オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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二人で突き抜けるノンストップ!仮面ライダーSPIRITS その三

さてこの世界、明確な時代描写も日付描写も無い割に、タイムスケジュールが劇場版か何か? というレベルでキッツキツである。

大体の場合は各ライダーとゼクロスの個別交流と戦闘を半日か一日程度で済ませ、終わったら殆ど休む間もなく、何処其処で〇〇ライダーが待っているから向かってくれ、だ。

それでいて、各ライダーが同時進行で戦ったり負けたり行方不明になったりでさあ大変。

日常回もあるにはあるが、どの日常回の場合でも裏ではライダーが絶えず戦っており、完全に全てのライダーがフリーな時間というのは殆ど無い。

 

「こーじー、準備出来たぞー」

 

実験用の白衣を纏ったグジル。

手術台車を押しているが、その上に乗っているのは普通の人間の手術に使う器具など殆ど無い。

見た目としてはそれこそ、ギザギザしてるやつやトゲトゲ尖ってるやつ、と言えば良いか。

 

「オーケー」

 

手術台……というより、作業台か。

その上に乗せられたのは、後頭部から中身をくり抜かれた状態のショッカーライダーのボディ。

脳髄に関しては呪言を幾重にも刻んだ強化ガラス製の水槽に入れられ、電極に繋がれている。

かつて、とある革命屋さんの将軍は、改造人間……というより、粗製……プロトタイプコマンドロイドの頭脳をタンパク質の塊と称していた。

とても困った話ではあるのだが、この世界の改造人間、基本的にその肉体の殆どを機械化する形式が主流でありながら、どうしてか脳髄は生身の人間のものを改造して使用している。

無論、一部では完全に機械化しているという例はあるし、なんとなれば、一度オリジナルが爆発した後に作られる再生怪人などは電子頭脳を使っている可能性がある。

 

が、主流はどうしても人間ベース。

このショッカーライダーにしてもそれは変わらない。

何故そうなのか、というのは、この世界における仮面ライダーがゼクロス……大首領JUDOの新たな肉体を作り上げるための、技術蓄積用のプロトタイプだからだろう。

一部、明らかに悪の秘密結社が関係しない、純民間製とか、宇宙開発用とかが混じっていたりするが、恐らくそれも、蓄積した技術を優れた科学者に発展させるために意図的に流出させたものだ。

古代インカの呪術によって変身する生物系の人ですら、最終的にゼクロスを作り出す為に役立っているという事になる。

 

実際、俺も呪術にはそれなりの自信がある。

お師さんから学び、古文書の類を読み込むだけでは理解できない部分も理解した俺は、政府、というか、国家が秘匿していると思われる特級の陰陽師だのなんだのが出てこない限り、元の世界の日本ではトップクラスの呪い師だと自負している。

というか……。

古代インカの呪術に関しては、術士が死んでいる為に学びようが無いので独自技術で代用するしか無いというのがホントのところ。

 

ゼクロスの肉体……というか、大首領JUDOの肉体が純粋科学によって作られている訳ではないのは明らかだ。

牢獄の中の戦いにおいて、JUDOの肉体を取り込むことでパワーアップだの反作用だのと楽しくやっていたりするし、なんなら普通に魔法陣を使ってきたりする。

本人も本来は多種多様な魔法、術を使いこなせるハズだが、おそらくは戦闘形態を最適化する過程で表面上わかりやすく使用する魔法を魔法陣一種に絞っているのだろう。

完成度が高い戦闘体というのは、多機能を経てシンプルな形に行き着くものである。

 

ではそこに繋がる、直前のプロトタイプであるスーパー1の肉体とは如何なる機構をそなえたものであるか、という話。

仮面ライダースーパー1は、口さがなく言えば、その変身機構、戦闘継続能力に多大な問題を抱えた欠陥機である。

その他の仮面ライダー達が大体の場合はメンテナンスフリーであるのに対し、スーパー1は専用のメンテナンスマシンであるチェックマシンを必要とし、変身に際して生命の元来持つ力、気を操る赤心少林拳を必要とする。

