オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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128 アンデッドの戦略

まず日常生活があり、その合間に戦いに備える。

この在り方が正しいか、というのは難しい話だ。

大前提として、一般的な市民の多くは戦いに備える事はない。

犯罪者には警察が、侵略者には自衛隊(あるいは米軍?)が、対応してくれるものとして日々を過ごしている。

自衛能力を向上させよう、という人種は極めて少ない。

例えば護身術などを教えるところもそう多くない。

税金を払っている分、国がそういった生命安全を保証する……保証する努力をしてくれる。

その保証なり努力なりが足りているかは知らないが。

知らないが、一般的に人は国の機関なりなんなりが自分たちを守ってくれる、と考えて生活している。

 

無理からぬ事だ。

例えば人間の不審者の場合、防犯ブザーを鳴らす、叫ぶ、助けを呼ぶ、逃げる、などで対処できる。

大体の不審者は目撃者を嫌う。

人が呼び寄せられる、という状態を作った時点で正常な判断力を持つ不審者は大体その場を離れてくれる。

しかし、人間の殺害、あるいは捕食、繁殖などを目的とする人外は違う。

ちょっとやそっと人を呼ばれたからといって引いてくれるということは無い。

そして、日本の銃刀法などが許す範囲の護身具というのはこれらに対して大体無力だ。

 

そしてなにより。

年一くらいで起きている大規模な襲撃などを除いて、敵性種族が人間を日常的に殺害して回っている、なんて事を、一般人は知らされていないのだ。

更に言えば、大規模な襲撃にしても、近年の三回の内二回は東京で起きており、オルフェノクの王のなり損ないの大発生なども、やはり、被害に会っていない人間の方が多い。

 

人々は知らない。

死後に起き上がり、仲間を増やそうとする灰の怪物を。

人間に紛れ込みこれを捕食し、裏から人間を支配した気でいる魔物を。

何が原因というわけでなく、自然発生的に生まれてくる人食いの妖怪達を。

人間の姿と知識を写し取り、これを殺して成り代わり続ける地球外生命体を。

 

そういう意味で言えば。

無軌道に暴れるアンデッドというのは、人々の危機感を煽るには丁度よい材料とも言えるだろう。

何しろ、それなりに一般市民に被害があり、アンデッドとライダーの戦闘には目撃者が多く存在し、それでいて、まともに報道される事はない。

警察の装甲服部隊、アギト部隊などは圧力を掛けられ活動規模を縮小させられているらしい。

つまり、アンデッド関連事件に警察は積極的に介入もできない。

アギトも装甲服部隊も、余程タイミングが良くなければアンデッドの暴れる現場に駆けつけるのは難しい。

市民からすると、それら警察の戦力がある筈の地域ですら助けが来ない、となる。

 

警察へのバッシングは強くなり、筋ものから銃器などを購入する人が増えている、なんて話もある。

ここらで装甲服などを警察のものと同じ仕様で量産してばらまいてもいいのかも知れないが……。

実際、装甲服はただのパワードスーツなので合法ではあるのだが、こういう物は警察の判断で違法である、という風に取り締まる事も可能になるので得策ではない。

 

外敵からの脅威に備える心構えが出来つつあるのは間違いなく、それはアンデッドの暴れまわる都心に限らない。

実のところを言えば、赤心寺に訪れようとする一般人が増えつつあるのだ。

まだ臨気凱装を始めとした臨技の類は情報公開していないのだが、アクガタの方で引き取ったちょっと精神張り詰めてる弟弟子達(というより、アクガタ内部では実質的に俺の弟子)の方から噂が広まりつつあるらしい。

何しろ彼らは年単位で山に引きこもって殺人武術を研鑽している兄弟子達世捨て人組とは異なり、曲がりなりにも数ヶ月前までは市井で暮らしていた元一般人だ。

なんならまだ親の庇護下に居てもおかしくない、という年齢の子も居る。

普通に携帯電話などを持っているし、なんなら赤心寺は黒沼流の本堂にもアクガタの拠点にもネット回線とPCを備えている。

 

所詮は鍛えていない一般人なので遭難しかけるなどして引き返すのが大半なのだが、稀に根性決まってる連中などが道半ばで倒れているのを発見されたりもする。

それは大体が登山客に見つけてもらえるであろう位置に水と食料などと共に放流するのだが、見込みがありそうかな、というのは、意思確認の元、赤心寺に誘導したりもする。

アクガタに回すかどうか、という見定めを黒沼流本家の方でやって貰っている最中だ。

 

