オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり
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10 拷魔、力だけでは

色々とあったが、夏休みは概ね平穏に終わったと言って良いのではないだろうか。

合間合間に地元の魔化魍が何故か二度三度と湧いてしまったり、赤心寺での修行中にも地元で見るものとは違う魔化魍が二度三度と現れたりもしたが、もうこうなってしまえば日常の一部と割り切れなくもない。

オルフェノクとの遭遇率もまぁまぁ低め。

夏休みの間に戦ったグロンギと言えばガメゴだけなので、これはもう相対的に平和と断言できてしまいそうでもある。

 

夏休み後半、赤心寺から帰った後に学友たちとそれなりに交友を深められたのも大きいと思う。

どうしてもジルを同行させる事になるので不便と言えば不便なのだが、なんやかや見目が良く、現代日本の文化形態や常識の類を予め教え込んでいた事もあって、反応の鈍さ薄さもちょっと重めの不思議ちゃんくらいで済んだのが大きい。

まぁまぁ好かれたけれど、凄く好かれる訳でもないというポジションも大きいだろう。

 

これで変に男子に好かれすぎたりすると、その男子の事を好きな女子が『何よ、あんな無愛想な子……そうだ、ちょっと身の程をわきまえさせてやるわフフフッ!』みたいな死亡フラグを立てて、それが切っ掛けでジルがオルフェノクの力を目覚めさせかねない。

嫉妬で他人に嫌がらせじみたちょっかいを掛けるようなアホの命はどうでも良いが、人が一人居なくなるというのはこのご時世には目立ちすぎるし、オルフェノクとしての、或いは元グロンギとしての本能の様なものが目覚めてしまっては面倒極まりない。

だが、どうやら俺の心配は杞憂だったようで、皆健全に学生らしい青春感溢れる人間関係を築いている様でとても安心した。

 

また、女子向け水着コーナーでばったり鉢合わせ、話の流れでジルの首元まで覆う面積の広い水着に関して相談に乗ってくれた同クラスの子の存在などを考えるに、俺はまたしてもクラスメイトに恵まれてしまったらしい。

未だ海で遊ぶには足回りの筋力と体幹に不安があり、更に自由に泳がせてグロンギ時代の記憶が蘇る危険性があるジルに、浜辺でできる遊びなどを教えて付き合ってくれた辺り、本当に良い人だと思う。

クラスメイト数名で海に遊びに来たのだから、海で泳いだりして遊びたかっただろうに……。

ジルがオルフェノクの力に目覚めたり、グロンギ族としての狩猟本能に目覚めた場合に真っ先に獲物になる位置に置いておくにはかなり申し訳ない気分になる。

こと戦いの場面を除外して考えれば、俺は恵まれた人生を送っていると断言できる。

そういう親切心に対し、何らかの形で報いることができないのは申し訳ない。

余裕が出来た時にまだ友人関係が続いていたのなら精神的にお返しできればなと思う。

 

……本当は、グロンギなんかとは戦う予定は無かったのだから、単純にオルフェノクと魔化魍くらいしか相手にしてなかった去年とか、父さんが何故か東京に出向になる前から考えれば平和もクソもないのだけど。

だが、結果的に見れば、グロンギとの戦いはプラスに働いたと言っても良いだろう。

例えば、ジル……グジルとの戦いでは、人間起源の生物は怪人枠であったとしてもオルフェノク化する危険性が高いという事実を知ることが出来た。

それ以外のグロンギとの戦いは、後々の不意打ち暗殺ができない、真正面から戦わなければならない相手との戦いを思えば、後腐れのない練習相手として優秀だったと思う。

 

来年、通常のクウガのスペックを軽く凌駕するアギトが戦うマラーク……アンノウンやエルなどと戦う事を考えれば、雷を浴びて安全装置を緩くしたのも、赤心寺で修行をしたのも決して無駄ではない。

全ては生き残るための努力であり、それは無遅刻無早退無欠席により内申点を上げることよりも遥かに重要な事だ。

まぁ……、試しに購入してみた諸々の赤本が自分でも引くレベルでスラスラ解けてしまったので、推薦狙いに走る意味はほぼ無いと言っても良いので、そこはもう良い。

 