それは何故か。

 

恐らく、本来試作される大首領ボディのプロトタイプには、科学技術だけでなく、魔法、魔術、呪術などの超常的な要素が組み込まれる予定だったのだろう。

それこそ、砕けても砕けても再生する大首領や後々の適合率の上がったゼクロスのボディのように、超自然的な力によって、純粋な科学力だけでは歪になってしまう構造の辻褄を合わせる形になるか。

大首領が牢獄の戦いで見せた重力操作などからも、大首領のボディは宇宙空間、様々な惑星での活動を可能とする多機能なものとなっているハズだ。

実際、スーパー1の継戦能力を高くすれば、かなり大首領に近いスペックになるだろう。

或いは、適合率を上げることでシンクロ率を高くする、という過程が必要なゼクロスより、より本来の大首領に似たスペックになるか。

 

で、この純粋科学で作られたが故に欠陥品となってしまったスーパー1。

一部欠陥をどうにかこうにか排除した良い別モデルが存在する。

それこそ、ジンドグマ製のロボットスーパー1である。

彼らはこの世界とは別のラインの世界でもバダンの下部組織であり、その出自が外宇宙、更には機械信仰とも呼べる程に機械に造詣が深い。

故に、その高い技術力により諸々の欠点を補った、という可能性もあるが……。

まぁそれはどうでもいい。

 

重要なのは、ロボットスーパー1はオリジナルよりも性能が安定している、という一点に尽きる。

これは人間態と改造態の可逆変身機構を搭載していないから、という可能性もあるが……。

とにかく、間違いなくスーパー1はこれまでに俺が触れたものの中でも一、二を争う高度な科学技術が使用されているという事だ(競合相手は参加者全員配布の神崎士郎製デッキとバイク)。

 

そして、これを簡単に復元できるか、挙げ句、内部構造を完全に理解できるか、というと、難しいものがあると思う。

しかも、回収予定のロボットスーパー1は一体しか居ない。

100体くらい作って一斉にぶつければライダーを一人くらいは殺せそうなものなのだけれど、何故か一体しかいない。

口惜しい話だが、その貴重な一体をどうにか鹵獲して、それだけで技術を解析してみせなければならない訳だ。

 

実際、このショッカーライダーの肉体は魅力的だ。

一号ライダーと同等のスペックを備えたこれを量産するだけでも十分過ぎるほどの戦力になるだろう。

だが、これは今回、教材として使わせてもらう。

これがゼクロスに繋がるプロトタイプの初号機とするならば、やはりゼクロスの直前のプロトタイプであるスーパー1とも技術的な繋がりが少なからずあるだろう。

これを弄り回す事でショッカーの技術に慣れ、ロボットスーパー1の構造をしっかりと理解できるようになっておく。

 

水槽に入れた脳みそは当然本体が破壊された時点で死んでいたが、反魂の法の応用で一時的に蘇って頂き、その脳活動を記録させて貰っている。

再現するのは、ロールアウト直後の起動テスト、そして、ライダー達との戦闘ログ。

これで改造された脳がいかにしてこの肉体を操作していたかを記録し、それを、ヘキサギアに使用している電脳で、無理ならそこに少しアギトの力を注いでゾイドやFAGと同様の半天使状態にして、生身の脳無しで動かせるようにする。

この技術習得は必須であり、なおかつ、これを、ロボットスーパー1出現よりも早く終わらせ、捕獲の準備もしておかなければならない。

また……、このロボットスーパー1は電脳と切り離されても一定の動作が可能で、自らを破壊した相手を巻き添えに自爆するようにプログラムされているので、これを阻止する必要もある。

