オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
結局のところ、その個体が特別という訳ではない。
王に近く、しかし決して王にはなれない程度の素質。
貪り食らう餌の中にオルフェノクの記号を持った人間が居たという幸運。
取り込んだ記号の分だけ僅かにその他の個体より強靭な肉体は共食いを成功させるのに都合が良く。
母数が多ければ多いほど、似た個体が現れる確率は上がっていただろう。
或いは、国内に限ってもそれなりの数、同じ様な条件を満たした個体は存在するのかもしれない。
その程度のイレギュラーだ。
或いは、殺される事無く捕食を続けていけば、似た個体による共食いが始まっていたかもしれない。
その程度にはありえる可能性。
だが。
「面白いな!」
甲高い声。
真っ赤な唇を除けば、白塗りかなにかと見紛う程に血色の悪い洋装の男が、一体のマッドアークに顔を寄せている。
見た目だけで言えば明らかに人間。
しかし、マッドアークはその男を目の前にして、しかし、一切その男に反応を示さない。
洋装の男の手の中には、銀色の毬栗の様な奇妙な物体。
金属で出来た棘の塊の様なそれを、男はマッドアークの半ば開いたままの口の中に押し込んだ。
「美味いか?」
男の言葉に反応するでもなく、マッドアークの身体が脈動する。
明らかにオルフェノクの記号を取り込んだ時とは異なる反応。
しかし、王としての完成形を知らない出来損ないは、それもまた王に至るための変異なのだろうと受け入れ、のし、のし、と、認識できていないはずの男を避けるようにして歩き出す。
「餌の分、一働きして貰わなければ」
男と同じく洋装の、古めかしいドレスを着込んだ女が、平坦な口調で呟く。
意図的な変異。
一番はじめの、本当に特別なイレギュラー。
決して王に至らず、何を生み出す事も助ける事も、生き残る事すら望まれない、傍迷惑な賑やかし。
それは極めて近い未来に自分に訪れる運命すら知らず、ただ、本能に任せて貪り食らう。
―――――――――――――――――――
全長5メートルにも至る巨大な昆虫人間。
最早怪人というよりも怪獣と呼ぶほうが相応しい巨躯を得たマッドアークだが、その行動原理には一切の変化が無い。
2階建ての一軒家ほどもある身体は、それを支えるに十分な筋力を備え、見た目の巨大さからは想像もつかない程に軽やかに動く。
巨大さ故の重さの無い動きは遠近感を狂わせる程だが、それでもその巨躯の位置を間違える、という事は無いだろう。
ぎちぎちぎちぎち、と、キチン質の擦れ合う、筋繊維の引き絞られる音が響き、マッドアークの身体が宙を舞う。
脚を曲げて身体を縮め、伸ばすことで獲物目掛けて勢いよく跳躍する。
たったそれだけで身体を動かす駆動音がやかましい程に鳴り響き、嫌でもそれが遠くにある巨大な肉体であるという事を主張してくる。
予備動作の音が響いた段階でスペクターとファイズは回避行動に入っていた。
幸いにして、距離が近い為かマッドアークの動きは全身のバネを生かした跳躍によるものが多く、飛行する素振りは見えない。
だが、その動きは決して鈍重ではない。
関節というバネを縮める動きはそう長く無く、5メートルの巨体は冗談の様な速度で跳ねる。
洋装の男女から与えられた餌が原因だろうか、その肉体は半ば穢を溜め込み、超常的な物質へと変化しつつあった。
破壊力を削がず、しかし、動作を阻害しない程度に軽い。
だが、その肉体が通常のマッドアークがそのまま巨大化したそれと比べて軽い、などというのは何の慰めにもならないだろう。
プロ野球選手の投球の如き速さで跳ねる巨体が着地すれば、まるで爆弾でも爆発したかの様な衝撃と共に着地点の地面が弾け飛び、土と岩の礫が散弾の如く巻き散らかされる。