しいてデメリットを挙げるとすればジルの存在だろうが……、これは俺の落ち度から生まれたものだ。

仮に、仮に本当に完全に記憶を失っていて、通常の記憶のないオルフェノク程度の危険性しか無いのだとするのなら、ジル自身に罪はない筈だ。

比較的短い寿命が尽きるまで世話をする程度、命がけの戦いに比べればなんという事もない。

 

危険性を度外視すれば、見目も悪くない、可愛らしい妹が出来た様なものだろう。

何の確証もない今、危険性があるという事を忘れるなんていうのは論外ではあるのだが、常に俺が先手を取って首の骨を折る事ができる位置に居れば、多少は。

だがそうすると、記憶のない無垢な少女を常に確殺できる立ち位置を意識しながら介護しつつ生活しないといけないので、それはそれでストレスが発生するのだが……これは殺し損ねた俺が悪い。

謹んで責任を取って面倒を見る所存だ。

今の内から俺が面倒を見ておけば、大学にでも行って一人暮らしを始めた時に連れて行く言い訳も立つだろう。

父さん母さんから引き離して遠くに置いておく事ができれば、俺も一先ずは安心できる。

 

そんな訳で、多少の問題は発生したが、ここまでの戦いと日常生活はそれなりに順調に進んでいると言っていい。

ガメゴを先手を打って殺した事で、五代さんが赤金……ライジングマイティの生み出す爆発の威力を知れないのではないか、と思いもしたが、その後に無事ゴ・ジイノ・ダを相手に赤金キックをやらかして確認してくれたようだ。

マスコミさんの命がけの撮影と、撮影に掛かるリスクに比例する様に高速で回転を繰り返す掌は俺も新聞で確認できた。

マスコミに対して、一つ二つ思うところがないと言えば嘘になる。

五代さんは良くやっている。

彼が心を鉋で削るようにしながら戦った結果が、今の被害の少なさなのだ。

ちょっとばかり広範囲に爆発が起きたからといって直ぐに掌を返さず、俺……二十二号を相手にする時の、仏像の掌の如く安定感がある報道を心がけてほしい。

叩くなら俺を叩け、そして危険性を鑑みてG3的な強化服を量産して全国にくまなく配備して細やかなアップデートを忘れない感じでいろ。

そしたら俺も普通に通り魔オルフェノクや魔化魍とかの相手だけに留めるから。

 

そして、問題なのはここからだ。

いや、これまでも問題ではあったのだが……。

今年、グロンギと戦う上で、決して避けては通れない戦いが二つある。

ゴ・ガドル・バとン・ダグバ・ゼバ。

この二人だけは、どうしても被害を出す前に止めなければならない。

……究極的に言えば、どちらも無視して構わない。

だが、俺の脳は未だに家族の危機に見て見ぬふりを決め込める様な構造には至れていないらしい。

不思議なものだ……と思ったが、初代……プロトでない正式なアークルを付けて戦った初代クウガは確か、妹の為に戦士として戦う決断をしたのだったか。

これはもしや安全装置的な働きで家族愛までは消えないようにされている可能性があるか。

勿論、装着者ではなく、装着者を送り出すリントにとっての安全装置なのだろうが。

裏切ること無く、逃げること無く、クウガをグロンギと戦わせようと思うなら、積んでいて当然の機能なのかもしれない。

 

兎にも角にも、この二人だ。

ガドルは警察官狙い、ダグバに至っては恐らく認識範囲内の人間に対して一切の区別なし。

東京で未確認と戦っているであろう父さんが殺されるとすればこの二人のどちらかの手による可能性がとても高い。

だから、これまでの連中の様に、どうせなら一番気が緩んでいるであろう開始直後を狙おうだとか、明らかに何処に居るか分かってるからそこを狙おうだとか、帰宅時間とかも考慮して殺そうとか、そういう平和な理由ではなく。

ゲゲルが始まる前に殺さなければならない。

 

だが、ゲゲルのスタート時などを狙うのはもう何度かやってしまっている。

不意を打つのは難しい。

勿論、不意打てる部分では不意打っていくつもりだが、ほぼ正面からの戦闘になるのは予想に難くない。

では、今の俺はゴ集団トップと、そしてグロンギのトップである凄まじき戦士と正面戦闘ができるのか、という話になる。

 

