オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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109 大解剖! 超能力戦士!

人間に作用する薬を作るのであれば、当然ながら人間を使った治験をするのが一番手っ取り早く結果を出すことができる。

当然、改造人間を作るための実験というのであれば人間以外の動物を使うよりも人間を使ったほうが結果は出る。

当然の話で、同じ薬でも人間と鼠では異なる作用が出るし、人間と犬でも違う結果が出るし、なんなら遺伝子的には極めて近い筈の猿の類を使っても人間とは別の反応が出る。

 

この問題を解決する、迂遠かつ直接的な方法として将来的に提案されるのが遺伝子改造した実験用動物で、例えば猿の遺伝子を改造して人間との差異を埋めるというもの。

遺伝子的には殆ど人間と変わりなく、しかし見た目にそれとわかる程度に人間と違う要素を残す事で、書面上は動物実験でありながら実質直接人体実験をおこなうことができる、という画期的な代物だった。

もっとも、この技術はしっかりと『これは犬だから!』『これは猫だから!』という言い訳で倫理的にアウトなペットが作られそうになった事でバッシングを浴び、俺が知る限りでは使われる事はなくなった。

これが後世に言う創作物上の『四つ耳』というものの難しい扱いに繋がっていくのだが……

 

作られそうになったのか作られたのか、使われなくなったのかそういう事にしてあったのか、それは今となっては確認のしようも無いし、この俺には関わりのない事ではある。

しかし人間に作用する技術を追求しようと思ったなら、人体実験というのは結果を出すのには必要不可欠とは言わないが……言わないが……いや、やはり必要不可欠と言える。

薬を作るのにいつまでもラットやモルモットを使ってはいられず、結局は金を払って治験をしたりするのを見ればわかるように、どう足掻いたところで最終的に人間に施して危険のないものなのか、というのは、今の所人間を使って見ないことにはわからない。

 

実のところを言えば、赤子相当の人体を作り出すのは容易い。

そも必要なのが脳である以上は最悪水槽の脳状態で良い訳で、それこそ培養に使うポッドに、俺の体細胞から複製した俺の誕生当時の頭脳を浮かべてそれで実験すれば良い。

が、ここで問題となるのは、脳開発が如何なる作用を持って人間に新たな進化を齎すのか、というものだ。

 

例えば古い学説では人間の脳は普段は九割使わずに過ごしている、などというものがあるが、これは誤り。

既に人間の脳はその全領域に何らかの機能が割り振られていることが証明されている。

無論、その機能を上手く使えるか否か、というのは個人差があるが……。

それでも、普段使っていない部分を目覚めさせて超能力を得る、というのは無理がある話だ。

 

俺の知識にある脳の開発法などはこことは厳密には違う世界で提唱されたものなので、そも人間の構造が細かい所で違っている可能性はある。

だが、実際にセルフ脳開発で超能力を発現してしまった以上、この世界の人間には超能力を発現できるだけの素質がある、という証明になってしまっている。

それこそ、実際の資料として信憑性が確保されている猛士の資料などにも古代の原始的な超能力に関する記述があるし、近い年代ではそれこそアギトがそれに当たる。

昭和の時代ともなると本当に玉石混交というか、ショウビズの為のトリックから、原理を説明しきれない本物まで居る。

昭和の戦士で言えばラグビーの人などがそれに当たるし、なんなら戦士ではない普通の超能力者が彼らに手を貸していた事例も多く存在する。

 

この中で、原理を解明するのに一番貢献した事例と言えば、やはりアギトだろうか。

言ってしまえば、アギトの変身体というのは超能力の塊だ。

アギトになる前に超能力を使えていた個体が、アギト化と共にその超能力を失うのは、超能力をアギトの力として使う癖が付いてしまう為だろう。

恐らくだが、古いサイオニック戦士達の様に、長期間に渡って日常的に超能力を使いこなしている個体であれば、アギト化の後にもアギト化とは別に超能力を行使することができる筈だ。