欲を言えば、一応人間らしく振る舞うことも可能なジンドグマ製の電脳も手に入れたいところだ。

設計図を手に入れれば、自爆装置を組み込めるスペースも類推できるので、これも後にどうにか盗み出しに行かなければなるまい。

 

中々のハードスケジュール。

具体的な日付が無い、というのも困りものだ。

間に合えば良いが……。

 

「術式を開始する」

 

まずは目の前のサンプルを吟味させてもらおう。

 

―――――――――――――――――――

 

初代と同等ボディなら当然モーフィングパワーは通じないものと考えていたのだが、胴を開く時に手癖でやったら通じてしまったので、構造把握と複製はとても早く終わった。

これが死体だからなのか、ボディが同じだけの怪人でしかないからなのかは不明だ。

そして脳味噌から吸い出したデータで動かす、という点も想定よりも簡単にできてしまって非常に拍子抜け。

 

まぁ……大首領の肉体のプロトタイプと言っても、その最初期版。

スペック上は変わらない性能のものを六体用意して実用できていた、という時点で気付いたのだが、これが非常によく出来ている。

なんとこのボディ、少し脳味噌を改造してパワーの調整ができるようにすれば、凡人よりまし程度の脳味噌でも運用できるのだ。

そもライダーボディが本郷猛レベルの天才でなければまともに運用できないというのであれば、偽ライダー達は明らかに使い捨てにするには惜しい逸材という事になる。

それにこの蘇生した頭脳が反魂の法で蘇らせたもので、なおかつ脳改造済みであったとしても、そのレベルの知性を持っているようには思えないのだ。

恐らく、初代ライダーの素体が本郷猛であるのも、可能であれば優秀な素体の方が良い、程度の話だったのではないだろうか。

 

ライダー以降にショッカーで作られた改造人間が大首領にとってどの様な役割を持っていたか、というのはわからないが、このボディは非常に纏まりがよく、改造人間というものがどういう構造を持つ機械であるかを理解する上で非常に優れた教材だったと言えるだろう。

新しい組織が出る度に古いライダーが苦戦するのも致し方ない。

これら改造人間の技術というのは、組織の崩壊と共に完全に遺失するわけでなく、有用なデータのみが何らかの形で後継の組織に受け渡されていたのだろう。

 

まさしく、最高の改造人間を目指すための叩き台。

目指す先を知らなければ一種の完成形と言えるだろう。

非常にわかりやすい参考書であり教師だったと言える。

死神博士という人物はとても優れた科学者だった筈だ。

生きていれば、その脳髄だけでも欲しかった所だが……。

まぁ、こちらには神崎士郎の精神世界で手に入れた神崎士郎ユニットのジーンマップのコピーがあるので、変な欲張り方はしないでおく。

 

結局何が言いたいか、と言えば。

時間に空きが出来たのだ。

本来ならもっと時間が掛かると思い、ロボットスーパー1の出現に間に合えば良いと思っていたのだが、時間に余裕が出来たとあれば話は違う。

変な欲張り方はしないでおく、と、心で思ったばかりの所で申し訳ないのだが、そもこの世界に転移してきたタイミングがタイミングであったため、偶発的に変なタイミングで戻される可能性がゼロではない。

ゼロではないだけで実質的にはゼロとして見て良い数値ではあるのだけど。

0.1秒もあれば攻撃を叩き込める隙になるのがライダーの業界だ。

危険度の少ない、実行可能な範囲の欲張りであれば可能な限りやっておくのが間違いない。

 

「そういう訳で静岡に来たのだ」

 

「お茶と富士山の国! こんどはちゃんと登るんじゃなくて眺められるな!」

 

そう、実際上からの見晴らしは良いけど山頂までの道中の景色はそんなに面白くない事で有名なフジサンダクラーヌがそびえ立つ、あの静岡である。

個人的に、赤心寺への道中に慣れている身としては、もう少し野草ボーボーの方が山を歩いてる感があって良いのだが。

 

