オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

117 / 206
112 UNDEAD ACTION

知っているのと知っていないのではできることが大きく異なる。

もしも以前の俺が、仮面ライダーというコンテンツに欠片の興味も示さない人間であったのなら、今ほど上手いこと生きていく事はできなかっただろう。

それこそ、未確認の事件の時に父さんが殉職していた可能性もある。

……最近はその可能性は実はかなり低かったのではないか、という疑惑も浮かんできたのだが、それはおいておくとして。

 

俺にそれらの知識が無ければ、グジルは単純に爆死していて、ジルは生まれず、難波さんとは関わりも無く、或いはギルスとして不幸な死を迎えていたか。

俺にしたところで、マラークの超能力者狩りであっけなく死んでいた可能性だってある。

なごみさんはライダーバトルが行われる裏で呆気なくファンガイアの夜食になって食い殺されていただろうし、仲村くんにしても俺が変身用デバイスを渡していなければ既に死んでいただろう。

技術供与が無い警察の装甲服部隊はG3をベースにしたG5が導入されたかどうか、くらいのレベルにとどまり、アギト部隊など無く、或いは一条さんだって今頃人の形を保てていたかわかったものではない。

 

プロトアークルを手に入れ戦い続ける中で、俺が主軸として起こした変化はこの程度のものだろう。

これも、俺がこの世界に纏わる知識を多少なり持っていたからこそ起こせた変化だ。

 

知識は力だ。

そして、力というものは常に正しい形で振るえるというものでもない。

更に言えば、俺の知識というのも必ずしも当てになるとは限らない。

 

リント側にクウガが二人居た場合、ダグバがどういう挙動をするかなんて知らなかった。

アークルとゲドルード、魔石のベルトに関わるメカニズムなど知るよしもなく。

マラークを初めとした天使のオルフェノクを利用したコンティニュー制度など想像すらできず。

エルロードが自力でアギトもどきに化けたり、テオスがいきなり人間殲滅に走るなど考えもしない。

ホモが占い師からアギトになりオーディンデッキを持ってくるなんて予想できる訳もない。

アークオルフェノクを生かさず殺さず軟禁し続けるとオルフェノクという種族自体がバグってマッドアークが生えてくるなんてイレギュラーも良いところだ。

 

だが、これは当たり前の話だ。

それはまかり間違っても『俺という異分子が紛れ込んだ時点で……』などという自意識過剰かつ自己評価が異様に高い、まるで自分がガリィばりのカルマ戦士であると言わんばかりのナルシー入った話ではない。

 

ここは、俺の知る要素が多くある世界ではあるが、俺の知るどの世界でもない。

クウガの世界ではない。

アギトの世界でもない。

龍騎の世界でも、ファイズの世界でも、ましてブレイドの世界でも、響鬼、カブト、電王、キバ……どれも完全な形で当てはまる事は無い。

或いは、ディケイドにおけるネガの世界の様な場所である可能性はあるが……。

ディケイドの世界だったとしたら余計に事前知識など歯糞ほどにも役立たないだろう。

 

俺の知る、或いは知らない、無数の要素が混じり合った世界だ。

だからこそ成り立つものも無数にある。

自画自賛になるが、俺もその一つになりつつあるだろう。

複数の戦士の力を行使する戦士はまぁまぁ居るが、根本的に複数の変身システムを混合して使用している、というのは珍しい方だと自負している。

交路、交わる路、という名前に恥じない戦士になれているのではないだろうか。

 

或いは、この試作型ゼクターもそうだ。

渋谷地下から盗み出した研究資料を独自に練り直し、他所の技術で補える部分は他所の技術で補填して、結果的には見事にクロックアップシステムを再現するに至った。

ここが仮にワームが蔓延る()()の世界だとしたら、猛士やお師さんから提供された呪術に関する技術を織り込んでゼクターを一足先に完成させる事などできなかっただろう。

 