まぁ、これは、俺自身がそうだったから、という前提ありきの説ではあるのだが……。

 

また、この超能力というものの根源を解き明かすにあたって参考になった赤心少林拳を語らない訳には行かないだろう。

彼らが唱える『気』なる概念は、何も特別な力を扱う為のものではない。

あれらは人間が生来備える生理作用を気として捕らえている節がある。

気の制御を学ぶ事で精神や体調を整えたり、あるいは攻撃の殺傷力を増したり。

似たような事はそれこそ近代医療でも行われているし、基礎的な部分は小学校の体育の授業で知らず知らずの内に学んでいるようなものだ。

 

大きく息を吸い込んでゆっくりと吐き出す。

それだけで体がリラックスして体調も多少良くなる。

これを赤心少林拳では気の作用としている。

人体工学的にも理にかなっている。

 

これは別に、気というのが迷信というわけでも、現代医学が気に対して無理解という訳でもなく、どちらもが正しい解釈をしているに過ぎない。

そしてこれが、超能力者と非超能力者の違いと言っても間違いではない。

アギトの力が超能力の塊であるのと同じ様に、人間の体もまた超能力を無自覚的に作用させているのだ。

 

証拠となる事象を紹介しよう。

そう、種族・一条などと呼ばれていた一条さんだ。

或いは、明らかに怪人の類から死ぬような攻撃を受けながら、何故か大した怪我も無く済んでいる諸々の人たち。

もしくは、常人の数倍から十数倍の力を持つ量産型の簡易改造人間である戦闘員なる雑兵を相手に互角以上の大立ち回りを演じてみせた昭和の戦士のサポーター達。

例えば攻撃の瞬間、相手の攻撃に反応して反射的に体が緊張状態になり、結果的に損傷を軽減する、或いは脱力する事により衝撃を逃がす。

これらは普段肉体の動作を生理機能と重なるように補助する超能力が、自らの生存の為に能動的に動いた結果でもあるのだ。

 

考えてもみて欲しい。

現代において、人間のもつ機能はその殆どが解明され、魂などが無くとも人間という分子機械が完全に成り立つことがほぼ証明されている。

所謂、生の始まりは化学反応に過ぎず、人間存在はただの記憶情報の影に過ぎず、精神は神経細胞の火花に過ぎない、という話だ。

だが、だが、だが。

この世界の人間には確実に魂が存在するのだ。

心、記憶、人格なるものが全て脳機能の中で説明できるというのであれば、この魂なる謎のエネルギー体は人間の中で如何なる役目を持っているのか。

 

或いは!

これこそ、闇のテオスすら見抜けなかった、火のエル、或いは光のテオスの置き土産!

全人類に最初から埋め込まれていた、いずれ神にも至る超能の種、神秘の輝きというものなのではないだろうか!

 

そして、これらの力が能動的に動き出す瞬間というのは、生死の境、或いは、戦いの中。

死に瀕するが故にそこから逃れようとする生存本能に起因する。

本能的な、というが、その作用すら、生き物は脳を軸にして行う。

転じて、それは人の意思によって発現するものなのだ。

 

大それた話になるのだが、これこそ正しく、昭和の戦士達……いや、仮面ライダーと呼ばれる者たちが勝利を重ねてきた原因という可能性もある。

脳改造を施されていない、死を恐れぬ戦士ではなく、自らが失われる事を素直に恐れながら、それでも立ち向かう、機械の体を操る人間の戦士だからこそ、彼らはスペック以上の力を発揮できたのではないだろうか。

 

翻って、それら超常の力を意図的に使えるようになったのが超能力者という事になる。

では、それを意図的に使えるものとそうでないものの違いとは何か。

それは、認識の違い、であると俺は思う。

超能力者が超能力者を増やせないのもここに原因がある。

 