「静岡の名物と言えば?」

 

俺の問に、グジルが一本ずつ指を立てながら答える。

 

「すっぽん、鮎、うなぎだよね。いやぁ、鰻の蒲焼きを開発したってだけでグロンギじゃなくてリントが勝つルートに世界が進んで良かったって思うよ、マジで」

 

ウンウンと感慨深げに頷く。

 

「今はバダンシンドロームで養殖も鰻屋も営業してないからな……」

 

「あ、鰻なら私さばけるよ。テレビで見て練習したのだ」

 

「ああ、もしかして丑の日に出てきた鰻ってお前が捌いたんか」

 

「そうそう。でもすっぽんは未体験ゾーンだかんなー」

 

「しかし鮎なら塩振って串焼きだからどうにかなる。浜名湖に養殖場がある。まぁ、どちらにせよ」

 

代金として金塊でも置いておけば盗みにはなるまいよ。

それはそれとして。

目の前に広がるのは富士の樹海。

その中ほどには、以前に見た樹海には存在しなかった、巨大な黒いピラミッドが聳えている。

このピラミッド周辺にはジェネラルシャドウが、ついでにデッドライオンが控えているが、それ以外は全て魂の無い操り人形。

そして、他のピラミッドでは確認できていない、特殊な連中が存在している。

今回はそれを目標としていく。

 

「全ては勝ってから、だ」

 

グジルが、イクサナックルを構え、にぃ、と、笑みを浮かべる。

 

「ゲゲルゾ、ザジレス、ってか」

 

―――――――――――――――――――

 

改造人間、仮面ライダーストロンガーが、再生怪人タックルのウルトラサイクロンを受け敗走してから、数時間。

SPIRITS第7分隊は、黒いピラミッドから放たれる強烈な電撃の脅威に晒されながら、意外な程に善戦していた。

その理由を挙げるとすれば、一人の助っ人が原因だろう。

 

改造火の玉人間である百目タイタンがエネルギーを注ぎ込み、黒いピラミッドの頂点から雷が放たれ、第7分隊へと降り注ぐ。

SPIRITSに与えられた各種装備品は、各国の軍が半ば機能を停止している中で用意されたものではあるが、仮面ライダーをサポートするには十分すぎる性能を備えている。

だが、それでも常識の範囲を越えるような超常的な性能という訳ではない。

携行火器を初め、直撃すればBADANの一般的な怪人を撃破できる程度の火力はあり、格闘戦でも下手に力比べなどをしなければ死にはしない程度の防護用スーツもある。

だが、空から降り注ぐ雷槌を防ぐような常識はずれの装備は存在しない。

この様に、一度敵が迎撃不可能な攻撃などを向けてくれば、運良く回避できない限り、待つのは死、のみ。

まして雷。

おおよそ秒速200㎞のそれを防ぐ、或いは避ける術など持ち合わせている筈もない。

降り注ぐ雷の行く先、その射手である百目タイタンの狙いは間違いなく第7分隊の構成員達。

だが……。

 

ごう、と、天を焼き尽くすような炎のヴェールが第7分隊の上空を遮ると、降り注ぐ雷槌は炎に乗るように逸れ、あらぬ場所へと落ちていく。

プラズマの一種である炎により大気中に稲妻の通り道を作り出す、俗に言うレーザー誘雷の原理を利用した対雷撃防御壁である。

その炎を操る者こそ、その場に突如として現れた助っ人。

 

「ブスギ、ブスギバァ!」

 

涼やかな少女の声で高らかに放たれる奇妙な笑い声。

笑い声の元は、朱と金に彩られた機械式のパワードスーツに身を包んだ戦士。

 

「おっと母国語が……へいへいへい! これが噂のブラックサタンの大幹部様のお力かぁ?! 随分随分生ぬるいじゃねーか! 生き返ってまでやることが発電所まがいとか、所詮はBADANの下部組織、みっともないたらありゃしねぇなぁ! そりゃー滅ぶわけだぜぇ! かーっかっかっかっか!」