それだけで近くに生身の生き物が居れば、防御姿勢を取ってもボロ雑巾の様にズタズタに引き裂かれる威力を持つ。
ぎゅん、と、着地したばかりのマッドアークが素早く振り向き、ファイズへと手をのばす。
伸ばした腕、指先で空気が弾け飛び、衝撃波が炸裂する。
タイヤを滑らせながらドリフトする大型トラックのコンテナの如き一撃。
オルフェノク仕様からアギト仕様に変更され、元々のフォトンブラッドの出力が向上したファイズではあるが、それ以外では素のファイズとそれほど性能差は無く、避けられる程の機動力は当然無い。
オートバジンに跨ったままであってもそれは変わりない。
迫る豪腕。
捕まれば文字通り頭から食い殺されるであろう巨大な掌を横目に、ファイズはオートバジンから
転げ落ちる様に、ではなく、跨っていたオートバジンを足場に、上ではなく横に跳躍。
跳ぶ方向は、マッドアークの懐の中。
対し、ファイズにより蹴り飛ばされ、オートバジンもまたギリギリのところで豪腕から逃れる。
宙を跳びながら変形し、ビークルモードからバトルモードへ。
バスターホイールを構え、弾丸をマッドアークへと打ち込む。
しかし、5メートルの巨体を持つマッドアークにとってそれは正に豆鉄砲ならぬ砂粒同然。
分厚い皮膚すら貫けず、何ら痛痒を与える事はない。
それは、溶けて結晶状ですらなくなっているマッドアークの眼に向けたとしてもそう変わるものではない。
が、少なくとも目に当て続けていれば、それはマッドアークにとって少なからぬストレスになる。
オートバジンは文字通り目の前を跳ぶ小蝿か蚊であり、目に砂粒を当ててくるようなものだ。
オートバジンに気を取られたマッドアークの懐目掛けファイズが駆ける。
見れば、そのファイズの脚元、関節が人間のそれと異なっている事に気がつくだろうか。
ファイズへ変身した上でのオルフェノク体──使徒再生アギト体への変身。
オルフェノクとして見ても特異なモチーフに寄った逆関節。
以前にファイズとして戦う中では見せなかった戦法は、度重なるスペクターとの
或いは状況が状況なら、人目があれば出すのを躊躇った手ではあるが……。
そんな葛藤を持ったまま戦える相手では無い。
『EXCEED CHARGE』
ファイズの脚、いつの間にかセットされたポインターへとフォトンブラッドが充填される。
必殺の一撃。
狙う的は巨大で外す方が難しい。
その上で、一撃必殺を狙う。
可動の関係で完全な一枚装甲に覆われていない腹部、鳩尾。
一歩。
振り切った腕を伸ばし、腹を晒したマッドアークの腹の下に着地。
二歩。
ぐ、としゃがみ込み、反対の脚を天に向け。
三歩。
空に向けて、真上のマッドアークの鳩尾、蛇腹のような、虫の腹そのままな腹部へ、跳躍!
鳩尾に赤い円錐状に展開したフォトンブラッド目掛け、ファイズが跳ぶ。
跳躍から着弾までの一瞬でファイズの脚部は人間のそれと同じ形に戻っており威力が減衰する事は無い。
対象の分子構造を分解する文字通りの必殺の一撃。
それは過たずマッドアークの腹部へと突き刺さり……。
どず、という鈍い音と共に、呆気なく受け止められた。
「何?!」
僅かに泥の地面に足跡が残る程度に突き刺さった足を見て驚愕するファイズ。
ただ巨大化したが故に厚みを増した装甲のせいか。
できそこないとはいえ、ファイズのモデルとなったアークオルフェノクに低出力のフォトンブラッドは作用しないのか。
少なくともこの場でその理由を解明する暇は無い。
鳩尾に受けた一撃で、今度こそマッドアークの注意がファイズへと向けられる。
再び自分に注意を向けるためにオートバジンが飛び回りマッドアークの目に向けてバスターホイールの弾丸を浴びせかけるも、一向に気にした風もない。
