オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり
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11 希望、朗々と唱え

 

「戦うためだけの、生物兵器、か」

 

関東医大病院の休憩室にて、一条はぽつりと呟いた。

科警研から回されてきた資料は、意見を求める為に法医学士である椿秀一の元にも届けられていた。

手足を引き千切られ、頭部を粉々に粉砕された未確認生命体第三号の遺体。

そこから手に入った情報は、かつて五代雄介の肉体を検査した時に椿が得た推測をはっきりと裏付けるものだった。

腹部の異物から全身に強く張り巡らされた神経。

頭部を損失しているが為に首までしか完全に見ることは出来ないが、伸びた新たな神経は脳を包み込まんばかりに首目掛けて敷き詰められていた。

代謝、痛覚、全てを戦うために最適な肉体へと変貌させるため、中枢である脳と腹部の神経瘤……謎の鉱石はほぼ直結されていたのだろう。

 

予想通りの結果だ。

実際、最近の五代の肉体もこの三号の肉体と似たような状況にあった。

だが。

 

「こいつでもこんだけ進行しているんだ。それを、虫でも潰す様に殺せるなんて、どんな状態になっているのか、わかったもんじゃないな」

 

三号の遺体を作り出した張本人、未確認生命体二十二号。

警察による包囲と避難指示のお蔭で、現場の様子を撮影できたものは今の所現れていない。

だが、通報を受けて駆け付けた所轄の刑事から、その時の状況は証言が取れている。

 

戦いとすら呼べなかった。

傍から見ても捉えきれない三号の攻撃。

だが、三号が腕を振るったかと思えば、次の瞬間には二十二号によって腕をねじりあげられ、そのまま鳥の手羽でも千切る様に気安くねじ切られた。

現場で行われたのは、ほぼそれだけ。

腕が二度ねじ切られ、膝が踏み抜かれ、姿勢を崩した三号の、残った腿を引き抜き。

地面に芋虫のように転がり、未確認が使う未知の言語で何事かを叫ぶ三号の首を掴み、持ち上げ、喉を握り潰した。

 

『静かに』

 

怒りや憎しみ、或いは、悦びや楽しみ。

そういった感情が乗っているようではない、しかし、無感情ではない声。

なんでもない、日常の一場面で、それなりに気心の知れた相手に軽く注意するような、なんでもない一言。

そうとしか聞こえない声と、実際に行われた行為のギャップは、包囲していた警官隊の多くの印象に残ったのだろう。

 

「桜子さんからは?」

 

「……聖なる泉枯れ果てし時、凄まじき戦士雷の如く出で、太陽は闇に葬られん」

 

「何?」

 

「つまり、戦うだけの生物兵器になったなら、戦士の目は黒くなるそうだ」

 

「それは……」

 

椿が黙り込む。

勿論、目の色一つで判断するのは早計だ。

抽象的な表現が多く、解釈の違いでどうとでも意味が変わる可能性もある。

だが、二十二号の腹の中に入っているものが未確認や五代のそれと同じであったのなら、時間と共に、あるいは戦いと共に、その体は凄絶な変化を遂げていく筈だ。

二十二号が戦っている場面を、そして被害者である他の未確認の死体を残した回数は少ない。

一見して、これだけでは二十二号が五代よりも先に凄まじき戦士になる事はないように思える。

だが、そうではない。

一条も、椿も、桜子も、五代も。

誰一人として、二十二号が『何時から二十二号なのか』を知らないのだ。

 

今は異なるものの、かつての腹部の装飾品は見かけ上は五代のそれと同じものだった。

だが、九郎ヶ岳遺跡で見つかったベルト状の装飾品は一つだけ。

何処で見つけたのか、何時見つけたのか、何時それを装着し、五代と同じ体になったのか。

 

―――――――――――――――――――

 

「少しだけ、話を聞いてみたいな、って、そう思う事もあるんです」

 

