オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
青森県青森市の中心部、少し前であればねぶた祭りで賑わう通りは今、祭りの歓声とは異なる、人々の悲鳴が響き渡っていた。
突如として空から降り立った、無数の溶けかけの飛蝗人間──マッドアークが、手近な人間を片端から襲い始めたのである。
しかもそれだけではない。
マッドアークの姿を目撃した市民、その中からすら、灰色の異形と化して人々を襲い始める者が出始めたのだ。
彼らは本来、壊滅したスマートブレインとすら関係無い、人々の中に潜み、静かに暮らす無害なオルフェノクだった。
死からの再生、人とは異なる力、ふと湧き上がる仲間を増やそうという衝動とそれに伴う増やし方への理解。
それらを異常と理解し抑え込んで生活できていた、理性あるオルフェノク。
そんな彼らが、マッドアークに導かれる様に変身し、人々に使徒再生を施さんと暴れている。
それはオルフェノクの王が備えている特殊能力の類なのか。
そんな能力がオルフェノクの真の王、アークオルフェノクに備わっていたかは定かではない。
しかし、少なくとも王の出来損ないであるマッドアークにその様な機能は存在せず、その行動は決して成し得ない真の王への羽化を目指す捕食のみ。
市井に紛れていたオルフェノク達を突き動かしていたのはつまり、集団心理に他ならない。
自分一人ではすぐに警察なり四号なりに始末されてしまうだろう。
しかし、見てみれば多くの似た連中が暴れまわっている。
あいつらは大丈夫なのか? なぜ大丈夫なんだ? 何か組織だって行動しているのではないか?
それなら自分もやってもいいかもしれない。
或いは、自分もそれに参加しなければ、或いは自分に脅しを掛けてきたあのスマートブレインのスカウトの様に、何かしてくるかもしれない。
やれるならやろう。
始末されるくらいならやろう。
積極的か消極的かはともかく、彼らは自らの力を開放する言い訳を得てしまったのだ。
更に、悪い条件は重なるもので。
遠目に見るマッドアークの暴れぶりをみて、この辺りの人間はあれに任せよう、という考えで、一定の距離を置いて人間を襲い始めたのである。
それはマッドアークの認識範囲から外れる程度の距離であり、或いは、使徒再生によりオルフェノクエネルギーを流し込まれた人間の反応が囮となり、本来の捕食対象でありながら、中々マッドアークに狙われる事も無い。
マッドアークに噛みつかれ、血霞を上げながら食い殺され。
或いは、野良オルフェノクに使徒再生を施され灰になる。
再び立ち上がるものはそれほど居ない。
食い殺されたものは論外として、そもそものオルフェノクの使徒再生の成功率も高くはない。
ただ、灰の怪物に人々が蹂躙されている。
地獄絵図と言っていいだろう。
この光景を見て、即座に逃げ出すという行動を取れるものはまだ良い。
しかし、地方都市の人間は東京の人間に比べ、人類敵対種族への耐性が非常に低い。
未確認などの情報を知ってはいても、あくまで紙面上、画面越しの情報でしかない。
人を標的にして明確に殺しにかかる生物が闊歩し、或いは二度も東京を大規模襲撃されておきながらその中で暮らす、一種の異常な精神力を持ち合わせていない。
単純に、人を貪りくらい、心臓を貫き灰にする怪物を見て、腰を抜かすのは仕方のない話だ。
その少女もまたその内の一人だった。
ねぶた師を祖父に持ち、先日の祭りでもその活躍を見て心躍らせていた少女は、自分たちの学園祭で披露する為のねぶたの仕上げをする為に、不足した材料を買い集めに来ている最中だった。
当然、市街が人食いと人殺しの怪物に蹂躙されるなどとは想像もしていない。
店を出て、地獄同然の光景と悲鳴、遅れて届く、人が燃える匂いに撒き散らされる血と臓物の香り。
それを受け、頭に理解が及ぶよりも先に、すとんとその場に座り込んでしまった。