それどころか、明らかにマッドアークの手の届かない場所を飛んでいた筈のオートバジンのボディが、次の瞬間には極彩色の光に飲まれて粉々に破壊されてしまった。
無造作に振り払う様に伸ばした手先から放射されたオルフェノクエネルギー──フォトンブラッドの奔流に晒されてのものだ。
アークオルフェノクの様に完全に圧縮された完成したフォトンブラッドではない、力任せに放たれた一撃はしかし、それ故に出力の異なるフォトンブラッドが複雑に絡み合うミキサーの様な破壊効果を伴っていた。
あきらかに餌ではない、食べても意味のないバイクであるオートバジンだからこそ、死体も残さぬ破壊方法が向けられたのである。
じろり、と、瞳も無いマッドアークの視線がファイズへと向けられる。
繰り返しになるが、このマッドアークは巨大だからといって敏捷性に欠けるという訳ではない。
獲物へ向けられた右腕。
残る左腕が素早くファイズへと向けられる。
クリムゾンスマッシュが通用しなかったという動揺からファイズの回避が僅かに遅れ……。
その身体が巨大な左手に掴まれる寸前、飛来した何かに吹き飛ばされ、寸での所でマッドアークの懐から弾き出された。
ファイズの身体を弾き飛ばした何か、それは、投擲されたスラッガーブレード。
ファイズの身体が投げ出され、同じく反作用で跳ね返ったスラッガーブレードをスペクターがキャッチ。
「はじめてあたったぞ! うわっ!」
喜色を含んだ快哉を上げるスペクターの身体へマッドアークの手が伸びる。
それをスラッガーブレードの刃を向けて受けようとするスペクター。
一合、二合と、迫る手を切り払う。
が、三合でその僅かな拮抗は崩れた。
スラッガーブレードが、半ばから砕け散ったのである。
マッドアークの手には、先のオートバジンを粉々に砕いたフォトンブラッドの輝きが纏わり付いていた。
それは元からマッドアークに備わっていた学習能力なのだろうか。
先の力任せのそれに比べて明らかに加減ができている。
それこそ、捕まえた獲物を捕食できない程に粉々にせずにすむ程度には。
「う、ううっ、このっ、こんなもの!」
折れたスラッガーブレードで切り払う。
柄を残して刀身総てが砕け散り。
左右から迫る両腕。
無限軌道で全力で下がり回避。
しかしマッドアークの両手に纏わり付くフォトンブラッドが装甲を掠め、背部キャノンやショルダーシールド、ブレードのマウント部が次々に引き剥がされていく。
スペクターがファイズとの
だが、それも時間の問題だ。
マッドアークの手のフォトンブラッドは徐々に調整が効くようになってきたのか、その長さを伸ばし、手袋の様な形態から長い鉤爪や長い指の様な形に伸展しつつある。
スペクターが全力でこの場を離脱するというのでなければ、あと一手二手で捕らえられ、その分厚い装甲ごとマッドアークの腹の中に収められてしまうか、捕らえられた上でゆっくりと装甲を引き剥がされ、剥き身にされた上でバリバリと噛み砕かれるだろう。
そんな未来を想像し、スペクターは分厚い全身装甲の中で恐怖から涙を流す。
とっさに、マッドアークを挟んで反対方向に倒れ込むファイズへと叫ぶ。
「いまのうちに、逃げろ!」
「何?」
「
涙まじりの声で、それでも勇ましく叫ぶのは、守りたいと思った人たちの事。
スペクターの心は半ば恐怖に満たされていた。
しかし、それは自らの死を予感してのものではない。
自らが死ぬ事で、或いは自らが逃げる事で、自らが守りたいと思った、お世話になった人たちを守れなくなってしまう事への恐怖!
それがスペクターから逃走という選択肢を奪い、決して敵わぬだろう難敵に立ち向かう勇気を、死を受け入れる蛮勇を与えていたのだ!
