オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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118 VSドラゴンフライ

橘さんの元々所属するBOARDは既にアンデッドの手によって壊滅している訳だが、所属する生き残りには未だに給料が支払いされ続けている。

そも本拠は幾度となく移転を繰り返しており、表の社会では壊滅した、なんて情報は欠片も流れていない。

社会的に見て、未だ橘さんは研究所職員という扱いになるのである。

そしてライダー専任で就職した剣崎一真とは異なり、研究員兼任であろうと思われる橘さんはそれなりにマシな給料を貰っている筈だ。

いや給料の額面は関係ない。

社会的に、まだBOARDは研究所として活動を続けている事になっている(そして実際に天王寺配下を主として未だ運営が続けられている)という事だ。

 

……これに関して、何故生き残りの剣崎一真一行はそれに疑問を持ち、BOARDの母体となる組織なりなんなりに連絡をしようとしないのかという疑問もある。

まさか白井虎太郎の家に居候になっている上に生活費その他を全て負担させていた、という事も無かろうに、支払われ続ける給料に疑問の一つも覚えなかったのだろうか。

そしてこれからどう動くべきか、新たな活動拠点をどうするかの問い合わせなりしていてもいいのではないか、と思うのだが、初期の彼等の少しどうかしているのではないかと思うレベルの精神的荒れっぷり(アレっぷりではない、荒れていたね、という話)から、そこまで頭が回らなかった、という可能性はある。

 

では、そんな橘さんが素晴らしき青空の会に入会するのは社会的に違法なのか。

難しい話に思えるかもしれないが、実は素晴らしき青空の会は謎の民間団体であって会社ではない。

契約らしき契約もなく、実は会員同士は法的に見て何ら関わりがある訳ではないので、他に本職があるのは別段問題ないのである。

金が出るから副業、という事になるかもなので本職の職務規定を詳しく確認する必要はあるかもしれないが、こちらは金持ちだ。

いざとなれば、支払われる賃金は私的に渡されたお小遣いであるとする事も、可能と言えば可能になる。

いや、実はこの処理も厳密には法的にちょっと……ホニャラララーって感じなのだけど、そこはそう、人間社会では結構な効力を発揮するあの力のおかげでどうにかなる。

それが権力!

これに対抗するにはちょっと社会文明を破壊できるレベルの物理破壊力が必要だが、今の俺なら多少はどうにかなるのでご安心だ。

 

表向きに何しているか一切不明な謎団体なので、所属しているという事を漏らして後で調べられると、変な団体に所属して休日によくわからんことしてる人、という、近所に居たら避けられる事間違いなしな称号を手に入れる事にはなると思うが。

それを言い出すと年若い青年の家に男二人女性一人が居候している白井家は相当ご近所の井戸端会議に話のネタを提供していると思うので、もうその辺は諦めて貰うしか無いだろう。

 

結局、橘さんは今も剣崎一行との付き合いを続けている。

こちらの渡した諸々の証拠資料を読んだ上で、今は天王寺の思惑に乗っていく方が良いだろう、という判断だ。

これには、権力の振るい方においてはやや穏健派で、犯罪者に過剰な暴力を奮った身内のバウンティハンター(そもそもこの国では成立しない職業なので自称と頭に付けるか報道の際は無職とされるだろう)を無罪放免で釈放させる程度の豪腕しか振るわない嶋会長では、日常的にアンデッド関連の事件に関わった人間を消し慣れている天王寺に対抗するのは難しいだろうという判断からだ。

 

その上で、ギャレンバックルは一時的に返納しているらしい。

素晴らしき青空の会の基本的な理念、敵、技術などを学んでもらう為に時間を取るためだ。

親しい人が自分の居ない所で殺されかけたので、この仕事を続ける事に危機感を抱いている、という事になっている。

嘘ではない。

殺されかけたのも、あと少し俺が手を出すのが遅れていたら死んでいたのも事実だ。

既に本人は意識を取り戻し、橘さんと感動の再会を果たしたのだけど。

実質くっついた、いわゆるカップル成立と言っても良いのだけど、結婚とかそういうのは全ての騒動が終わった後にするらしい。

橘さんは頭が良くて戦いが強くて顔も良く性格もなんか可愛いと見事に良い男なので、なごみさんがなびいたりする危険性を考えれば早々に結婚を前提とした相手がいる事を周知してくれるのは大いに助かる。

 

しかし、全ての騒動……?

