オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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107 支配種族・ヒト

推定死者数25万人。

死傷者数もほぼ同数で、誤差として1万行くか行かないか。

これは被害が最小限で済んだ、という話ではなく、被害者が軒並み殺されているが故のものだろう。

突如として人々の頭上から飛来した飛蝗の塑像の様な未確認生物。

それらは容赦なく人々を喰らい回った。

害を与えよう、殺そう、というのではなく、単純な捕食故だろうか。

その性質は見ていてとてもわかり易く、一人食べている間は他の獲物を眼で追うことも無く、どちらかと言えば獲物を横取りされないように警戒へと意識を向けているようだった。

 

負傷者の殆どは、未確認生物に襲われて、というより、それから逃げる過程で、というのが殆どだろう。

何しろ、誰か一人が犠牲になれば、その犠牲者を満足するまで食べ尽くすまでは逃げる猶予が生まれるのだ。

やもすれば、時間稼ぎの為に態と逃げられない様な状態で放置された犠牲者も居たかもしれないが……。

全ては怪物の腹の中。

或いは、非常事態の最中に怪物でなく人間によってその様な目にあったが為に、未だに恐怖から発言を控えているか。

 

表立って事件に遭遇した生き残りを糾弾する声は未だ少ない。

少ないだけで、無い訳ではない。

生き残りは、食い殺された被害者を盾にして、囮にして逃げたのだ。

怪物が人食いである事を知って、その場で誰それを殺し証拠隠滅の為に食わせたのだ、などという話も無いではない。

その声が増えるのか、減るのか、それはこれからの推移を見守らなければわからないが……。

 

25万人の人間が死んだ、というのはただの数値だ。

死んだ人間にも家族が居る。

両親に子供一人、と考えても、家族が帰らなかった家庭、残された遺族の数は死者の倍以上。

無論、家族纏めて、というパターンも少なからずあるだろう。

だが……。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そうして生き延びた人間が居ない、などという事もありえない筈が無い。

 

家族を失ったもの、家族を犠牲に生き残ったもの。

或いは運良く家族も友人も失わずに済んだもの。

その誰もが、心に深く刻み込んだだろう。

テレビの向こうの話ではない。

死者の数も、新聞に載っているだけの活字ではない。

つい昨日まで見かけていた隣人が居ない。

いつも同じ時間に同じ場所で見る、顔だけ知っている人が居ない。

学校の同級生が、職場の同僚が、居ない。

そんな事実が、否応なく現実を突きつけてくる。

或いは、自分こそそこに含まれていたかもしれない。

 

―――――――――――――――――――

 

逆説的に。

()()()()2()5()()()()()()()()で、1億超の人間の生存本能に強く訴えることができた。

これはかなりの成果ではないか。

 

忘れられがち……いや、俺以外に知るものが居ないから、忘れるもクソも無いのだが。

この世界、普通に人類が滅亡寸前にまで追い込まれるIFの世界線が存在する。

渋谷隕石に関しては、俺の知る歴史よりも遥かに被害の規模が小さくなっている(具体的に、渋谷は完全閉鎖ではなく一部に立ち入り禁止区域がある程度。仮面の戦士達やその他未知の勢力の介入が疑われる)のだが、例えば、ローズオルフェノクなど放っておけば全人類に使徒再生用のバラを送付するとかいうクソみたいなテロを仕掛けてきた可能性がある。

 

因みにこの使徒再生のバラ一斉送付、本体が死んでも実行可能にしていた可能性もあるため、スマートブレインのオルフェノク掃討の後に関連施設は虱潰しにチェック済みだ。

その過程で諸々の試作中の機器やテクノロジーに関しても発見するに至ったわけだが……。

ともあれ、人類を滅ぼさんと本気で動いている組織はそれなりに存在しているし、或いはそれが成功する可能性が決してゼロではない事を俺は知っている。

 