フォトンブラッドの鉤爪が振るわれ、武装の下に隠されていた装甲の開閉スイッチを、前面装甲ごと破壊する。
火花と共に内部装置が破壊され、今の今までスペクターの身を守っていた全身装甲を、その場から逃さぬ釘付けにする単なる重りへと変える。
最低限のパワーアシストすら切れた筈の全身装甲。
最早中身の柔らかい肉体の前面を無防備に晒したその拘束具を身につけたまま、アークオルフェノクの前に仁王立ちになるスペクター。
その素顔に、ファイズは、巧は目を見開く。
忘れもしない。
普段のふわふわした、世間知らずも良いところなお人好しの。
戦いの中で一度だけ見た、決意に満ちた表情。
「
それと全く同じ顔が、今、目の前で。
あの時と同じ様に、巨大な爪を前にして。
「やめろおおおおおぉぉぉぉ!」
転げる様に走り出す。
間に合うか間に合わないかではない。
どう助けるかなんて考えもしていない。
あの攻撃を防ぐ方法も無い。
庇っても一緒に死ぬだけ。
そんなあらゆる思考を置き去りに。
疾走する本能に任せ。
スペクターとマッドアークの爪の間に、身体を滑り込ませた。
―――――――――――――――――――
ぱち、と、スイッチを入れる様に。
亡霊の名を冠する少女は総てを理解した。
あの状況から。
総てを解決する方法がある。
「本当に」
声がする。
目の前に居る、自分と瓜二つの女。
ほんものだ。
ほんもののわたし。
名前もあって、生きていて、記憶も、心も、頭もある。
誰かに望まれている私。
何がしたいか。
誰と居たいか。
それを知っている私だ。
「それで良いんですか」
真っ白い、影すら無い世界。
そこで、ほんもののわたしと向かい合う。
何を馬鹿な事を、と、そう思う。
最初から、そういう話だった。
最初から私は、それだけを願って産まれてきた。
そもそも、そんな事を言っている場合ではない。
「でも」
あいつが死んでもいいのか。
「いいえ……」
あいつに伝えたい事が無いというのか。
「いいえ……!」
なら、どうする。
忘れたのか。
運命の出会いを。
わたしは。
あいつを。
いにゅいをどう思っている!
「とても、言葉にできません!」
目の前の私が、未だ取り戻していない肉体で、その胸を開き曝け出す。
中にあるのは、光。
火。
それこそが私達の根源。
わたしが取り戻したかった、わたし。
「この身体で、返答します!!」
これが。
再会の合体────!
―――――――――――――――――――
衝撃が来ない。
ファイズとスペクターを諸共に粉砕せんとしていたフォトンブラッドの爪が、何かに抑え込まれている。
遠くから鳴り響く、村に昼の十二時を知らせる、録音されたパイプオルガンの音色をBGMに、ギリギリと音を立てながら、非実体の筈のフォトンブラッドの爪が持ち上げられる。
スペクターを庇ったファイズ、巧の目の前で、破壊されていた筈のスペクターの全身装甲が光に包まれて修復……再構築されていく。
「パワーブレーカー!」
少女の、凛とした叫びと共に、マッドアークの巨躯が持ち上げられていく。
「マジかよ」
信じられない、と言わんばかりの巧の目の間で、マッドアークが勢いよく放り投げられた。
恐るべきは、スペクターの全身装甲から再構築された新武装、パワーブレーカー。
大型シールドに備え付けられた超強力パワーアームだ。
その持ち主こそ、今まさに、巧が身を挺して庇おうとしていた少女、スペクター。
いや、違う。
分厚く、中身を一切露出しない全身装甲はコンパクトに、装着者のボディラインの一部を出しながら、十全すぎる面積を覆う純白の装甲に。
バイザーによって上半分を隠された少女の顔が、巧へと向けられる。
がしゅ、と、バイザーが上にスライドし、その顔が顕になる。
その素顔は、つい数秒前に巧が見たスペクターの素顔と瓜二つ。
しかし、明らかに表情が違う。
涙の流れた痕をそのままに凛々しくあったスペクターのそれではない。
半分泣いている様な、それでも浮かぶ笑顔を抑えきれない様な。
「いにゅいさん」
「轟雷……」
「いにゅいさん、いにゅいさん、いにゅいさん!」
ためらいなく、ファイズに変身したままの巧へと抱きつく轟雷。
