オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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120 スパイダーアンデッドの驚異!

レンゲルが不思議そうにひしゃげた片腕を見詰めると、その腕はまるで逆再生の様に元の形に戻っていく。

それが真っ当な治癒能力の類ではない事は、再生までに鳴り響く肉と骨を磨り潰すような音から明らかだ。

が、その負担は()()()()()()関係が無い。

修復された片腕を試す様に、どこからか取り出した杖状武器型カードリーダー、醒杖レンゲルラウザーを手に取り、振り向き様に背後から駆け寄ってきていたカリスのカリスアローの一撃をいなし、蹴りを叩き込む。

 

いや、より細かく見るならば、カリスアローの一撃を完全に受け流す事ができている訳ではない。

レンゲルラウザーは三尺(約90cm)程のダガーモードから倍以上の長さを誇るザッパーモードへと変形する可変杖だ。

今、レンゲルは長物の扱いに慣れていない為かダガーモードで振り回している。

にも関わらず、カリスアローの斬撃の威力を削ぐ程度で、その切っ先は確かにレンゲルのボディを斬りつけた。

武器を扱い慣れていない証拠ではあるが……。

そもそもレンゲルにとって、ある程度のダメージはまったく問題にならない。

なんとなれば、仮面ライダーレンゲルを構成するボディの大半は、レンゲルにとってある程度の補填が効き、痛痒も感じない後付パーツに過ぎない。

 

ある意味で言えば、今のレンゲルの肉体強度はカリスのそれを上回る。

最新技術で製造されたとはいえ、基礎スペックでカリスを下回っている筈のレンゲル。

そんなレンゲルがカリスを一時的にも上回る事ができるのは、自らへのダメージを顧みない立ち回りの強気さにもある。

極論、ライダーシステムを稼働させる為に必要な()()の部分が死んでさえ居なければ、目を潰されようと、手足を失おうと、レンゲルは怯むこと無く戦いを続ける事が可能なのだ。

 

こと正面戦闘において、内部の肉体部分が悪さをしなければ、カテゴリーエースの操縦するレンゲルは、ラウズカード運用型の中では最強のライダー足りうるだろう。

だが……。

 

カリスの斬撃を()()()()()()()()程度の距離感で避け続けるレンゲルの頭部に細い金属の蔦……鞭の様に撓る刃が絡みつく。

甲虫武者だ。

元は脇差であったものをいかなる術法を持ってか変化させたのだろう。

 

「ベルトを狙え!」

 

その声にはっとした様に顔を上げたカリスが、至近からカリスアローの射撃を放つ。

狙いはレンゲルのベルト。

しかし、目元を撓る刃に半ば切り裂かれるようにされながら拘束されている筈のレンゲルは、更に刃が深く食い込む事も気にせず身を捩り、更にレンゲルラウザーを持つ手をベルトの前に翳し、カリスアローの射撃からベルト……レンゲルバックルを守り抜く。

だがそれも時間稼ぎにもならない。

カリスがカリスアローを振りかざし前から迫り、頭部を捕まえる鞭刃の主である甲虫武者は先と変わらず、無手の掌打の構えのまま待ち構えている。

 

前門後門ともに塞がれたレンゲル。

カリスアローの射撃を喰らい、レンゲルラウザーを掴んだまま変形した拳を、躊躇いなく自らの頭部、カメラアイであるジェネラルスコープへと叩きつけ、粉砕する。

頭部パーツの中で最も強度の低いパーツであり、鞭刃の食い込んでいた場所でもある。

それが砕かれ、内部へ陥没した事でその分緩くなった頭部の拘束から逃れ、そのまま肩からカリスへ、全身で打つかるようなタックル。

 

捨て身のタックルで距離を取られながら、カリスは冷静さを取り戻す。

不意を撃たれて不覚を取ったが、なるほど、如何に強く痛みに怯む事が無くとも、レンゲルはライダーシステムを使った戦士だ。

ベルト……バックルを破壊されてしまえば脅威にはならない。

 