こういう支配種族移行シナリオを事前に防止しようと思ったら、それこそ完全な管理社会にでもしてしまうのが一番いいのだろう。

世界の平和は数名の超人が悪党をしばき倒し続けて手に入るようなものではない事は、この現代社会が証明している。

一般的な正義の味方と呼ばれる人々も、或いは警察組織なども、結局は風邪薬のようなもので、起きてしまった出来事に対処する存在でしかない。

だが、俺の知る限りで人類をそんな方向に導ける人材は存在しないし、したとしても管理社会にも絶対に取りこぼしが存在する。

その取りこぼしに対抗し、社会を信用せずに自主的に身を守ろうと思ったなら、管理社会のシステムは活動の邪魔になる。

 

相対的に見て、現代日本くらいの社会システムの方が、ある程度身を守る術を持つ人間にとっては住みよい世界であるのは間違いない。

だがそうなると、特定の組織、あるいは種族が人類社会転覆や人類滅亡などを企んだ場合、被害は当然のごとく増大する。

今の住みよい社会をある程度維持しつつ、それでいて社会そのもの、自分や自分の友人知人、親しい人達に危害が加わらない様にしようと思ったら、どうすればよいか。

 

答えは簡単。

秩序側に味方する戦士をめちゃくちゃに増やしてしまえば良いのだ。

脳筋だと思うだろうか。

俺も思う。

だが、結局勝負事というのはそういうものだ。

 

戦略がどうこう、戦術がどうこう、というのは、ある程度戦力が拮抗しているからこそ成り立つ。

戦いの王道は、相手より強い兵士を、相手より多く用意して、逃げ場を奪った上でドバっーと叩きつける。

これで相手は溶ける。すると勝つ。

 

冗談のように聞こえるが、実は割と真面目な話だ。

実のところを言えば、少なくとも俺の把握するこの時代に定住している人類敵対種族の多くは、人類そのものどころか、ある程度の規模の軍事力を持つ国家と正面衝突すれば、多少の被害こそ出し、少しばかりの取り逃しもあるものの、勢力として壊滅させる事が可能であると見ている。

例外としては人類の中から生えてくるオルフェノク、或いはアギトなど(悪党のアギトなどがこれから増える事を考えればこれが敵対種族になる可能性は低くはない)になるが……。

オルフェノクは人間と交配する事で別種族へ変化するため、バラに似た特性を持つ個体が同時多発的にやらかして瞬発的に人類を滅ぼさない限りは人類との交配を重ねる中で自然に淘汰される。

そしてアギトは……、まぁ、別にアギトが人類を乗っ取る分には俺は困らないので考えないものとして良い。人類がイノベイターにすり替わっていく未来世界みたいなものだし。

 

例えば魔化魍。

これはそもそも人類を滅ぼす、みたいな話ではないし、魔化魍を改造している勢力が消え失せたとしても世界に穢が存在する限りは増え続ける害獣のようなものなので問題ない。

それどころか、一般に認知されたなら鬼への志願者などを公募する事で増やせるので、今以上に被害は減らせるだろう。

 

例えばファンガイア。

軍事用のパワードスーツを改良したパワードスーツと、それを操る優れた戦士が居れば単独撃破すら可能。

もしもファンガイアの存在が公になれば、イクサが大量に量産されて広く配備され、あっというまに駆り尽くされるだろう事は目に見えている。

なんならある世界線においては普通にそういう風にして滅亡寸前に追い込まれている。

レジェンドルガに関してはそも個体数が冗談みたいに少ない。

仮面を被せて増やせるという特性は面倒ではあるが、キバやイクサを同種にできなかった時点である程度のパワードスーツなら防げる。

一般への被害を考えなければ滅ぼすのは難しい話ではない。

 

例えばアンデッド。

これらは殺す手段が無いが、殺す手段が無いだけで一般のパワードスーツでも集団で捕縛用の装備を取り揃えれば足止めはできる。

普通に袋叩き戦法が通用するのだ。

普通に全てのアンデッドを封印して、その上でアルビノをどうにかすれば良い。

なんならアルビノに関しては俺がどうにかすれば良いだろう。

 