一先ずダグバは置いておく。

こいつに関しては初手アルティメットで掛かるしかないし、次に東京に行った時にでも五代さんに連絡手段を教えてもらい、ダブルアルティメットで挟んで殺すのが理想だからだ。

ガドルに関しては……できれば、正面から戦うべきだろう。

アルティメットで挟んで殺す予定とはいえ、実際二対一になった時のダグバの挙動は一切予測がつかない。

曲がりなりにも、あちらはアークルが齎す肉体変化の最終形態であるアルティメットと同格の進化を遂げて、それなりに時間が立っている筈。

五代さんと雪山でタイマンした時には見せなかった奥の手くらいはあるかもしれない。

正面戦闘で、ダグバに次ぐ力を持っているガドルと戦い慣れておくに越したことはない。

 

慣れておくに越したことはないのだが。

果たして、ガメゴと比べてガドルの実力や如何に、という疑問が浮かぶ。

できれば、ガドルよりちょっと劣るくらいの相手で慣らしたい。

ついでに、それまでに別のゴ集団の力も確認しておきたい。

ゴ集団の力のサンプルがガメゴだけ、というのは、少しばかり心もとなさ過ぎる。

 

バダーが死んだのは新聞で確認した。

日付としては、ジャラジがゲゲルを始める頃合いだと思う。

正確な開始時期までは覚えていないが、少なくとも九月十五日には被害者が出ていた。

つまりそれ以前にゲゲルを開始して、学生の脳内に針を仕込んでいた筈だ。

発覚まで四日ほど掛かるから、合間にある日曜日に行けば余裕を持って観察ができる。

 

……無いな。

傲慢かもしれないが、ジャラジの脅威度は低い。

やもすればガリマの方が高いんじゃないか……というのは言い過ぎにしても、少なくともガメゴよりも強いとは絶対に思えない。

タイタンフォームを貫けないメイン武器、さして高くない身体能力、瞬間移動の能力を持っている疑惑があるが、クウガとの戦いで使っていなかった事から見ても実戦に耐えうる能力ではないだろう。

 

……の、割には、ジャラジには余裕があるように見えた。

ダグバと戦わない、ザギバスゲゲルに進まないという選択を取る可能性があるにしても、自分よりも明らかに強い他のゴ集団を殺害しているクウガが妨害に来る事を考えないのだろうか。

はっきり言って、広い場所でクウガに見つかった時点で詰みを覚悟するレベルだろう。

出会い頭に距離があればペガサスで射殺せるし、近ければマイティで殴り殺せる。

実際、最初の接近遭遇はともかく、子どもたちの死を確認した後の戦闘では、距離を詰められて正面戦闘になった時点でジャラジは怒り狂った五代さんに滅多打ちにされて殺された筈だ。

近寄られる事を想定していない……遠距離からなら格上を喰う自信がある?

投げ針にそんな威力はない。

だが、食らった五代さんは異様に痛がっていた。

ライジングを使える程度に侵食が進んでいるなら、痛みに対する感じ方はそこまでネガティブなものではなく、あの程度の刺さり方なら戦闘に支障は出ないと思うが……。

 

毒?

刺さった針が返しで固定されて内部で鋭く伸びていく?

霊石から伸びる神経に干渉している?

 

本来の使い方ではない?

そういえば、呼吸器系も強化されてはいるが、それでも呼吸が完全に不要になるという訳ではない。

もっと、空気中の塵レベルまで小さいものから針を作れるなら、内蔵破壊はワンチャンあるか。

吸い込む……いや、血液の流れに乗せて脳まで到達させて、針とかじゃない、もっと一撃で頭蓋を内側から完全破壊するような変化ができる?

それなら五代さんも殺せる筈だ。

ゴの時は出来ないのか、それもとクウガを驚異と見なしていない?

警告だけして一度見逃している。

初見殺しの技か?