先んじてアクガタで修行をしていたメンバーは大体が臨気凱装か、これと禁術とした獣獣全身変をニコイチした新技術、獣人邪身変を習得済みだ。

習得過程において皆心停止しかける、或いは臨気の制御に失敗して部分的に肉体が破裂する、壊死する、欠損するなどの場面も見られたが、鍛え上げた兄弟子らは比較的軽傷で済んでいた為、鍛え方の問題となるだろう。

パーツ欠けしてしまった弟弟子達はニー君で試したトライアルの肉体を移植する技術でちょちょいと修復してあげたので、今では元気に修行に明け暮れている。

 

副作用は今の所確認されていない。

要経過観察だろう。

こういう生体系の実験で人間を使ってデータを取れる機会は貴重だ。

人間の肉体をトライアルシリーズのものと置き換えるモザイク化手術は技術として確立しておきたい。

復讐心で我が身を省みる心が薄れているタイプの人はこれからも是非アクガタの門を叩いて欲しい。

臨獣殿予定地の門戸は何時でも開け放たれている。

 

また、今後増えるかもしれないアクガタの拳士に変身系の技を普及させる為、習得最低ラインまで鍛え上げたか確認するための専用施設も設置した。

最低ラインまでに達していなければギリギリ死なない程度に死ぬ、というレベルのロボタフを複数配備した戦闘シミュレーションアスレチックで子供から大人まで臨死の恍惚を気楽に楽しめるアトラクションとなっている。

シチュエーションとしては絶え間なく襲いかかる殺人級ロボタフ(殺怪人級の下の対怪人級の更に下くらいの難易度で、一般的な自動小銃などにより武装済みの歩兵部隊を蹂躙でき、戦車を相手にすると負ける程度のもの、なおかつ気弾を飛ばさないタイプのみを指す)の殺さないラインを攻めた攻撃に耐えきり、見事これらを全機撃破、或いは突破して最奥部に辿り着いて待ち構える対師範級(師範のスパー相手にも使用するスペシャルタイプ)に一撃でも加える事ができれば合格だ。

 

実際、アクガタに入っていない黒沼流の方の古参の兄弟子に試して貰ったところ、見事殺人ロボタフ軍団を全機撃破してみせ、なおかつ俺の頭部に一撃を入れて『殺すつもりか!』と一喝入れるなどの元気な姿を見せてくれた。

つまり、鍛え上げられた赤心少林拳の戦士ならばツッコミを入れる余力を残したまま突破できる、絶妙な力加減の効いた素晴らしい力試しの場が完成した訳だ。

なお、弟弟子達は獣人邪身変した上でギリギリ突破できるかどうか、という状態なので、少し技の習得を焦りすぎたきらいもあるかもしれないが、結果的に生きてアクガタの暫定奥義を習得できたので結果オーライだろう。

 

難易度が高すぎるのではないか、という苦情も弟弟子から上がってきたが、これは俺、そして俺経由で一連の技術を習得しているジル、グジル、難波さん、そして猛士から出向してきてくれたスペシャルゲストの仲村くんを含めた五人が変身無しで危うげなくクリアした事で納得してくれた。

何度も言うが、一定以上の肉体スペックと戦闘技術があればなんとかなるのだ。

仲村くんは兄弟子と同じリアクションをしていたが、彼は猛士メンバーだけあって人道的な部分がある為これは仕方がないと思う。

しかし武術家や戦士が歩むのは武道や修羅道なので人道とは関係ない。

殺法を振るい合うのが戦いなのだから修行で死ぬとかならともかく死にそうな目に合うのは仕方のない話なのだ。

彼自身、今の鋼線を束ね合わせた様な、そのまま鬼になれそうな鋼の肉体を得る過程で何度か臨死体験をしているので、鬼に匹敵する戦士を作り出さんとするアクガタがそれに沿うのは当然の話だろう。

 