 

そう叫びながら、後ろ手にハンドサインでその場に居る第7分隊に『三秒後』と伝える赤い戦士。

その意図に気付いた第7分隊が武器を構える。

一つ、二つ、三つ。

同時に降り注ぐ雷槌が収まり、炎の壁が晴れる。

狙いすました様に放たれたロケット砲の幾つかが黒いピラミッドに突き刺さり、その外壁を破壊していく。

 

「何だぁ、あの小娘は! 舐めやがってぇ! 撃てタイタン! あの生意気なのを焼き殺しちまえ! 奇械人ども! ぶっ殺せぇ!」

 

わらわらと樹海の中から、そして黒いピラミッドから現れる異形の戦士、奇械人。

BADANの手により魂無き傀儡として作り出された戦士たちではあるが、その戦力は強大。

赤い戦士、レッドイクサが居たとして、炎の壁が雷槌を防げたとして、黒いピラミッドを中心に展開する第7分隊には大きな被害が出るだろう。

 

「よし……総員抜剣、援護に回れ」

 

頭部装甲内部に仕込まれた通信機にレッドイクサ、グジルが何かを囁きかける。

それと同時、樹海の中を駆けていた奇械人達が次々と何者かに取りつかれ、或いは撃破されていく。

奇械人を貫き、切りつけているのは、十字を模した光剣、或いは銃。

夜闇に紛れるようにしているためにはっきりと見ることはできないだろうが、強化された視覚を持つ奇械人たちにはその姿がおぼろげに見えた。

いや、或いはそれは、搭載された光学迷彩では誤魔化しきれないフォトンストリームの黄色の輝きが故か。

全身を走る、或いは、頭部にχの字に走る光の帯を備えた、声無き意思無き暗殺者達。

ショッカーライダーのボディを解析して作られ、元の世界の赤心寺にて戦闘経験を積んだロボタフの戦闘AIをアレンジして制作された電脳を搭載され、ガワに省エネ型の量産型カイザギアを装着した機械戦士。

カイザ・ブートレグ部隊だ。

 

「散ッ」

 

号令と共に、カイザ・ブートレグ達が走り出す。

既にそのフォトンストリームの黄色い輝きは沈み、仄かに赤い輝きが走るのみ。

敵を仕留める瞬間にのみフォトンブラッドの圧縮率を上げる、ウルトラギアの技術を応用して搭載されたそれらは、純粋な戦闘者というよりも暗殺者としての働きに最適化されている。

フォトンストリームの上に被せられた光学迷彩搭載のマントは闇に紛れやすい赤の輝きを更に覆い隠す。

一度視認に成功したとして、闇夜の樹海の中で動き回りもすれば、奇械人とて容易に捉える事はできない。

無論、その視認性の低さ故に第7分隊との連携など取りようも無いのだが……。

 

(陽動としちゃ十分……かな? ジェネラルシャドウってのが出てこないのも不気味だけど)

 

無論、最初からグジルの狙いは第7分隊との連携でも救出でも共闘でもない。

この場を掻き乱し、目立ち、視線を集める事にこそあった。

第7分隊を助ける動きをしたのは次いで……というより、標的が多い方が相手の意識をこちらに向ける事ができるから、程度の話でしかない。

守る素振り、囮になる素振りこそ見せているが、守りきれないとなれば容赦なく切り捨てる事になるだろう。

降り注ぐ雷を反らしながら、今回のゲゲルのメインを担う、今は自分ひとりの相方である相手へと思いを馳せる。

次はどんな面白い玩具を持って帰ってくるのだろうか。

 

―――――――――――――――――――

 