カードを一枚。

まず取り出したのはブレイドだ。

レンゲルの一撃を受けてから実時間ではまだ十数秒。

中身は未だ生身の人間である剣崎は復帰までに一番時間が必要となったが、甲虫武者とカリスのやり取りは把握していた。

ライダー同士の戦いは慣れていないが……兎にも角にも変身を解除させてしまえば良い。

ブレイラウザーから取り出したるはスート・スペードの4、タックルボア。

未だカリスと甲虫武者に意識を取られているであろうレンゲルに対し、意識の外からの突進攻撃を狙う。

 

しかし、カリスを弾き飛ばし、レンゲルラウザーをサッパーモード……高速振動し敵を斬り裂くクローバーエッジを備えた長杖へと変化させ、甲虫武者へと油断なく向き直っていたレンゲルは、ブレイドのカードドローに即座に反応を示した。

視覚を半ば失いながらでも活動できる、いや、仮初の肉体であるレンゲルにならずともカードのままレンゲルバックルを転移させ適合者の元に向かう事ができる以上、カテゴリーエースの運用するレンゲルの感知できる範囲は未知数であると言える。

 

レンゲルが右腰のラウズ・バンクから一枚のラウズカードを引き抜く。

対し、起き上がる途中のカリスもまたそれに反応するようにラウズ・バンクから一枚のカードを引き抜いた。

 

カリスの引き抜いたカードはスート・ハートの10、シャッフルセンチピード。

対象の使用するカードと自分のカードを入れ替える効果を持つ、古代のバトルファイトでは如何なる用途があったか不明な一枚。

しかしこの場でその選択は適切だっただろう。

未知の相手が使用する未知の手札となれば、正面からの対抗ではなく、使わせないというのが一番に正しい。

それが間に合えば、という前提はあるが。

 

一番にカードをラウズしたのはレンゲル。

スート・クラブの10、リモートテイピア。

敵味方問わず、対象となったラウズカードの封印を解除し、解放されたアンデッドを意のままに操る。

 

リモートテイピアから放たれた光線がシャッフルセンチピードとタックルボアのカードを貫き、ボアアンデッド、センチピードアンデッドが開放される。

レンゲルから下された命令は単純、『好きに暴れろ』だ。

下級アンデッドは大体の場合、バトルファイトに真っ当に向かい合う者はおらず、半ば本能のままに動いている者が大半だ。

人口密集地で好きにさせたのであれば、間違いなく人を襲う。

そして、アンデッドを封印するのが仕事である仮面ライダーはそれを見逃すこともできないし、アンデッドを封印する事を目的として動くカリスもそれは変わらない。

この場を離脱するにも、ライダー二人の注意を逸らすにも、適切な一手だ。

 

ここにもう一人の戦士が居る事を考えなければ。

 

三人のライダーの中で最速のラウズ。

その代償としてレンゲルは一瞬、カードをラウズするほんの一瞬だけ、甲虫武者から意識を逸らしてしまった。

ぐず、と、レンゲルの腰に刃が深々と突き刺さる。

いつの間にか鞭刃から通常の脇差……よりも短く、しかし分厚い刃へと変化した甲虫武者の脇差が、背後から深々と突き刺されていた。

ぐり、と刃が捻るように押し込まれ、内部、レンゲルの芯となる適合者から、血液と内臓の中身が入り混じった、生理的嫌悪感を伴う匂いの赤い液体が、どくどくと刻まれる心音に合わせるように溢れ出す。

適切な治療を施さなければ、適合者はそう長く持たないだろう。

 

だが、そんなものは問題ではない。

問題なのは刺し貫かれたのは腰……ベルトの最後部であるナーヴ・コネクターだ。

装着者とスーツの神経接続を行う部位であり、その下には脊椎がある。

レンゲルは現状カテゴリーエースが操縦する形になっているが、それはカテゴリーエース、スパイダーアンデッドが洗脳した適合者の肉体を操るという形式になっている。

レンゲルのスーツ自体をそのまま動かす事ができない以上、肉体との神経接続が解除された状態ではレンゲルの性能は著しく低下する。

そしてもちろん、脊椎を損傷した場合の人間がどうなるか、というのは言わずもがなだろう。

 