城南大学の研究室にて、桜子がふと漏らした。

グロンギや四号……クウガの力に関する謎を解明しよう、と、榎田が纏めた資料を手に話をしている最中の事だ。

グロンギとクウガには同じ力が備わっており、精査した碑文の内容が、第0号とクウガが極めて近しい存在である可能性が浮かんできた。

そして、それを知った上で、二十二号は五代が凄まじき戦士になるように助言をしている。

 

「未確認、グロンギの事も知りすぎてるし、何か他の遺跡のことを知っているとしたら」

 

「そうね、安全に凄まじき戦士になる方法を知っている、なんて事も、……んー、無い、事もないのかな?」

 

難しい顔で首を捻る榎田。

希望的観測である事は口にするまでもなく桜子も理解しているだろう。

だが、実践派である榎田からすれば、五代の変身する四号と比べて何のデータも無いのだ。

そういう可能性があるかもしれない、と言われれば、無い事もないのではないか、としか言えない。

 

傍から聞いている一条からしても、全く無いとは思っていなかった。

現に、二十二号は明らかに凄まじき戦士に近づきながら、未だ持って未確認以外に被害を及ぼしていない。

先日に三号を惨殺した時ですら、三号に襲われている市民を庇った上で、三号を橋の下に引きずり下ろしたという話も聞いていた。

二十二号からすれば場所を選ぶ必要すら無い三号を相手に。

碑文にあった、聖なる泉が枯れ果てた戦士の振る舞いではないだろう。

 

「そう、ですね。そういう可能性だって……」

 

さて、では、その可能性を聞いていた五代がどうかと言えば。

無理矢理に笑おうとして、しかし、拭いきれない不安に襲われていた。

憎しみで戦おうとして、自分には凄まじき戦士の姿が見えた。

引きずり込まれるような、自分の憎しみを燃料にさらなる憎しみを燃やす様な、悍ましい感覚。

誰かを思いやる気持ち、優しさ、そういうものが酷く遠くに離れていく感覚。

あれを、制御する事ができるのだろうか。

ふと、かつて貰った手紙の一文を思い出す。

 

『凄まじき戦士の力は扱いが難しく、青空の如く清らかな心などを含む諸々の極まった精神的な適性が無い限り、使いこなすことは容易ではありません』

 

どうとでも取れる言葉だ。

精神的な適性があれば完璧に使いこなせるのか。

容易ではないだけで、使いこなすことも不可能ではないのか。

少なくとも、完全に使いこなせる方法がある、などと、手紙には一言も書いていなかった。

 

理屈を知ってしまえば、凄まじき戦士にならないという自信はあった。

大丈夫、と、言えるだけの自信もあった。

だが、二十二号は、0号を指すのであろうン・ダグバ・ゼバと戦うには凄まじき戦士にならなければならないという。

 

……彼は、憎しみのままに戦っているのだろうか。

 

ザザルを倒した後に、三号の出現場所に向かった五代は、確かに見たのだ。

屠殺場の様に血溜まり残る現場、あちこちに散らばる三号の破片を覆うチョークの円。

パトカーに詰め込まれた、まるで家畜を屠殺したかの様に無機的に解体された三号の遺体。

あれが、憎しみから行われた行為でないと言えるのか。

 

「もう一度、話せれば、いいんですけどね」

 

五代雄介は、何一つ知らないのだ。

どんな思いで戦っているか。

それどころか、顔も、名前も。

二十二号、と、無機質な名前でだけ呼ばれる彼の事を。

 

大丈夫、と、気休めでも口に出す事が難しい。

満足を示すサムズアップを作る事も。

 

―――――――――――――――――――

 

時折思うのは、人間の一生というのは、人間の社会、人間の文明を味わい尽くすには短すぎる、という事だ。

今も記憶に残っている始めてから終わるまでの人生一回分。

特筆するべき点もない、それなりに平凡で穏やかな人生だったからかもしれないが、だからこそ俺には特定分野に深い造詣がある訳ではない。

多少の趣味はあったが、それも忙しい日々の合間の余暇で楽しめる範囲のものでしか無かった。

何が言いたいか、と言えば。

 