腰が抜けた、とも言うのだが、どちらにせよ、少女はその場を離れる事ができない。
目の前の光景にゆっくりと理解が及び、しかし、立ち上がれず、小さく悲鳴を漏らす。
その声を聞いたのか、或いは、獲物を食べ終わったからか、マッドアークの一体が少女に視線を向け、ゆっくりと歩み寄る。
降り立った他のマッドアークは距離を取っており、獲物を横取りされる心配が無いためか、或いは今食らった人間で腹が重いのか。
どちらが真実かはともかく、その動きは少女にとっては恐怖を煽るものでしかない。
ちょろ、と、水音と共に、へたりこむ少女のスカートの中から黄色い水溜りが溢れだす。
普段であれば羞恥に悶えるところだが、恐怖に囚われた少女は顔を青ざめて、なんとか動く腕で尻もちをついたまま後ずさることしかできない。
もう手も届く、という距離まで来たマッドアークの口腔部がエイリアンの如く展開し、粘つく涎を垂らしながら少女へと伸ばされ……。
その伸びた口を、横合いから飛んできた長槍が貫いた。
長槍の勢いにつられ蹈鞴を踏むマッドアーク。
マッドアークがバランスを崩すのを見計らっていたかの様に、一つの人影が飛び込み、飛び蹴りを食らわせて完全にマッドアークを吹き飛ばした。
ゴロゴロと転がるマッドアークを前に、人影は油断なく構え直す。
左腕を水平に、その指先に肘を付けた右腕を垂直にした赤心少林拳の基本的な構え。
それを取るのは、やはり異形。
しかし、一目見てマッドアークやオルフェノクのそれとは異なる造形。
修行僧、山伏の装束を元にした様な装甲を身に纏う、虎に似たフルフェイスの兜を纏った戦士。
腰部にはカードシステムを排し、破損防止の装甲を被せた疑似デッキシステムの簡易版を備えたそれは、見るものが見ればミラーワールドのライダーの系譜を継ぐ装備だとわかるだろう。
虎頭の戦士の目の前で、フラフラとマッドアークが立ち上がる。
長槍に口腔部を貫かれ、蹴り飛ばされた肩は大きく拉げているが、戦意、いや、食欲は十分なのだろう。
明らかに人と異なる異形(と、マッドアークは認識した)虎頭の戦士目掛け、背部の羽で浮き上がりながら加速。
赤黄の光弾を放ちながら飛びかかる。
しかし、虎頭の戦士は焦ること無く、身体の装飾に見えるパーツを引き抜き一振り、装飾が伸びて変じた長槍を手に構えた。
「下がっていろ」
少女へと声を掛け、前に。
迫る光弾を、気を充実させた長槍で斬り飛ばし、ぐるりと回転させた穂先でマッドアークの頭部を上から殴打。
しかし、先とは異なり目の前のそれを一応は捕食に苦労する相手と認識しているマッドアークは、槍の殴打に僅かに蹌踉めきながら前進を止めることをしない。
喰らいつく為に虎頭の戦士の両肩に掴み掛かり、顔面を首元へ向け、穴の空いた口腔部をきちきちと音を鳴らしながら伸ばし……。
その腹部に柔らかく当てられた拳。
そこから伝わる衝撃に、肩を掴んでいた指だけを置き去りに勢いよく背後に飛んでいく。
大きく腹部を陥没させ、手指を引きちぎられ、吹き飛ぶマッドアークはしかし、それらのダメージを全く問題としていなかった。
その程度であれば、問題なく活動できる、王になれば問題は無い。
そう考えている。
それが真実であるかは関係ない。
だが。
吹き飛ばされたマッドアークを待ち構える様に、新たな戦士が現れる。
額に三日月の様な装飾を備えた、熊に似たフルフェイスの兜を頂く、虎頭と似た僧服似の装甲を身に纏った戦士。
その手の中には、三日月に似たデザインの巨大なブーメラン。
鋭利な刃を備え、その上で気を充実させたその凶器から繰り出される、プロ野球選手もかくやという
構えこそまったく異なれど、これこそ赤心少林拳黒沼流奥義──桜花。
ばづん、と、鈍い音を立てながら、マッドアークが胴体から真っ二つに両断され、アスファルトの地面を転がる。
遅れて、その残骸が青い炎に包まれて灰に、いや、水気を吸い泥状になった灰と血と肉の塊へと変化していく。