そして、恐らくこの手の、クロスオーバー的な状況が初めて適応された部分が、この地球なのだろう。

無論、他の惑星でも似たような事は起きているのだろうがそれは知らない。

できればどこか観測外の外宇宙とかでフォッグとメガヘクスとブラッド族が纏めてかち合って全員共倒れして跡形もなく消滅していてくれ、あるいは元から存在しないでくれ、とも思うのだが、ワームとネイティブがピンポイントで地球に落着している時点で望み薄だろう。

 

閑話休題。

 

過去の地球の歴史に、俺の知る連中が全員存在していたのなら、どれほどのカオスになるだろうか。

それらが同時に存在していた、というだけでもだいぶ混沌とした状況だっただろう。

まさに実験室のフラスコ、さもなければ魔女がかき混ぜる大釜か、呪術師の作った蠱毒の壺か。

 

俺は最初、この地球の全ての生命の起源はテオスにあるものと思った。

アンデッドなどもマラークの亜種か、動物種のアギト化した様な存在か何かではないか、程度の考えだった。

が、後にゴルゴムが存在したという情報を得た時点でこれは通用しなくなる。

テオス起源として考えると、人類はだいたい他の生物と同時に制作されたという事になるが、ゴルゴムは人類発生よりもはるか以前から地球を支配していた組織だ。

 

少なくとも近年、ゴルゴムが騒動を起こしたらしき痕跡、二人の創世王が争ったらしい形跡は見て取れる。

テオスと正面切って対抗できるほどの出力を持つ戦力があったかは不明だが、少なくとも、テオスの裏をかくくらいの事はできたのではないだろうか。

テオスにとって、現地組織……即ち、自分が制作に関わっていない生き物が興味の範囲外で、ゴルゴムがどう動こうが知ったことではない、みたいな考えで無ければ、の話ではあるが。

 

ゴルゴムと脱走者であるブラックさんの戦いの記録(シャドームーンが俺の知識とは違う挙動をしている可能性は非常に高いというか確実に知らない動きをしているが、これは調べようも無いので置いておく)が殆ど残されていない為に、確実とは言えないが……少なくとも、三万年前の皆既日食の時点で、剣聖ビルゲニア、及びそれと敵対した三神官は存在したとしよう。

まず、前提として、ビルゲニアは皆既日食の生まれではあるが、5万年周期の皆既日食の生まれで無かった為に創世王候補の証でもある賢者の石を与えられなかった。

そしてビルゲニアは古代魚ビルケニアの大怪人である。

古代魚ビルケニアが生息していた時期は三万年前どころの話ではなく、大体四億年ほど前まで遡らなければならない。

 

何故、たったの三万年前に、四億年前に滅んだ古代魚が元となる怪人が生まれていたのか。

滅んだ筈の種族、その強化体とも言える戦闘ユニットを製造するシステム、覚えがないだろうか。

そう、ねじれこんにゃくこと、統制者のバトルファイト運営ユニットだ。

ここを疑い出すと、実はアンデッドが発生するシステムはゴルゴムの怪人の誕生と密接に関わってくるのではないか、という疑いも出てくるのだが……。

 

これはもう考えなくても良いだろう。

何しろ既にゴルゴムは滅んでいるのだ。

色々と探したが、俺の探索範囲でゴルゴムらしき連中の影はつかめなかった。

そして後に、ブラックさん……ブラックRXがクライシスと戦ったのは、惜しくも跡形も残らず技術検証もできなかった悲しき良デザインと高い性能を備えた素晴らしいロボット戦士、デスガロンの発言でほぼ確定している。

 

そして、そのゴルゴムは5万年周期で新たな創世王を決めている。

最低でも五万年前には存在し、つい十数年前に滅んだわけだ。

これがどういう事か、と言えば。

五回前から前回、一万年前に起きたバトルファイトまでは、バトルファイトにゴルゴムが手を入れていた可能性が高い。

あくまでも可能性だが、これは何もゴルゴムに限った話ではない。

アンデッド同士のバトルファイトに、アンデッド以外を戦力として投入していた可能性が高い種族が存在する。

 

