オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

143 / 206
136 しめやかな閉幕

今更語るまでも無い話ではあるのだが。

堅牢な装甲、バリア、何でも斬れる剣、エネルギー弾。

強そうだな、と思われるものというのは得てして対策されやすい。

 

装甲を無視する打撃技術。

バリア貫通攻撃やバリア発生位置を特定してのすり抜け。

白刃取り、及びそれに類するそもそも斬らせない技術。

そしてバリア、同質のエネルギー弾による相殺、切り払い。

 

単純に強い、というのはシンプルで中々破られないものだが……。

破られてしまえば呆気なく陳腐化してしまうものだ。

アンデッドが唯一の脅威であるような世界であればその難易度は高いかもしれないが。

この世界において、カテゴリーキングの強さというのは絶対という程ではない。

それが理解できているからこそギラファアンデッドはコソコソと逃げ回っていたのだ。

そして、俺は逃げ回るギラファの後を追跡できる猟犬を手にしていた。

事ここに至って火力や戦闘形態を自重する理由も無く……。

ケルベロスがアンデッドの一種であり死ぬ心配が無く、なんとなればギラファよりも先に封印する手筈であった事を考えれば、これほど楽な事はない。

 

勝手にアンデッドに絡みに行き、ある程度のダメージを与えてくれて、なおかつラウズカードを出して見せればそれを吸収する事を優先してくれるという弱点まである。

ケルベロスは、アンデッドを捕獲する上でとても使いやすい拘束具と言えるだろう。

死なないから使い減りしない、という点もとてもよろしい。

まぁ、不確定要素があるので、ギラファ相手にしか使わないのだけれど。

 

彼の失策は一つ。

人間の中に紛れ込む、という選択を取らなかった点だろう。

人質とまではいかないが、とにかく人の多いところで人間のふりをし続けていればとにかく逃げる事はできた筈だ。

俺もアンデッド二体をまとめて行動不能にできる火力を振るうのにもしかすれば躊躇ったかもしれない。

森の中でクワガタムシ達と一緒に暮らせと?

というのは彼の言葉だった気がするが、発見時に山の中に居た辺り、同種か近縁種に勝利を誓う、みたいな感情的な部分があったのかもしれない。

逃亡、潜伏という選択は正しかったが、潜み方に関してまではそれほど深く考えていなかったのか、とも思うが、ケルベロスの様な猟犬が現れると思ってはいなかったのだろう。

この点で詰めの甘さを責める事はできない。

 

思うに、スート毎にアンデッドの性質はある程度整えられていた様な気もする。

スペードはキングにカプリコーンにイーグルと、感情的な自信家。

ダイヤはギラファに蛇にピーコックと、程度の差はあれ知略を駆使し。

ハートは鎌田に草にウルフと、他人を利用する傾向があり。

クラブはタランチュラにトラに象、表面上か内面かはともかく精神的に湿っぽい部分が見られた。

象は単純に自信家だったが、程度の差は他のスートでもある。

最終盤まで逃げ回ったギラファや序盤からライダーシステムに目をつけたピーコックと比べて蛇はお粗末だった。

何らかの形で交流を重ねていれば象もレンゲルの後方保護者面の中に含まれていたかもしれない。

逆にそこまで行くと上級アンデッドが勢揃いで無いとカテゴリーAの呪縛から逃れられない、という点でレンゲルの中の人の評価がもう一段下がったかもしれないが。

 

朝の占いコーナーとか安っぽい性格診断テスト程度のものではあるが、あながち外れてもいないだろう。

アンデッドはスートによってある程度の仕分けがなされている。

そもそも、スート分けというのはどういう意味があるのだろうか。

生き物の種族を分けるのとも違う。

きっちり四種のスートと十二のカテゴリーに種族の代表が分けられている、というのは、自然発生した存在にありえるものなのだろうか。

なんとなれば1から52の数字を割り振るのでも良いではないか。

人為的に……というか、神意的に製造された、インテリジェント・デザインであるマラークやエルですらその数や種類が大雑把でダブリも多く、テオスも明らかに適当に運用している節があった。

 

肝心のアンデッドの記憶は、彼らの存在方法からして殆ど当てにならない。

いつか、この謎が明らかになる日は来るのか。

少なくとも、その日は今日ではないし……。

今回のバトルファイトの最終日よりも先に訪れる事も無いだろう。

 