小夜子さんは確かに戦争とか嘘とかつわりとか暴力が嫌いと作中十六話の回想シーンでも言っているが、つわりを嫌がっても子供が欲しくないと言ってる訳ではないし十年二十年未婚でキープされててもいいという話では……。

あ、アンデッドに関する話か。

それでもこれから四年くらい待たせるの……?

いや、全アンデッド封印の四年後に思い出したように詰み対策用の予備ジョーカーが出現するなんて想定してないのか。

そうなると来年か。

来年はちょっと魔化魍の動きが活発になるくらいだから、挙式を上げるには丁度いいだろう。

 

とりあえず、護身用にデッキの技術を排除し、それ以外の技術で作った習作の変身システムを渡しておいた。

一見して幸せ報告ではあるのだが、俺、アンデッドが全て封印されたら結婚するんだ、なんて死亡フラグがバリ3立ちしてしまった以上、丸腰の時間なんて百害あって一利なし。

彼には来年以降……来年になってアンデッド関連の後始末を終えて小夜子さんとのハネムーンを終えた後にも、素晴らしき青空の会での仕事が待っているのだ。

少なくとも人食いの純血ファンガイアどもを全滅させるまでは死んでもらっては困る。

 

古き良きヘルメット装着型で、デザインはヘキサギアと同じラインだが、技術的にはイクサと鬼の鎧、ライダーズギアのミックス。

新システム、ウォーメイジシリーズのスタンダード、ウォーメイジ・ヘッツァー。

イクサの兄弟機とも呼べる構造を鬼の鎧の技術により呪術的に強化し、全体的な馬力と強度を向上させ、拘束弾を初めとした補助的な役割を集約させたサブマシンガン型の簡易カイザブレイガンを二丁装備させたバランスの良いスーツだ。

 

BOARD製のバックルやデッキ程のコンパクトさは無いが、個人認証式なので他の人間が被っても変身システムとバレる事は無いだろうし、最悪、バイクに乗る時に常にこれを被っていてくれれば、スムーズに戦闘形態に移行できるスグレモノだ。

常がバイク移動であればヘルメットを持ち歩いていても不自然はないし、この待機形態の選択はある意味では必然と言える。

使う機会はそう無いだろうが、もしも使う機会があれば感想など教えて欲しい。

……総合力と安定性はともかく、アンデッドを封印できないという一点でどうしてもBOARD製のバックルに劣るので、直ぐにお役御免になるとは思うのだが。

 

それはともかくとして。

橘さんからの情報によれば、どうにも剣崎一行の人間関係は、割と俺の知識の通りかそれに近い形で収まっているらしい。

あの人好きするぶん殴りたい爽やか笑顔の人間のいろんな部分を煮凝りにしたような史上まれに見るおどりゃ糞ヒューマンアンデッド野郎なら、正直お近づきになりたくない初期のドロドロとした人間関係を、見ているだけで薄ら寒い友好的な態度で表面上薄っぺらく解消する事くらいはできそうなものなのだが。

恐らく、普段はジョーカー側に主導権を握らせているのだろう。

変に人間関係を良くして、ジョーカーを封印する時に躊躇われても困るという判断か。

それでいて、他のアンデッドよりも先に封印されてしまうと目論見が崩れてしまう為、最低限の手綱は握って好感度を調整している、と。

 

一応。

一応、あのアンデッドとかいう偉そうな種族でありながら堂々とバトルファイトの外の理屈で動いているゴルゴムとつるむ卑劣さ加減がなるほど人間の平均値野郎とは、共闘関係にあるのだが。