例えばワーム。

時間停止などの強力な能力を持つ個体を除けば、ゼクターを量産すれば普通に勝てる。

まぁ、それこそネイティブの元でそういう個体に対応できるパーフェクトゼクターなどを開発している最中で、それを開発しさえすればあとは反逆するだけ、というだけの話だったのかもしれないが。

見分けるにしても体温の低さなどで見分けが付いたりするので、擬態も完璧と言える訳ではない。

難敵かもしれないが、総力戦をする、という前提であれば押し切れる。

 

わかるだろうか。

大体の場合の人類を守る側の苦戦や苦境の元凶は、忌々しい秘密主義なのである。

そういう組織は、大体の場合は既に政府とかにも敵が根を張っているとか、自分たちの技術を戦争などに流用されたくないとか、そもそも敵に傅いて反逆の機会を伺っている最中だとか、そもそも敵だとか、そういう理屈がある。

だが、後に技術が流出するのを危惧するのは、まず今を乗り越えなければ意味がない。

 

無論、技術を独占したい、という気持ちはとても良くわかる。

人を信用できない、すごくわかる。

なんなら俺は人に秘密主義をやめろと言いつつ絶対に秘密主義を止めないだろう。

秘密を抱える多くの人間は似たような事を考えている。

誰だって知られたくない事はあるし、それを知られたが故に危機に陥る事もあるだろう。

 

故にこそ、それら秘密を知らずとも、大まかな()()()()()()()、という枠組みを相手に備えをしていける風潮というのはすごく大事なのだ。

何もしなくとも、或いは、今までと変わらない備えでも、生きていくには不都合しない。

そんな考えが吹き飛ばされる様な、全国規模、全世界規模の大虐殺。

或いはニュースを見れば、特定の国家が特定の国家に向けて、この国は生物兵器を製造してウチの国にばらまいたのだ!みたいな事を迂遠な表現で表明していたりする。

もう少し世界が緊張していたら核ミサイルの一本や百本程度は飛んでいたのではないだろうか。

まぁ……核ミサイルに関しては飛んできた時用の対策をしているので、青森の八甲田山と地元くらいは守れるから置いておくとして。

 

対策が必要だ、という事を、大体の地域の人が実感してくれたハズだ。

身内や友人に被害が出なかった人にしても、いつも見かける人をふと見かけなくなった、なんてところから被害を実感できるだろう。

各県警なんかはより実感するのではないだろうか。

何しろ、地域ごとにどれほどの被害者が出たのか、という程度の話なら既に簡単に確認ができる。

大体、大都市程に被害が大きい、という当たり前の話はともかく。

一箇所、明らかに異様に被害が少ない地域が存在するのだ。

それならば、今後の事を考えてその地域の治安維持に際して行なっていた対策を真似るのが順当だろう。

 

実は四国などもそれなりに被害が少なかったりするのだが。

それなりでしかない、という辺り、強いけど数が少ない戦士、というものの限界が垣間見える。

やはり、戦いはどこまで行っても数なのだ。

単騎でどうにかしようと思ったら、広範囲の敵を一掃するタイプの力が必要になってくるだろう。

 

―――――――――――――――――――

 

久方ぶりの休日の朝。

呼び鈴の音に応えながら玄関に近づいた一条薫が、ドアアイから外を確認すると。

 

「どうも、お久しぶりです」

 

そこには居住まいを正した、未確認生命体二十二号が立っていた。

 

―――――――――――――――――――

 

一条にとって、二十二号というのはある種の因縁の相手と言っていい。

五代雄介……四号と共に未確認を相手に戦っていた時こそ殆ど接触は無く、その後も片手で数えられる程度の邂逅しかしていないにも関わらず、だ。

五代雄介と異なり、正体を顕にせず、独自に未確認を初めとした異種族との戦いを続ける謎の存在。

法的にはグレーを通り越して当然の如くアウトであり、G-1を使用して捕縛を試みながら、逆に謎のベルトを取り付けられ、五代と似た体質に変えられた。

ある意味、今の一条の立場というのは、殆どがこの二十二号に原因があると言って良いだろう。

 

