オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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あけましておめでとうございます(令和三年一月一日投稿のため)


127 他流派交流試合

実際、やるべきことは多くあると思う。やれることも多くあると思う。

組織化したファンガイアの殲滅などは急務ではある。

が、これは、ファンガイアが一概に組織化している訳でなく、スマブレの時の様に俺に非常に都合の良い勘違いから組織の構成員を本社内に全て集めてくれるという、鴨が葱と鍋と各種具材とガスコンロと包丁含む調理器具を持ってくるくらいのウルトラCをかましている訳ではないので、難しい。

社会に潜伏するもの、王に従うがそれはそれとして自分の都合があるもの、はぐれなど、下手をすればオルフェノクよりも纏まりがない。

大組織を壊滅させる上で一番厄介なのは、殲滅失敗からの地下組織化だ。

ことを実行に移すなら、もう少し狙いを定めてからが良いだろう。

 

現行のキング、そしてその他側近など、ファンガイアを纏め上げて組織化できるだけのカリスマの居所を全て割り出し、一度に殲滅するのが吉だ。

先代キングを復活させた上で二度と復活できないレベルで抹殺する必要もある。

或いはファンガイアが如何なる生物であるかを調べ上げ、行動の履歴、人間を捕食しているという事実を纏め上げて公表するのも良いだろう。

敵性種族がのうのうと活動を続けられているのは、人間たちに認知されていないから、という点が大きい。

実際、文字媒体の方ではファンガイアの存在が公表され、それを見分ける為の装置も存在した筈だ。

いくらかサンプルとしてファンガイアを捕まえて実験を重ねてこれを開発できれば、もはや気兼ねする必要はなくなる。

 

今後は全て自分で行うのではなく、そういう方面に力を割く必要も出てくるだろう。

ネオファンガイアなどは、実際どんな連中なのかも不明な為、ファンガイアを全て抹殺したとしても自然と生えてくる可能性だってある。

そも連中の出自が不明なのだ。どこから発生したとしてもおかしくはない。

そうすると一々対策して殲滅して、というのはいたちごっこねずみごっこというものだ。

トムとジェリーではない。

 

物事にはタイミングというものがある。

何事にも準備が必要で、その途中である場合は焦れったくても待つしか無い、ということもある。

急務ではあるが即時対応が難しい問題もある。

何もできない時でも時間は進んでいく。

 

ゼクターの研究などは現在進行系だ。

二十二号、あるいは陽炎として戦えばアンデッドとの闘いはよりスムーズに、戦闘というよりも作業として済ませる事が可能だ。

だが、ヒューマンアンデッドとゴルゴムの狙いがわからない以上、変に急いでなんの準備も出来ていない状態で最終決戦を迎えたくない。

ゼクターを完全な形で完成させた上でデッキシステムと統合すれば、対抗手段が一つ増える。

トライアルシリーズも増産し、ニャンニャンアーミーや1号のデータを参考にアニマルソルジャーを正式配備できればこれも心強い。

開祖に据えられて進められるままに立ち上げてしまった新団体、アクガタも修練を続けさせれば青森方面を守る戦力として期待できる。

 

既に、データはあるのだ。

ヒューマンアンデッドはこちらの監視に気付いているのかいないのか、ミラーワールドからの監視に関してなんの対策も取っていない。

当然、イーグルアンデッドが標的にするかもしれない神丘令に関しても監視をつけていた。

言動、行動、所持品から見て、そしてガイファード、デスファードの風間兄弟を護衛に付けていた事から、間違いなくあれは神丘令ではないだろう。

彼女の優秀な1000点頭脳が失われていなかった、というのは朗報だが、それは今はどうでもいい。

 