だからクウガに使えない。

余裕はポーズという可能性もある。

 

「……確認すべきか」

 

「何を?」

 

呟くように口にした言葉に疑問で返す声。

気付けば眼の前の席に、夏休みの間に多少仲良くなったと思われるクラスメイトの一人が。

席順は隣の席なのだが、今が昼休みで前の席の人が何処かに行っている為、前の席に座っているのだろう。

椅子の背もたれに組んだ腕を乗せて首を傾げている。

 

「ああ……ちょっと、今日の授業でちょっと解りにくいとこがあったからさ。先生に聞きに行くかなって」

 

「へえー、どのへん? 教えてあげよっか」

 

「ありがとう、助かる」

 

「いいよいいよ。優等生のセバス君に教えられるなんて、ちょっと優越感浸れるからね」

 

「そのあだ名定着してんの?」

 

「何? 名前で呼んでって?」

 

にんまりと笑うクラスメイトに肩をすくめて返す。

チェシャ猫の様な笑みだが悪意はないように思える。

悪意があったとしても、一般的な学生が抱く悪意、害意からくる行動なら割とどうとでもできるので可愛らしいものだ。

彼女が仮にオルフェノクだとか人間社会に紛れ込んだファンガイアだとか、或いは元の彼女に擬態したワームだったりしたら話は別なのだが。

それはその時になって考えるしかない。

なので、今は学校という場所に相応しい、穏やかな時間だ。

適当に言い訳に使えそうな教科書を取り出し、開く。

 

「ここかな」

 

「ああ、ここはね……」

 

上の空では流石に失礼なので、楽しそうなご教授をしっかりと聞きながら、昼休みを贅沢に使う。

……調べに行くかと言えば微妙なところではあるのだが、一つだけ言える事がある。

例え、どんな強力な秘策を用意していたとしても、披露せずに抱え落ちしてしまえば無いも同然だ。

出し惜しみする時点で一発ネタ同然である可能性が高いジャラジの隠し玉を態々探りに行くのは止め。

隠し玉を万が一食らって死んでしまってはお話にならないし、出させないように戦うならジャラジと戦う旨味はない。

それに、ジャラジとの戦いで五代さんが凄まじき戦士の参考映像を確認できるのは大きい。

凄まじき戦士にならないといけないとは言ったが、碑文の不十分な説明とライジング系列の力だけではどういった形態で、どうなればいいのかも把握しにくいだろう。

リント公式制作の凄まじき戦士のプレビュー用映像に触れれば、五代さんもなんとなく凄まじき戦士への至り方を理解できるようになる筈だ。

それを邪魔するのはいけない。

 

やはり、ガドル前の最終確認はゴ集団三強の二人から選ぶべきだろう。

ここからザギバスゲゲルまでに行われるゲゲルは、ほぼ全て土日に合わせて行われる。

ゴ・ジャーザ・ギか、或いはゴ・バベル・ダか。

この辺りになると、露骨にダグバに対する戦法が見え隠れしてくる。

ジャーザはスピード、バベルはタンク。

最終的にダグバと戦う場面ではほぼ同じ程度のスペックになる事を見越して、ダグバに勝る一芸を作って戦うつもりなのだろう。

ガドルに関してはまさしく正面から持てる全てをぶつけに行くと見える。

どれも参考にできそうだ。

 

大穴で言えば三強前のゴ・ザザル・バの、体液が強酸というのは肉弾戦に持ち込んだ時かなり有利になるのでいいと思うのだが、そうそう参考にできる戦法ではない。

ガドルやダグバのリハーサルとしては少しタイプが異なりすぎるだろう。

……まぁ、ちょっとだけ見てみたかった、という思いはあるのだが。

変身後ではなく、人間体の方を。

なにしろザザルの人間体、

 

「可愛いしなぁ……」

 

ちょっとガラが悪いというか、古めのヤンキー女みたいな服飾センスだけど。

そこはほら、グロンギってどんなに取り繕っても蛮族だし、あるがままではあるのかな、と。

 

「……ん、ん? 何か言った?」

 

ちょっとだけ口から漏れた言葉に、何故かクラスメイトの人が少し驚いたような顔で反応する。

 

「いや、勉強教えてもらったから、なんかお返しでもした方がいいかなって。大判焼きとかでいい? 商店街の」

 

