な問題ならさっき言ったとおりにすれば大丈夫だし、何か問題が起こる前に豪雷の魂がしっかりと分割できる程度に進化するように祈っておこう。

 

―――――――――――――――――――

 

暫くパワースポット巡りをしている間に、巧の辿る道順は徐々に最適化されつつあった。

なるべくなら人里の中を通り、人気のない山道を走るのは最小限。

見晴らしの良い場所では周囲を警戒して、怪しい影が見えたら遠ざかる。

それだけで、謎のロボットの襲撃は目に見えて頻度が減っていった。

何かしらの理由があるのか、あのロボットは極端に人目を気にするのだ。

気にするのだと、思っていた。

ミラーを覗いて背後を確認すれば、キャタピラで走行し、人目もはばからずに着いてくる黒いロボット。

 

不気味なのは、景色に溶け込む事も無く、人目のある中でも堂々と着いてくる事だろうか。

人目を気にする、というのは、自分の思い違いだったか。

そう考える巧の視界、鏡の中の黒いロボットが、背負った砲塔を動かす。

不味い、と、考えるまもなく、その砲身が巧のバイクに向けられ──る事無く、再び折りたたまれ、黒いロボットの姿が景色に溶け込んでいく。

何事かと思えば、対向車線からパトカーが近づいてきてすれ違う。

やはり人目を気にするのか。

じゃあさっきのは何だったのか。

その答えは、それから数時間後。

キャンプの為に山の中の川沿いに立ち寄った時に明らかになった。

 

「ずるいぞ」

 

森の中からゆっくりと姿を表した黒いロボット──ウェアウルフ・スペクターは、開口一番そう口にした。

くぐもった低い機械音声でありながら、何故か半泣きの様にも聞こえる声に、危機的な状況とは裏腹に巧は思わず吹き出してしまう。

 

「人のモン盗もうとするやつが言う事かよ」

 

既に手の中にはファイズフォンが握られている。

慣れた手付きで変身コードを入力し、腰部のドライバーにセットすれば、巧の姿は堅牢な装甲に覆われた戦士、仮面ライダーファイズのそれへと変貌した。

 

「それは、私のものだ」

 

がしょん、と、背部からスラッガーブレードを引き抜くウェアウルフ・スペクター。

 

「んなわけねーだろ」

 

オートバジンからファイズエッジを引き抜くファイズ。

 

「お前のものではない」

 

「かもな」

 

ベルトを作ったのは彼の友人で、ベルトの中身は彼の娘、一人の個人の記憶だ。

なら当然、それの所有者は自分ではない。

 

「けどな」

 

と、言葉を続けようとした巧の目の前で、轟音と共に()()()()()

丁度ウェアウルフ・スペクターが今しがた出てきた方角から、土砂崩れの様に山を削りながら、巨大な蟹が現れる。

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

三体程の、2階建ての一軒家ほどはあろうかという巨大な蟹──バケガニ。

その内一体のハサミの中にはマジョーラカラーの体色を持つ異形の人型──鬼が捕らえられており、

 

「仕降鬼さん!」

 

もう一体のバケガニの背を蹴り、銀に赤の差し色の入った全身装甲を身に纏った男が跳躍。

両腕を上下に開くと、その間に青白いフォトンブラッドがプラズマの如く迸り、飛び散る火花の如く放たれた鏃の様な光弾がバケガニのハサミの根本に直撃。

千切れこそしないもののハサミの拘束が緩み、鬼の男、仕降鬼が放り投げるように解放される。

仕降鬼はボールのように弧を描きながら空を飛び、その着地点に居たファイズが思わずその身体を受け止める。

 

「助かった、ありがとう!」

 

「なんなんだよ、ありゃ」

 

快活そうなはきはきとした喋り方の鬼。

オルフェノクでもない、ニュースで見た未確認でもない、今の自分や友人の様に何かを着込む形で変身するでもない、よくわからない存在がはっきりとした日本語でしゃべる事に驚きつつ、バケガニを指差すファイズ。

身体を離し、ファイズの頭の上から足先までを見た仕降鬼。

 

「君はナオの知り合いかな?」

 

「誰だよそりゃ」

 

「違うか。じゃあ、ちょっと離れてなさい」

 

「離れてろって、あ!」

 