試しの房への入り口は基本的に何時でも開かれている。

そして、変身系の技を習得した同門に対しては、難易度を上げる事も可能にしてある。

理想は殺怪人級ロボタフ相手の百人組手を勝ち抜ける様になれば立派なアクガタの師範と言えるレベルだろう。

無論、現段階ではもう一段レベルを上げるだけでもアクガタ闘士は俺を除いて壊滅するだろうが、それでもこれは訓練だ。

ギリギリ死ぬかもしれない、しかし死なない、という程度の訓練を延々積めるのは理想的な修行環境と言えるだろう。

独自の気の解釈結果として臨気を選んだアクガタの根底は臨死にある。

自らの意思で死に臨む事で死を乗り越え飛び越える為の力を手に入れる事だ。

わかりやすく一般的な言い方をすれば死中に活を求めるとも言う。

恐怖に背を向け逃走するのでなく恐怖に目を向け闘争を選ぶ戦士を育成して行けたらな、と思う。

理屈で言えば、死にたくない、という危機感をより強く抱く事ができる様になれば臨気の爆発力も上がりパワーアップが望める筈だ。

 

こうして、後進の育成などにも力を注ごうと思えるようになったのは間違いなく成長だと思う。

以前の俺であればまず選ばなかった選択だろう。

だが、回り回ってこういう地道な手段こそが目的達成への一番の近道になる。

魔石ベルトの配布計画(安全性を鑑み中止)、アギトの力の散布(結果的に完遂)、ミラーワールド側からのヘキサギアによる世界の監視(継続中)、FAGを人類社会に浸透させた上での危機管理(実行中)。

今まで世界に対して自らを隠して秘密裏に事を進めていた、生きやすい、敵対種族の繁栄しにくい状況への誘導。

アクガタを、知る人ぞ知るというレベルで世間に浸透させ、自衛能力を得たい人々への道標とし、その隙間をトライアルシリーズ、アニマルソルジャー達で埋める。

これにて日本の秩序は保たれるのだ。

人々は嫌に器用な猫型人造生物に感謝の煮干しを捧げる日が来るだろう。

 

しかし……。

人々が異形の存在と化した未来、というのは、この世界においてはイマジンの未来へとつながってしまったりするのだろうか。

だとすれば敵が一種類減って大変やりやすいのだが。

まぁ、そう都合の良い話も無いか。

それくらいは、流石にわかる。

 

―――――――――――――――――――

 

それはそれとして、アンデッドも並行して処理していかねばならない。

基本的に潜伏しているアンデッド達は人間態のまま世間に紛れているので先んじて襲撃、というのが難しいが、孤立している個体は始末に困らない。

ウルフアンデッドなどがその一例で、彼はアンデッドハンターなる組織を作ったふりをしてBOARDから強奪したブラックファングという試作バイクを完成させようとしていた。

このウルフアンデッド、上級アンデッドなだけあってやはり頭が良いのか、現代のバトルファイトが偽りのものである可能性を考慮に入れて活動していた節がある。

レッドランバスやブルースペイダーと同じくラウズカードを覚醒させるためのモビルラウザーを内蔵しており、恐らくはこれを使う事で統制者の居ないバトルファイトで他のアンデッドを封印するつもりだったのではないか、と予測される。

 

もっとも今となってはそれを確かめる術は無い。

一般レーサーの方々に万一の事があっては困るし、わざわざ拠点を作って活動しているだけあって目立ったので、先んじて隊員が野生の昏睡ガスで昏倒したところを襲撃させて貰った。

サンプルを回収され無力化され封印されたアンデッドの思惑などに意味はない。

そもそも、ラウズシステムがあるのとアンデッドを封印できるのはイコールで結ばれない。

まず封印にはブランクのカードが必要となるのだ。

システムだけあっても仕方がない。

 

そして肝心要のマシンの性能も首をひねる。

ウルフアンデッドのパワーを注入される事で生えた能力も、一般のバイク乗りが浴びてもふらつく事無く走行を続けられる程度の威力の衝撃波と、毒性も薬効も無い煙幕の展開機能のみ。

これでバトルファイトに勝ち残れるかは甚だ疑問だ。

そして、ブラックファングが完成した直後にアンデッドを狩りに行くのではなく一般のサーキットに乱入して他のバイクと並走し、なおかつそのライダー(変身しない一般人のバイク乗りを指す)を殺したりもしない辺り、速い乗り物が手に入ってテンションが上って本来の目的を忘れかけていた可能性も非常に高い。

アンデッドは総じてそういうところがある。

山を崩す人間どもは皆殺しだ、と言いつつ、おいらはネズミの天ぷら大好物ホホイホイホイとかやっちゃう狸と同じく、ここらがキング未満のアンデッドの知性の限界点なのかもしれない。

 