これ、もしかしたら、通常の戦闘時、あるいはBOARDのライダーが居る時に遭遇すると、ジョーカー側の判断で共闘出来なかったりするのだろうか。

……あるいは、あちらの何らかの思惑の為に共闘したくない、という時には、わざとジョーカーの思考を誘導して妨害し、いけしゃあしゃあと、いやーすまないジョーカーの意思が固くて操りきれなかったごめーんご☆とか言い出すつもりなのかもしれない。

 

それでこそ、である。

種族の平均値がそういう糞でなければ勝ち残れないというのがバトルファイトの真実なのだ。

事実として、毎回存在している筈の特別枠であるジョーカーの勝率が高くない事から考えるに、厄介な個体は他のアンデッドが徒党を組んで先に潰す、みたいな短期的な即席チームプレイも必要になってくるのだろう。

勝利を目指して種族を代表して戦っている癖に正面戦闘一辺倒で搦め手を使えない武人タイプはこの卑劣漢の爪の垢を煎じるふりをして指の一本も落としてやって欲しいものだ。

指の一本をとって喜んでいる所を横合いから殴りつけてトライアルの材料にしてくれよう。

 

ともあれ、実際どうなのかは不明だ。

近々、ドラゴンフライアンデッドの封印と共にレンゲルが運命的に現れたりするタイミングがある。

とりあえず、レンゲルバックルは恐らく俺の知る知識と同じ構造で完成しているのを確認できた。

いわゆるスパイダーアンデッドのおもちゃ状態。

これから、一番操りやすく、なおかつ遊んで楽しいおもちゃの元に自ら転移したりするのだろう。

スパイダーアンデッド時代に出来なかった瞬間移動が出来るようになっている辺り、やはりラウズカードに封印される事で異能が強まる作用があるのか。

ラウズアブゾーバーが無い限り上級アンデッドがAP充填にしか使えないのと同じ様に、同じカードでも、外から機械的に力を引き出すのと、半端な封印で中から力を行使するのでは結果が異なるのかもしれない。

あるいは、集合無意識の実体化であるという仮説を元に考えれば、封印状態は戦闘のための肉体を形成しなくて良い分だけ力に余裕があるのかもしれない。

 

ヒューマンアンデッドのやり口を見る。

半端に封印されたカテゴリーエースのカードを確保する。

リモートで解放されたアンデッドから限界まで細胞を採取する。

ついでに……レンゲルバックルは一度回収してしまおう。

 

にあおう──

 

粘性のあるような高い鳴き声。

ニー君が足元にすり寄ってきている。

出かけようとしているのを、気配で察知したのだろう。

まだ表を一人で彷徨くな、という言いつけをしてあるので、ロードインパルスがミラーワールド側で俺に付いて回っている間は、俺に追従するようになっている。

思えば、アンデッドベースの改造猫なのに、アンデッドにぶつけた事が無かった。

あるいは、戦いの予感を感じているのだろうか。

だとすれば将来有望なのだけれど。

 

「行くぞニー君」

 

しゅる、と、素早く肩に乗るニー君を伴い、アンデッドサーチャーの指し示す住所へと向かう。

さて、どれにぶつけるか……。

 

―――――――――――――――――――

 

都内某ビル、屋上。

無数に転がる人間の死体の中に、ドラゴンフライアンデッドが佇む。

ドラゴンフライアンデッドは下級アンデッドの中で特に強い、という訳ではないが、敵に回した場合は面倒なタイプである。

好戦的かつ、やや知的。

人間同士の……いやさ、人間に絆されたアンデッドの執着する相手すら見定める程度には人間的な情緒を理解し、それを利用する程度には頭が回る。

能力で作り出した眷属の蜻蛉を操り広い知覚範囲を得る事が可能な上、本人も高度な飛行能力を備える。

 

それでいて、その行動は完全に理詰めという訳ではない。

本能の赴くままに人間を、現行の支配種族を殺して見せる事もあり、自らの能力を全て効率的に使って戦う訳でもない。

 