見れば、銀の全身装甲──強化スーツ『グレート』がバケガニの上でダンスをしている。

いや、そう見えるだけで、グレートを身にまとう中身、七王(なお)は必死で振り回されるハサミから逃れ続けていた。

体重など無いように軽やかに動くグレートだが、中身が生身の人間である以上、普段から動き慣れていたとしてもスタミナにも集中力にも限界がある。

ハサミは徐々にグレートの銀色のボディを掠めるようになりつつあり、ついにそのハサミがその身体を捉えようとした、その瞬間。

 

「てやぁ!」

 

掛け声と共に振り回されたスラッガーブレードがバケガニの脚を二本纏めて叩き切り、バランスを崩したバケガニが姿勢を崩す事で、グレートは寸でのところでハサミから逃れる。

その隙にバケガニから遠ざかり着地したグレートが、バケガニの脚を切り倒したウェアウルフ・スペクターに軽く頭を下げる。

 

「助かった、ありがとう!」

 

「いい! 困っている人は助けるものだ!」

 

返答を返すウェアウルフ・スペクター目掛け、二体のバケガニが同時にハサミを振り下ろす。

すかさずスラッガーブレードでハサミを受け止めたウェアウルフ・スペクターの脚が、膝辺りまで地面に減り込む。

破壊される事こそ無くとも、その足元は普通の地面でしか無い。

生き埋めにされて行動不能にされる事はあり得る。

しかし──

 

「おらぁっ!」

 

バケガニの鼻面目掛け、ファイズの飛び蹴りが決まる。

速攻で放った為にポインターすら使っていない素の飛び蹴りではあるが、それだけでバケガニはたたらを踏み背後へと押し出され、ウェアウルフ・スペクターを地面に押し込もうとしたハサミも退けられた。

 

「何のつもりだ」

 

「人助けは当たり前なんだろ!」

 

言い返され、押し黙るウェアウルフ・スペクター。

その姿を見て、へっ、と笑うファイズ。

幾度か戦ってきた相手だ。

その上で、襲ってきた場所とタイミング、そして今回の様な事があれば、否が応でもどういう奴なのかが透けて見えてきてしまう。

もちろんそれは勘違いなのかもしれないが……。

 

「手助けしてくれる、って事でいいのかな」

 

並び立つ二人の前に、先導するように立つ仕降鬼。

 

「いいんですか?」

 

それに背後から遠慮がちに尋ねるグレート。

 

「人里も、ここから遠くは無い」

 

がこん、と、背部に背負ったキャノン砲を展開するウェアウルフ・スペクター。

 

「放っておける訳ないだろ、あんなの」

 

手にしたファイズエッジを構え直し、ファイズフォンに新たなコードを打ち込み、銃の様に変形させるファイズ。

 

「成り行きさ。警察の人らとだって上手く行ってるんだから」

 

ギターの様な音撃弦を構えた仕降鬼が纏めると、誰が合図をするでも無く、一斉にバケガニに飛び掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





バケガニに有効な音撃の種類が思い出せない
あと次の年の話になるけどブレイドも一話のAパート時点で空き家だった家にBパートでは親子が移り住んでるから一話の中でもそれなりに時間が進んでて……
どの時点を第一話の時系列にすれば上手く纏まるのか
2004年の三年前にアンデッドが解放されたから解放されたのは2001年、この時点では対策できる程手広く無かったし、2002年は龍騎の技術を弄り回して戦力を拡充してた
原作開始前に無理に手出しするより、本編始まってからの方が出現場所の特定やしやすいからこの時点で動いてないのは良いとして
原作開始前に剣崎の場所は割り出せるかな。ボロアパート住まいだし、遠目にドローンで追尾させれば問題無さそう
資料として超全集買ったけど、ざっくりとした纏めとしてウィキくんが何故かあらすじを事細かに書いてくれてるのすごく助かる
資料買い足しは来月かなぁ
今月は無駄遣いしすぎてAUかんたん決済がもう使えないので
請求書が怖い

あと今回、最初は森で戦ってたら魔化魍が出てきて、それに謎の少女ウェアウルフ・スペクターが『あんなものを放っておけないだろう!』ってやって
それを見たファイズが、こいつにも何か事情があるのか、みたいな考えを振り払い、一緒にバケガニと戦う、というだけの話になる筈だった
あとオリジナル鬼出すくらいなら裁鬼さんなり斬鬼さんなり響鬼さんなり出せって話ですが
まぁせっかく設定した訳だし……
タイミング的にはこの時期に轟鬼くんが警察辞めて弟子入りしたくらいですかね
絡められたら良かったけど、あの朴訥そうな感じは警視庁ってより地方の駐在さんっぽいよね