……あまり、オシャレな店での買い物には慣れていないのだ。

ジルの手を引いて、ブランド物に身を包んだオシャレ都会人達の列に並んでまでおシャンテイな菓子類を買う事に、少しだけ恥ずかしさを感じる程度には慣れていない。

最低限のTPOには逆らわない程度に身だしなみは整えてはいるが、都会人共に比べれば俺のオシャレ度等低辺だー低辺だーと言われても仕方がない。

 

別に、そういう店を一切利用しなかったという訳ではないが、利用するにしてもその時点では既に通販がかなり発達していたので、態々店に出向くことも無かった。

話題のお店のお菓子一つ買うのだって、ネットを経由して操作一つで家まで届けてくれるのだから素晴らしい。

昔は良かった……ではなく、未来は良かった。

 

「開けるのはアパートに着いてからだからな」

 

ジルはこくこくと頷き、しかし視線は手に下げた紙袋にチラチラと吸い寄せられている。

早く予備の鍵を預かっている父さんのアパートにたどり着かないと、適当なベンチかなにかに腰を下ろして食べ始めかねない。

と、思っていたのだが、視線に込められたのは食欲ではないらしい。

何か言いたいのか、と思い、視線を向けると、それを意識してか口をぱくぱくと動かした。

 

『あえおおいあえ?』

 

勿論、声は出ていないので疑問符が付くかどうかは不明だが、首を傾げているのだから問いなのだろう。

なるほど、確かに、俺は昼食を終えた後に一緒に食べる用、母さんへのお土産用、父さんが帰ってきた時に食べれる様にアパートの冷蔵庫に入れておく用の他に、ちょっとした焼き菓子を買った。

他はデフォルトの包装なのに、この一つだけはプレゼント用のラッピングまで施して貰って、だ。

 

「あれだよ、クラスメイトの人に。お礼をまだしてなかったからな」

 

それこそ、宣言した通りの商店街の大判焼きとかでも良かったのだが、今回東京にまで来たという事で、先日朝のニュースで話に上がっていた有名店に立ち寄ってみたのだ。

俺自身、ここのケーキに対しては並々ならぬ関心を抱いていたので、物の序でのつもりだったのだが……。

 

『あうあいいお?』

 

「買う分には良いんだが、店員さんがな……」

 

プレゼント用のラッピングを、という一言がいけなかったのかもしれないが、どうにも店員からも背後の列からも生暖かい視線を感じてしまっていけなかった。

やはり店舗販売は悪い文明だと思う。

早く発達しろAmazon。

そしてアマゾンは発達するなというか生まれるな。

生まれたら製造初期段階で焼きに行く所存だ。

製造者とそれを雇う企業とその施設と製造の為の資料も残らず。

 

「さて」

 

時計を確認する。

今回の練習相手であるゴ・ジャーザ・ギ。

実は一対一で戦おうと思うと中々に難しい。

まず、最初のゲゲルの現場は飛行機の中。

落ちた先には五代さんが待ち構えている。

ここが狙い目かもしれないが、白くなって地面に転がる五代さんを気にしながら戦うのは面倒だ。

次のゲゲルでは船に行くのだけれど、ここでも即座に五代さんに追いつかれている。

面倒を嫌う、という割に、犯行予告をネットに書き込むなどという無駄をする辺り、面倒面倒と言いつつ遊びの要素を多く入れているせいだ。

後の時代じゃ放送できないぞ、変に叩かれたりして。

 

もう少し、面倒を避ける事ができるルールは無かったのだろうか。

連中が自縄自縛で難易度を上げるのは勝手なのだが、それで俺まで難易度が上がるのは望ましくない。

そういう難易度の高さを乗り越える技能は、これ以降のグロンギ相手の二戦では一切役に立たないし、今後十年二十年の中でもそうそう使いそうにない。

 

『あああうお』

 