カリス……ジョーカーの執着する親子を再び攫う事も難しくはない筈だ。

だが、それをしない。

ただイタズラに人を殺し、カリスに眷属を使者として寄越してみせて、戦いの場に駆り立てる。

無策にも程がある。

或いは、負ける、と理解した上で、自らを封印する能力を持つアンデッドを呼び寄せているのか。

 

アンデッドとしては並程度しかない超感覚は、このビルの階段をバイクで駆け上がるカリスのバイクの走行音を捉えていた。

より強く大規模な力があれば、より良い選択をしたのだろうか。

勝利を目指すのであれば、真正面から戦うよりも、カリスがビルの中にのうのうと入り込んできたところでこのビルを崩してしまえば生き埋めにでき、少なからずダメージを入れる事ができるだろう。

そうすればより戦いを有利に進める事ができるかもしれないが……。

もちろん、そんな事ができるだけの破壊力をドラゴンフライアンデッドは持ち合わせていない。

 

勝ちを掴みたい、という思いよりも、戦いたい、殺したい、という本能が勝る。

上級ではない、下級アンデッドであるが故の思考のバランス。

総体の願いでなく、結実した一個体としての本能こそが優先される。

だからこそ、その危機を避ける事ができた。

 

とっさに、無意識に身体を横にずらす。

ドラゴンフライアンデッドは蜻蛉の始祖……という事になっている、最も原始的かつ理想的な戦士としての実体だ。

しかし戦士としての形態を取るが故に物理的に失われた生物的特徴がいくつもある。

視界の広さもその一つだ。

ドラゴンフライアンデッドが理屈でものを考える事を優先できる上級アンデッドであったならば、今この瞬間に首か、腕のどちらかが切り落とされていただろう。

しかし本能を重視して形成された下級アンデッドの肉体は、物理的に喪失した生物的特徴を異能の一種として獲得させていた。

視界が届かない範囲も、見えているものとして扱える瞬間があるのだ。

 

かっ、と、硬質な音。

身体をずらすと同時。

それは背中に生えた飾りのような羽根の名残が切り落とされて欠け、破片が地面に落ちる音。

切り落とされた所で飛行能力に一切支障を来さない部位ではあるが……。

それこそ、カリスのカリスアローやブレイドのブレイラウザーで切りつけられたとて容易く切り落とされるようなものではない。

 

一瞬。

ほんの一瞬だけ、ドラゴンフライアンデッドの存在しない筈の、異能と化した270度の視界にそれを収めていた。

背部に虫の羽根とは似ても似つかぬ巨大なジェットブースターを吹かしながら飛ぶ、カブトムシにも似たフォルム。

時の流れが異なるのかと思わせるほどの速度の中で一瞬だけ捉えられたその像が、ふと背後で気配を持つ。

前に飛び込みながら振り返り、見えない完全な死角と化した背後へ向けて両刃のダガーを振るう。

 

ぎゃり、と、ダガーの刀身をバターの様に容易く切り裂きながら大太刀がドラゴンフライアンデッドの身に迫る。

或いはドラゴンフライアンデッドのホバリングが薄羽を高速で羽ばたかせる物理的な飛行のままであれば態勢を崩していただろう。

だが、地面に踏ん張ること無く宙に浮いていたおかげで、大太刀が振るわれる勢いに押されるまま後方にスライドすることで、どうにかダガーが切断されるよりも先に大太刀の軌道から逃れきった。

しかし、慣れない背面飛行しながらの戦闘機動の為にホバリングを保つことができず、その場に一度、後ろに押される勢いを残したまま、屋上の高台から数メートル下のコンクリの床に着地。

 