或いは、その残された血肉を採取して検査すれば、それが何由来の血肉か、捕食したものかマッドアークそのものかはともかく判明する可能性はあるが……。
生き物を殺せば血肉が残るなどというのは、殺人拳を旨とする黒沼流の拳士にとっては当然のこと。
動揺すること無く、次の獲物を探し始める熊頭の戦士。
とどめを取られた虎頭の戦士は、うずくまる少女に肩を貸し、その背後にあった店舗の中へと連れ込む。
「隠れていろ。外は危険だ」
「は、はい」
突然の救いの手に、現実感も無いままにこくこくと頷く少女。
それに満足したのか、軽く頷くと虎頭の戦士は外へと出ていく。
少女のどこか熱っぽい視線に気づくこと無く、虎頭の戦士は戦場を一先ず見渡す。
地獄と化していた通りは、また別の様相を見せ始めていた。
人が喰らわれていない。
その残骸こそ転がっては居るが、新たな被害者が増えていないのだ。
代わりにマッドアークやオルフェノク達に相対するのは異形の鎧に身を包んだ戦士──赤心少林拳の拳士達。
虎頭の彼を筆頭に、熊頭の拳士、象頭の拳士、鷹頭の女拳士、紫色の蛇頭の杖を持った蛇頭の戦士。
或いはバク、ワニ、カメレオン、蟹、ライオン……。
どれも異形の頭部を持ちながら、共通の僧服似の装甲を身に纏った戦士達により、次々とマッドアークやオルフェノク達が打ち倒されている。
中でも特筆すべきは、異彩を放つ銀色の蜂頭の女戦士だろう。
僧服の下に黒と銀のライダースーツを身に纏う様なスマートなフォルム。
フリンジの様な装飾の付いた、赤いVの字が刻まれた銀のグローブは、その素早く鋭い動き故に、一切の返り血も肉片もついていない。
赤心寺の拳士達の中でも群を抜いて鋭く疾く重い動きは、その一撃一撃が必殺。
すれ違う度にマッドアークの身体が千切れ飛び、必殺の間合いに入ったならばたちどころにその心臓部を、或いは頭部を容赦なく粉砕していく。
その戦いぶりは正しく修羅と言っても過言ではないだろう。
或いは人々を襲うマッドアークやオルフェノクへの義憤以外に何らかの憎しみや苛立ちが込められているのかもしれないが……それは相対する敵にとっては不幸ながら、助けられる人間にとってみれば何の問題にもなりはしない。
それを見て、流石……と、小さく呟きながら、虎頭の戦士もまた戦場へと走り出す。
この場の戦いは程なくして収まり、赤心寺の拳士達はその体力の続く限り、マッドアーク達を狩り続けるだろう。
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一方で、長野県。
長野県長野市に現れたマッドアークは数こそ少なかったものの、それぞれの距離が離れていた事、そして、大体の地方都市がそうであるように、未だ県警に特殊装甲服が殆ど配備されていないが為に、被害を大きくしつつあった。
唯一の救いは、各県を巡りながら装甲服部隊新設に当たっての指導を行なっていたG1──一条薫が居たことだろうか。
ビートチェイサーを駆り、一体、また一体とマッドアークを、そしてオルフェノクを狩っていく一条。
既に彼にとってマッドアークもオルフェノクも特筆する程の強敵でなく、撃破自体は容易い事ではあったが……。
彼の身に纏う装甲はそうではない。
各種技術によってアップデートを重ねながら、しかし、一条の纏うG1システムは既に一条の持つ力に付いてこれる性能ではなくなりつつあった。
ベルトの力によるものか殆ど推進剤の補充もバッテリの交換も必要としないものの、過度な運用はスーツの完全な機能停止の危険性がある。
騙し騙し戦っている、というのが実際のところだ。
そして、道路に乗り捨てられた、或いは横転した車の隙間を縫うように走るビートチェイサー目掛け、投げ込まれた何かが爆発した。
イソギンチャクに似たオルフェノクの持つ爆発性の投擲物によるものだ。