じぃ、と、視線の質が変わる。

戦いに対する興奮といった感情は見受けられない。

確認する様な視線。

……徹底的に叩き込んだ現代日本の一般的に模範的と思われる倫理感からすれば、疑問を覚えても仕方がない。

必要かどうか、と言えば、必ずしも必要とは言えないだろう。

放っておけば、五代さんがこの一年を乗り越えさせてくれる可能性はある。

可能性はあるが……。

確実ではない。

五代雄介が……仮面ライダークウガが勝つ、という結末は、確実に訪れるとは言い難いのだ。

あの最終決戦を知るからこそ、確実に、ン・ダグバ・ゼバを殺せる手段を取らなければならない。

 

「必要な事だからな」

 

『あんおあえい』

 

「生きるために」

 

そう。

俺は生きていたい。

死にたくない。

死なないために。

殺さなくてはならない。

 

難しく考える事はない。

準備は整えている。

そのための多くの確認があって。

今も、その確認をしに行くのだ。

 

不安はある。

だが、それは、今日に対する不安ではない。

だから、今日は余裕を持って、ただ確認しに行くのだ。

殺すための手段を。

 

―――――――――――――――――――

 

十月八日、日曜日。

十一時を少しだけ過ぎたこの時間。

東京都江東区は豊洲埠頭に一台のバイクが滑り込む。

ビートチェイサー2000。

警察が未確認生命体四号の為に密かに開発した、四号専用車両だ。

 

搭乗者は未確認生命体四号こと、五代雄介。

警察からの情報提供を受け、海中を移動中の四十五号の予想上陸地点へと駆け付けた五代は、その場に見覚えのある先客を見つけた。

手にくすんだ黒色に染まったボウガン状の武器を携え、遠くの海を眺める黒い戦士。

色彩と細部の形状の変化、ベルトのバックル部分を除けば、四号と驚くほど瓜二つな姿を持つそれの名は、未確認生命体二十二号。

消えかけの松明の如き僅かな輝きを灯した、吸い込まれるような、山中に偶然見つけた(うろ)のような暗い瞳の戦士。

 

「お久しぶりです」

 

振り返りもせずに告げられる声に、暗さは無い。

相も変わらぬ、年若い少年のものにしか聞こえない声。

気負った風ではないが、せいぜいが久しぶりに会う親戚にする程度の硬さしか無い、気負いの無い挨拶。

手に下げた武器、視線の先が海中をやってくる四十五号とするならば、場違いとも言える声色に一抹の不安を覚えながら、五代は自らもポーズを取り、その体を未確認生命体第四号、戦士クウガのそれに変える。

 

「……」

 

銃を構え、海中を警戒するクウガは、すぐ側で同じ様に海中から来るであろう四十五号を待ち構える二十二号に声を掛けあぐねていた。

それは戦闘を前にしての緊張であり、また、二十二号の集中を削ぐ事への遠慮であり……。

結局のところ、ただ未確認との戦いの前に偶然出会うだけでは、聞きたい事を聴くような時間が無いというのが現実だった。

それは、これまでの全ての未確認が話し合いの余地もなく戦うしか無かったのと変わらない。

顔を合わせる切っ掛けが未確認との戦いを通しての偶然の接触しか無い以上、二十二号が人類に敵対的かどうかとは余り関係が無い。

 

「ああ、そういえば、これは……御前試合か」

 

一歩、二歩と、後退る様に海から徐々に距離を取る二十二号が低い声で呟く。

その呟きに疑問の声を上げるよりも早く、クウガの背筋が泡立つ。

背骨の中に氷柱を差し込まれるような寒気。

見ているのは海中、海の向こうから来る筈の四十五号を警戒している筈なのに、否応なく全感覚の端に、見えていない筈の人影が。

全身を白でコーディネイトした青年の姿。

口元には朗らかな笑み。

だが、顔が見えない。

いや、見えていないのだから見えないのは当たり前の筈だ。

だが……。

 

「──」

 