巧は自分に抱きついてくる轟雷のその力の強さの理由を察する事ができない程に鈍感ではない。
何故、変身した姿でもわかるのか、巻き添えにして死なせてしまった事を恨んでいないのか。
そんな事を改めて今聞こうとは思わなかった。
源内轟雷は、生き返ったのだ。
だが、そんな感慨を抱く時間を与えないとばかりに、地響きの様な音が鳴り響く。
今正に轟雷が投げ飛ばしたマッドアークが起き上がり、こちらに向けて走り出したのだ。
「む!」
轟雷は不機嫌そうな顔で右腕を掲げる。
すると、手品の様にその腕部装甲が変形し、中から穂先のコンパクトなドリルが現れ、回転を始める。
「ニードリッガー!」
短く、手の中に収まる程しかないドリルの穂先。
それが勢いよく発射され、今にも自分たちに食らいつかんとしていたマッドアークの眉間に突き刺さり、噴射炎を撒き散らしながらその身体を後退させていく。
本来搭載されていた新武装、ニードリッガーには存在しない機能だが、それを気にするものはこの場には居ない。
「いにゅいさん、まずはあの敵を倒しましょう!」
「っ、ああ!」
「オートデリンガー!」
掲げた轟雷の右腕の中、輝くワイヤーフレームが一丁の折りたたみ式バズーカの様な、トランクの様な物体を形成する。
それを展開しながら、轟雷はちらりと巧へと視線を向ける。
「あの、いにゅいさん。これ、実は一人では撃てないみたいで……」
「どうすりゃいい」
「支えてください、こう、一緒に持つように」
「こうか!」
「そうです!」
オートデリンガー、正式名称、試作型ファイズブラスター
展開されたそれを挟む様に轟雷と巧が向かい合い、手を重ねる様にしてトリガーに手を添える。
次いで、側面に存在するテンキーがオートで555の再変身コードを入力。
ファイズの全身を覆うソルメタル製のスーツが僅かに膨張し、内部に新たな装甲を展開。
フォトンブラッドによる装着者への負荷をより強固に遮断する特殊形態へ。
ボディスーツ内部にフォトンブラッドが循環を開始し、フォトンストリームが黒く染まる。
それと同じ変化が轟雷の装甲にも。
以前はフォトンブラッドの循環を想定していなかった装甲が展開、露出した内部フレームに搭載されたフォトンストリームが赤く染まる。
「エネルギー・チャージ!」
本来、装着者に多大な負荷を強いるファイズ・ブラスターフォーム。
そのフォトンブラッドの循環を、ファイズブラスターを経由して二人分の装甲で循環させ、なおかつ双方の装甲、ボディスーツを一時的に強化する事で極限まで軽減。
そして、ライダーズギアを纏った二人分のブラッドサーバーから、超々高密度のフォトンブラッドを砲弾として放つ。
その名も。
「オートデリンガー・ファイナルキャノン!」
砲口から黄金の輝きを備えたフォトンブラッドの砲弾が放たれ、そのあまりの高出力故に産まれた反動が、オートデリンガーを構えた二人を数メートル背後に押し戻す。
斜め上気味に放たれた砲弾が、ドリルの推力に押されてバランスを崩したマッドアークの胸元に着弾。
クリムゾンスマッシュすらめり込む程度で耐えきって見せたその装甲をまるで泥の塊であるかの様に貫き……爆散!
着弾点を中心に球状に広がったフォトンブラッドによりその全身を分子レベルで粉砕され、本来残留する筈の元に成った人間の死体も、腹の中にあった遺骸も残さず、キラキラと煌く以外は無害な粒子と化した。
これこそ、轟雷とファイズの最強の武器、オートデリンガー!
キャノンモードの破壊力は、一般的なファイナルベントの30倍以上の威力だ!
「いにゅいさん」
「轟雷」
輝く粒子が降り注ぐ中、向かい合う二人。
しかし、その視線はロマンチックに絡み合っている訳ではない。
互いに互いの背後。
山を越えて飛んできた無数のマッドアークへと向けられている。
「まだ、やれますか」
「あいつは、そうしてくれって言ってたな」
「じゃあ、いにゅいさんは?」
轟雷の問に、巧は小さく笑い。
「これが終わったら、教えてやるよ」
「……はい!」
次々に降り立つマッドアークの群れへオートデリンガーの砲口を向け、二人は再びトリガーを引いた。
最終回なのに前回と同じ引き?