だが、彼の細胞から試作したトライアル猫からは多くの知見を得ることが出来た。

ウルフアンデッドの持つ特殊能力、人間の死体にウイルスを注入して狼男にして操るという仕組みは、天王寺一派や俺が製造しているトライアルシリーズの設計思想に極めて近い。

というより、アンデッドの肉体の一部を用いて生物の肉体を変異させる、という点ではウルフアンデッドの方が先に存在していたのだから、トライアルシリーズの技術の根幹にはこのウルフアンデッドのウイルスが関係しているのかもしれない。

 

そして何よりこのウルフアンデッドのウイルスは兵士を作る上で非常に都合が良い。

死体があれば洗脳や脳改造、呪いなどを使わずに絶対服従の兵士を作る事ができる、というのは魅力的な話だ。

ウイルスの原種は人間のみを対象としているように見えるが、コレは別に人間だけを対象としている訳ではない。

戦力化が簡単なのが人間である、というだけで、小動物などを狼男化する事も不可能ではない。

ウルフアンデッドが小動物を眷属化しなかったのは、それでは大した戦力にならないからだろう。

いや、そもそも通常の銃器で殺せるような狼男がバトルファイトで戦力足り得るのかは不明だが。

 

これを使えば、裏切らない戦力を容易に量産できる。

……できるが、それが有効な戦力であるかといえばこれもまた難しい。

これらは見た目こそ狼男ではあるが、実際はゾンビの様なもので、判断力に乏しい。

ともすれば養殖のニャンニャンアーミーの方が、ある程度活動を続ける中で生き物として自立してきた分仕事を任せられるレベルだ。

ウルフアンデッドのウイルスで作れる眷属は、ある程度自動運転が可能なラジコンに近い。

 

難しいものだ。

しかもウルフアンデッドはこのウイルスとブラックファングのエピソードが特徴的ではあるが、アンデッド単品として見た場合はちょっとフィジカルが強めかな、という程度の特徴しかない。

トライアルのベースに使うには力不足と言わざるを得ない。

これならカプリコーンアンデッドやピーコックアンデッドを使ったほうがまだ直接戦闘力は高いだろう。

 

戦力を拡充するという点でばかりアンデッドを見ているが、役に立つ立たないを置いておいてもアンデッドは最終的に全て封印しなければならない。

統制者の端末がどのタイミングで目覚めるか。

現在のバトルファイトは天王寺が黒幕の偽りのバトルファイトである為に目覚めなかった、という話があるが、彼が殺されるといきなり動き出したりする。

つまり、現在は非活性状態のように見えて、端末越しにこちらの様子を確認はしているのだ。

いや、全生命の集合無意識であるという性質上、統制者本体は常にこちらの行動を監視していると言っても過言ではないのかもしれないが。

ともかく、バトルファイトが偽りのままか正式なものになるかは、統制者の気分次第である可能性が実は高い。

最悪、天王寺を殺さずにおいても勝手に動き出す可能性も否定できないのだ。

他のアンデッドの封印はしないくせに、天王寺の頼みでケルベロスを作り出したりはするし……。

 

そも、一万年前のバトルファイト、という文言がある以上、バトルファイトが何時起きてもおかしくはない。

正確に太陽暦で一万年周期であるかどうか、というのは明言されていない。

多少のズレが発生する可能性を考慮すれば、偽りであると思われていたバトルファイトは新たな形になっただけの真のバトルファイトであった可能性もある。

 

統制者がライダーシステムなるものが完成した事すら察知しており、それならわざわざ端末使ってアンデッドを封印して回らなくてもいいよね? 倒されたアンデッドはライダーってのが封印するんでしょ? 優勝者は最期までライダーに封印されなかったやつ! 最期の一匹になったら願いだけ聞きにくるから!ジョーカーが優勝?じゃあいつもどおり滅ぼすね!

みたいなノリで動かずにいるだけではないと、誰が言えるのだろう。

最後にジョーカーを残してそのジョーカーを封印する事で勝者無しの状態にする、という策を続けるなら、ジョーカー以外のアンデッドは封印しておかなければならない。

 

では、今残っているアンデッドで油断ならない相手は誰だろうか。

金居……ギラファアンデッドは中々のものだ。

理論上破壊不可能である筈のオリハルコンエレメントを破壊できる攻撃能力、強固なバリア、ライダー達をも見事に利用しジョーカーを封印する手段を手に入れた知性。

同格である筈のキング、コーカサスビートルアンデッドはその点で油断と遊びが多すぎる。

カマタロスは封印済みなので除外、蛇は論外。

エレファントアンデッド、タイガーアンデッドも強豪と言えば強豪だが……まぁ、普通の強いアンデッドの範疇から外れる個体ではない。

 