「こちら、つまらないものですが」

 

と、華やかな紙でラッピングされた箱を渡される。

 

「これは?」

 

「とらやの羊羹です。お歳暮のようなものと受け取って貰えれば」

 

それはお歳暮のようなものではなくお歳暮そのものではないか、という疑問を口にする事無く、それをとりあえず受け取る。

白い二十二号が、自宅で、テーブルの向かいに正座している。

棘の多い見た目に反した、すっと背筋の伸びた美しい正座だ。

見た目を考慮しなければ育ちの良さすら伺えるが、それが実際にこの時代に良いところで生まれ育って身につけた所作なのか、未確認特有の学習能力の高さで現代に蘇ってきてから身につけたのか、確認する術はない。

 

「実のところを言えば、先に椿先生の所に伺わせて頂いているのです」

 

「あいつの所に?」

 

「身体に異常があるのに、彼の所で検診を受けていないとか」

 

「異常は無い、好調なくらいだ」

 

「あれだけの大騒動の後で、何の異常もないんですよね?」

 

「…………」

 

一条が口をつぐむ。

結局の所、それは強がりであり誤魔化しでしかないという自覚はあるのだ。

その元凶が目の前の少年(もう青年と言って良いのか微妙なところだが)だとしても、彼の言葉は核心をついていた。

一条の身体はまさしく、未確認関連事件終盤の五代と同じ有様になりつつあるのだろう。

几帳面、生真面目を絵に描いた様な男である一条が、人間として見た場合明らかに異常な状態にあるにも関わらず、口の固い医者……友人である椿にすら自らの身体を見せていないのは、つまりはそういう事だ。

 

半ば、意固地になっているのだろう。

これ以上戦えば、戦うためだけの生物兵器になるかもしれないとなれば、ドクターストップが掛かるかもしれない。

今は、一人の戦士が無理に戦いを続けなければならない状況ではない。

警視庁に配備された装甲服部隊、或いは異能を持って変身するアギト部隊。

彼らが居る以上、一条のアドバンテージなど、対未確認やその他種族との戦闘経験程度のもの。

彼一人が、大事をとって一抜けしたとしても問題はないだろう。

或いはそれこそ、広報の為に現場を離れる、という事もできるかもしれない。

 

それをしないのは。

自分が戦う事で。

この世界のどこかに居る、ある冒険家に掛かる負担が少なくなる、と、そう思っているからか。

最近、嫌に冴えて良く回るようになった頭に浮かんだ考えを振り払う。

 

「それは、あいつも同じだった筈だ」

 

「五代さんとの比較というならそれほどあてにはなりませんよ。古代リントの作った海賊版と違って、一条さんに組み込んだものは旧グロンギの技術を完全な形で取り込んで現代リント用にブラッシュアップした新型ですからね。むしろ、ここまで肉体に変化が少なかったことの方が異常なのです。だから、少し様子を見てこようかな、と」

 

「……まさかあいつから何の連絡も無かったのは」

 

「俺が直接出向いて現在の肉体の状況を確認したら、あちらさんにも情報を提供する様に頼まれましたので」

 

あいつは……、と、学生時代からの旧友の事を思い浮かべ、その内、俺の事も解剖したいなどと言い出すんではないだろうな、と、内心で頭を抱える。

五代に言っていた事は半ば冗談だと思っていたが、どこまで冗談でどこまで本気か伺い知れない。

 

「まぁ、少なくとも、今の一条さんの身体の状態は、そのベルトの装着者としてはそれほどおかしい訳ではないのでご安心下さい。むしろその点で言えば……」

 

ふと、二十二号が言いよどむ。

 

「なんだ」

 