鎧気装。

自然界に存在する気を集中して身に纏う技術だ。

これを生身の人間が使用した場合、変身技ではなく、バフの様な形になる。

体内を巡る気の循環を操作するのと異なり、周囲の気を収束する、という関係上、通常の人間を超える量の気の運用が可能となるのだ。

無論、これは容易く使える技術ではない。

桜花を使う時の指先に匹敵する圧力の気が全身に満ちたとして、これを気の運用の拙い人間が行った場合、人体が破裂するか、或いは一動作が増幅されて部分的にもげていくか……。

 

一足先に道場破りさせて貰った市街地にある一般向け拳王流道場では、これを含め奥義を使える拳士は所属していなかった。

九條姉弟がその場に居れば話は違ったのかもしれないが、道場破りをした時に居ないのが悪い。

というより、そこまで容易く使いこなせるものではないのかもしれない。

が、そこはそれ。

夜叉丸、悟道、サキ。

この三名の協力により、生身の人間が使う混じりけのない生身拳王流の鎧気装の詳細なデータが収集できた。

ついでに目につく拳王流の看板やホームページなどは、所属拳士を穏便なる格闘戦で傷を付けずに全滅させた上で拳玉流へと修正させて貰った。

少なくとも近年の異種格闘戦などでは名前を聞かないので、それほど世間に影響は出ないだろう。

道場破りに負けた結果なのだから素直に受け止めてほしいものだと思う。

 

さて。

道場を構えている、ということは、道場破りを受ける事も織り込み済み、という事になる。

もちろん拒否もできるが、挑戦者を受け入れる習わしが存在する、という事だ。

道場の主というのは、例外なく強い。

チャレンジャーが現れてもその殆どに勝てる、という気構えが無いとまず道場を開かないからだ。

だから、道場破りが本気である、という場合、ちゃんと相手をして負かしに来るし、ちゃんと現代化した場所では契約書などを書かせてくる。

決闘罪、というのを避けるために、一応は交流試合の一種で、まぁ、組み手というか、スパーリングの一種ですよ、みたいな風にしてくれる訳だ。

違法でない形の道場破りを成立させるには、道場側の優しみが必要になってくる。

受け入れてくれた道場主には深い感謝の意を忘れてはならない。

トークスキルや煽りスキルなどを磨き、どうにかこうにか言いくるめる辺りから始めるのが良いだろう。

拳王流道場はそこら辺まだ90年代のノリが残っていた為、ざっくりと道場破りを受け入れてくれたが、そういう場所ばかりでもない。

 

一方。

道場に所属しない、或いは所属こそしているが常駐している訳ではない流しの武術家の扱いというのは現代社会において難しい。

所属してる道場に連れていき、先と同じ契約書を交わした上で試合を行うのがベストだが、そういう真似ができる相手ならそもそも流しの武術家なんてものにはなっていない。

一見していかに好青年に見えたとして、流しの武術家なんてやってる時点で社会性に関しては黒沼流の兄弟子ズと似たりよったりだ。

 

そういう相手と戦う、という場合。

まず、動機を与える。

相手からこちらに接触を取ってくるように仕向けなければならない。

そして、接触が叶った場合は、警察などの機関への他言は無用である事を約束させる。

できれば契約書を書かせて練習試合、他流試合の形に持っていく。

場所はもちろん相手の流派の道場を指定するべきだが……。

無理なら人気のない山奥とかで良いと思う。

 

普通の人間同士というのであれば市民体育館とかでも良いのだが。

欲しいのは、メタルファード……ガイファードの使う鎧気装の詳細なデータなのだ。

監視に使うヘキサギアのセンサー類は良いものを使っているが、ああいう貴重な他流派の気を使う技を観測する為にこしらえたものではないので、少し不満がある。

ああいうものを観測するなら結局、新技術を手に入れるたびにアップデートし続けていた我が身を使うのが一番都合が良い。

 

―――――――――――――――――――

 

そういう訳で。

 

「対戦よろしくお願いします」

 

ぺこり、と、剛さんへと頭を下げる。

 

「ああ、よろしくな」

 