油断ならない、という意味では、むしろ戦う意志のないアンデッドというのが一番面倒くさい。

そう、タランチュラアンデッドこと、嶋昇だ。

彼は作中で語られる限りでは完全に非戦派で、他のアンデッドもライダーも倒そうという意思が無い。

種族代表として見た場合はクソだ。

全世界のタランチュラの皆さんからはブーイングの嵐だろうか。

いや違う。

彼はそれで良いのだ。

 

確かに嶋昇という人格は争いを好まない穏やかな心を持っているだろう。

だが、やっている事は結局、エレファントアンデッドと同じ、他のアンデッドの敗退待ちだ。

彼は戦いを積極的に行わなくとも、ただ生き残り続ければ良い。

そしてキングである彼にはそれだけの能力がある。

 

もしも、俺の知る歴史の中で、レンゲルがカテゴリーエースに精神を乗っ取られて不安定な状態で無かったならどうだろうか。

争いを好まない彼は戦いの場にわざわざ出る事も無く、ライダー達と、或いはカリス、ジョーカーとすら穏やかなやり取りをするばかりだろう。

そうして、彼は最後まで生き残る。

なんとなれば、カリスが栗原親子の為に命がけで戦う場面があったとしても。

戦いを好まない、というのは、決して人間の味方である、とイコールで結ぶ事はできない。

 

彼の動く基準はひどく曖昧に見える。

スパイダーアンデッドに人格を破壊される睦月の為に封印される、という選択肢はあるのに、それ以外のアンデッドが暴れる分には普通に放置している。

彼がここで動いたのには明確な理由がある。

本人には自覚できないレベルの理由。

スパイダーアンデッドの戦法への相乗りだ。

封印される事でレンゲルの所持カードになり、カテゴリーエースを抑え込む、という表向きの嶋昇の本心。

そして、所持カードとしてレンゲルを強化し、レンゲルが他のアンデッドを全て封印した後に、スパイダーアンデッドが得る筈の勝利を横から掠め取ろうとする、全世界のタランチュラ達の集合無意識。

 

嶋昇にはアンデッドとしての闘争本能が薄い、という自覚がある。

それはタランチュラ達の勝つ意思、繁栄したいという意思が希薄である、という事にはならない。

最後の最後、非戦派を貫いた後に、残った自分以外の一匹のアンデッドを倒す分だけ、嶋昇に戦いを強制するだけの力を溜めているのだ。

 

嶋昇は確かにカテゴリーキングの人格かもしれない。

しかし、彼は同時に全てのタランチュラ達の繁栄したい、という意思が潜む巣穴であり、その優しさは巣穴に近づく獲物を察知する為の糸罠でもあるのだ。

 

レンゲルはこの世界に居ない。

上条睦月はライダーになっていない。

嶋昇はいかなる行動を取るのだろうか。

興味は尽きないが、どんな行動を選択するにしても、確実に封印しなければなるまい。

 

 

 

 

 

 




レンゲル、ギャレンがストーリーの主軸に存在していない為、おそらくこの裏では凄くシンプルに進むブレイド本編が進行していると思われる
虎姐さんとかもうただの強豪アンデッドのままなんじゃないかなぁ

☆バイクに乗る前に行間で始末されるウルフアンデッド
まぁ実際本編見ればバイク乗らなくても普通に強いのだが、近くに狼男の材料が無い状態で戦闘開始となると無個性極まるというか……
ブラックファングもエネルギーを注ぎ込まれてモンスターマシンになったと言われる割にはそこまで凶悪な事にはならなかった
衝撃波も一般レーサーの走行には一切害を成さなかった割にギャレンの銃撃は綺麗に衝撃波で跳ね返している辺り元から搭載されているバリア機能の応用、みたいな感じなのかもしれない
市街地では普通に人間殺して狼男にするけどサーキットではブラックファングを乗り回してクラクション感覚でほぼ無害な衝撃波を連打したり薄めの煙幕撒いたりしてオートレーサーの人たちと戯れたりするだけに留めたりする辺り実はこいつただのオートレースのファンでは?
ラウズシステムを搭載したバイクを完成させようとしたりライダーは殺さず見逃そうとしたり、オートレースコラボのついでに出たようなキャラの割には密かにバトルファイトの真相に近づいていたぽいけど、案の定詰めが甘かった