長く繁栄の時が続いたリザードアンデッドの勝利期間、これも、恐らくはアンデッドでない通常個体が巨大かつ強靭な進化をするように繁栄していく事で、他のアンデッドに対して集団戦を挑むなどして長期間の勝利を得ていたのだろう。

仮に、バトルファイトが今と同じ一万年周期であったと考えた場合、連中はこの戦法で一万六千回の連続優勝を飾ったのだ。

戦法として他種族から見て、害悪にも程がある。

そりゃあ弱体化もされるというものだ。

或いは、現在で孔雀や鷲のアンデッドが居るのと同じ様に、最初にトカゲ系アンデッドが優勝した後に、ティラノアンデッドとプテラアンデッドとトリケラアンデッドとアンキロアンデッドとスピノアンデッドと……みたいに、恐竜に分類されるタイプのアンデッドばかりで埋め尽くされたバトルファイトが続いた可能性すらある。

もしかすれば地球上の酸素濃度が下がったのも、恐竜と同じ害悪戦法を防ぐためのルールの調整だったのかもしれない。

 

こじつけに思えるだろうか。

だが、仮にゴルゴムとバトルファイトが別起源の存在であったとしても、地球の支配者や調整者を気取るゴルゴムがこれに手を出さない理由が無い。

或いは、最低でも五万年で五回、或いはそれ以前から、ゴルゴムという結社は、自分達が制御しやすい種族を地球上の支配的種族にするために暗躍していた可能性すらある。

 

これが、どういう事かわかるだろうか。

前回のバトルファイトの勝利者、ヒューマンアンデッドか、ヒューマンアンデッド主体の集合体であるジョーカーかは置いておくとして。

前回の勝利者は、ほぼ間違いなく、ゴルゴムと協力していたという事になる。

秘密裏に支援していたので知らない、という可能性は除外しても良いだろう。

現代社会と違って、当時のバトルファイトであれば文明もクソも無い時期なので隠蔽工作をする必要すら無い。

つまり、だ。

最終的に、こんな仮説も成り立ってしまう。

 

ヒューマンアンデッドの倫理観、ゴルゴム基準説。

文字通り猿に毛が生えた、或いは毛が抜けた程度の知能しかなかった頃のヒューマンアンデッドを導いたのがゴルゴムだとしたら、そのやり口は教育者であるゴルゴムに寄るのもやむなしということだ。

 

なるほど、これは勝つだろう。

手段を選ばないどころの話ではない。

今代のジョーカーにわざと封印されるなど序の口。

まだやり口として優しいと言っても良い。

ジョーカーの動きを内部から誘導して、或いは、自らを他のアンデッドと共に発掘した人類すら操って、バトルファイトをノーコンテストにして、永遠に自分達の勝利期間にしてしまう。

迂遠かつ狡っ辛いやり方はいかにもゴルゴムである。

 

一度、ダークローチの出現で人類滅亡の危機に陥るが、これも相対的に見て他の種族よりも人間の方が自衛しやすい分、他種族の力を削ぐという点ではありだ。

映像上は人間ばかりが標的になっていたが、ダークローチが滅ぼす対象は、その時点で地球上に存在している全ての命。

生き残る確率で言えば人間の方が遥かに高い。

そして、バトルファイトの結末は、永遠に続く試合放棄(TV版)と、勝利者無しの無効試合(ミッシングエース)のどちらでも構わない、ということだ。

どちらにしても、弱体化を喰らい、協力者の居ないカテゴリー2として見た場合の最高の戦果だ。

然るべき後に人類がダークローチ出現の原因を知ることになれば、同じ悲劇が繰り返されないように自衛能力を高め、アンデッドの封印もより厳重なものにするだろうという期待もあるのかもしれない。

 

そういう意味で言えば。

今年の出来事で俺が何かする必要は殆ど無い。

せいぜい、うっかりジョーカーが他のアンデッドよりも先に封印されるとかいうぽかをやらかさない様に見張る程度だろうか。

ジョーカーは非常に強い。

だが、ヒューマンアンデッドを封印し手元に置いておく事で、人間的な弱さというものも組み込まれてしまっている。

最終的にジョーカーを人間に封印させるという安定ルートも想定している以上、倒せる程度に弱体化しておく必要もある為だ。

 