ドラゴンフライアンデッドの見上げる先には、甲虫を模した和風の全身鎧。

カブトムシのアンデッド、だろうか。

或いは人類の作り上げた武装か。

……誤解される事も多いが、アンデッドとて自分以外の全てのアンデッドに関する知識を持っている訳ではない。

全てのアンデッドが集められた状態からバトルロイヤルが始まるわけでもなく、当然、一度のバトルファイトの中で他のアンデッドに殆ど会わずに敗退する個体も存在すれば、そもそも会ったことがあっても覚えていない、という性質のアンデッドも存在する。

そして、相手がアンデッドであるか否か、という点に()()()()()アンデッドもまた存在するのだ。

 

横薙ぎに振るった大太刀を素早く戻し、ドラゴンフライアンデッドと同じくコンクリ床に降り、バットの様に大仰に大太刀を掲げ、八相の構えを取る。

甲虫武者、ドラゴンフライアンデッド、共に距離をおいたまま睨み合う。

互いの間には10メートル程の距離も無い。

武者の大太刀の長さ、武者自身の体躯、そして気配を発してから放たれた実際の斬撃。

そこから導き出される、一息で詰められる距離を考えれば、ギリギリで初撃を躱せるようにも思える。

だが、ドラゴンフライアンデッドは、目の前の武者が背部の絡繰で空を飛ぶ様を確認していた。

この位置は射程内。

ドラゴンフライアンデッドの飛翔能力は高くなく、瞬発力に欠ける。

ただ、武者が一歩勢いよく、ジェットと共に踏み出すだけで間違いなく一太刀食らう事になる。

 

何故、という疑問よりも次々に溢れ出す対抗策。

逃げるという選択肢が無為であると同時に湧き出したのは恐怖よりも戦意であった。

背後に跳んで、飛んで逃げる事が不可能、実行と共に両断されるとなれば、前に向かうよりも他に無い。

瞬間的な機動力に、そして膂力に勝る相手の間合いにあるとなれば、相手を打倒する事こそが勝利への道。

飛行能力を活かす事ができないとなれば、速度で勝る事はできない。

武者が斬りかかるその瞬間に、カウンターで刃の軌道の内側に潜り込むしかない。

ノーダメージとはいかないが、この距離を詰める動きを武者にとらせ、自分は直撃する寸前の僅かな瞬間に全てを賭ける。

 

そのドラゴンフライアンデッドの思惑を知ってか知らずか、武者がじり、じり、と、距離を測る。

或いは、何かを待っているのか。

いや、正しく待っているのだろう。

迫るエンジン音、バイクの主を。

 

屋上への戸をぶち破りシャドーチェイサーが、そしてその主である仮面ライダー、カリスが現れた。

カリスはそのままシャドーチェイサーから降りること無く、進行方向を武者と睨み合うドラゴンフライアンデッドへ向け、カテゴリー6のカードをラウズ。

 

『トルネードチェイサー』

 

電子音にも似た音と共にシャドーチェイサーが竜巻を纏い更に加速。

睨み合い、そして引く為の準備動作すらしていなかったドラゴンフライアンデッドに避ける余地はない。

……などという訳も無い。

いやさ、これこそ正に、ドラゴンフライアンデッド、甲虫武者、共に待ち構えていた切掛であった。

 

竜巻を纏い迫るシャドーチェイサーを前にドラゴンフライアンデッドの攻め気が薄れる。

カリスを前にしたから、ではなく、カリスのこのワンアクションこそが選択肢を増やした為だ。

それこそカリスは屋上に上がると同時にバイクを停め、カリスアローでの射撃を試みる事もできた。

しかし一度栗原親子を人質に取ったドラゴンフライアンデッドを確実に仕留める為に最短で出せる最大火力としてバイクアタックを敢行した。

そして、この攻撃の場合は、確実に、カリスとシャドーチェイサーはドラゴンフライアンデッドが接触する。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そう誘導するにはドラゴンフライアンデッドが一歩下がるだけで良かった。

 

アンデッド一体を斬り裂くのと、ラウズカードを発動しているバイクに跨ったアンデッドを斬り裂くのでは負担が異なる。

ドラゴンフライアンデッドを轢き殺そうとするカリスが盾になる事で、一拍分の余裕ができた。

逃げもカウンターも余裕を持ってこれを行う事ができる。

 