自らの息の音すら邪魔だと言わんばかりに、限界まで息を潜めたまま、クウガの姿は緑を金で縁取る弓兵へと変じる。

既に警察への通報から時間が経過している。

四十五号が海から出てくるのも時間の問題だ。

だというのに。

 

「う……」

 

鋭敏化した五感の全てが、目の前の海ではなく、白い少年の姿を捉え続けている。

いや、向けられる視線が、向けられる感情が、クウガの五感に白い少年の姿を幻視させ続けているのだ。

期待、恨み、好奇、興奮。

陳腐な言葉で例えるなら悪意のない殺意とでも言うべきか。

矛盾する感情を孕んでいるようで、その実酷く純粋な思いの込められた気配。

それが、意識的にではなく、本能から警戒を向けてしまう。

 

「あ」

 

いつの間にか五代よりも後ろにまで下がっていた二十二号の間の抜けた声。

その声に我に返るのと、海中から飛び出してきた銛が五代の左肩に突き刺さるのは同時だった。

恐るべき速度で持って海中から投擲された銛がクウガの左肩を貫き、そのまま十数メートル後ろの鉄柱へと貼り付けにされてしまう。

 

「そこか」

 

貼り付けにされたクウガに目もくれず、二十二号がボウガンの引き金を絞る。

数発纏めて打ち出される圧縮された空気弾が銛の飛び出してきた辺りへと突き刺さり──海面が爆発した。

七千度の熱量を込められた(・・・・・・・・・・・・)圧縮空気弾が、着弾した付近の海水を一瞬で蒸発せしめたのだ。

そして、熱され沸騰する海中で慌ててその場から離脱しようとする未確認生命体四十五号、ゴ・ジャーザ・ギ目掛け、周囲の海水ごと煮殺そうと続けざまに圧縮高熱空気弾が放たれていく。

ジャーザとしては、クウガとも二十二号とも戦うメリットはない。

既に戦い方を、ダグバ戦、ザギバスゲゲルを想定した戦法とそれに相応しい体を構築済みのジャーザにとって、この段階で無駄に力のある存在と戦うのはただ消耗するだけでしかなく、得られるものがないのだ。

だが、少なくとも、このまま煮えたぎる海中を逃げるのは難しいだろう。

忌々しい事だが、ここで二十二号の追跡を振り切るには、二十二号を殺してしまうしかないのだ。

 

一方、埠頭からジャーザへ向けて一方的に攻撃していた二十二号もまた舌打ちをしていた。

ジャーザの領域である海への逃走が無駄であると思わせ上陸させるために海を熱し続けていたが、それにも限界が迫りつつあった。

二十二号の手元の黒ずんだペガサスボウガンは既に融解寸前にまで熱を溜め込んでおり、フレイムフォーム特有の耐熱性能すら持つトリニティフォームの性能で持ち続ける事ができたとしても、既に新たな空気弾を発射するのは不可能。

ペガサスボウガンはフレイムフォームの操る高熱に耐えられる様な構造にはなっていないのだ。

 

ジャーザが飛沫を上げ海面から飛び出すのと、二十二号がクウガの取り落とした拳銃を拾い上げようと飛び込むように後退するのは同時。

海面から飛び出したジャーザの手には新たな銛が構えられ、今まさに無防備に背中を晒している二十二号へと投擲される。

ジャーザの強みを挙げるとすれば、それは粘りのある筋力だろう。

海中からの投擲ですら、地上に居るクウガを十数メートル吹き飛ばして鉄柱に貼り付けにするほどの威力を出す事ができるのは、海中を泳ぐ上で最適化された筋力と、その筋力を存分に生かした特殊な投擲法だ。

理論上、ジャーザはどんな姿勢、どんな場所からの投擲でも、ゴ集団相当の力量を持つ相手の装甲を貫き吹き飛ばす……つまり、地面から離して動きの自由を奪う攻撃が可能なのだ。

飛行能力と近接戦闘能力を併せ持つ戦士はグロンギの中でも希少だ。

宙に浮き、碌な回避も出来ない相手であれば、二射目を外す様な真似はしない。

これぞゴ・ジャーザ・ギ必勝の策。

 