先を促すと、二十二号はお歳暮と言って渡してきたものと同じ、竹皮で包まれた大きな羊羹を取り出し、それで一条を指差した。

 

「そろそろ、変身機能を開放した方が良いかなと思うのです」

 

「それは……良いのか?」

 

「緊急避難的に取り付けたものではありますが、既に一条さんの身体とベルトはすっかり馴染んでいるようですからね。今、変身機能こそ使えなくとも、スーツを着て戦っている最中に五代さんがやっていた様な真似ができるようになっているのではないですか?」

 

少し予想より速い気もするのですが、と、一条を指差すのを辞めた手元の羊羹の皮をおそらくは念動力で剥いていると思しき様子の二十二号。

がしゃん、と、開いた硬質な口元に羊羹の半分程を押し込み、がしゃん、と、再び口を閉じて切断する。

 

「一条さんのベルトは、古代に作られたものとは、見た目を除けばかなり別物です。戦い続けたからと言って、脳みそを乗っ取られて生物兵器になったりはしません」

 

もちもちと羊羹を槌で捏ねる様な咀嚼音に並行して、どこから声を出しているのか一切淀みのない音声で話す二十二号に、一条は部屋に置いてあったペットボトルのお茶を差し出しながら問い返す。

 

「何故、今なんだ」

 

「戦いは新たなステージへと進みつつあります。先日、もう体験したと思われますが」

 

反射的に、一条の手が持ち上がり、二十二号へと突きつけられる。

先まで無かった弩と銃の間の子の様な得物を手に。

 

「あれは、君が……お前が仕組んだ事なのか」

 

ばち、ばちん、と、銃を構える腕を帯電させながら、問う。

 

「俺にとっても想定外の事態でしたよ。どこかのタイミングで似たような事が起きるとは思っていましたが」

 

一切の動揺を見せない。

それが嘘か誠か。

見分ける術はない。

だが、意味のない嘘は言わないだろうとも思う。

これまで、二十二号は他人の追求を逃れる時には即座にその場を離れるという形で実行に移した。

 

「なら、()()()()()()()()

 

「いいえ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

逃げる様子も、怯む様子も無い。

……嘘ではないのだろう、と、下げた一条の手の中には何も無い。

 

「今は、信じよう」

 

「ありがとうございます。しかし、面白い変化が起きましたね」

 

「これも、君の言っていたベルトの機能の一部か?」

 

「違います。明らかに変質していますので。しかしここまで変異したら、それこそG1システムなんてどんな魔改造されるかわかったもんじゃありませんねぇ」

 

「小沢管理官が居れば、そうなっていたかもしれん」

 

「…………居れば?」

 

羊羹を咀嚼する音を止め、二十二号がまるで、恐る恐る、といった具合に問うてくるシュールさに笑いそうになるのを口元に手を当て抑えながら、一条は問いであろう三文字の言葉に、なるたけ丁寧に返答を返した。

 

「彼女は警察を辞めた。……一応、休職、という事になっているがな」

 

―――――――――――――――――――

 

どうにも、俺が友人経由で猛士に渡りを付けたりしている間にも、世間は目まぐるしく動いていた様子で。

小沢澄子警部は、彼女が開発した持ち運びの容易な新型装甲服が先の全国同時多発襲撃事件で目覚ましい活躍を見せた事で昇進の話が出るのとほぼ同時、退職届と短い文章の書き置きだけを残して、失踪同然に姿を消してしまったらしい。

 

仮にも一社会人としてその退職の仕方は如何なものか、とも思うのだが、どうにも、彼女は今回の出来事で越えるべき壁、或いは一線というものをはっきりと見出してしまったらしい。

幸いにも警視庁に配備されている新型の装甲服は完全に設計が済み量産体制を整えるだけ、というところまで来ており、彼女が後任に引き継ぐべき仕事は殆ど無かったのだとか。

 

「学び直してくる、か」

 