さっぱりした雰囲気で頷く剛さん。

見た目だけで見れば、当時の姿からやや老化しているようにも見える。

が、体内を精査してわかるのは、彼が紛れもない機械の体だということ。

人間への擬態用のパーツがうまい具合に劣化して老化しているように見えているのか、あるいはファラーが寄生した結果部分的に老化したりするのか、興味は尽きない。

 

なお、拳王流の名誉のため、というか、同門が世話になったな的なノリで勝負を挑んでもらったのだが、彼が勝っても拳玉流道場の名称は元に戻らない。

負けて名前を変えられたのは道場の今の主と門下生の問題であって、道場を離れている自分たちが尻を拭って名前を元に戻すのは筋が違う、との事だ。

貴方らが道場に戻ってたらこうはならなかったのでは、とも思うのだが、今は道場に戻って後を継ぐよりもやるべきことが多くあるらしい。

ガイファードとデスファードが揃って日本に十年近く戻ることができないやるべきことが山のようにある海外とかいう魔境、恐ろしい話だ。

 

なお、兄である将人さんはそもそも同門の為に戦う、という真似ができる筋合いではない、との事で、立会人として見守ってくれている。

クラウンに利用されるままデスファードとしてガイファードと戦った事に関する負い目だったりするのだろうか。

偽神丘令はニヤニヤしている。

ムカつくかもしれないが彼女は殴ると死ぬタイプの人間なので殴ってはいけない。

 

互いに礼。

しばし様子見、距離をじりじりと詰め、まず剛さんから。

牽制の右の前蹴り。

逆足で横蹴り。

くるりと回り、前蹴りを放った脚での後ろ回し蹴り。

流れる様な綺麗なコンビネーション。

 

見える速度だ。

蹴りの威力も人間の範疇で抑えてくれている。

上段蹴り、二段。

膝を利用したコンパクトなもの。

とも思えば、蹴り足を戻す反動を織り交ぜた正拳。

 

見える速度で、見える位置に打撃を当てに来る真っ当な格闘術だ。

よくよく考えればこの手合とはあまり戦った事が無い。

武術と言えば殺法! という同門の兄弟子らや師範。

攻撃手段は最終的にンを殺す為の殺傷技術! という旧グロンギ。

人間殺す! というマラークやエルども。

人間食う! なミラーモンスターに、素人ながら相手を殺すために武器を振るうミラーワールドのライダー達。

光るちんちんを伸ばして挿入を狙ってくるオルフェノク達。

ホントにバトルファイトするつもりある?というくらいライバルそっちのけで人間を狙う(同時に解放されたアンデッドが争わず並んで人間を襲いに行く辺り筋金入りだ)けど、同時に人間は普通に殺しにかかるアンデッド達。

殺すことが主目的ではない武術、というのは、父に空手や柔道、剣道などを指南してもらって以来か。

 

退屈、とは思わない。

懐かしみすら感じるし、殺さず、一定の勝敗の基準を決めて行われる武術は文化的だと思う。

人間の速度、人間の威力で行われる武の交錯は将棋のようだ。

まるで将棋だな!

 

要するに肉体を使った知恵比べだ。

動作をゆっくりと行う組み手というものが存在しているが、それに近いものだと思う。

身体能力によるゴリ押しを封じて、互いに近い条件で技術、戦闘の組み立て方のみを比べ合う時などに行われるものだ。

無論、人間の速度で行われているので、常人の目から見れば普通に組み手をしているように見えるのだろうが。

 

蹴り技が主体に見える。

作品的には流行りの動きだったのだろう。

当時はK-1とかが流行っていただろうか。

 

当然、手で捌いていく。

蹴りは速度も威力も出るが、出の速さで言えば手技の方が勝る。

ローを警戒、二度、三度、合わせるようにローで迎撃。

慣れた頃に、軸足を踏みに行く。

 