それは車と車の隙間をカーブしている隙を狙ったのか、見事にビートチェイサーの前輪を破壊。
横転した車体からとっさに身を投げた一条だが、受け身を取った先、目の前に先と同じ爆発物が飛来している。
既に通常の魔石の戦士の変身時と比べて遜色ない程に強化された神経が、それが爆発寸前であると知らせても、それに対抗する術は無い。
耐えきれるか、耐えた後の反撃をどうするか。
そう考えた一条の視界に、ふと、黄金の羽がひらめく。
次の瞬間、目の前の爆発物は消え去り、遥か上空から爆音が響く。
助かったのか、と、思う一条の目の前に、先までは存在しなかった何者かの背中が見えた。
外套の如き黄金の翼を頂くその背が振り返れば、それは鳳凰を思わせる意匠の兜を被った、黄金の騎士。
眼すら見えない濃い黒のバイザー越しにしかし、どこまでも見通される様な感覚を得て、はたと正気を取り戻す。
「すまない、助かった。だが君は……?」
「ただの占い師さ。だが、今は貴方の助けになれる」
黄金の騎士が、一条に向けて手を翳す。
それと同時、一条のあらゆる感覚が引き伸ばされた。
視界に映るなにもかもが遠く、聞こえる音は高く。
強化されたあらゆる五感が狂わされる中、男の声だけがはっきりと頭の中に響いた。
「今から、貴方の時を少しだけ早める。
どぐ、と、一条の表に出ていないベルトの中で何かが脈動する。
全身が沸騰した様に熱を持ち、意識が一瞬だけ途切れ──
目の前にあったのは、黄金の騎士の背中でなく、少し離れた場所にある灰色のイソギンチャクの怪物の姿。
反射的に、腰のホルスターから銃を抜くような動きを取る。
G1に標準装備されているGM01スコーピオンは既に弾が切れ、敵の攻撃の盾にしてしまった為に重りにしかならず、近場の駐在所の警官に預けてしまった。
ホルスターの中には何もない筈。
しかし一条の指に確かに触れるものがあった。
それを疑問に思いつつ引き抜き、怪人──オルフェノク目掛けて引き金を引く。
放たれたのは徹甲弾や神経断裂弾……ではなく、圧縮空気と封印エネルギーの混合弾。
それは過たずオルフェノクのみぞおちへと直撃し、
「これは」
唖然とする一条。
その身を包むG1システムはそのまま、魔石の戦士へ変じた訳でもない。
しかし、そのG1の装甲は、昼間の中においてもなお光を吸い込む、艶のない黒に染まっていた。
―――――――――――――――――――
マッドアークの姿すら望めない、戸惑う一条の姿を遠くに見ることのできる山林の中。
「よろしいのですか」
平坦な口調の、ともすれば無感情とすら取られかねない声で問うのは、全身にガンメタルの装甲を纏った、無機質な表情の美少女。
その声の先は、傍らに佇む黄金の騎士へと向けられていた。
「それはどっちの話だ?」
「どちらもです、と、回答します」
どちらも。
力を持ち、無為に人が死ぬのを望まない黄金の騎士が直接戦わない事も。
或いは、今正に一条薫に魔石の戦士として更に歪な進化を遂げさせてしまった事も。
そのどちらもが、普段はことなかれ主義を貫いているがお人好しなところもある黄金の騎士──手塚海之の行動の範疇に収まらない行為だった。
少女……アーキテクトの様に、指揮下においたヘキサギアに効率行動を取らせて人々の避難に手を貸すでもなく、あの警察官の様に脅威を力づくで取り除くでもない。
或いは、盤面を見つめるプレイヤーの様な、盤面の上で生きるものたちにとっては只管に冷たい判断。
「話がここで終わるなら、俺が手を貸すのも悪くはないが」
「まだ先があると」
「さて。未来の総てが見える訳でもない。俺のこの判断が間違っているという事もあるだろう」
「思わせぶりな言葉選びはバディの悪い癖です。客が増えません」
「占いは金を稼ぐものじゃない。金が欲しければ馬にでも自転車にでも運んできて貰えば良いのさ」
「クソでは?」
アーキテクトの返答に苦笑で返しながら、手塚は変身を解き、その手でアーキテクトの手を取ると、霞の様にその場から消え去った。