第六感や第七感を持たない、いわゆる五感勢の方々には中々わからないだろうが、人間の延長線上にある改造人間はやはり、視覚情報を真っ先に頼りにしがちだ。

いかに強化された五感があろうとも、センサーの類を搭載していても、まずは見て、おかしい、と判断した後にそれ以外の機能で確認する。

故に、初歩的なものでも光学迷彩は有効に作用するし、注意を他所に向けられている間には余計に探知能力は鈍る。

グジルが注意を引いている間に、次の研究サンプルどもの確保に成功した。

破損したピラミッドの外側に転移し、抜き足差し足と忍び込めば、そこは奇械人の出来損ないの廃棄場。

BADAN派生組織の中でも強豪に数えられるブラックサタン、その奇械人ともなれば、出来損ないであってもサンプルとしては非常に優秀だ。

何しろ、そのパーツパーツは完全版の奇械人にも流用が可能なのだ。

 

廃棄場で蠢くそれらを念動力で引き上げ、そのまま関節毎に切断し、電波の類を受信する装置、或いは自壊装置の類を分解、パーツ単位に分けて、纏めて、ある程度の量になったら拠点に瞬間移動させる。

以下繰り返し。

数が揃えば種類色々、分解失敗してもそれほど痛くない、というのは良い事だ。

これに、樹海の中で撃破した完全版の残骸などを合わせていけば、奇械人の構造にも理解が及ぶというもの。

そして、目玉はなんと言ってもこれ。

仮面ライダーストロンガーの修理にも使える失敗作君だ。

 

そも魂が無い状態で、各地から集めた新たな素体から再生怪人を作り出す、というのであれば、素体の適正不足で失敗作になったこれらは魂が無い代わりに失敗作でない完全版になっても良さそうなものなのだが……。

不思議なものだと思う。

 

残念な事に、これの解析に時間を掛ける事はできない。

この修理キットを待っている破損状態の人が居る為、どうにか中枢部分だけでも届けなければならないのだ。

よって、先ずは、この奇怪人スパークを持って戦場から離れる。

人気の失せた静岡駅前のホテルの一室に備えた手術台だ。

これを乗せる。

ぴくぴく動いているので、まがい物の脳との接続を切り離す。

そして今から、タイムベント何枚かを併用し、分解と組み立てを繰り返し、理解せずとも元通り動くだけの複製を作る。

最悪、修理を必要としている人の自己修復機能が回復する程度で良いものとする。

では、レッツ分解。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

という間に、おおよそタイムベント三枚程の巻き戻しを経て、ただ分子構造を真似ただけのコピー奇械人スパークが完成した。

元が失敗作であるためか、これもまともに動かないのだが、コピー元と同じ反応を返しているので良しとする。

オリジナルを再び関節毎にバラし、これまた拠点に送る。

残ったコピーをバラし、とりあえずのユニット毎に腑分けしていく。

こうしてバラしていくと、元が奇械人とはわからなくなりそうだから不思議なものだ。

ある程度ばらしてしまえば税関もらくらく通るのではないだろうか。

これを風呂敷に纏め、再び戦場へ。

構造を完全に理解した訳ではないが、先のスパークと似た反応を戦場から探せば、不良品ではあるものの破損は少なかったスパークとは異なり、半ば機能を停止しかけているそれの反応を見つける事ができた。

 

イクサカリバーを連結剣状態にして、転移と同時に振り回す。

周辺を取り囲む、スクラップ同然の人にとどめを刺そうとする奇械人達の装甲を切りつけ、破損した部位に気を流し込み、爆破。

常人が扱える携行火器で殺せる強度なら、このようなものだ。

まして魂の無い傀儡など、という話。

 

と、爆発を背後にしながら着地すると、前方から銃弾。

当たると、俺はともかくイクサの装甲がどうにかなるかもしれない。

レイウルス・アクティアの盾を生成し、更に念動力の壁を貼る。

マシンガンアームから放たれた銃弾は、念動力の壁を破る事無く空中に静止。

油断ならないので止まっている間に分解して無力化する。

 