踏む、というと語弊がある。

人体破壊術の一種で、足の親指と人差し指で相手の肉をねじ切るのだ。

そのために靴は履いていない。

最近の黒沼流では皆靴を履いているが、靴の無い状態ならみんなコレができる。

師範はこれで石くらいは粉々に出来た筈だ。

食らった事があるがこれが痛い。

無論、人体なら引きちぎれる。

ガイファード……風間剛の肉体は一度ガイボーグに改造されているのでどうなるか。

この一撃のみ、人間的威力制限を解除し、外面を保ったままで使える最高威力のねじ切り。

自慢だがミラーワールドライダーの装甲すらねじ切れる威力を備える。

 

これをローで弾かれた。

指先が危ないだけでそれ以外は普通の蹴りだ。

蛇を捕まえる時と同じ様なやり方で無力化できる。

が、今のローの速度は人間のそれではない。

 

「きみ、結構やるね。どこの流派?」

 

ざ、と、一歩引いた剛さんが口を開く。

 

「赤心少林拳、黒沼流アクガタ」

 

「アクガタ?」

 

「師範に分派しろと言われまして」

 

「ふーん、じゃ、箔をつける為に道場破りを?」

 

「いえ、拳の王という名は師範にこそ相応しいなと思いまして」

 

「師匠想いなんだな」

 

「それと、もう一つ」

 

―――――――――――――――――――

 

交路が拳を大きく引く。

左掌をまっすぐ前に、引いた右拳は力いっぱい弓引かれた矢の如く。

右拳が輝きを帯びる。

 

剛と将人が目を見開いた。

剛が周囲の気を収束し、拳を構える。

 

「臨技」

 

「王気」

 

交路の拳より先に、剛の拳が振り抜かれる。

 

「極星拳!」

 

迎撃を主眼に置いたのだろう。

だが、剛の拳は交路の左手に吸い込まれる。

誘導だ。

これが、もう少し警戒している状態だったなら通用しなかっただろう。

だが、直前の明らかに人間には出せない威力を秘めた蹴り、あり得ざる物理的エネルギーに変換された気。

これらが、目の前の未知の少年を、謎の敵、かもしれない、と思わせた。

故に、大ぶりの大技らしき動きを許容できなかった。

先に潰さねば、という思いが先走らせたのだ。

 

左に受けた極星拳。

この威力を受け流す様に身体が回る。

体幹を軸に受けた威力をそのまま右の拳に伝播させ、自力と纏めて相手に打ち返す。

後手に回った相手が自分より先んじる事を想定したカウンター。

カウンターにして必殺の威力を誇る桜花の崩し。

 

鬼薊(おにあざみ)

 

左から吸収した極星拳の気を、右の拳に乗せ解放する。

交路の狙いはこれにあった。

奥義は自らの目で見るのが一番わかりやすい。

そして、()()()()()()()()()()()()()()

拳王流の気の運用法をより正確に把握する為に必要な工程だった。

解放はあくまでおまけ。

拡散した物理的破壊力は散漫な衝撃波となり、剛にダメージを与えずただ吹き飛ばすのみ。

 

「ふふん」

 

吹き飛ばされた剛を嘲笑っているのか?

いや、違う。

ただただ、上機嫌に笑っている。

 

剛が構え直す。

顔つきは先程までとまるで違う。

同門の仇討ち……という名目で、よくわからない事をした若者の様子を見に来た先達としての顔ではない。

未知の敵を相手にする、闘争本能を湛えた鋭い眼差しは戦士としてのそれ。

 