そして……。

現状、地球上の人類は……少なくとも、日本という国は、自分達を無差別に殺しに来る異種族への対策を確実に取り始めている。

素晴らしき青空の会はイクサの完成を急ぐ中でありながら、セーブモード限定で扱いやすくしたイクサを全国の下部組織に大量配備する計画を進めている。

警察でも一部地域に留まっていた装甲服部隊が規模を拡大する予兆を見せ始め、なんと今年の警察官採用試験の応募要項には、超能力の有無を記載する──即ち、アギトになれる素質の有無を確認する項目が存在する。

アギト部隊の一部が警察学校の教官に任命されているのはその関係もあるのだろう。

猛士からは仲村くんを経由して、追加の変身デバイスの注文がきている。

それどころか、だ。

吉野の神社にはまだ鬼の鎧を返却していないにも関わらず、既に鬼の鎧が複数配備されて実働している。

なんでも、()()()()()()()()()()()()()()()()のだ、という。

笑える話だ。

現代の鬼の技術どころか、俺の渡した変身デバイスの技術まで一部取り込んだピッカピカの新造品が発掘されたというのだろうか。

 

海外はともかく、日本の現状はそのようなものだ。

それほどマッドアークの襲撃はショッキングだったのだろう。

ダークローチの大量発生を迎え入れるには絶好のタイミングと言っていい。

なんとなれば、前年のマッドアークの襲来と合わせ、やはり人類は狙われているのだ、という意識をより強固で確信的なものに変える良い刺激になるかもしれない。

 

というのが、俺の予想しうるヒューマンアンデッドの方針だ。

だが、ダークローチに関してはもう少し穏便にしたい。

友人知人を守るのだって限度がある。

なんとなれば、長期間ダークローチが現れ続ける中で彼らだけ無事で居続けたなら、それはそれで彼らに疑いの目や嫉妬やっかみが向く可能性だってある。

そも、最後の一匹のアンデッドをジョーカーにする、という時点で、ダークローチの発生タイミングはほぼ任意に決められると言っても良い。

ダークローチが発生して直ぐにジョーカーを封印すれば、少しして再びアンデッドが解放される危険こそあれ、ダークローチを長期間放置するよりも良いだろう。

流石に、ジョーカーが二人になってなおかつ二人共に戦わないという選択肢を取り続けるような人間関係になるように誘導する事はヒューマンアンデッドにもできない筈。

目指す解決法が同じ、というなら、最後の最後でこちらから一手挟ませてもらい、被害を少なくするのが安全策になる。

 

アンデッドの簡単な研究自体は終わった。

本格的な研究をしているところがある以上、これ以上こちらであれこれする意味も無い。

アンデッドの研究データ、それこそ、人造アンデッドの技術に関しては、BOARDの研究データを正式な手続きで確認させてもらう事も可能なのだ。

今年は急がず慌てず、ゆっくりとBOARD製ライダーの健闘を見学させてもらうに留めていこう。

天王寺の監視がどこまでのものか知れないし、初期のグズグズ人間関係は見ているだけで気が滅入るから、あくまでも遠目から。

 

―――――――――――――――――――

 

下級アンデッドであればあるほど、種族としての本能や生態に行動が寄る、という傾向が確認されている。

しかし、それでもベースとなるのはアンデッドとしての本能、他種族を排して自分達が繁栄する、というもの。

本来であれば、それはバトルファイトの中での戦闘傾向に現れる程度のものでしかない。

だが、バトルファイトも無しに不意に解き放たれたアンデッドは、種族的な偏りを得た、他者への危害という形でその本能を発揮する。

 