だが、今狙われているのは背後を向けているだけ(・・)の、ゴ集団上位相当の戦士、二十二号。

角を縮め装甲を白くしたクウガの手元に転がる拳銃へと手を伸ばしながら、融解し始めた手元のペガサスボウガンを勢いよく後ろへと振り回す。

手元が人間にぶつかればそのまま粉砕する程の勢いで振り抜かれ、硬度を下げた赤熱するベガサスボウガンだったものが伸展、先に分銅の付いた鎖へと変化する。

モーフィングパワーでも排しきれない熱量で未だ赤熱した鎖は迫る銛に絡みつき、軌道を逸らされる。

 

宙空で振り向いた二十二号と落下中のジャーザの視線が絡み合う。

ジャーザが再び装飾品を変じさせた銛を投擲するのと、二十二号がオルタリングから引き抜く勢いのままに炎剣を投擲するのは同時。

互いの獲物の切っ先が激突、爆散。

 

二十二号目掛け駆けるジャーザ。

ジャーザを視線で捉えながら、二十二号が白いままのクウガを、近づいてくる警察車両目掛けて低く蹴り飛ばす。

僅かにジャーザの視線が低空を滑空する白いクウガを追いかけ、やめる。

リントは仲間意識が強い。

白くなったクウガを狙えば、リントの戦士であればそれを庇い隙ができる可能性もある。

実力が拮抗していればしているほど一瞬の隙が大きなアドバンテージになる。

だからこそ、白いクウガを狙うなどという、無駄な事(・・・・)はしない。

相手に隙を作ろうとして自分が隙を晒していたのでは意味がない。

 

「ぐ、ぅ」

 

走りながら、ジャーザが体を変じさせる。

海中を自在に泳ぎ回る俊敏体を基本とし、それをザギバスゲゲルでも通そうとしていたジャーザにとって、もう一つの姿、剛力体への変身は苦痛を伴う程度には慣れていない。

だが、今相手にしている黒い方のクウガ……二十二号の膂力は銛を逸らされた時に察している。

この近距離では銛の投擲も隙が多く多用できない以上、この形態で戦うしかないのだ。

俊敏体が生み出す勢いのままに剛力体の力で掴みかかる。

 

「がっ……!」

 

ぎちぎちと首が締め上げられ、二十二号の口から息が詰まる音が漏れる。

ジャーザは片手で首を掴み、もう片方の手で装飾品を引き千切り剣を生み出す。

狙うは装甲に覆われていない脇腹。

いやさ、全てのグロンギの戦士の証にして弱点であるベルト。

ここを貫かれて無事な戦士は居ない。

 

「ギベ!」

 

勢いよく突き出されるジャーザの剣。

狙うはバックルの中心のクリスタル部分。

 

「てめえが死ね」

 

絞り出すような声。

剣の切っ先は、バックルから、オルタリングから生えてきた剣の柄に遮られていた。

止められた剣の切っ先を二十二号が握り込むと、剣先が柄に、ジャーザの握る柄が剣先へとすり替わる。

モーフィングパワーによる武器の乗っ取り。

これは、モーフィングパワーへの理解と熟練の差があればこそ可能な芸当。

最終的な戦術を決めて無駄を省いたジャーザと、戦うための、殺すための力を止まること無く磨き続けてきた二十二号の差。

 

二十二号が奪い取った剣を、そのまま体重を掛けて押し込むようにジャーザの腹部に突き刺す。

ず、と、重い音を立てて腹部を切り裂き内部へ侵入する剣先。

しかし傷は問題にもならない。

だが、突き刺さる剣の周囲に浮かんだ封印の紋章がジャーザの動きを僅かに鈍らせる。

一呼吸、一歩後ろに逃げることができたかできないかという僅かな時間。

 