両腕を回転させ、気を収束させる、拳王流奥義の基本動作。

剛の行うそれと、鏡写しの如く交路が腕を回す。

だが、動作と裏腹に、交路の行為は剛のそれとは大きく異なる。

剛が身体に収束させるのは世界に存在する気を七種に分類する七星気。

だが、交路のそれはより簡略化されている。

いや、解釈を異ならせたというのが正しいか。

戦に、死に、闘いに臨む為の力。

恐怖、絶望など、命の危機に陥った人間が発する火事場の馬鹿力の源とも予測される元来意識されることの少ない原始的な力。

これを使用者の制御された激情によりフィルタリングし方向性を与えた、赤心少林拳黒沼流アクガタ内部で研究の進む、戦闘に、攻防の形に特化した生体エネルギー。

これを、()()という。

 

「鎧気装!」

 

「臨気凱装!」

 

剛の身体が眩い光に包まれ、交路の身体が毒々しい紫の瘴気──臨気を爆発させる。

剛の肉体は人間を模したそれから、ガイボーグの機械の身体に寄生生物ファラーの融合した超生命体へ。

赤をベースラインに据え、白とも銀とも取れる縁取りも鮮やかな闘神、ガイファード。

一方、交路の肉体もまた新たな変化を迎えていた。

 

「その姿は……!」

 

「デスファードじゃあありませんよ」

 

将人の言葉に断りを入れる交路。

色合いはデスファードにやや寄っている。

しかし、それは対面するのが紅白のガイファードであるからで、単独で見れば似ても似つかないだろう。

傍から見ていた神丘令には、一瞬だけ二十二号の似姿に見えた。

だが、それも身体に張り付くボディスーツの様な靭やかな暗い黒の装甲故だろう。

 

この場でその知識を持つ者が居ないが為に例として挙げられないが、その姿は疑似デッキシステムで変身する陽炎に、そして、猛士の抱える術士にして戦士である鬼に酷似している。

だが、頭部を縁取る様に、そして胸部から突き出る様に存在する、鬼の如く険しい表情を浮かべるは金色に染め上げられた狼の獣面。

それは管理された呪術の発露である鬼のそれでなく、獣の魂を力と変える化身忍者のそれに近い。

 

「こうして」

 

ぐ、と、握る拳から紫電が迸る。

赤心少林拳にて扱われる人間の生体エネルギーである気とも、拳王流の七星気でも、アクガタの掲げる臨気でもない。

オーラの装甲化、肉体との同調に際して制御から離れた余剰エネルギー。

恐怖などのマイナス感情により放出される一般人の生体エナジーと同種のそれは、本来自ら放出するのではなく他者の放出したものを吸収するべきところのものだ。

臨気の装甲化、肉体の変異に使いきれなかった余剰分が放出されている。

未完成の術、技であるが故の収束率の甘さが原因ではあるのだが……。

 

「拳王流の究極奥義、その仕組を解析させて頂こうと思いましてね」

 

「それが道場を襲った理由か!」

 

「書類上は他流派との交流戦ですよ。怪我人だって出ていない」

 

ちら、と、交路の変身態が立会人である将人に仮面の下で視線を向ける。

険しい表情を向けてこそ居るが、剛の様に変身しようとはしていない。

デスファードとしてガイファードに戦いを挑んでいた過去があるからこそ誤解されやすいが、風間将人は弟である風間剛に比べて落ち着いた、思慮深い性格をしている。

理屈でものを考える節があり、それ故に後進への指導力に長け、拳王流道場で修行していた時代には同門の弟弟子達にも慕われていた。

ガイファード、剛にデスファードとして戦いを挑んでいたのも、闘争本能に溢れ、直感が鋭い天才タイプの剛に対する劣等感があったからこそ。

逆に、そこまでしなければ弟との戦いに踏み込む事ができない程に理性的ということでもある。

剛なら拳や蹴りが出るところを、事の成り行きを見守っている。

 

戦いが再開される。

だが、先までの交流試合、組み手然としたものではない。

打撃の音が重く、そして、傍から見ている常人である神丘令の目には二人が如何なる攻防を繰り広げているか捉えきれない。

人外の威力、人外の速度で行われる、人間の戦闘技術の応酬。

それは、神丘令を名乗る、警察として、G3ユニットの開発者にして指揮者としてアンノウンとの戦いを乗り越えてきた小沢澄子としての視点からしても未知の戦いだ。

 