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全ての区域に余さず戦士が居るわけではない。
むしろそれは全体から見れば限られた区域に過ぎないが、それでもその大半は人類側の戦士たちによって対応が成された。
マッドアーク達がその習性から人の多い区域に集まりやすいからこその結果だが、例外というものはどこにでも存在する。
大都市への移動中、山間部で人が歩いているのを発見して、或いは小さな集落を発見し、そこをターゲットとして定める個体も少なからず存在する。
「この、このぉ!」
機械変換された音声で、しかし、必死さが伝わる声で、全身装甲の戦士、ウェアウルフ・スペクターが叫ぶ。
その手にはスラッガーブレードが握られ、目の前のマッドアークへと力強く振るわれる。
大ぶりの、元より動く標的に向けて振るうように作られていない重機のパーツの様なそれを、マッドアークは動物的な本能と動きだけでもって軽々と避けてみせていた。
既に砲撃用の弾頭は打ち尽くし、スペクターの武器はこれしかない。
或いは逃げるだけであれば可能だっただろう。
スペクターと同じ名前を持つこの装備は本来生存率を高めるためのものであり、本格的な戦闘を前提にして作られたものではない。
「こっちに、くるな!」
今、この集落に居る戦士は、スペクターのみ。
駐在の警官は勇敢に戦ってみせたが、スペクターが駆けつけた時にはマッドアークの腹の中に収まっていた。
全身装甲のスペクターを怪しみつつ、道を尋ねられればしっかりと教えてくれる良いお巡りさんであった事を、どこに蓄えるかもわからない記憶にしっかりと刻んでいた。
乾巧を追う旅の中で立ち寄って、少しだけ滞在しただけの小さな集落。
一晩、食料を買い込んで、少し休んで二晩程度滞在しただけの場所だが、それでも関わった人は少なくない。
雑貨屋の店主の老婆、全身装甲を見て眼を輝かせながら駆け寄ってきた子どもたち。
全身装甲を停めておける駐車場まで貸してくれた民宿の人たち。
彼らを守れるのは、この場ではスペクターしかいない。
スペクターがやられたが最後、彼らは一人残さずマッドアークの腹の中に収まってしまうだろう。
今も、見た目程の脅威たり得ず、しかし中々食べにくそうなスペクターから視線を外し、マッドアークの視線は集落の方へと向いている。
「そっちを、みるなぁ!」
ぶおん、と、風切り音を立てながら振られたスラッガーブレードが、マッドアークの足先をかすり地面に突き刺さる。
当たった?!という驚きを得たスペクターの眼前に、先より巨大化したマッドアークの顔面が映った。
いや、巨大化したのではなく、地面に突き立ったスラッガーブレードの背を蹴りマッドアークが駆け寄ってきたのだ。
そのまま、マッドアークの腕が僅かに伸び、ウェアウルフ・スペクターの装甲へと取り付く。
引き剥がそうとするような、何かを探すような動き。
剥がしやすい場所を探しているのだろう。
「この、やめろ、はなせっ」
腕でマッドアークを掴み引き剥がそうとするも、完全に馬力負けしている為に一向に引き剥がせない。
だが、それでもスペクターは怯まない。
あえて前に、脚部無限軌道を動かし、マッドアークに掴まれたまま集落から離れて行く。
その間にもマッドアークの手は装甲の隙間を這い、ついには装甲を外部から引き剥がす為のハッチへと到達する。
分厚い装甲故にマッドアークの捕食から逃れていたが、装甲を引き剥がされたが最後、意識を保ったまま半端に身体を硬化され、生きたまま貪り食われるだろう。
それを正確に理解している訳ではないが、しかし、半ば覚悟を決めるスペクター。
その耳に、バイクのエンジン音が届く。
聞き慣れた、いけ好かない、でも、なぜか絶対に嫌いにはなれない標的の気配。