呼子の洞窟に居を構えたセンチピードアンデッドもその様なものだった。

ムカデという生き物は、外敵と接触した場合、自衛の為に噛みつきこそするものの、その多くが反撃よりも逃走を選ぶという。

生き残りに特化した生存本能。

種の繁栄を賭けた戦いであるバトルファイトには不向きとも思えるかもしれない。

だが、そのカテゴリーは10。

その位階の高さは、毒を持つタイプのアンデッド特有のものだ。

 

アンデッドは厳密には生命ですらない。

睡眠も食事も繁殖も必要としない。

その上で、通常捕食の為に使われる毒だけが特性として残される。

そして、バトルファイトが開催されているわけでもない現状で、センチピードアンデッドはその力の矛先を見失っていた。

 

毒を使い、獲物を弱らせ、捕食する。

アンデッドとしてのセンチピードアンデッドであれば。

毒を使い、敵を弱らせ、封印させる。

不死故に捕食する必要も無く、バトルファイトでないが為に倒すべき敵も居ない。

毒を使う、という、本能だけが、洞穴に潜むこのアンデッドを突き動かしていた。

 

死者と話す事ができる呼子の洞窟。

ここに潜んだのは、()()()()に過ぎない。

争いを避け、隠れ潜んだ先に、脅威とならない、しかし、食べる必要も無い獲物が現れた。

故に、襲い、毒を打ち込んだ。

洞穴内に毒を打ち込んだ獲物を放置しなかったのは、そこに捨て置けば同種の死体に警戒した人間が入ってこなくなるからでしかない。

 

それを残虐性、というのであれば、センチピードアンデッドは残虐なアンデッドなのだろう。

だが、残虐であることと、アンデッドとしての強弱はそれほど関係ない。

カテゴリー10ともなれば準上級、という訳でもなく、その戦闘力に関しては一般的なアンデッドと相違無いのだ。

また、種族的特徴から生まれた武器が毒というのも、この時代の戦いでは不味かった。

バトルファイトの外での戦い。

知性と文明を発達させた人間が蔓延る中での戦いは、或いは数億年前のリザードアンデッドの天下が続いていた時代に近い絶望的な戦いを彼に強いることとなる。

 

人類基盤史研究所、BOARDの作り出した一号ライダー、ギャレン。

突如洞窟内に現れた二号ライダーであるブレイドとの交戦を経て即座に逃亡。

住み慣れた洞窟から飛び出し、海辺をひっそりと移動中に襲い掛かってきたギャレンは、まさにセンチピードアンデッドの天敵とも言える性能を持っていた。

 

まずもって全身が本体と異なる外殻、パワードスーツに覆われている為に毒が意味をなさない。

そしてセンチピードアンデッドの持つ獲物、ピードチェーンは尽くかわされ、お返しとばかりに打ち込まれる銃撃は着実にセンチピードの身体にダメージを蓄積していく。

唯一の救いは、対敵するギャレンが明らかに調子を崩しており、時折ふらつき、膝をつく場面すらあったことだろうか。

 

そして、好機が訪れた。

ギャレンを押しのけて、同じアンデッドのカリスが現れたのだ。

カリスはセンチピードアンデッドにとっては遥かに格上の相手ではあるが……それでも、毒の一切が通らない相手という訳でもない。

そもそもバトルファイトの始まっていない現在において、自分達を封印していたBOARDのライダーに倒されるのと同種のアンデッドに倒されるのでは訳が違う。

少なくとも、アンデッドに倒される、というのであれば、現段階においてまだ再起の目処が立つ。

 

しかも、乱入してきたカリスは明らかに挙動が不審だった。

カリスの持つ弓であれば、遠間から一方的に攻撃を仕掛ける事も不可能ではない。

それをしない、という理由にセンチピードアンデッドは見当もつかなかったが……。

 

一方、相対するカリスもまた焦っていた。

センチピードアンデッドは、戦いとなれば倒すことは難しくない安い敵でしかない。

だが、こうしている間にも、センチピードアンデッドの毒を受けた天音は死に向かっている。

じっくりと観察し抗体のある部位を探そうにも、センチピードアンデッドの毒だけは無視できるものではない。

倒して封印するわけにもいかず、毒を避けながら、そして逃がすこと無く、抗体を見つけて確保しなければならない。

圧倒的なスペックを誇るカリスにとっても、それは難しい事だった。

 