ライバルの退場からのヒロイン復活パワーアップイベント&新武器お披露目ヒーロー新フォームお披露目ですよ?
ここからエンドロール流れつつ無双するシーンが流れるから全然別のEDだよ
楽しくって狂っちまいそうなのです
☆パーフェクト轟雷だ!
本家と違って一話で復活できなかったのでその分性能を盛られている
まぁぶっちゃけフォルムは轟雷改ですよ
でもたぶん石破ラブラブオートデリンガーファイズブラスターファイナルキャノンモードでファイズ編ラスボス入弾してる時だけユニコーンガンダムみたいに装甲が展開してフォトンブラッドの光が見えたりする
自分の気持に気づいたあとに死んだ上に復活直前で問い直されたのでたぶんエピローグで告白したりさせたい
☆ライバル枠を失って引き換えにヒロインを取り戻したいにゅい
多分オートデリンガーことファイズブラスターと接続して再変身した時点で新SICみたいなごっついシルエットに変化する
ブラスターを撃つためだけの形態なのでこの状態だと飛行能力は無いし、オリジナルに比べて装甲を増した分動きも少し鈍い
なお中身のいにゅいは今回の轟雷復活劇で少し特殊な状態に移行した
戦いぶりが不甲斐ないという意見がありそうだけど少し強化された初期形態でラスボスよりやや強い敵に立ち向かえばこうもなる
それでも原作と違いファイズ状態での怪人態能力の一部行使により善戦したとも言える
部分変化が無ければそもそもオートバジンを生贄にしてもクリムゾンスマッシュ自体当てられなかったし
☆オートバジンくん
ヒーローの乗るマシンとして立派に役目を果たしたと思う
亡きスマブレの開発者も誇りに思うほど立派にね……
まぁ設計図はあるし、AIの蓄積したデータもバックアップあるから復活するんですけどね
☆巨大マッドアーク
二人の再会を演出する素敵なキラキラとした紙吹雪になる
戦力的にはこれ一体で装甲服部隊なら普通に押しつぶせるしアギト部隊もつらいくらいある
でもヒロイン復活の条件が揃った場面で敵として配置されるのがおまえの役目なんや
♡型の穴が開かなかっただけ感謝するんやな!
☆装甲服と同じ名前だけを与えられ、実は終始轟雷復活の為に動き続けた亡霊の少女
ジルグジルを思いついた初期の、アークオルフェノクを倒す為にグジルがオルフェノクの記号だけで身体を作ってアークオルフェノクを押さえつけて自らを犠牲に倒させる系の思いつきを引き継がされた
まぁこのSSは九割ライブ感だけで作られてるからやむなし
ベルトをよこせ、記憶を取り戻さなければ、など、行動の基準が総て完全体轟雷を取り戻す為のものになっており、自分こそがオリジナルになるんだ、みたいな発言は一切無い
自分の死でなく死ぬ事で守りたい相手を守れなくなるのが悲しいというのも真実だが、それで轟雷といにゅいを再会させられなくなってしまうという点にも無意識の内に悲しみを抱いている
ン人公・ジル・グジルと並べて考えていたところはあるけれど、こうして見ると元からあった人格の為に自ら消えるのもやむなしというか当然と考える辺りはジル・グジルと役割が逆転してるんだなぁ
思いつくままに書いてる話なのに、最終的に変なとこで美味いこといろんなものが対比になるのって面白いよね
みんなもプロット無しのSS、書こう!
☆この騒動の規模は?どう収拾つけるの?ンは何してるの?
エピローグでな!
一話としての分量は少ないと見るか、まるまる戦闘回だから長めと見るか、ラストバトルの割に戦闘の実時間が短いと見るか……
まぁ見え方は人それぞれなので、なんか意見感想あったら感想とかで書いてくれるとありがたいです
4ヶ月、番外編含めて結局20話もかかったファイズ編はこれにて最終回
次のエピローグをもってファイズ編完全〆とさせていただきます
次回
仮面ライダー555編エピローグ
「予防接種、或いは、一先ずの」
を、気長にお待ち下さい