例えば、最近俺が運営している喫茶店で働くホモ。

こいつは本来予知を主体とした超能力者であるが、予知の発動には現状、占いという工程を踏まなければならない。

まぁ、この占いというのも、実際に実態を確認してみれば適当なもので……。

中には、電話で会話をしている最中に手元のペンでメモに書いていた内容が結果的に占いになっていた、なんてものから、酷いものでは競馬場の場内で行う、馬の毛並み占いなどという碌でもないものまで存在している。

 

つまり、この占いというのは呪術的なものでもなんでもなく、占いをした、という工程こそが大事であり、その工程を経る事で、予知という結果が生じるものなのだ。

当然、このホモは人に占いの技術を教授するなんて真似はできない。

通常の、それっぽい誰にでも当てはまりそうな事を言って人を納得させる技術ならば教える事はできるらしいのだが……。

どちらかと言えば、占った結果を人に叩きつけるのが楽しいのではないか、という節があるので、この技術はただの聞きかじりである可能性まである。

 

このホモは、占いという工程を行う事で予知が発動する、という事を自覚し、それを総合的に『占い』であると称している。

しかし、何故占いという工程が必要か、という点は一切理解できていないし説明もできない。

何故なら、このホモにとっては予知とはそういうものだからだ。

右腕を上げてくれ、と言われて右腕を上げたとして、その右腕はどうやって上げているのですか、と、説明を求められるようなものだ。

右腕を上げるには、右腕を上げれば良い。

それ以上の説明は中々に苦難を伴うだろう。

 

要するに、できると思っているからできるのだ。

常識に囚われてはいけないのです、ともいうし。

絶対に許さないよ! とも言う。

言わない。

 

だから、常識を持たない赤子から開発を始めなければならないし、そこから開発を始めれば高確率で超能力が発現する。

無論、例外というものも存在する。

動物実験、それこそ高い知能を持つイルカですら無能力者のままという例があった以上、これが完璧な理論という訳ではない。

それこそ、高い超能力の発現率にしても多少の薬物などを使っているので、脳を通常の状態から教育だけで超能力に覚醒させるのは難しいだろう。

それこそ、俺の場合は元から結構な素質があった、という事になってしまう。

 

そして、俺の脳を赤子の状態で複製し、超能力を覚醒する前の状態で動かしても、広く超能力を覚醒させる為の実験としては大して有用な結果をもたらさない。

何しろ、一定の開発で目覚めるのが確定してしまっているからだ。

 

そこで、都合が良いのが、グジルという訳だ。

ジルとグジルが普段は脳を共有しており、仮にジルがグジルの肉体を製造して分身したとしても、そのどちらもがアギトの力を使っての変身を行えているというのも都合が良い。

ある意味、アギトはその時点で超能力者でもある。

完全に目覚めていない状態から脳を開発するよりもハードルは低い。

それこそ、赤子にせずとも、アギトに変身せずにアギトとしての異能を行使するところから始めれば、労せずして超能力の行使が可能となるだろう。

だが、幸いにして、ジルの作り出すグジルの肉体は基本的に変幻自在である。

動かしやすいのが元と同じサイズ……普段から使っているジルの肉体というだけで、高身長のお姉さんボディになることも可能だ。

無論、その逆も可能という事になる。

 

このグジル赤子フォームはもちろん普通の赤子とは条件が異なるが、普段のグジルともまた条件が異なる。

脳細胞が誕生直後の極めて新鮮な状態であるため、多量の情報を処理する為に頻繁に熱が上昇し、また、生理作用に対するこらえが効かず感情を爆発させやすい。

元の記憶を保持していたとしても、理性によるブレーキがかかりにくい。

つまり、言われたことを素直に受け取りやすい為、新たな常識を植え込みやすいのだ。

それこそ、この状態で新たに三本目の腕などを生やしてしまえば、それをスムーズに動かすようにもできるだろう。

というか、念動力などは正しくその様なものだ。

その証拠に、ジルが口パクでママと呼ぶように伝えていると、グジルはしばらくしてジルの事をママと呼ぶようになった。

超能力を得て元に戻した後にも後遺症が残ると問題があるのでやめさせたが。

 