どこだ、抗体のある場所は、どこだ。

カリスの超感覚がセンチピードアンデッドの体内を探る。

だが、一向に抗体の場所を探る事ができない。

元より、知識として知ってはいても、カリスにアンデッドの肉体から抗体のある位置を特定した経験は無い。

アンデッドであるカリスにとって、自分以外のアンデッドは須らく倒すべき敵だからだ。

そして、カリスはアンデッド以外の仲間、或いは配下を率いて戦うタイプのアンデッドでは無かった。

それ故の不慣れが抗体の場所を特定する妨げとなっていた。

 

そして、その戦いとも呼べない状況にじれるように、ブレイドが足止めしていたギャレンが引き金を引く。

ギャレンラウザーから放たれた光弾が、センチピードアンデッドとカリスへと迫る。

どちらを狙った、という事も無い。

どちらに当たっても状況は動くと考えたか。

或いは、ライダーシステムの欠陥から精神的な負荷を抱えているが故の、破れかぶれの一撃か。

放たれた一撃が、センチピードアンデッドの肩部、大ムカデの頭へと迫る。

奇しくも、カリスが抗体の位置を発見するのと同時。

 

運良く抗体部分だけを千切り飛ばす様に着弾するか。

そんな幸運を祈る事も、そして、カリスの位置から庇う事もできない。

カリスの、相川始の目の前で、栗原天音の命を救うための手立てが奪われる……。

 

──その時である。

 

センチピードアンデッドに迫る光弾が、横合いから割り込んできた一台のバイクに遮られた。

今さっきまでこの場に迫る気配すら無かった、白地に赤、そして黄色と青のラインの走る、やや古めかしいデザインのフルカウルバイク。

BOARDの技術を結集して作り上げたギャレンラウザーの放つ光弾を受け、しかし、その白いボディには傷一つ見当たらない。

それは、このマシンがアタックシールドを展開し突撃する際に発生させるバリアによるものだ。

 

白いフルカウルバイクの搭乗者もまた、奇妙な出で立ちだった。

時代がかった革ジャンにライダーパンツと、バイク乗りとしてはそれほどおかしな服装ではない。

だが、その首から上はどうだ。

人のそれではない。

赤い複眼を持つ黒いバッタ。

それを無理矢理に人型の頭部の形に形成した様な異形。

 

「今だぜダンナ!」

 

ライダールックの異形が口元のクラッシャーを開いて叫ぶ。

それはその場の誰の耳にも聞き覚えの無い声だったが、カリスだけはその言葉の意味を確かに受け取っていた。

すかさず駆け出したカリスが醒弓カリスアローを実体化させると、突然の乱入者にあっけに取られていたセンチピードアンデッド、その右肩にある抗体を含むムカデの頭部を切り落とす。

緑色の体液と共に切り落とされたムカデの頭部が砂浜に転がり落ち、肉体の一部を切り落とされたセンチピードアンデッドが苦悶の声を上げながら蹌踉めく。

その先に、白いバイクから降りた飛蝗頭が、拳を振り上げて待ち構え……、

 

()()()()!」

 

レンガ──と見紛う程に分厚いメリケンサックを握りしめた、振り下ろしの一撃。

 

()()()!」

 

そして、返す刀のアッパー気味の拳に、頭部がひしゃげたセンチピードアンデッドがたまらず吹き飛ぶ。

吹き飛んだ先、カリスは既に、ハートの3、ハンマーヘッドチョップをラウズしていた。

強化された手刀……いや、拳の一撃を受け、センチピードアンデッドが砂浜へと倒れ込む。

致命傷だ。

外見上五体満足ではあるが、戦闘続行は不可能、そして、逃走できるだけの力も残っていない。

腰部のアンデッドバックルが金属音と共に開き、カリスがブランクカードを投擲。

 