対し、甲虫武者は迷いなく、カリスを巻き込む軌道で大太刀を振るう。

当てて引き切るのではない。

それこそバットのフルスイングの様に、力任せに刃を当てに行く。

それは刃物、大太刀が折れるという心配など一切していない動き。

間に何が挟まろうと諸共に斬る、という自信の表れ。

 

竜巻を纏うバイクアタックがドラゴンフライアンデッドを轢き、いや、弾き飛ばす。

激突の瞬間にホバリングを開始したドラゴンフライアンデッドはその勢いのままに宙に投げ出され、ビルから落ちていく事で距離を取る。

寸前に攻め気を引っ込める事ができたのは、戦いを好む本能と戦略性が混沌と混じり合う下級アンデッドならではの判断か。

 

ビルから落ちる最中、ドラゴンフライアンデッドの視界が暗く染まる。

ブラックアウト……ではない。

頭部に何かがへばり付いている。

毛皮……いや、そう思えば次の瞬間には硬い金属質な感触。

手で掴んで引き剥がそうとした次の瞬間、ごり、と、頭部に硬い何かが押し当てられた。

それが銃口であると気がついたのは、頭部が吹き飛ぶような衝撃を受けてからの事であった。

 

落下の最中にホバリングを再開する事もできず、地面に激しく激突するドラゴンフライアンデッド。

しかし、仮にも不死身の存在であるアンデッド、その程度で死ぬ事も無い。

頭部を激しく変形させながらフラフラと起き上がる。

 

──なおぅ……。

 

全身をのっぺりとした金属に覆われた異形、しかし、骨格から明らかに猫とわかる。

青と黒、口元のみを白く塗装され、目元を感情を感じさせない白濁したレンズに覆われた、絡繰猫。

それが、すっくと、二本足で、ドラゴンフライアンデッドの目の前に立っていた。

片手には、極めて銃身の短いガトリング砲。

空の片手を、腹部の装甲スリットに差し込んだかと思えば、そこからずるりと、長大な、ともすれば猫の背丈の数倍はある大剣が引き抜かれる。

 

ガンッ!

 

大剣の切っ先が力強く地面に叩きつけられるのと同時、ドラゴンフライアンデッドが猫に襲いかかる。

 

―――――――――――――――――――

 

一方。

ビルの上で、ドラゴンフライアンデッドを跳ね飛ばしたカリスが、振り払われた大太刀によって切りつけられる。

ラウズカードの効果で行われた加速は、ドラゴンフライアンデッドを跳ね飛ばす事でわずかに減速したものの、進行方向の斜め上から振り下ろされる大太刀を避けられる程ではない。

纏う竜巻も、斬撃の軌道を変える事は無い。

嫌に堅牢な作りの大太刀の刃が、シャドウクリスタル製の装甲も、ブラックスキンも、容赦なく斬り裂いて、カリスはバイクに跨ったまま緑色の体液を撒き散らしつつ、シャドーチェイサーから振り落とされる。

 

一刀両断される事無く、装甲と肉を裂かれる程度で済んだのは、それだけカリスの持つ特殊能力、二次装甲であるカリスベイルが強固であった為か。

いや、それだけではないだろう。

この場に優れた動体視力を持つ存在が居合わせたなら、カリスの肉体が斬撃を受けた端から、刃を押し返す様に肉体をわずかに再生させていたのが見て取れただろう。

カリス由来でもジョーカー由来でもない、長ずれば神にも至ると言われる人間の特殊能力、モーフィングパワーだ。

或いは、希少性の高いヒーリング系の超能力も併用されているのだろうか。

もっとも、その超回復能力による防御をカリス自身は自覚していないのだろう。

起き上がりながら、ただ獲物を取られそうになった事に、そして斬りつけられた事に怒りを表す。

相手が何者か、という事を確認する事すらしない。

 