☆現在地、度々オルフェノクが訪れては行方不明になる謎の地方都市のいにゅい
ちょっと前までオルフェノクを出会い頭に首チョンパする謎の人物が定住してたって聞くぜ
サバイバルキットのお陰で殆ど金は減ってないけど人との接触が少ない為ヒゲは無精髭生えてそう
いにゅいでなく中の人だったら焚き火の脇でギター持ってフォークソング謳っててもおかしくないなぁと思うけど、たぶんこの次元のいにゅいは病みかけ
時折かかってくる馬鹿みたいな内容の電話とか、時折襲ってくる謎の襲撃者のお陰でなんとか踏みとどまってる感じ

☆お金の使い方は本能にしたがってしまった謎の少女with赤心寺メンバーズ
FAウェアウルフ・スペクターの見た目のまま赤心寺の厨房に忍び込んで炊きたてのご飯をタッパーに詰め込もうとしていたところを義経師範に御用される
メカニカル木人拳の経験が生きて、生き物とは違う弱点があるだろうと外れそうな武装から引っ剥がしていたら偶然コックピットが開いて中身が見えたのでぶん殴って引きずり出したら美少女が出てきた
謎のメカ→作ってそうな門弟→毎年美少女を連れてやってくる→謎のロボットから出てきた美少女→犯人は門弟
いくら武術一辺倒でもそれくらいの連想ゲームはお手の物なのだ
中身が思ったよりも頭の出来がアレだったのでなんか憐れまれて許された
こういうのは教育したやつの責任だな?
殴っても自分の手が痛いだけというのはわかっているが、誰かが叱らねばならぬという事で毎度取り敢えず一発は殴ってくる
もしや善人では……?

☆赤心寺の白目ハゲ
数珠を持ってるから成り代わられてる訳ではない
けど衣装は奪ったにしても数珠だけ装備してないとか気付かせる為に潜ませてたまであるよね
謎の秘密結社なら同じ様な数珠の一つくらい用意してやれよ
入れ替わられていないのでこのこいつは普通の赤心寺に籠もってこのご時世に武術の腕を磨き続ける奇妙な人でしかないぞ
原作でなり変わられてたこいつも髪逆立ててた人もこの世界線ではロボットの発進シークエンスに歓声を上げたりロボットとの組み手に未来を感じちゃってたりする愉快な人達なのだ
まぁ部外者じゃなくて門弟の一人のやることだから甘いというところもある

☆オルフェノクの王(経験値蓄積中)
全滅プレイというか、周回引き継ぎというか
現時点では契約済みデッキを利用して作られたシルバースキン・リバースの様なもので拘束されている
ネタバレになるがこの個体は実験室を脱走できないし、下剋上も恐らくできない
ゴ階級くらいの護りとエルロードを超える火力とゴートオルフェノク相当の加速能力と天然のフォトンブラッドを利用した義肢による擬似再生能力を併せ持つだけの雑魚
基本的にこの世界はライダー世界であり各ライダー世界の過去に起きた出来事は何らかの形で発生しているので、条件を満たす子供は各地にたくさん居る
地味に剣崎なんかも条件満たしているっちゃ満たしているよねこれ
火事が原因って辺りはアークオルフェノクと剣崎といにゅいはお揃いだぁ

☆どうせ消える人格だからとしつけをしない親失格のン
知らん間に生えてきたやつだから子供としては扱っていないのかもしれない
実際その他のFAGと比べると扱いはだいぶ粗雑にしている
消える人格だから情を移さないようにしているともとれる
そんなことよりアークオルフェノクでの実験だ!
できないことをやろうとするより、まずはできることからやっていかないとね



知っているとか思うけれども、こうして戦闘の導入を書いてから次回に引くと、次の話を戦闘シーンから始めるという点だけは決まるので書き始めがなめらかになる
気がする
気がするだけな気もする
そういう訳で次回は何故か同時発生したバケガニ三匹と四人の戦士の戦いから
結局原作キャラいにゅいだけじゃねーかという話もあるが
魔化魍戦なので時間経過で近隣の鬼が応援に駆けつけてくれる、という展開もできるのでどうなるかは知らない
この時期なら尻鬼さん家電鬼さんくらいはフリーで出してもええやろ感ある
ここで巻き込まれた不幸な警察官として轟鬼くんを出してもいいかもしれない
そこんとこどうなるか決まるかは知りませんが、次回、

『仕置きの鬼』

を、気長にお待ち下さい
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