二十二号はもう一本の手でオルタリングから生えた柄を引き抜き、ジャーザの足を斬りつける。

切り落とす事は出来ない、距離が、間合いが悪く、そして剛力体のジャーザの肉体の頑健さがそれを許さない。

だが腿の半ば以上、骨まで切断された足がもつれ、バランスを崩したジャーザの頭に勢いよく二十二号が頭突きを食らわせ、ジャーザは青空を仰ぐように倒れ込んだ。

 

倒れ込んだジャーザの口に炎剣が振り下ろされ突き刺さり、地面に縫い付けられる。

炎剣の鍔が展開し、六本に展開。

同時に、鳩尾を踏み抜くばかりの勢いで踏みつけた二十二号の頭部クロスホーンも同じく展開し、六本角を見せつける。

この現場を上空から見る者が居れば、倒れ込むジャーザの背後、踏みつける二十二号の足を中心に輝く六本角の紋章が広がり、再び二十二号の脚部へと収束していく姿を見ることができただろう。

 

死ね(ギベ)

 

頭部を中心に爆炎が吹き上がり、踏みつけられた腹部はプレス機にでも掛けられたかのように一瞬で圧縮され、破裂。

後に残るのは、首のない鳩尾から上、臍から下だけになったジャーザの死体。

二十二号はジャーザに掴まれた首を摩りながら、頭部のあったところから引き抜いた剣をベルトに突き立て、破壊。

しゃがみ込み、下半身の断面へと手を伸ばし……。

 

「待て!」

 

「……」

 

銃を突きつけ静止の声をかける一条へとゆっくりと顔を向け、そのままジャーザの下腹部へと手を伸ばした。

諸々の、人間のそれとあまり変わらない臓物を赤熱する手で掻き分け、何かを探す様に弄る二十二号。

血と臓物と内容物の焦げる臭いと、眼の前で繰り広げられている光景に眉を顰める一条が再び口を開く。

 

「お前の……君の目的は何だ!」

 

「目的、ですか」

 

人の内臓を掻き混ぜながら出すべきではない、将来の目的を聞かれた学生の様な軽く悩む声。

一条もまた、二十二号の行いにある程度の理解があった。

頭部を潰す、何かを、恐らくは未確認や五代の持つ力の源となる何かを抉り出し持ち去る。

そういった理由の分からない行為を除けば、二十二号が巻き込まれた市民への対応は、それなりに理性と社会道徳のある人間の振る舞いだからだ。

だが、それだけだ。

少なくとも、二十二号の振る舞いの全てを肯定はできない。

殺し方が特殊なのは、周囲への被害を減らす意味もあるのだろう。

それは分かる。

だが、二十二号の殺し方は数を重ねる毎に常軌を逸したものへと変わりつつある。

異質だ。

理解できる部分があるだけに。

何故、という疑問が余りにも強くまとわりつく。

 

「平和に、生きること」

 

「何?」

 

しゃがみ込んでいた二十二号が、腹部から焦げた肉塊に包まれた何かを引きずり出し、立ち上がりながら天に掲げた。

手の中の何かを太陽に透かす様に、天を仰ぐように、トロフィーを天に見せつけるようにしながら。

手を伝い、血が体に溢れる事も厭わず。

ぽたり、ぽたりと伝う赤い液に顔を濡らしながら。

 

「命の危機に怯えず、隣人を疑う事無く、穏やかで平穏な生を過ごす事」

 

「なら、何故」

 

「必要な事だからです。全てが」

 

穏やかですらある声。

一条は、この様な声で話す人間を知っている。

或いは熱心な宗教家。

或いは熱狂的な思想犯。

一般的には理解できない、曲がらない何かを心の中に備えてしまった人間のそれ。

 

「後、二体。それでゲリザギバスゲゲルは終わり、究極の闇を齎すもの……ダグバが姿を表します」

 

「……それを伝えて、どうする」

 

「五代さんへとお伝え下さい。凄まじき戦士の力が必要な時が来ると。そして、あなた方も、できる限りの用意を」

 