「貴様……邪魔をするか!」

 

「そうだと言ったら?」

 

カリスがカリスアローを構え、斬りつける。

対する甲虫武者はそれを大太刀で受け止め、鍔迫り合いの中、互いの頭部がぶつかり合う程に近づく。

 

「シンプルな奴だ」

 

半ば笑う様な甲虫武者の声に応える事無く、カリスがラウズカードをドローし……。

 

「何やてんだお前ら!」

 

ビルのエレベーターから、剣崎一真が駆け寄る。

アンデッドとは異なり、人間的感性を持つ剣崎からすれば、カリスと刃を交える甲虫武者はライダーと似た系譜、カリスと同じ様に自分の知らないライダー、或いは警察の装甲服部隊の様に、別の組織の強化服の一種であると一目で確信できたのだろう。

腰に巻いたブレイバックルのレバーを引き、

 

「変身!」

 

前面に展開されたオリハルコンエレメントに飛び込み、仮面ライダーブレイドへと変身を果たす。

それすら無視してカリスアローに新たなカードをラウズしようとするカリス。

その腹部に甲虫武者の膝蹴りが叩き込まれた。

鳩尾に当たる部分は下にせり出した胸部装甲のおかげで守られてはいるものの、ラウズカードはカリスアローにラウズされる事無くすり抜けていく。

カードなどを使用するシステムの弱点だ。

リーダーの類を破壊されずとも、カードを装填する瞬間を狙われてずらされるだけで一つの行動を丸々無駄にされる。

そのままカリスアローの刃の無い中心部を捕まれ、カリスは駆け寄るブレイド目掛けて投げつけられた。

 

「うぇっ!」

 

投げつけられたカリスを庇うように受け止め、その勢いに倒れ込む。

尻もちをつくブレイドを尻目に、ビルの端へと走り出す甲虫武者。

 

「待て!」

 

ブレイドの制止に振り向く素振りすら見せず、甲虫武者は背部から甲虫の羽根とジェットエンジンの混ざった様な機構をせり出させたかと思えば、そこから火を吹き出しながら空へと飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてる内になんかドラゴンフライアンデッドにフォーカス当てちゃったからいったん区切るね

☆ヒューマンアンデッドが実際どういう意思で戦ってるか確認したいだけの男
確認したいからちょっと直撃したら死ぬくらいの勢いで斬りかかるね
普通の生き物なら直撃したら死ぬってだけで殺すつもりで斬りつけてる訳ではないし相手はアンデッドだから封印の意思が無ければセーフ
まぁこの程度で死ぬような相手なら共闘する意味もないし……

☆ニャンニャンアーミー一号ニーくん
なおこのSSの原作は実写作品なので、立ち姿はリアル猫なのだ
全身のっぺりとした機械装甲に覆われたリアル猫が二本脚で立って猫手にガトリング嵌めて猫手で大剣持って迫ってくるだけだからセーフ
猫が二本脚で立つとどんな感じかは猫・仁王立ち、で画像検索でも掛けてもらえば良し

☆ドラゴンフライアンデッドを初めとした変な挙動する下級アンデッド達
一年の中の戦いと見るから不自然に見えるけど、よくよく考えればバトルファイト、明確な開催期間とかは決められてないんだよね
だから実はリザードアンデッドが超連勝しまくってVやねんしてたんでなく、一回優勝した後に恐竜繁栄させまくって味方として運用して一回のバトルファイトを億年単位で引き伸ばしたという可能性もあるのではないだろうか
そう考えると、効率行動ばかりを取るというのは戦略的に正しいとは逆に言えなくなってくるな……
むしろ動物としての本能に任せた行動を取ったほうが有利な可能性があるのではないだろうか
でもそれが現代社会の中で繰り広げられるニセバトルファイトで通じるかはまた話が違ってくるのだ