俺の知る限りの小沢澄子という人間は、ある程度の社会性を持った自信家のマッド・エンジニアだ。

恩師と呼べる相手も居るには居るが……、今更あれから学び直す事も無いだろう。

そもそも、その恩師の元に小沢澄子の影はない。

それどころか、彼女は国内にすら居ないのだ。

 

だが、足取りは追えている。

国内で最後に目撃されたのは空港。

そこから監視カメラの映像などを繋ぎ合わせた結果、彼女は一度、とある場所を経由している。

 

京都大学。

 

彼女はそこで一度、とある論文を参照して、殆ど寄り道もせずに真っ直ぐに国外へと飛んだ。

恐るべき行動力だ。

何より驚くのは、あの勝ち気で自信家の天才が、自らの技術を高めるために、誰かを訪ねようとしている、という事か。

それも、殆ど手がかりも無しに。

或いはMIT時代の知り合いにまずはあたってみるつもりなのか。

 

無謀、ではないだろう。

今は情報化社会になりつつある時代。

危険を顧みなければ、様々なデマ混じりの情報を繋ぎ合わせ、たどり着く事ができるだろう。

目的の人物が、素直に彼女に自らの知恵を貸してくれるか、という問題は知らないが。

 

俺もうかうかしていられない。

兵器の世界は日進月歩。

自らが優位にあると思いこんだが最後、あっさりと後ろから追い抜かれて置いていかれかねない。

 

「こいつらも、早く仕上げてやらねば」

 

ゴウラムよりも一回り大きい、巨大な黒いヒヒイロカネ造りの甲虫。

未だ産まれる事すら出来ない不完全な鎧は、模様の様にびっしりと呪言が刻まれたその硬い羽を僅かに蠢かせた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 





剣編の出だしが思いつかんので先ずは幕間でお茶を濁す
なんとなく書いた話だからボケるスペースも無い悲しみ

☆なんだかんだ、地球の支配種族は人間説
平和ボケしているから一方的に殺されるのであって、国民皆兵すれば大体の勢力は押しつぶせるだけの力がある筈
そこまで意識改革する過程で起きる悲劇は一先ず見ないものとする
実際小説版キバとかだとイクサ量産して普通に勝ち戦になってるしね

☆貴重な一条さんの私服シーン
私服というか、多分早朝に押しかけたのでまだパジャマ説まである
パジャマのままペガサスボウガン出したりする
結局どういう変化をしたかは不明
変身機能を解放したかはまぁ……未来に現れるぐにょりが知ってると思います
ホモが時計の針を進めると言った通り、将来的に至る状態になっただけなのでイレギュラーな介入があった事には気付け無い

☆科学修行の旅に出た小沢さん
常人なら酔いつぶれるレベルでビールを飲んだ後に傑作パワードスーツの設計図を引ける女なので、科学技術を高めるためには当然海外に修行の旅に出たりする
京都大学で何を見て、それを元にどこに向かったのかは不明
ただ……
昭和ライダーは平気でカメラに撮られたりするので海外で探そうと思えばそう難しくはないのだ

☆一条さんでお医者さんごっこする新生グロンギ頭領
筋肉量が増してますね
骨密度が桁違いですね
ベルトの神経が上手いこと脳細胞を包み込んでますね
武器が瞬発的に何かをコアにして出現してますね
よくわからないけど、たぶん大丈夫だと思います!
トローチ代わりに羊羹でも舐めて様子見てて下さい!
良い子のみんなはお父さんお母さんおじいちゃんお婆ちゃんが体調崩して熱出してても、解熱剤だけ投与して放置みたいな雑な仕事はやめようね!
アギトがアギトという超能力であるという解釈と同じ様に、一条さんも一条さんという進化なのかもしれない



やまもおちもいみもない
そういうお話でした
ヒロイン出してないので絵面がむさい
一条さんは五代さんのヒロインだしなぁ……
そういう訳で次回はヒロイン回とかやりたい
そんな気まぐれSSですが、それでお良ければ次も気長にお待ち下さい

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