スパイダーアンデッドは狡猾なアンデッドである。

カテゴリーエースは強力ではあるが上級アンデッドというくくりに無く、人間に化ける事も無ければ人語を喋る事もほぼ無いが、謀を行う知性は持ち合わせている。

完全に封印されたふりで、仮面ライダーという新たな器を手に入れようとしたのもその一環だ。

そんなスパイダーアンデッドはこの状況を逃れる術を知っていた。

 

即座に適合者への精神支配を解除する。

こうすることで、今の今まで意識もなく痛みも無く操り人形のように無茶な戦いを強いられていた装着者の意識が解放され、蓄積されていた痛みが彼を襲うだろう。

スパイダーアンデッドの見込み通りなら、適合者は痛みに強い質でもない。

放たれる絶叫は今にもアンデッドを追いかけ続けるライダーの耳に、或いは周囲の人間の耳に入り大事になる。

筈だった。

 

腰の辺りで背骨を断たれた筈の中身……上城睦月が、下半身の感覚をなくして倒れる事も、腕を粗挽き肉に加工され背後から突き刺された刃物に内臓を抉られる激痛に叫びだす様子も無い。

いや、それどころか、突き刺された筈の部位から溢れ出ている血液と臓物も地面に滴り落ちる気配すら無い。

全身を、動けないままに立ち尽くすしかできない!

 

そんなレンゲル──スパイダーアンデッドの状態をまるで知らないとでも言わんばかりに、甲虫武者がカリスとブレイドに声を掛ける。

 

「こいつは俺が! 二人はアンデッドを!」

 

いつの間にか、いや、間違いなくそれが行われたのはリモートで解き放たれたアンデッドに、カリスとブレイドの視線が向けられていた間にだろう、レンゲルラウザーを持たない片腕が後ろ手に回されて、まるで背後から組み付かれているような形を装わされているレンゲル。

カリスとブレイドの側から見れば、甲虫武者がどうにかレンゲルを取り押さえているように見えるのだろうか。

いや、或いは、刃を突き刺す瞬間すら二人から隠蔽されていたのか……。

 

「わかった!」

 

初対面であるにも関わらず、明瞭でわかりやすいやり取り、単純で誤解の生まれようのない役割分担。

それは、戦場において共闘できる筈の橘、ギャレンと幾度となくコミュニケーション不全からの共闘失敗を繰り返し、未知のライダーであるカリスからも辛く当たられ気味であったブレイドにとって、とてもわかりやすく心地の良いやり取りであった。

先の、ドラゴンフライアンデッドへの仕打ちをもう忘れたと言わんばかりに甲虫武者の言葉に乗せられてしまったブレイドがボアアンデッドを狙って駆け出し、カリスが一度振り返り逡巡するも、逃げ出したのが一度天音を毒牙にかけたセンチピードアンデッドであるため、やむなくその後を追う。

 

その場に残されたのは、突き刺さる脇差越しにモーフィングパワーを流し込まれ、内部の無防備な適合者を操り人形に改造されて身動きの取れないレンゲル。

ブレイドとカリスの姿が見えなくなると同時にレンゲルを拘束しているふりを止めた甲虫武者。

そして、近くの茂みから事態を伺っていたニーのみ。

 

「ニー君」

 

──なぁぉ、なぁぉ、きゅるるるる……

 

全てを誤魔化し無く見通せる角度で見続けていたニーが甲虫武者の足元に媚びを売る様に擦り寄り、腹を見せながら喉を鳴らす。

これが猫、いや、野生動物にとって如何なる態度であるかを言う必要はあるだろうか。

生き物は死ぬことを恐れるものなのだ。

 

「そういうの良いから、ちょっとセンチピードアンデッド……赤黒い方の体細胞取るついでに援護してきて」

 

そう甲虫武者──交路が告げると、腹を見せて如何にも愛らしげな表情で腹を見せ身を捩っていたニーが片目を開き、動きを止める。

 

──なう?

 

何か忘れてない?