手元に収まる新たなラウズカードと、落ちていたムカデの頭部を拾い上げると、カリスは何も言わずにシャドーチェイサーへと跨る。

ギャレンともみ合い取り押さえようとしていたブレイドがカリスに向けて叫ぶ。

 

「抗体は!?」

 

それに、カリスは応えない。

ちらりと、一度だけ視線をブレイドに、そして、飛蝗頭へと向け、シャドーチェイサーで走り出す。

それを見送る飛蝗頭は、未だギャレンともみ合うブレイドへ向け、声を掛ける。

 

「大丈夫だってよ!」

 

「あんたは?!」

 

ブレイドの誰何の声に、飛蝗頭は笑う様に肩を震わせながら、くるりと背を向け、ひらひらと手を振りながら、悠々と白いバイクに跨りその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ブレイド編はジョーカー勝ち抜きを補佐してブランクカードを用意して最後の最後で容赦なくジョーカーを封印すれば勝てる単純な年なんだよ
だから別の要素入れてテコ入れするのだわ

☆謎の飛蝗頭
なんだよいきなりオリキャラ出すとか平成振り返ってないじゃないか
なーんて思ってるそこのあなた
安心して下さい、(平成ライダーに)入ってますよ
ほんと、ギリギリ平成元年の発表だから、これは当然平成ライダー
白くてアタックモードでバリアを貼るすごいバイクの量産型が与えられている
彼の出典を知っている人は何が何やらと思うだろうか
俺も思う、が、実はこの話が初出じゃないのです
以前にワンカットだけ、モブ同然の形ではあるが姿を見せていたりする
つまり新キャラは出していないのだ
ややこしくなるからね
この時代では表立って特定アンデッドに支援を与えると色々面倒なので、代表してこの人が窓口として出てくる事になった
出典の状態と違い、いくつか活動の為の装備を支給されている
洗脳の類はされていない
昔の舎弟の形見である革ジャンを十年以上愛用し続けている
敵か味方か、みたいなキャラを出すのはテコ入れの基本!

☆やつらは地獄のコマンドー
現在のゴルゴムの動向について、調べて纏めてみました!
(ほうぼうを調べてもなんも出てこないので恐らく滅んでいるんじゃないかなということしか)わかりませんでした!
如何でしたか?
という具合に過去に滅んだ組織の情報は集める手段が殆ど無い
秘密基地の所在が割とはっきりしてる敵組織もあるが、その跡地もこの時代にはだいたい綺麗サッパリ撤去されてるので痕跡をたどる事もできない
なんなら猿島とかにもアジトがあったんだけど、そこにも当然何もないのは確認済み
自分の地下秘密基地も機密保持の為の自爆装置とか用意しとかないとなー、とか、まだこの時点の主人公はのんきしている

☆今年は殆ど観戦の年だなー、なんてまだ思えてるアホ
友人の強化とかあるから、監視に付けたヘキサギアにはジョーカーがピンチに成った時だけ呼ぶように伝えており、戦闘ログなどは後ほど纏めて見る事にしている
春休みも近いし、仲村くんといにゅいを呼んで二人の新マシンの慣らし運転を兼ねてツーリングでも行こうかなー
で、途中でジルグジルも合流させて里帰りも済ます
完璧な計画だ
魔石の戦士といえど、たまには休息の時間を取って人間性を保たないとね
あ、でもいにゅいが居るなら豪雷も一緒かー
じゃあ最初から全員一緒でいいかな
ダミーロードインパルスとダミーボルトレックスのビークルモードも車検通ったし!
あー、やっぱり、平和って素晴らしいわー!
からの、ヘキサギアに記録させていた戦闘ログを見て探偵物語みたいなリアクションをするまであと数日



一部時間関係の能力持ちをサンプルにする以外で最後しか手を出す理由の無い剣編
調査に乗り出さざるを得ない要素を入れて無理矢理にでも活性化させるのだ
それでも次の話が中々浮かばなかったら外伝の方が進む
あっちも次回はヘキサギア祭りとかできそうだから書こうと思えば色々できるしね
そういう緩い志のSSではありますが、それでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。