☆残りのアンデッド難易度
先んじて剣崎達と合流されて好感度を稼がれると厄介な嶋さんを除けばまぁ……って感じ
普通の強豪であるキングがスカラベとかいうインチキユニットと手を組んだのにメールを無差別発信して自分の位置を知らせてくるとかいうクソムーブをするので大体は問題なく処理できる
アギト編と同じくストーリーの主軸というか引っ掻き回す棒であるレンゲルが居ない為、レンゲル周りに関わって結果的に自分から消えていったアンデッド達の扱いが非常に面倒くさい
そういう意味で言えば主人公にとっての難易度と書いてる方にとっての難易度は割と重なる部分がある
虎姐さん普通に幾度もアンデッドを倒している、みたいな話あるけど、その割にムッキーに関わらない部分では目撃情報が無いのが面倒くさい
まぁ真面目にバトルファイトをするとなると人間を襲う理由なんて無いから目撃情報が減るのは仕方がない
でもテリトリーを犯されたら襲いかかるペッカーと通りすがりのバッファローはなんであのタイミングまで主人公らに捕捉されてないんだよ!

☆タランチュラの意思の総体としての嶋昇
一見して無害そうだしライダーに疑われても戦う素振りを見せない、というのが一番厄介という一例
最後の一匹になるのが勝利条件なんだから無理に戦って回る必要も無いし、エレファントアンデッドの様に露悪的に生き残り勝利目指します宣言して敵をつくる必要も無い
ライダーたちとも有効的な関係を作っていれば封印される危険性は減るしジョーカーにも人間性を強めるように説いておけばいいだろう、みたいな感じ
多分最後の最後、ジョーカーと自分だけになって、ライダー達もこの二人が戦わなければバトルファイトは永遠に決着が付かない無効試合だ
みたいになってからめっちゃ闘争本能が溢れ出して油断しきったジョーカーを背後から狙って攻撃したりする
ここで嶋さんの意識が残っていて「駄目だ、闘争本能を抑えきれない……!逃げてくれ……!」みたいにやるとライダーがその場に居ても戦意を減退させられるので非常に有効
言ってしまえば病の無いマスターアジアくらい強いのにネーデルガンダムみたいな戦法を取っていると言えばどれだけ厄介なやつなのかはよく分かるだろう
疑われない為に恐らくは嶋さん自信にもそういう戦法を取っているという自覚は無い
そもそも封印解除されたアンデッドの中でおそらく唯一国内に留まらず速攻で国外であるチベットに行った辺り脳味噌の出来というか思考プロセスが他のどのアンデッドとも異なっている
単純に地球の裏側のブラジルとかでなく統制者とアンデッドが封印されていた地に向かう辺りまだまだ裏がありそう
……というのが事実かどうかは知らないが、そういう危険性があるよねとなればざっくり封印しちゃうのがここの主人公なので和解ルートとかは諦めて欲しい
でも戦闘前会話とかはあるかも

☆一方その頃臨獣殿では
臨死体験アトラクション・試しの房が開設
当園のマスコットであるロボタフの群れと肉体の限界まで戯れる事ができる夢のデス・アスレチック
これをクリアできる程度の練度になれば肉体欠損などのアクシデントも無く変身系奥義を習得できるぞ!
肉体が欠損しても首魁である主人公が居れば緊急手術で死んでいない限りはより強く強固な肉体を得て再チャレンジできるんだ!
生き残るための強さや復讐の為の力を求める倫理観がちょっと薄れ気味の若人は何時でも歓迎!
明日のリンリンシーは君だ!


主人公の脳内を延々書き綴るだけのキモいSSみたいな事を何度か言われたのにまた説明回を挟んでしまう不具合
次は戦闘回になると思うからそれでバランスが取れたという事にして欲しい
猪突猛進っぽいのに半年以上アンデッドサーチャーに反応しなかったバッファローアンデッドやペッカーアンデッドとかいうステルス機はともかく、エレファントアンデッドは居場所が割とはっきりしてるからね
果たしてブレイド編はこれまでの四作の様に何かしらの意表を突く最終決戦に至るのか
それとも五年目にして初の静かな結末を迎える事ができるのか

気になる人や気にならないけどブレイドの後のライダーもあるしまぁ見てやるかという人も、次回を気長にお待ち下さい

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