一際大きいエンジン音と共に、スペクターの装甲に張り付いていたマッドアークの身体が引き剥がされる。
ウイリーからのバイクアタックの衝撃で引き剥がされたのだ。
バイクに跨るのは、既にファイズに変身を遂げた乾巧。
「大丈夫かよ」
「と、とうぜんだ、楽勝だったぞ」
「そうかよ。悪いな余計な真似して」
気にした風でも無いファイズに、しばしスペクターは沈黙を返し。
「……いや、うそだ。助かった。ありがとう」
「礼は要らねぇ。そもそも……」
めきめき、と、水気のある繊維質が引き裂かれる音と共に、山の中から巨大な何かが現れた。
もはや灰ではなく黒に染まりつつある、身の丈5メートルはあろうかというマッドアーク。
運良くオルフェノクを複数喰らい、同種のマッドアークを喰らい、魔化魍を育てる謎の存在によって謎のエキスを投与された変異体だ。
巨大な腕で吹き飛ばされたマッドアークを鷲掴み、そのまま口元に運んだかと思えば、ボリボリと貪り食らってしまった。
その視線の先はファイズ、ウルフオルフェノクである乾巧にしっかりと向けられている。
「俺も困ってたところだ。悪い」
バツが悪そうにそう謝る巧に、しかしスペクターは首を振った。
「どのみち、こんなものをほうっておいたらいろんな人が危ない」
「……なぁ、やっぱお前」
「なんだ」
「いや、なんでもねぇ。……こいつを倒したら、少し話さないか」
「……少しだけだぞ」
ファイズとスペクターは互いに武器を構え直し、巨大なマッドアークへと向き直った。
ファイズ最終回中編って感じ
☆青森を守るローカルヒーロー・レッドハートテンプルの武装僧侶達
修行中のモンクの衣装と親しみやすい動物の頭をモチーフにした装備で戦うぞ!
虎頭は逆立ち髪の片目さん、僧服王蛇は白目ハゲが中身
多分鷹モチーフには貴重な尼さんが入ってる
師範は銀色の蜂モチーフで腕にヒラヒラがついてるオシャレ装備
カードは馴染みが薄いだろうという事で各自の得意武器を捩った固定武装を採用しており、師範の武装は倍力機構が入っていたり火が出たり電気が出たりするイカスグローブだ!
それでもブーメランは無いだろうって?
寺なんだから当然ブーメランと赤心少林拳を組み合わせたまったく新しい戦い方をする戦士くらい居た筈
☆ビートチェイサーを駆るG1条・限定解除版
黒くなった……
なおどういう変化があったかは後日
五代さんも最近黒くなったし、おそろいだね♡
☆謎の黄金騎士with何の変哲もない無表情美少女
何者なんだ……
名前書いてたわ
まぁええわ
でもこの時間軸のホモであるかは一切書いてないからセーフ
時間系能力者は不便で便利
☆一宿一飯の恩義のために命がけで戦ういにゅいのベルトを狙う謎の全身装甲戦士とオルフェノク上がりのアギトという希少性からオルフェノク察知能力の無いマッドアークにすら狙われるいにゅいファイズ
こいつらの話で締めると555編まとまり良いかなって思うので次回にこいつらが戦って555編は〆!
ファイズがラストバトルを飾るとかさてはこの話仮面ライダー555編じゃな?
☆うまいこと成長したマッドアーク
レア個体
たぶん王の素質が結構高かったやつ
その上で捕食成功からのダイジョーブ博士枠の改造(洋装の男女)で成功を収めた負け犬の中の勝ち組
どういう訳かって?
Gガン最終回のデビルガンダム枠とかやられ役の中じゃ勝ち組に決まってるじゃん
結婚式場で新郎新婦に花びらばーって撒く役目みたいなもんですよ?
戦闘力は真アークよりちょい上より上かなって感じ
代わりに強化し過ぎたので何をしなくても十日くらい暴れまわった上で熔けて死ぬ
その時に元になった子供の死体と食べた子供の死体と食べた人間の死体を撒き散らした上で跡地には魔化魍が発生しやすくなるよ
今のファイズとウェアウルフ・スペクターだと負けて死ぬよ
いい感じの殺し方すれば被害は出ないよ
次回、仮面ライダー555編最終回
『俺の夢、私の夢』
を、気長にお待ち下さい