そう言わんばかりの仕草に、ため息。

 

「ちゅーる、プラス二本」

 

立てられた二本の指を見て、ニーは素早く身を翻し、センチピードアンデッドの後を追うのであった。

 

―――――――――――――――――――

 

ペットは良い餌を与えるとそれに慣れる。

良く覚えておこう。

ロードインパルスと同じ処置をすれば餌の問題も解決するのだろうか。

でもロードインパルスも偶にクジラとか熊とか猪とか鹿とか獲ってきちゃうし……。

趣味としての狩猟を減らす意味で、美味しい餌をこちらで用意するのは重要なことなのかも知れない。

 

それはともかく、ようやくレンゲルゲットである。

レンゲルバックル……というか、クラブのカテゴリーエースは単体で転移能力を備えるが、転移すると分かっていれば抑え込む事は可能だ。

無論それは永続という訳ではないが、分解する最中に逃げ出す、という事も無い。

ちなみに中身はいらないので、物理的破損を全て修正……じゃない、修復した上で、通行の邪魔にならない場所に捨ててきた。

寝ている間に財布がスられる、くらいの不運には見舞われるかもしれないが、生きているだけ大儲けではないだろうか。

幼少期のトラウマはそのうちカウンセラーにでも相談するが良いとおもう。

万が一の事を考えてレンゲルに適合できるトライアルを作る為に細胞サンプルは頂いたが、これを使うような事態にはそうそうなるまい。

そもトライアルを変身者にするなら適合者を人間に限定する理由も無いしな。

 

「そういう訳で分解したバックルがこちら」

 

「設計図は?」

 

「分解しながら作りましたよ、これです」

 

素晴らしき青空の会に調達してもらった研究施設で、白衣を着た橘さんにレンゲルバックルだったものと分解図を渡す。

 

「そしてこれが取り敢えず作ってみた習作の新レンゲルバックルです」

 

「なるほど、修正点は」

 

「スパイダー・スピリチアを排除した以外は殆どそのまま」

 

闘争心を増幅させる程度ならあってしかるべき機能だし、負の感情を腕力の倍力に使用できるというのは面白い。

で、だ。

橘さんに態々レンゲルバックルの研究に勤しんでもらっているのにも理由は当然ある。

BOARDの生き残りで、バックルの構造、変身システムに詳しいのは烏丸所長を除けば橘さんであり、現場で戦ってきた橘さんには変身システムにあるべきでない欠陥や必要な機能を理解してくれている。

ある程度自由に開発してもらっても、装着者の恐怖を増幅するような余計な欠陥を残さないというのは嬉しい。

恐怖を克服して強くなるというのが悪いとは言わないが……。

広く普及させるなら、そういう余計な試練要素は無用。

まるで銃の様に、渡されて、ある程度の訓練を行えば普通に敵を倒せる、戦えるシステムが理想なのだ。

 

「ただ……やっぱりこのシステムは面白い」

 

正しく仮面ライダー。

敵の、悪の力で戦う、というコンセプト通りのシステムだ。

他の変身システムとの共通点も多い。

 

「アンデッドの力を利用する……なら、アンデッド以外の力も利用できるかもしれない」

 

机に広げられた、()()()()()()()()()()()()

これらは、デッキに力を浸透させて強化する、モンスターとの契約のカードだ。

本来は、これから増産する予定のFAGやその量産型達に搭載、或いは配布する予定のものではあるのだが……。

 

「アンデッド以外の力を使う、ライダーシステムか……」

 

「最終的にアンデッドには全て封印されてもらう事になりますからね。システムを継続して使うなら、別の供給元を使えるようにしないと」

 

「まずは、やってみよう」

 

「必要な資材があれば言って下さい。調達可能なものならすぐに持ってきますから」

 

とはいえ、これも短期で完成するとは思えない。

こちらもこちらで、より使いやすい、ラウズカードの代替物を用意していこう。

 

―――――――――――――――――――

 

場所を素晴らしき青空の会の研究施設から青森の秘密基地に移して研究再開。

ドラゴンフライアンデッド、センチピードアンデッド、ボアアンデッド、カリス(ジョーカー)。

これらの細胞を使用したトライアルを培養している間に、更に別の研究を進める。

 