「こんばんは」

 

銃弾を放ってきた人に挨拶を入れる。

この戦場に似つかわしくない紳士的な挨拶だと思うのだが、目付きの悪いロン毛のナイスガイは未だにマシンガンを下ろしてくれない。

俺はほぼ毎回、俺に対する不幸な誤解から銃弾を放ってきた人は、使命感のある立派な人だと思って見逃しているのだが。

復讐心に囚われてる間はライダーじゃないとか言いながら、復讐者じゃなくなったら弱くなったな、みたいに言い出すレスバの達人はやっぱり駄目だな。

 

「お前は……本郷さん達が言っていた」

 

「どう言っていたかは気になりますが、はじめまして、RRKKのCEO兼喫茶店のマスター(兼新生ネオグロンギのン兼ヌ兼ラ)兼呪術師兼観光客兼研究者兼流しの奇械修理工のブラックイクサです。改造人間の修理キットは如何?」

 

ジャキ、と、銃口が更に上る。

蛮族め……。

という訳ではなく、背後から追加でやって来た奇械人に向けたものだろう。

だが、銃弾が放たれるより疾く、その奇械人の首が跳ぶ。

左右からカイザブレイガンのソードモードによって首を挟み斬られたのだ。

しゅた、と、存在を示すようにわざと足音を立ててその場に着地する二体のカイザ・ブートレグ。

 

「怪しいものではありません、などと口が裂けても言いませんが、さっさと直さなければそちらの方が死んでしまいますので、とりあえず、適当な場所で先に施術をさせて貰えればな、と、思う次第ですが」

 

それとも、都合よく修理キットと天才科学者が通りかかるのを待ちますか?

そう告げると、目付きの悪いロン毛のナイスガイ、風見志郎は、こちらを訝しげに睨みつけながら、しぶしぶといった様子でマシンガンアームの銃口を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 





ヒロイン編書くと言いつつ懲りない番外編
剣編でちょっとかわった展開書くのを予定しているのでちょっと時間掛かるかも
幕間をヒロインで書こうとすると途端にライダー関係なくなるしね……
その点番外編はライダー要素たっぷり
SPIRITSは平成に連載スタートしたので実質平成ライダーでは?

☆番外編の度に昭和ライダーディスをし始める謎の黒いパワードスーツマン
まず体色が怪しい、悪っぽい、こりゃライダーに非ずだね
タイミング的に静岡ストロンガー編と沖縄アマゾン編に分岐
が、タイミング的にストロンガー側で暗躍した後でも沖縄に間に合うと思うのでこちらを先に
四国?京都?
行って何か有効なサンプルが手に入るのかい?(イノセントな瞳)
今回リザルト
・ショッカーライダーボディのテクノロジーを手に入れた!
・無数の奇械人の失敗作のサンプルを手に入れた!
・奇械人スパーク(腑分け済み)を手に入れた!
・完全版奇械人の残骸を回収中……
・ダーザイン【風見志郎からの疑惑/1】【立花藤兵衛からの困惑/1】を取得
もう気分的には沖縄で少しだけでも古代インカの秘術に触れたいという気持ちになっている
ストロンガー修理したらそっこで帰りますよこいつ

☆一見してSPIRITSを助けている謎の赤いパワードスーツガール
声は可愛いし自称美少女でマスクを脱げば実際美少女だけど別にSPIRITSの人たちはそれほど助けたい訳ではないぞ
新ゲゲルは協力ありだけどレベル帯違いすぎると引率みたいでなぁ……
せめてちゃんとしたパワードスーツ着るか変身機能搭載してからにしてな!
不思議だ、あの仮面の戦士達はすごい技術力なのにこの人らの装備ちょっと雑……
協力関係に無いのかなぁ
警察みたいにアギトとか装甲服部隊とか導入すりゃいいのにな!
帰る時に鰻なり鮎なりも持ち帰りたい