☆ニセカリスことジョーカーこと相川始(真)
ヒューマンアンデッドの被害者
だけど計算ずくで動くヒューマンアンデッドよりも栗原親子からの好感度は高くなりがち
認識を狂わされているので、ヒューマンアンデッドに乗っ取られている時の記憶に不自然を感じる事ができないでいる
人間が出せる能力は全部出せるけど、人間の事を理解できないというのもまた人間の特徴ではないだろうか
まぁヒューマンアンデッドがガバッた場合は主人公がカバーするのでよっぽどの事が無い限り封印される

☆セリフ部分どうするかかなり悩む今期原作主人公
小さい「っ」が抜けてるとかは誤字ではなく悩んだ結果の部分だから誤字として報告しなくて大丈夫ですよ
かといってシリアスな戦闘場面で半角カタカナを使うのは違うよなって思うのでこういう形になった
中の人は現在はユーチューバーとして結構登録者も居たりする

☆またまた出番が無かったムッキー
中の人の役者さんは辞めて実家の食堂を運営してるらしい
同じくユーチューバーをやってるけど登録者数はそんなに伸びてない
でもオファーされたらちゃんと声は当てると決めてるあたりいい人そうではある

☆ウルトラマンZのそういえばっていう話
もしかしたら既にどこかで話題になってるかもだけど
ゼロがボイスドラマ時点で徐々に流されつつも頑なに弟子であると認めないのって
最初は面倒だから断ってたけど、後に他の連中にZとAの関係聞いて
「名付け親にまでなってるAさんが居るのに俺が師匠名乗れる訳ないだろAさんを頼れバカ!」
みたいな話なんかなぁ……
ていうかボイスドラマで恐縮しちゃうから六兄弟を師匠にできないって言ってたの、恐縮の対象がAも含めるとしたらかなり複雑な関係そうだよね
すげぇ偉い人に何らかの縁で名を授けられた、くらいの感じなのかとも思えばAに対する呼称は「兄さん」だし
……実はAに頼めば師匠になってくれたけど、それをおしてゼロに弟子入りを頼んでたとしたら、やっぱり特別な思い入れがゼロ対してあるのか
そしてそのゼロがAとの関係に言及してないのは、単純にZに関して興味無くて調べてないから知らないのか
ゼロが調べた範囲でもZ側がAに師事できないなんらかの理由が理解できて、それを慮っての事なのか……
そもそもAが名付け親で本人に対して兄さん呼びという事はある程度交流がある相手は兄さん呼びという事で
かつ、セブン、レオはゼロを師匠とした場合の師の師と言えば我が師も同然というおまるの聖闘士理論で師匠呼びは当然として
ジャック、ゾフィーがなんて呼ばれてたっけ……?
必殺技勢は影が薄いんじゃい!
上二人を今は除外して考えるけど、実はZくん、マン兄さんタロウ兄さんとも個人的交流がある?
そうすると六兄弟の半分が知り合いとかお前本当に一般未熟な警備隊員か?
ますますバックボーンが謎に包まれるなZくん
快活な性格っぽいのにバックボーン一切不明とかお前実は左翔太郎か?
或いは無愛想な宇宙人と思われたくない方のXの系譜か?
はんぶんこ怪人ならぬ三分の一巨人め……!


アマプラの配信が有料になってしまったからTELASAで原作流しっぱなしでこの近辺の話を料理とかしながら聞いてると
話を作れそうな原作話がいっぱいあってとても困るし嬉しい
ちょっと助長になっちゃうかもだけど許してほしい
実はこれまでの話で一番細々と原作に絡みに行く話になるかもしれない
と言いつつ次の話がどうなるかは未定でもある
たぶん次は猫と戯れるドラゴンフライアンデッドと、そこに横槍を入れようとするレンゲル初登場から、かな?
少なくともこの時点でレンゲルのリモートを防ぐか出てきたアンデッドはバラバラにしないといけないし
だから、もしかしたら、レンゲルファンには申し訳ないけど、初登場補正はレンゲルから奪われてしまうかもしれない
そういう訳で、次回も気長にお待ち下さい

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