内容物も、あんこ、クリーム、チョコ、ジャム、ハンバーグ、チーズハンバーグ、タコ、焼そばとバリエーション豊かなこの付近の学生御用達のお店なので、まぁまぁご満足いただけると思う。

あの商店街は反対方向に帰る人でもなければ大体寄り道できる位置にあるので帰宅ついでに寄れるのも良いと思う。

ジルもこれを食べてる間はかなりおとなしくなるので重宝する。

更に奢った分スタンプカードも埋まるのでちょっとだけ還元されるのが良い。

 

「い、いいって別にぃ。ジルちゃんのお世話で大変でしょ? 早く帰ってあげないと」

 

「そう? まぁ、そのうち何か返すよ。精神的に」

 

実際、何処かでお返しをしなければこの人への借りは大きくなる一方だ。

夏休みも明けたというのに、まだジルの水着を探すのを手伝ってくれた事へのお返しもまともにできていないのだから、どこかしらでどうにかしたい。

 

「だから、気にしなくていいのに……」

 

呆れるように笑いながら頰を掻くクラスメイトの人。

グロンギに匹敵する脳機能を獲得した俺が分析するに、この人はめっちゃいい人だ。

聖人君子かもしれない。

そういう人から死ぬ世界なので頑張ってほしい。

この人が安全に暮らせるよう神に祈って……神に祈るのは駄目な世界なんだった。

 

運を天に任せるとたぶんクソみたいな結果しかでない。

やはり自助努力こそが自らの身を助ける。

だから頑張れクラスメイトの人。

頑張れとか言うと上から目線みたいなので言わないけれど。

死ぬなよ……俺は自分の事で精一杯だからなんかあっても助けにはいけないだろうけど。

神や仏が居なくても仮面ライダーとかはそれなりに居るらしいから。

ここには居ないけどな。

 

それに、仮面ライダーだって万能ではない。

ザザルのゲゲルの時、同時に活動していたズ・ゴオマ・グ。

ダグバのベルトの欠片を使って強化されたコレが、警官隊を虐殺するのを防ぐことは出来なかった。

五代さんは凄い人だ。

ライダーをやってる人達は大体そうだ。

だけど、必ず限界はある。

補填しなければならない。

俺の目的にも合致する以上、それをやるのもやぶさかではないのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

九月二十七日、水曜日。

千葉県、流山市内の河川敷。

夕暮れ時に差し掛かろうという午後四時。

 

「弱いな」

 

小さく呟かれた言葉は、不思議とその場に集まる警官全ての耳に届いた。

困惑、憐憫、納得。

幾らかの感情が薄く込められた言葉を発するのは、黒い戦士。

両腕の肥大化した『黒い』戦士──二十二号が、片腕で子供程の大きさの何かを持ち上げながら口にしたのは、誰に告げるでもない独り言だったのだろう。

持ち上げられた何か、肉塊……いや、手足を失い、首を握りつぶされた未確認生命体三号が、二十二号の言葉に反応するように蠢く。

力任せに引き千切られた手足の根本の肉が、まるで腐肉から大量の虫が湧き出すように盛り上がり、じわじわと再生を始めようとしている。

恐るべきはその再生能力か。

 

二十二号が三号を持ち上げていない手を掲げる。

僅かな放電と共にその指先が鉤爪の如く変化し、三号の腹部へと突き立てられた。

そのまま、砂を掻いて掘り起こすように、腹部の肉を掻き混ぜていく二十二号。

喉を潰され、叫ぶことの出来ない三号が吐き出す血に濁った呼気は苦痛からか怒りからか。

 

しばし続いた肉を掻き混ぜる音は、二十二号が三号の腹部から何か、金色の欠片を引き抜くと同時に止まる。

それは腹の肉を文字通りに掻き毟る音だけでなく、三号の手足の付け根の再生が突如として止まったせいでもあった。

二十二号は三号を持ち上げ、赤い剥き出しの断面をじっくり確認し、大きく、その場の誰にでも聞こえる程の大きな溜息を吐く。

 

「所詮はズか」

 

ごきん、と、硬い何かを圧し折る音。

二十二号は三号の首から手を放し、もはや僅かに痙攣するだけの三号の肉体をその場に落とす。

最早胴体と皮でしか繋がっていない三号の白髪の生えた頭部を踏み、潰す。

骨が砕けるというよりも、風船が破裂するような音を立てて弾け飛んだ頭部の内容物が辺り一面に散らばった。

 