まず、封印されているアンデッドの、ラウズカードからの解放実験。

これはもちろんリモートテイピアを用いたものでは断じて無い。

そもそもの話、全てのラウズカードは封印状態で発見されたのである。

これが人為的に解放された以上、ラウズカードの作用に頼らなくとも、カードからアンデッドを解き放つ事は可能である、という事になる。

……実のところを言えば、このラウズカードからアンデッドを解き放つ仕組み自体は、既にBOARDのデータから拝借し、再現が可能になっている。

では何故、今の今までアンデッドの肉片を集めるなんていうまだるっこしい真似をしていたのか、といえば。

そもそも、手元にアンデッドが封印されたラウズカードが一枚も存在していなかったからに他ならない。

 

その点で言えば、レンゲルバックルの入手は一粒で二度も三度も美味しい。

今まで手元に無かった正規のラウズカードが一気に六枚も手に入った。

しかも一枚は封印が不完全な状態であるというある意味レアケース。

完全な封印とは?

不完全な封印とは?

どれだけの意識が残っている?

カードのまま完全な封印にできるのか?

 

先に、橘さんには取り敢えずのサンプルとしてアドベントカードを提供した。

しかし、アドベントカードとラウズカードは似ているようでまるで違う。

アドベントカードはあくまでも契約の証、つまりデッキとモンスターのリンクの様なもので、カードそのものにモンスターが封印されている訳でもないし、カードそのものが何かしらの力を持つわけでもない。

契約していたとしても、餌の供給が無ければ契約者へ襲い掛かってきたりもする。

逆に、契約の証でしか無く本体のモンスターはフリーである為、こちらのピンチにモンスターが自発的に動いて助けてくれる、というケースも有り得る。

 

スパイダーアンデッドは間違いなくカードの中に封印されている。

しかし、行動が完全に封じられているわけでもなく、なんなら自発的に封印前はできなかったワープで移動するし、カードに封じられたまま人を洗脳して操ったりもしてくる。

丁度、アドベントカードとラウズカードの中間の様な、半端な状態にあると言っても過言ではないだろう。

 

なんとなれば。

意図的に、ラウズカードにカードとしての機能を残したまま、外にアンデッドのボディを形成し兵士として扱えるようにできればなお良い。

リモートを使わずにアンデッドを制御できるのか、という問題は既に上級アンデッドが解決している。

アンデッドは集合無意識的なものではあるが、何も強靭な精神力を持っているわけでもなければ強い洗脳耐性がある訳でもない。

 

今まで秘密基地に警備を付けて安置していた、封印されていないだけで生きているとは言い難い状態のプラントアンデッドを除けば、まともに実験体にできるアンデッドは手元に無かった。

しかし、今はラウズカードが六枚もある。

少し大掛かりな施設と資材が必要ではあるが、健常な状態のアンデッドを秘密基地の秘密実験施設にお迎えすることが……。

 

「……………………」

 

むむむ。

 

「あの古臭い不死存在どもを、我がネオグロンギの礎とする時が来たのだ……!」

 

エアマントファサー!

言い回しはこれで良いとして。

イントネーションは……。

むむむむ……。

ネー(↑)オグロー(↓)ンギ。

うむ、この発音がいいかもしれない。

 

ただ、古臭い不死存在、というのは恐らくだが語弊がある。

彼等はまるで前回のバトルファイトの時の自分と今の自分が同一存在であるかのように振る舞う。

しかし、今の彼等の姿はあくまでも、人間が勝利して地球の覇権を握ることとなった後に実体を得たものに過ぎない。

なんとなれば、上級アンデッドの能力の、人間への擬態に限らず、高度な知性というのも今の地球の環境を踏まえての特典である可能性だってある。

恐竜が勝利していた時などは、或いは単純に上級アンデッドはより強く巨大な姿を取れる、という特典であったかもしれない。

 

無論、実際どうだったか、というのは確認のしようも無い。

本人たちに確認しようにも、彼等は言ってしまえば毎回バトルファイト毎に新しくその時代の代表種族達の意識を束ねて生成されるのだ。

或いは、彼等の意識すら、統制者、種族の垣根を越えた集合無意識の中に保管され、実体化の度にレンタルされている、という疑惑すらある。

プレイデータはサーバーの方に保管されますよ、という具合だ。

実際どうだったか、というのを尋ねても、今はこういう事になっているのだ、という情報しか得られない可能性は高い。

 