ロー、ミドルを織り交ぜたキックが重い音と共に叩き込まれ、カウンター気味に迎撃されていく。

フェイントを絡めたコンビネーション。

細やかな打撃の応酬が故に大技を放つ隙が互いに見いだせない。

が、それは格闘家として見た場合の話だ。

 

「むぅんっ!」

 

交路変身態の全身から臨気が衝撃波として放たれ、ガイファードが数メートル吹き飛ばされる。

互いに拳も蹴りも届かず、必殺の一撃を放つには十分な距離。

ガイファードが両手を広げ、円運動と共に周囲の気を集め……、止める。

ガイファードの目の前で交路が変身を解除したのだ。

未完成の技である為に変身に制限時間がある、という訳ではない。

ガイファードもまた変身を解除する。

目の前の少年、交路から戦意を感じないのだ。

しばしの沈黙の後、交路がゆっくりと口を開いた。

 

()()()()の事を、一戦士として尊敬しています。ファンだと言ってもいい」

 

剛と交路の視線が交錯する。

 

「日本空手会無敵の兄弟にして、秘密結社クラウンを滅ぼした二人の闘神。なら」

 

剛は、交路から向けられる視線に含まれた感情の複雑さに、思わず息を呑んだ。

尊敬、憧れ、疑惑、恨み。

一番強く感じ取れるのは、諦念。

 

「未確認が現れた時、アンノウンが現れた時……何故、駆けつけてくれなかったのですか」

 

「それは」

 

多くの理由がある。

メタルファードはそもそも不自然な存在だ。

惑星外から訪れた寄生生物ファラーを拳王流の気の制御により抑え込み肉体に融合させ、その融合させた肉体の殆どは機械に置き換えられている。

元からそうあれかしと設計されて作られた改造人間と比べてもなお未知の部分が多い。

なにかの拍子でバランスを崩して一気に肉体が崩壊する、という可能性すら否定できない。

それ故に、命の恩人である結城博士の元で検査を受け続けていた。

そして、検査の合間は、海外にはびこる様々な秘密結社との戦いを繰り広げていた。

戦っていなかった訳ではない。

平和を護り続けていたと言っても良い。

どれもこれも、放っておけば世界が危ない、という様な敵ばかりだった。

今、日本に居ない多くの戦士たちは似たような理由でこの国に戻れないでいるのだ。

 

「貴方達は世界の平和を守っている。この国にも平和を守る戦士は多く居る。それもわかる」

 

危機は訪れていた。

人が多く犠牲になった。

世界でも日本でも。

どちらか、という天秤にかけられた。

秤は間違いなく、片方に傾けられたのだ。

 

「責めるつもりはありません。こっちはこっちで勝手にやらせて貰います。今回は、その為に協力して貰っただけなので。対戦、有難うございました」

 

ぺこり、と、交路が一礼し、背を向け歩き出す。

剛はそれに声をかける事ができず、将人は瞑目して何も言わない。

遠ざかるその背に、しかし、小沢澄子だけが声をかけた。

 

「貴方、二十二号のお仲間?」

 

歩みは止まらない。

しかし、振り向かないまま、言葉が紡がれた。

 

「仲間ではありません、しかし、志を同じくするものです」

 

「そう。……何かあったら、警察にも頼ってみなさい」

 