ばちゃばちゃ、と、二十二号が足に付いた三号の破片を水たまりで洗い落とす様を、警官隊はただ見ているしかできない。

危機は去った。

去った筈なのだ。

通行人五名を殺害した三号は、早々に現れた二十二号によってその場からこの河川敷まで引きずり降ろされ、瞬く間に制圧……撃破された。

 

初めて二十二号がその姿を表してから半年以上。

それまで、二十二号はその苛烈な振る舞いからは想像もできない程に、市民にも警察にも被害を出していない。

警官に銃で打たれても反撃すらせず、時には他の未確認から守りすらしていた。

戦いに巻き込まれた市民を、自らの身を投げうって守った場面は、多くの市民にも警官隊にも目撃されている。

一部には四号と同じく扱うべきではないか、という意見すらあった。

だが、二十二号の扱いは変わっていない。

射殺対象ではない、捕縛対象でもない。

それは扱いかねているからか、味方であると判断できる程の材料がないからか。

 

違う(・・)

 

その姿を、その戦いを直に見れば、理解してしまう。

あれは、自分たちとは、違うものだ、と。

敵ではないのだとして、味方と言うには、余りにも異質だと。

そう拒絶してしまう。

そう思い込もうとしてしまう。

二十二号の中に、二十二号の振る舞いの中に、見つけてしまいそうになるからだ。

自分達の中にある、二十二号のそれと同じ凶暴性を。

狩猟者の遺伝子を揺さぶられるが故に、違うのだと思いたがってしまう。

違う筈だ。

この振る舞いを、自分達と同じものがする筈がない、と。

 

足を流し終わった二十二号が、胴体だけになった三号の遺体を、むんずと掴み上げ、歩き出す。

包囲を行っていた警官隊は銃を構え直し、二十二号が歩いた分だけ距離を取る。

二十二号が足を止めれば警官隊も足を止める。

しばし考え込むように静止していた二十二号は、おもむろに三号の死体を、ドアの開け放たれたパトカーの中に放り込んだ。

 

「あげます」

 

低く、籠もるような声でそう告げた二十二号は、向けられる銃口と視線の一切を無視するように、その場から飛び去った。

 

―――――――――――――――――――

 

薄暗い線路下の歩道に、白いドレスに身を包んだ、額に白い薔薇のタトゥーの刻まれた女が居た。

バラのタトゥーの女。

警察にはB-1号と呼ばれる、ゲゲルを管理、運営するグロンギの一人、ラ・バルバ・デ

その隣では、地面に座り込み、何かの断片を丹念に布で磨き上げ続けている男。

 

バルバは何を待つでなく、何かの確信がある訳でもなかった。

ただ、こうしてザザルのゲゲルの結果を待っているだけにしか過ぎない。

しかし、妙な予感があった。

導かれる様に手を掲げる。

その手の中に一つの欠片が飛び込んできた。

金色の金属片。

彼女達が、グロンギが探し求めていた、ザギバスゲゲルを完全な形で遂行するのに無くてはならない器物の一欠片だ。

 

「……やはり、今度のクウガは面白いな」

 

「お前らには負けるよ」

 

眼の前には、ボロ布の様な衣服で全身を覆い隠した男が一人。

フードを被り、口元まで半ば隠したその姿は一見すれば浮浪者のそれだ。

だが、この距離なら特別な視力が無くともわかるだろう。

暗い、暗い闇の中に灯る、消えかけの篝火の如き揺らめく輝きを宿した巨大な複眼。

未確認生命体二十二号。

明らかに、リントよりも自分達に近いクウガ。

この時代を象徴する様な、或いは、先祖返りでも起こした様な、生粋の戦士。

 

「参加するのか」

 

「いいや。だが、お前らのルールには合わせる」

 

くる、と、振り返り歩き出す二十二号。

その先には、軍服の厳しい男、長髪をバンダナで纏めた男、ビジネススーツにメガネの女。

何を言うでもなく、道を譲り、様々な感情の籠もった視線を二十二号に向ける。

 