言ってしまえば、彼等は古くから戦い続ける代表選手でありながら、常に時代の最先端でもありえるのだ。

古くから存在しているから考えを変えない石頭、というわけでもなく、むしろ既存の生物よりも遥かに柔軟な存在であるのかもしれない。

なんとなれば、上級アンデッドですら人間との交流の中で考えを改める事案がある。

これが何を意味するのか。

 

―――――――――――――――――――

 

つまり、アンデッドに対して物理接触を繰り返すことで心変わりを誘発させる事は不可能ではないという事だ。

所謂、『わからせ』というものである。

クソガキがおじさんにプレス加工されて手足と首の生えた切り身としての自覚を得るように。

不死のアンデッド、定命の者を弄ぶ権利を持つ上位存在であるという間違った認識を改めさせ、人間に力を貸させて頂く事を許されたエネルギーソースである事を自覚してもらわなければならない。

 

ここは青森、八甲田山の奥深く、知る人ぞ知る武僧の修行場、現代の梁山泊、ネオサイバー赤心寺。

その地下深くに広がる広大な地下研究施設の一角。

無数の侵入防止、脱走防止のセキュリティに守られた、新兵器のテスト、或いは新戦闘ユニットの試験場の一つ。

ちょっとしたドーム球場程度の空間。

 

そのど真ん中に、解放されたスパイダーアンデッドが立ち尽くしている。

何故逃げる素振りが無いのか。

何故身動き一つ取らないのか。

それは、彼がその行動を諦めたからに他ならない。

少なくとも、今の彼にこの場から無事に逃れるだけの力は無いのだ。

万全な状態であるにも関わらず。

それは何故か。

 

もう何度も、繰り返し繰り返し、失敗する度に、万全な状態にまで回復させられた上で、この場所に連れ戻されているからだ。

拷問を受けるわけでもない。

脳改造をされる訳でもない。

ただ、逃げようとして、立ち向かおうとして、戦った果てに、この場に居る。

 

「えー、では、第48試合」

 

念の為に装甲服を身に纏い、アナウンスをするグジル。

 

「赤コーナー、蜘蛛類代表、スパイダあぁぁぁ、あんんんでぇぇぇっどぉぉぉぉ!!」

 

わ、と、湧き上がる声援。

声援というか、大量の駆動音。

スタジアム……実験室を警備する無数のヘキサギアとゾイド達の威嚇音だ。

定められた範囲を越えてスパイダーアンデッドが逃走を始めた場合、彼等が容赦なく火砲を浴びせる手はずになっており、五回くらいはそれでスパイダーアンデッドの実体が解けるレベルのダメージを負っている。

威嚇しているのはその五回の出来事を警戒して、事前にスパイダーアンデッドに警告を送っているのだ。

 

「青コーナー、赤心少林拳黒沼流アクガタ、小春ぅぅぅ交ぅぅぅ路ぃぃぃぃぃ!!」

 

同じく湧き上がる駆動音だが、どこかブーイングのようにも聞こえる。

ちょっと範囲系の奥義を試し打ちした時にヘキサギアを巻き込んでしまったからだろうか。

AIを度々見直している関係で、ちょっと個性が出始めているのは嬉しい限りだ。

ちなみに48回というのはグジルが来てからのカウントで、このどこに向けているかわからないアナウンスは三回くらい前から勝手に始めた。

カウント前、ジルが来る前に淡々とやっていたのを加えても、まだ三桁を越えない程度しかスパイダーアンデッドを磨り潰していない。

 

橘さんがスパイダーアンデッドを封印した状況は、他のアンデッドと変わらない。

つまり、スパイダーアンデッドがそういった特殊性を持っているのだとすれば、それはスパイダー・スピリチアを排除したとしても根本的な解決にはならないという事だ。

ではどうするか。

自発的に、誰かを操って何かをしよう。

そんな邪念が浮かばなくなるまで、心を引き裂いてやれば良い。

 

アンデッドは異形という事もあり、感情表現がわかりにくい。

今、俺は陽炎のユナイト状態で繰り返し戦っている。

十三種のファイナルベントも全て使った。

桜花バリエーションは大体見せた。

新造した諸々の武器も使った。

しかし、何度倒そうと、逃げる素振りこそ見せないものの、スパイダーアンデッドは戦いのゴングが鳴れば戦おうとするのだ。

どこまでやれば、スパイダーアンデッドの心は折れるのか。

そもそも折ることはできるのか?