これが成功すれば、赤子を超能力者として覚醒させるだけに飽き足らず、成人を若返らせる技術さえ手に入れてしまえば、既にある程度成長した大人すら超能力者に覚醒させることができるかもしれない。

リアル赤子を使うか、若返りという魅力的な技術と並行して超能力を覚醒させるか、どちらが魅力的に映るかは言うまでもないだろう。

そして、それが普及さえしてしまえば、我が子も同じ様に、という風に、自然と超能力教育が広まっていく、という寸法な訳だ。

その過程で目覚めることができなかった子供達がどういう扱いを受けるかは、未来の優れた知見を持つ人達に一任させてもらう。

 

また、グジルとジルは前述の通り脳味噌を共有している。

グジルが超能力に覚醒して、その後に仮の肉体を捨ててジルの体に戻れば、同じ脳を共有するジルもまた超能力が使えるようになる。

正に一石二鳥という訳だ。

 

―――――――――――――――――――

 

「つまり……ジルちゃんが喋れるようになる?」

 

「大体そんなとこかな」

 

首を傾げる難波さんに頷く。

少なくとも、表向きかつ真っ先に効果が現れるのはそれだろう。

全人類のアギト化、の前段階、全人類を超能力者に、という計画の序盤も序盤の基礎作りの段階でしかない。

今回のグジルを使った実験の結果、例えば今現在アギトとして活動しながらも超能力を個別に行使できないタイプの連中に超能力を覚えさせる事は可能になるかもしれない。

が、少なくとも今の俺の立場でその技術を広く流布することは難しい。

技術として蓄積しておくに越したことはないので無駄にはならないし、何よりジルとの意思疎通がよりスムーズになるのは間違いなくプラスだろう。

 

『まぁ、私は元からジルと脳内で会話出来てたし、それを無線式にして、ジル以外ともできるようにしただけだかんな』

 

クッションで作った簡易のいじこの中から、グジルが念話で語りかけてくる。

 

『実際、普及したら便利になると思うぜ。赤ん坊が泣いてる時に何がしてほしいかわかんない親ってのも居るらしいし、あー……』

 

念話の最後の方で恍惚とした声が交じる。

見れば、いじこの中の赤子グジルも心なしか顔が緩んでいるのが見て取れた。

 

「かわいい……グジルちゃんなのに」

 

『そりゃ私は元から可愛いし。ジル、ジルー、おしめー』

 

どうやらまだ個別に念話を送るのが難しいのか、他に聞かれても不都合がないからか、念話で叫ぶようにしてジルを呼ぶグジル。

ぱたぱたとスリッパを鳴らしながらやってきたジルがグジルのおしめを交換していく。

それほど回数を重ねた訳でもないのに実に手慣れたものだ。

 

『ぼにうしか飲んでないのにうんちが出るの不思議だよな。つぶつぶ混じってるし』

 

「つぶつぶは脂肪分の多い母乳を飲むと出やすいらしいな。粉ミルクとかだと出にくいらしい」

 

「脂肪分かあ……」

 

脂肪分という言葉に反応し、難波さんがジルの胸元に視線を寄せる。

そういう方面に関しては造詣が深いわけでないからわからないけど、胸の大きさと脂肪分の多さは関係ないと思うぞ難波さん。

体内の血液を変換して母乳にしている訳だから、どちらかと言えば母体の栄養状態に左右されるんじゃないだろうか。

 

「あと、いちいちジルを呼ばんでもおむつくらいは俺が替えるぞ?」

 

既に念動力でも素手でも問題なく、一連の赤子の世話は問題なくこなせる程度には学習しているのだ。

 

『いや、せっかくだからこの機会にジルには赤ん坊の世話の基礎だけでも学んで貰おうかなって、将来的に必要だろうし』

 

「もう殆ど完璧に見えるが」

 

『……ていうのは建前で、実はこういう時に呼ばないとひっそりとむくれてるんだよあいつ』

 

「……もう少し新しい能力が生えないか経過を観察したら元の年齢に戻す予定なんだけど」

 