「楽しみにしている」

 

すれ違いざまに、軍服の男が視線も合わせる事無く告げた。

二十二号はそれに答える事無くすれ違い、

 

「ダグバによろしく」

 

一言だけ残して、その場から、急ぐこと無く歩き去った。

 

 

 

 





☆グロンギ三強の皆さんが見えなくなった辺りでダッシュして郊外に停めたバイクまでたどり着いたらカモフラ襤褸切れ燃やしてマシントルネイダー飛ばして家に帰るマン
高々度を飛べばばれない説を信じて……!
青春を謳歌しようぜ! とか思ってるけど青春に対する認知度とかはくっそポンコツになってる疑惑。最終的に青春は桜花されるかもしれない
文武両道でまぁまぁ人当たりも良くて義理の妹を介護する関係で女性にもそれなりに優しいという優良物件なんで多少はね?
という言い訳を抜きにして考えると、たぶんこの話書く直前にスピーシーズドメインの最新刊買っちゃったから青春させたかった
でも生存戦略―!してる最中なのでそういった方面には脳のリソースは一切割いてない
何時まで生存戦略の方にリソース裂くかって言えば……カブトが終わるくらいかなぁ……ファンガイアははっきり言ってクウガ編終わった時点のスペックでどうにでもなる。数に限りもあるし
所々息の抜きどころみたいな年もあるけどワームと魔化魍とオルフェノクは基本無限湧きみたいなものなので完全に平和には浸れないので日常面では色々と抜けてるとこもある
言わば思春期を殺した少年……お前(達の種族)を殺す(根絶やす)(デデドン!)
平和主義とか慎重論とかを取ってるつもり
でも脳が変質している中で誰に相談するでもなく脳内でのみ計画を練っているので思考や思想の歪みに気づくことは難しいのだ
やっぱり協力者とか大事だよね……居ないけど
居ないからこうなるってんですよ
一応ベルトの欠片を渡したのには理由が無いでもない、次の話で語るかな?
語り忘れたら感想で『なんでベルトの欠片をグロンギ側に渡しちゃったんだよ!』みたいに書いてくれれば理由そっちで書くのでお願いします
次話出る前に聞かれるとたぶん答えられないわにゃん
ついでに男なので黒に染まった
アルティメットはまだだけどアメイジングだから安心してほしい
たぶん火とか風のリソースも腕力に回った特殊形態

☆ズ・ゴオマ・グ
チートでステだけ強化したクソPS非ムセギジャジャ
漫画版でマゾヒスト描写があったけど、虐げられて喜ぶじゃなくて本気で屈辱とかが蓄積していったからこそダグバのベルトの欠片を盗んでまで猫駆除しようと思ったんじゃないかなって思う
だから頑張ってくすねたベルトの欠片で究極体になったよ!
でも肉体の使い方はズのそれで、飛行能力を活かすでもなくチートで湧いたパワーに酔いしれるような戦い方を好むよ!
戦果は一般人数名だよ!
達磨になったよ!
頭も潰されたよ!
神経断裂弾作成の為に警察の方々にプレゼントされたよ!
でもベルトもゲブロンも所詮ズのものなので回収はされなかったよ!
良かったねゴオマちゃん、モツ抜きされなかった初の獲物だよ!
獲物とすら認識されてなかったのが功を奏したね!
ベルトやその欠片に再生能力がどれだけ依存するか、みたいな実験に使われた

☆パトカー
ゴオマくんの血塗れ死体を後部座席に押し込まれた
乗ってきた人はすげー迷惑

☆ザザルさん
人間体が可愛い
あとおっぱい
そしておしり
体液が強酸性って、身体能力とか超能力がダグバと同等になるならザギバスゲゲル勝ち上がりワンチャンあり得たよね
警官隊への被害は少ないタイプの人なので標的にはならなかった

☆薔薇の人
「おっ、最後の欠片ありがとナス!」
「今からでもゲゲルしてかへん?」
くらいの内容しか口にしてない
潜伏グロンギの事を考えるとこいつとゲゲルリングは絶対に殺害して破壊しないといけない

☆ゴ集団最強三人衆
OL(はー面倒そうな相手。こいつらのどっちかと戦って死ねばいいのに)
バンダナ(面白い……ゲゲルで相まみえるのが楽しみだ)
閣下「君のプレイ、イエスだね!」
一人だけ社交的に声をかけた閣下は見事に無視されてしまう
二十二号は本当に礼儀がなってない、やっぱユグドラシル最低だな!