これは、長い根比べになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レンゲル退場っていう話
タイトルは誤字じゃないから安心してね

☆なかなか帰ってこないので様子を見に来たグジルが来るまでひたすら広い試験場でスパイダーアンデッドと延々戦い壊しては直してを繰り返していたやつ
喋れない相手の心が折れているかなんてわかんないだろいいかげんにしろ!
最近、師匠からお前の技はちょっとアレンジ効きすぎだからちょっと別系統で分けろと言われて仮に黒沼流の分派であるとした
赤心少林拳に2つの流派あり!
その中の片方、黒沼流にも新たな分派あり!
その名は、赤心少林拳黒沼流アクガタ!
黒主体で金の差し色が入った武術家と言えばリオ様でしょっておもう
なんか死んだはずなのに後の戦隊で度々引っ張り出されてたよね臨獣拳の二人

☆戦闘中にまともに会話をした上に、ちゃんと役割分担をしてくれるなんて……!
(0w0)オリトイショニタタカテクレテル……!
憧れの先輩であった橘さんが表面上ライダーとしては引退してしまってその心の隙を付かれてしまった感はある
でもなんど騙されても人を信じ続けられるのが君の美点だから
お礼にアンデッドにならずに済む歴史をプレゼントして後年は清掃員とかじゃなくてちゃんとした装甲服で戦う系の仕事斡旋してあげるからね……

☆実はアンデッド特有の感覚器官でレンゲルが刺されてた事は気づいてた黒光りするライダー
まぁでも現代のライダーでも甘くないやつは居るんだな、と、考えを改める切掛をくれたので特に文句はない
封印の邪魔はしないって言うしな……
レンゲルの所有するカードが持ち逃げされた件に関しては、この段階ではカード収集には興味ない風なので何もなし
ラウズカードに明らかに他者がラウズカードを使う事を想定してるとしか思えないカードがあるのはなにかの伏線になるのだろうか……

☆( 0H0)b
星になった
嘘、地に落ちて土塊となる
今は土塊というより実験動物(Aが)
過剰な投薬とかストレス実験とかに使われるタイプ
そのうちネオレンゲルとか製造されるかもだけど

☆前職に仮面ライダーとか書く運命から逃れたムッキー
実はダメージは腕がひしゃげたのと内臓かき回されただけで、戦った記憶も無いので特にトラウマとかは無い
ただ、誰かとハイタッチで手を合わせると放す時に突如フラッシュバックして腕があぁァァァってなる可能性は否定できない
内臓混ぜ混ぜは偶に身体が動かなくなるとか半身不随になるなどの悪夢を見るようになる程度じゃないだろうか
物理的な後遺症は一切無いとおもう
光だ闇だは年食えば解決するし思い返しても良い思い出になるからな……

☆全力媚ニーくん
人間は怖い
はっきりわかんだね
でも仕事を振られるなら追加のちゅーるは当然貰う
この時代でちゅーるを作れるのは主人公だけ
だからちゅーる発売までは確実に裏切らない
未来人がちゅーるをもってきてもついていかないように躾けられているがはたして……?

☆記憶を元に作り出された怪しいところのいっさい無いジェネリックちゅーる
成分に特別なものは無い
食べすぎると太る



そういう訳でレンゲル周りのエピソードはマルマルカット
次回からはそれを踏まえて生きていくんだ夢中で
前もなんか似たことやったなって思ったらASHR兄貴だった
なんか騒動とか話を回す為の軸がライダーには結構居るね
ただブレイドはレンゲル周りのエピソードを長く書きすぎた感はある……ない?
でもそれを言ったらASHRさんもしかりなんだよなぁ
そんな原作に対して恐れ多くも文句を言うようなSSですが、それでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい

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