『そこは……まぁ、納得してくれるだろ、流石に』

 

「あの、グジルちゃん、私もちょっと練習させて貰えないかなー……なんて」

 

そろそろと手を挙げる難波さん。

赤ん坊の世話を年下の友人が練習しているとなれば、触発される程度には難波さんは勤勉なところがある。

恐る恐る、といった風に提案をしてみた難波さんに対し、いじこの中で横になったグジルが笑う。

無邪気な笑みだ。

が、念話で何らかの意思を伝えてくる事はない。

きゃっきゃとひとしきり笑った後、笑うという動作で体力を使い果たしたのか、ゆっくりと瞼を閉じて、そのまま寝息を立て始めてしまった。

 

『草ぁ……』

 

「スヤァ……みたいなノリで言われてもわかんないよグジルちゃん!グジ、痛っ」

 

グジルの眠るいじこを小さく揺する難波さんの頭に、すこん、と、使用済みのおむつを捨ててきたジルが御盆を縦に落とした。

基本的にジルは難波さんにかなり懐いており、よほどのことが無い限り攻撃行動には移らない筈なのだが……。

これが母性というものなのだろう。

成長目覚ましくて俺は嬉しい。

ごめんごめんとジルに謝った難波さんは、眠る赤子グジルの頬を触れるか触れないか程度の加減で突く。

 

「なんかグジルちゃん、本当に赤ちゃんになっちゃったみたい」

 

「物理的には完全に赤ちゃんだからね」

 

アギト化はできるが、その場合はなんというか……特殊な形態になる。

本体が赤ん坊であるが故か、超能力による体積の水増しも難しいのか、やや小さめのSDライダーのきぐるみの様になるのだ。

シルエットはガチャピンさんに近い。

また、脳細胞まで完全に赤子のそれに変えてしまったからか、睡眠時間も赤子のそれに準じたものになっている。

因みに赤子化脳開発実験を始めてから今日までの間に自宅に訪れた仲村君は『どこから攫ってきた?』などと失礼な事を言ってきたが、モーフィングパワーによる肉体形成に関する部分を抜きにして説明すると、『俺の頭では処理しきれん』と、とりあえず口外もしないし深くも考えないでおくことを約束してくれた。

持つべきものは友だな……。

 

しばし、難波さんが不思議そうな顔でグジルの顔の前で指を揺らしたり鼻先を掠めたり、それにグジルが眠ったままムズがって、ジルが難波さんに甘アームロックを決めたりして時が過ぎる。

赤子グジルへの投薬は少し前にしたばかりで、既に念動力と念話というとりあえずあって困らない超能力が生えきったところなので、急いで訓練を施す必要もない。

やることも無い、なんとも不思議な時間だが、不思議と不快ではない。

そういえば、

 

「ごめんね難波さん、せっかく来てくれたのに、こんな訳で今日は外には出かけられないわ」

 

「い、いいよぅ別に。そりゃ、まさかこんな事してるとは思わなかったけど……」

 

せっかく遊びに来てくれたのに、何のお構いもできてないのは流石に申し訳ない。

ボリュームを小さくしてテレビで映画でも流すべきか。

上京してからグジルが撮りためていた、午後ローのモンスター・パニックで大丈夫だろうか。

と、そんな事を思っていると、ジルが何か琥珀色の瓶を持ってきた。

 

『おあえあああうお』

 

お酒ならあるよ……か。

 

「なるほど」

 

「なるほどじゃないからね?私達未成年だからね?」

 

「今起きてるメンツの中では難波さんが一番言っちゃいけないセリフだと思うよ」

 

「うぅっ」

 

まぁ、あの酒は間違いなくグジルの持ち物ではあるのだろうけども。

あいつも、自分で普通に飲む酒と料理に使う酒とで結構色々揃えてるから、どれが飲んで良いやつかわからんのよな……。

 

「大体、それグジルちゃんのでしょ? それ高い奴だし、空にしちゃったら絶対後で怒るやつだよ……」

 