☆ロン毛イケメンだけど後輩イビリっぽい描写多すぎひん?
気難しいキャラに見えるけど正直このキャラ付けは独自のSPIRITS風味強めというか
わかりやすい書き分けの為に手が加えられているのは仕方がない気もする
……SPIRITSのライダー全員原作特撮準拠の性格ならもっと上手いこと行ってた説ある

☆百目タイタンwith黒いピラミッド(叫ぶ!光る!デッドライオンスクラップバージョン付き)
雷攻撃も良いけど、無限のパワーとか言う割にストロンガー撃破の昼間から夜まで第7分隊を野放しにしてる
後に最大出力みたいなので一撃で全滅させている辺り、デッドライオンが驚くほどクソみたいな指示で攻撃させて遊んでいたせいで効率が下がっていた説
今のとこデッドライオンさんそれほど原作でも役立ってないんだよな……何なんだろうか
そも破損無し百目タイタンって時点で対ストロンガーなら雷より720万度とかいうやけくそみたいな温度のマグマ攻撃で正面から勝てる筈なんだけれどもどうなんですかね
元の割と狡猾な人格が残っていれば普通にマグマ攻撃で突撃ストロンガー迎撃してライダー側一枚落ちにできたろうに

☆デッドライオン
なんとなく生きてる人
原作最新話だとどこに居るんだっけ……?
原作の原作では死に際が描写されていないらしいが、後にディアゴスティーニの図鑑か何かで死に際が説明されたとかされなかったとか
そんな雑な処理の方法ある?
ライオンは死んだかわかりませんがブラックサタンは滅んだので問題ありません

☆おやっさん
この人がライダーたちの心の支えになっていたのはわかるんだけど
SPIRITSの過去編で本郷さんとしていた話に関してはちょっと言いたいことがたくさんあるのでこの番外編書いてるってとこはある
けど過去回想での話だから言及できるかなぁ……

☆カイザ・ブートレグ
光学迷彩マント、フォトンブラッド圧縮率調整機能など色々盛りだくさん
が、一番の目玉はショッカーライダーをベースにした素体の方
この素体の馬鹿力のおかげで低出力の量産カイザギアでも戦えている感はある
神経を人工神経に置き換えたボディなので赤心少林拳は殆ど普通の格闘技の延長でしか使えない
また、作中書いた通り、量産カイザギアはカイザギアと銘打ってゃいるが実質中村くんと猛士に分けたウルトラギアの派生作

次回こそは本編の幕間回
というか、女子会?
主人公が好意を寄せている相手であるなごみさんとそれを知りながら主人公に想いを寄せる難波さん、そしてそれを草生やしながら見守るグジルとジル
を、一箇所に纏めて色々やらせたい
という欲望
こういう不純な人間関係を持つ不純な主人公を書いていると
ビルドダイバーズ・リライズのヒロト君の様な一途でまっすぐで十数話にして見せた現在の笑顔が可愛らしく
20話の22分20秒くらい(ニコニコdアニメストア準拠)の微かに照れながら少し猫背になる様子がとてもグヘヘな主人公が恋しくなる時もあるけれど
思えばそんな主人公書いたこともなければ書ける気がしないので
ピュアでかわいい主人公が見たいみんなは今からでも決して遅くはないのでガンダムビルドダイバーズ・リライズを履修しよう!
白状すると無印ダイバーズは二話か三話くらいで切ったけど、これはこれだけでも十分に楽しめる傑作だぞ!
明らかに思いの強さで言えばイブちゃんに勝てないのに決して負けヒロインに見えない確かな絆が感じられる貴重な幼馴染ヒロインが見られるのもとてもポイントが高いぞ!
最初は完全寄せ集めだったチームが成長してく様は最高なんじゃ!
見よう!
見ろ(豹変)
そして気が向いたら、このSSの続きも気長にお待ちいただけたらいいなと思いました

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