☆ヒロイン(画面端にワイプでのみ登場)
大判焼き、回転焼きなどと言われるおやつを食べる回想しかない
手づかみで食べられる上にボロボロ食べかすがこぼれない食べ物は手先が不器用な人にはありがたいんじゃないかなって思う
クウガ編最終回まわりで見せ場があるからちょっと待ってね

☆学生生活
潜伏オルフェノク、潜伏ワーム、潜伏ファンガイアなどの存在を思えば完全に油断できる場所でもない
時期的にジャーザやバベルは文化祭とかそういう行事に被るけどどうなんだろ
そもそも主人公ジルの監視のために家に直帰だけど準備とか手伝えるんかね
頑張ってジルが学校まで迎えに来て、それを叱る主人公、まぁまぁせっかく迎えに来てくれたんだからさ、みたいになるクラスメイト、みたいな構図にすればいいのか
学校でなんか覚醒してゲゲルとか虐殺を始める分にはいいので主人公も許容しそう

☆クラスメイトの人
話題の優秀な変な男子が女子水着売り場で真剣に水着探してるので声かけたら、なんやかや妹さんの体の事とかも聞いてしまいちょっと入れ込んでしまった
海に遊びに行く時もその流れで妹さんの面倒をその男子と見たりするんだけど、妹さんを見る時とかに時折見せる少し影のある表情とかにちょっとトゥンクしてしまい
ぼうっとしている姿を夏休み明けに見つけて声をかけて勉強を教えていたらなんか可愛いとかぽつりと言われてトゥンクしたり……
恋愛フラグとかそういう面倒なのはやらないって言ったでしょ!( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
なんか主人公の親しい人が死ぬ系のイベントを思いついた時用に出された生贄
青春謳歌してんなーって感じの話を書く時に出したり適当なエネミーに桜花されたりする
そういうの思いつかなければぬるっとフェードアウトします
ヒロイン昇格は無い
ただの純粋なオリキャラになっちゃうし、なんか適当な要素突っ込んで原作絡みのキャラにするにしてもジルだけで事足りるし、声が出るキャラは口調とかセリフ考えるのが面倒くさいし、喉潰すとかしてもジルと被るし
思いつきで出したのでタイミングが悪い
もうちょい早ければ親戚とか遠くにいる友人が未確認に殺されたとかで意気消沈して主人公の意識改革とかできた可能性もあるが今のコヤツは死亡イベント用の肉人形よゲッゲッゲ
或いはモブな

☆ジャラジ
逆にあんだけ余裕なら何かしら隠し玉を持っていると考えたほうが自然な気もする
だが所詮抱え落ちするしか無かった隠し玉なので出番はない
アルティメットフォーム公式PVの視聴チケットとして消費された
針をモーフィングパワーで小さくして脳に入れる、モーフィングパワー切れで脳内で大きくなって殺す、というゲゲルであった為、主人公が正義感溢れるタイプだったら殺された生徒のみなさんを助ける目はそれなり以上にあった
でもそんな用事でなぁ、メリットがなぁ、知らん連中だし
決めた! 頑張れ五代さんで今日はお休み! 閉廷!
という感じでスルー
平和的に爆殺されました、めでたしめでたし!
ここにライダーは居ない(純然たる事実)



こんだけ目撃されてるんだから、次の閣下戦の前のリハは、撮影された映像を警察とか五代さんが見ている、みたいなシチュもいいかなって思うんですけどどうですか
どうですかと聞きつつ思いついたもの、筆がノッた展開しか書けないから何かを還元したりはできないのだ、悲しい
別にどこかの誰かの心の青空を曇らせたり泉を濁らせたりしたい訳じゃないんだから勘違いしないでよね!
次はたぶんOLか閣下
思いつき次第なので気長にお待ち下されば白い服のトップムセギジャジャも思わず笑顔になります
気長に待ってダグバくんをもっと笑顔にしよう!







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