返事は無い。

三人が見つめる中、交路の背は森の闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 





新年一発目がこれかぁ
おーい、ライダー要素の行方を知らんかね

☆行間に言葉を押し込む主人公
あなた方→風間兄弟だけでなく海外に居るライダー含む正義の戦士全般
駆けつけてくれなかったのです→純粋な疑問
それもわかる→ここは本音
勝手にやらせてもらう→比喩表現は一切無い
仲間ではありません→本人なので
志を同じくする→本人なので
なんか駆けつけてくれなかったヒーローを責めるみたいな雰囲気を醸し出した理由?
大体の良識あるヒーローは例え殺し合うつもりで拳を交えていてもだいたいこういう会話を挟むと戦闘終了してくれるからね!
ぶっちゃけ鎧気装の技術が手に入った事でウッキウキだぞこいつ
なお、最期のセリフで
志を同じくするもの……
我らはネオグロンギ!
みたいな名乗りをしたくもあったが、最近アクガタを立ち上げたせいで所属が曖昧になりつつあるし身バレを防ぐ意味でも意味深に沈黙しておくに留めた

☆赤心少林拳黒沼流アクガタ
赤心少林拳の気、呪術で使用される諸々の生き物の気、霊体、フリーエネルギーなどを元に、新たな解釈の元で気の運用法を開発した結果、やっぱり臨気だよねということになった
マイナスの感情から生まれる気、というより、マイナスの感情が生み出されると同時に発生する、マイナス感情を発散する為に肉体性能を高めようと肉体が生み出す生命エネルギーの一種
臨気、という気があるのではなく、そういった生命の持つプリミティブなエネルギー及びそこから変換された攻撃的エネルギーを臨気、と定義した形になる
なお、臨気凱装や獣々全身変などを除き、命名法は赤心少林拳の奥義と同じく花や植物から取る形になっている
臨技『鬼薊』は気を使う敵を想定した桜花の変形、まぁ因果みたいなもの
名前の由来はある種の薊は硬めの棘があり触れるだけで怪我をしかねないからというのと花言葉から
ガイファードと距離を取る為に使った衝撃波も鳳仙花という技で、言ってしまうとリオ様の大魁咆みたいなもの、名前の由来は当然花言葉から
お前花言葉大好きだなおい
技にしろ武器にしろロボットにしろ、花由来の名前は花言葉で意味をもたせやすいのでめっちゃ作りやすいし作っていて楽しくなるのでおすすめ
それを数年後に読み返して新たな感情を想起させるのもおすすめ

☆同門を襲われたにも関わらずしっかり試合に応じてくれるし主人公がその場を離脱する為にやった何故助けに来てくれなかった系一般人演技にも真面目に取り合ってくれる人の良い風間兄弟
何が便利か
原作の時期から十年ちかく経過してるから、原作に比べてキャラ違うくね?と言われても、年取って落ち着いたりいろんな視点が増えたんだよ
で済ます事ができる点
手元に全話ある訳ではないからね……
でもタコラチャンネルで確認できる話もあるから知らんという人はそれを見ると良し

☆神丘令改め真の姿である小沢澄子さん
野生の1000点頭脳
でも1000点頭脳は言い過ぎかな……
平成は割と数字とか抑え気味だからそこまでいかないかもしれない
でも負荷を考えなければ初期クウガを再現できるって時点ですごいなって
分野が違うから主人公と二十二号の戦い方が似てる……みたいな見抜きはできない
二十二号が仲間を作っているか心配しての発言、ではなく
二十二号の仲間って女しか居ないわね……好色なのかしら
くらいに考えてる

☆メタルファードの生体とか医療とかに今世界で一番詳しい野生の1000点頭脳
片腕が義手
こっちは文句なしに1000点頭脳
たぶん本郷さんとか、小学校の頃成績で上回ってたやつらとか、ショッカー科学陣とかも

☆振り返る平成仮面ライダー一期
いい加減ちゃんと振り返る必要があるのでそろそろ普通に剣編に戻ります
話が進むと脱線して路線が変わっていくのが悪いところって指摘はもうされちゃってるからね
でも九龍城砦みたいな違法建築は楽しい



そういう訳で次回からはライダーの話に戻ると思います
脱線は書けない時の試行錯誤の後くらいに思って許して欲しいです
そういう訳で、今年もよろしくお願いします

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