ひょう、と、二十二号がその場から跳び去り、高層ビルを飛び移りながら遠ざかっていく。

遠ざかるその後姿を、一条は苦々しい表情で見送った。

 

 

 

 

 




☆この後ヒロインを伴って昼飯を食べに行くマン
焼き肉か築地行くか迷いに迷ったりした
グロンギは嫌いだし東京に住むのは絶対やだけどいろんなお店があるので、殺した後や前に時間の余裕があると少し嬉しくなって散財してしまう
株やら数字系のクジやらで金はあるねん金は、平和は無いけど
殺し方が常軌を逸してるとか言われるけど普通に殺せるなら普通に殺しているので殺し方に問題があるのは全部強化され続けるグロンギが悪いので一切反省はしない
地味に一年以上度々モーフィングパワーを使ってランダムポップオルフェノクを始末していたりしたのでモーフィングパワーの扱いは達者
なんやかや帰りに東京観光をする間に色々お土産が増えてしまう
さして親しくない女子へのプレゼントは消え物、できれば気軽に食べれる既成品のお菓子がいいけど、ちょっとしたストラップくらいなら別にいいかなー、とか思ったりする
自覚は薄いけど、最近は戦いで生まれるストレスも少なくなってきたよ!
きっと神様がくれたご褒美なんやなって……

☆ヒロインちゃん
だいたいお出かけの時はいっつも主人公に手を引かれてるあたりにあざとさがある
記憶回りがどうなってるかは不明だけど、非グロンギでも自分から戦いに向かい続ける姿を見れば少なからず疑問に思うぞ
疑問に思うと共に心配したりすれば立派なリントのヒロインだ!
なお
ちな、水着を選んでくれたり浜辺での遊びを教えて付き合ってくれたクラスメイトの人にも多少反応したりする
こう……リハビリの成果が、なあ、出たんじゃあねぇかなぁって、そう思うしょ……?

☆五代さん
白いトップムセギジャジャの視線を気にしすぎて二十二号がゆっくりと水面から離れていることにもそんなに気を裂けなかった
公式PVを見たお蔭で凄まじき戦士の実態を知って、ダグバを相手にどうするか迷っていたりするけど、そういう迷いがニチアサのヒーローには必要なのだ

☆OLさん
掲示板での犯行予告とか今やったらBPOとかがギャーギャーうるさくなる感じのゲゲルを遂行しようとした
因みに海が煮られていなければその場を逃れてゲゲル完遂を目指したし、ぜったいそっちの方が勝率はあった
予告ゲゲルはいいけど一軒一軒終わる毎に新たに予告した方が成功率は上がったのでは……?
ベルト狙いも計算に入れるガチ勢
なおベルト狙いは対策済みだったのでそこが隙になって殺された
ベルト狙いじゃなくて首を刎ねるなりなんなり狙った方が勝率は高かった疑い
巨乳メガネOLとか盛り沢山なのにすげぇ纏まってる欲張りセット、なおただのコスプレ

☆一条さん
眼の前で五代さんが蹴り飛ばされてきたのも、戦いに巻き込まない為なんだろうなと前向きに解釈して受け入れたりできるけど、それでもお前のやり口あんまりじゃない?
とか思って話してみたらもうだいぶヤバイヤツになりつつあるんじゃないかという疑いを深めてしまった
警察も着々と用意は進めている
何時迄もガヤでは終わらないのがクウガ警察なのだ

☆貴賓席の白い人
現場主義なので立ち見でも気にせず楽しく観戦してしまえるのだ
序盤で退場してしまった五代さんの為にテコ入れ企画を考えたりもする有能
そのへんは多分次の次の話で



どんなに伸ばしても後三話くらいかなクウガ編
エピローグとかも換算したらどうなるか知らんけど
アギト編はクウガ編ほど戦わない可能性があるけど許してね
このSSは平成仮面ライダーオリ主残酷絵巻ではなく平成一期を振り返ったりするのが目的な気がするのでそういう事もあるある
どうにかこいつ東京に行かせらんないかなぁ……

次回、VS閣下








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