「高いやつなの?」

 

「そのぶん美味しいんだけどね」

 

そもそもああいう類の酒って、一回開けたら一度で飲み干すものなのだろうか。

酒に関しては飲めば魔石の戦士でも行動に支障が出ないレベルでほろ酔いにはなれるけど、態々危機管理能力の低い状態に好んでなりたくもないので、そんなに経験が無い。

酔いに関しては意識的にアルコールを分解してしまえば問題はないのだけど、飲み物として見ると高いしなぁ……。

 

「まぁ、飲み干さなけりゃ問題ないでしょ。難波さんは普段どうやって飲むの?」

 

「えっと、普通は水とか氷で薄めるんだって」

 

「難波さんはどうやって飲むの?」

 

「えっと……ジョッキに注いで、ちょっとずつ」

 

この世界ではウイスキーをストレートでジョッキに注いで飲む文化があるのか……。

金が掛かりそうな趣味だなぁ。

 

「お酒代とか大丈夫? なんならバイト先紹介するけど」

 

「自分で買ったりはしないから!」

 

一番たちが悪い飲み方では?

などと騒ぎながら、つまみはどうするか、と考えていると、呼び鈴が鳴らされた。

ジルが酒で両手が塞がっているので、一番手隙の俺がインターホンを確認。

 

「あ、なごみさん」

 

カメラに写ったなごみさんがヒラヒラと手を振っている。

そのまま玄関まで出向き開けると、その手には紙袋が下がっていた。

 

「いらっしゃい。どうしたんです、そっちから来るなんて珍しい」

 

「ん……最近、色々とあっちこっち行ってたから、そのお土産。干物とかばっかりだけど、お菓子もあるから一緒にどう?って思ったんだけど」

 

「いいですよ、上がって下さい」

 

「良いの?ほら、他にお客さんが来てるなら」

 

「大丈夫ですって、ほらほら」

 

なごみさんの手を引いて家の中に引き込む。

なごみさんも抵抗する素振りも無いし、たぶん、お酒を飲むなら人はいっぱい居た方が良いだろう。

そういう作法は詳しくないが、飲み会常連らしい難波さんが詳しいところは知っている筈だ。

 

「難波さーん、そのお酒のおつまみって干物とかお菓子で大丈夫かなー」

 

「え、チョコとかアイスとか良いと思うけど、しょっぱいのもそれはそれ、で……」

 

なごみさんを連れて行くと、難波さんの視線がなごみさんに突き刺さり、その体が緩やかに止まる。

対象的に、なごみさんは室内全域を見回し、最初にいじことその中のグジルを、次に酒瓶を手にしたジルを、最後にグラスの用意をしている難波さんへと視線を向け、一言。

 

「………………ちょっと、全員一旦座りましょうか」

 

にっこりとした笑顔で告げられた一言に、俺達は観念してその場に座り、久しぶりに聞く常識的な説教を、新鮮な気持ちで受け止めるのであった。

受け止めた上で酒盛りはしたし、その半ばで酒の匂いを嗅ぎつけて目を覚ましたグジルが酒とミルクを欲しがって泣き出したりしたのだが。

まぁ、偶にはこういう日があっても良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 






女子会を書けるだけの技量が無い事を書こうとした段階で思い出す
というか、深夜のテンションで超能力に関して書いてたらそれだけで想定文字数の半分以上になったので女子会は諦めた
諦めたらとりあえず召喚しておいた難波さんが酒と絡み始めたので結果的に半ば女子会が始まりそうな展開にもっていけたからこれで勘弁しておくれ
そも男の主人公が居る時点で純正の女子会とか無理じゃし……

☆超能力が一般に広く普及すれば自然と戦士が増えるという未来を見据える飲み会素人
でも超能力のメカニズムと同じくらい酒に関しても詳しくないけど、流石にウイスキーを飲む器がジョッキじゃない事は知っている
コニャックには安物のキャンディをあわせるくらいしか知らない
酒に関しては難波さんが詳しいからそこから教えてもらえれば良いし、自分は超能力者のメカニズムに関して詳しくなっていこう
という決意
肉体関係のある異性の友人とあこがれのお姉さんを平気で同じ空間の中に引きずり込むので、まずは人間心理から学んでいくべきではないだろうか
でも戦いを続ける上で真っ先に邪魔になるのもまた人の心なのだ
難しいね

☆私を取り上げろ!
でもおっぱいは取り上げるな
酒ももとの体に戻ったらのむからとりあげるな
取り上げるなって言ってるのに……
泣くぞ!
泣いた
赤子の無力さを知る事で守護らなければという精神を獲得する

☆言葉が使えたらママでちゅよーくらいは言ってる
そろそろ母音だけのセリフが面倒なので念話勢になる
個性が消えそうだが、それはそれで喋れなかった時の癖でわかりやすい単語とかを使って端的な会話をするという個性が残るからいいかなって

☆難波草ァ……
なお、年代で考えると草に派生する前のw辺りが最新かと思われる
つまり笑うという意味で草をこの時点で使うグジルは限定的な予知能力を備えている可能性がある
難波さんは肝臓が常人のそれよりも遥かに強化されている可能性がある
お酒の味は覚えてきたけど別に自分で買うほどじゃないかなぁ……
という考えではあるが、飲みに誘われて奢りっていうならまぁ色々頼んで比べるのも楽しいかなー
という考え
味見(ビールのジョッキ単位)
酒の種類ごとに器の違いに理由があるのは知ってるけど、ジョッキで飲んでも問題無いなんらジョッキで良くない?
好きな人の好きな人が来て気まずくなったのでこの後めっちゃ飲むけど悪酔いはできないのでなごみさんに絡み酒する

☆変なタイミングで来ちゃったなーと説教後に後悔するなごみさん
マッドアーク大量発生で各地にある小規模な素晴らしき青空の会へと出張し、最新型のイクサのデータを使った簡易量産型の計画に少し関わっていた
その関係で色々とお土産を貰ったから純粋におすそ分けに来ただけ
アパートの位置が近い為気軽に来れるけど、難波さんを気遣って自分から来ることはそんなに無い
来ることはそんなに無いけど、そのせいで主人公が自宅に結構来る事に関してはそんなに拒否しない
未成年なのに飲酒とか駄目でしょ!
という説教をしたのにその後の酒盛りに参加してしまった辺り、いい加減押しに弱くなってるのは確定的に明らか

☆スルースキル準二級、戦闘スキル三級、情の厚さ一級、精神的頼りがい三級
合計して九級くらいの総合力を誇るのが仲村くん
呪術とかあるし、人を若返らせる秘術とかがどっかにあってもそんなにおかしくはないだろう……
という自己暗示に優れる
自分がそれほど突出して優秀という訳ではないという自覚があるからか、理解できないものは記憶に留めながらも気にせずにそれ以外の行動を取れるという特技である
次回にメイン回を貰ってそこを幕間の締めとするかも
他組織の構成員でありある程度主人公から信頼され技術と装備を受け渡されているという特異な立場なので今後もちょくちょく出番がある



ヒロインの扱いに関しては色々と難しいところがあって
ジルグジルは戦闘力あるし戦いへの忌避感も無く倫理観はほぼ主人公と同等だから予備戦力で良し
難波さんは実質アギト編のスポットヒロインみたいものなのでメインに関わらなくても蚊帳の外に置かれていたって事で良し
なごみさんは実際半落ちみたいな形だけどメインエピはキバになるのかどうかも不明……
話が思いつかない時にヒロインを使って話を作れるから便利ととるか
ヒロインが増える=登場人物が増えて行動処理に困ると取るか
まぁメインストーリー進めてる時は居ても居なくても気にしないで貰えると助かるかなと思いました
そも主人公に難波さんを前線にわざわざ押し出す理由が一切無いしね


次回、謎の秘密組織猛士との接触、装甲服の開発者編
次も予定は未定なので、気長にお待ち下さい

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