鞄に、コンパクトにした残存アンデッドの片方を詰め込む。

大きめの旅行鞄には小さなスリットがあり、このスリットからブランクカードを差し込めば、無事に封印が完了する、という手筈になっている。

 

最終日だ。

しめやかに行こう。

 

―――――――――――――――――――

 

喫茶店『ハカランダ』の前で、旅装を済ませた一人の男がギターを奏で、二人の女性が目を瞑り耳を傾けている。

奏でられる曲の名は『夢のかたみ』という。

少し離れた所で剣崎を初めとしたBOARDの残党数名が、複雑な表情で三人の事を見守っている。

穏やかな表情でギターを奏でるのは不死生物のジョーカー、相川始。

それを淋しげな顔で聞くのは栗原母娘だ。

 

二分と少ししか無い短い一曲を終え、始が腰を上げる。

ギターを栗原天音へと手渡し、一つ二つ、言葉を投げかければ、天音は涙を堪えながら始に一度だけ抱きつき、抱きしめ、自ら手を離した。

始が遥香へと顔を向け、小さく頭を下げる。

遥香は何か言いたげにしながらしかし、小さく苦笑し、手をふる。

 

始がバイクに跨り、ハカランダに背を向ける。

それを追いかけ、最後まで見送ろうとする剣崎達に首を振る。

剣崎達もまた、ハカランダの前で栗原母娘と並び立ち、今度こそ、バイクで走り去る始の背を見送る。

後に残るのはバイク一台分の轍のみ。

 

相川始は暫しの旅に出る。

カメラマンを志す中で、もっと多くの景色を撮りたい、という欲求が生まれた為だ。

永遠の別れではないが、何時戻るとも分からない旅。

この国の外へ、旅先から、落ち着いたら連絡もする。

そう長くない別れだからこそ、天音もどうにか納得して送り出す事ができた。

そして、それが偽りであるという事を、天音以外の全員が知っている。

 

バトルファイトに決着を付けない為の一つの手段としての別れ。

ジョーカーとしての本能を刺激しない為、国内に残っている筈のアンデッドとも鉢合わせ無い為の、一時的な処置。

行き先はチベット以外。

タランチュラアンデッドである嶋と鉢合わせ無い為だ。

 

一時的な、というが、それが何時までになるか、というのは知れたものではない。

残ったアンデッドが非戦派であれば、人間の中に紛れて生きようとするタイプであれば、そしてそれと剣崎達が接触できなければ、始がこの国に戻ってくる事は無い。

そして、始と嶋が遠く離れた地で封印される事無く生き続けていれば、少なくともバトルファイトに決着が付く事は無い。

人間以外が支配者になる事も、あらゆる生き物が根絶される事も無い。

それは栗原母娘を守る事でもあり、始にとっての戦友である剣崎を守る事でもあり、剣崎にとっての友である始を守る事でもあった。

問題の先延ばし。

しかし、決定的な解決策を持っている訳でもない彼らにとって、ベターな選択だ。

希望が無い、という訳でもない。

 

天音の母である栗原遥香にも、やはり事情を説明し、何時戻れるともしれないが、栗原母娘を始の事情に巻き込まない為、という説明が行われていた。

そして恐らく、始を見送ったメンバーの中でただ一人だけ、それすら始の嘘であるという事実を見抜いていた。

それでも彼を見送ったのは、最初から、そうなる予感があったから。

嘘を糾弾しなかったのは、彼の吐く嘘が常に、自分達を、とりわけ天音を気遣ってのものばかりだったからだろう。

 

そして、始は国外へと渡るために空港へ。

いや、船に乗るために港へ。

そのどちらでもなく、東京から離れた、とある小さな山へと向かう。

山道をバイクで駆け上り、見晴らしの良い一画へ。

旅立ちの場、というには寂しい、遠くに人里を見ることができるだけの場所。

空は晴れ渡ってすらおらず、ここがもう少し高い山であれば烟って景色すら見渡せないだろう灰色の雲が天を覆っている。

足元を見れば、登山客すら意識を向けもしない、少しだけ形の良い石が置かれている。

バイクを停め、取り出した水のペットボトルの蓋を開け、その石に水をかけた。

口元には、ほんの小さな笑み。

 

「お別れは済みましたか」

 

―――――――――――――――――――

 

俺が声を掛けると、ヒューマンアンデッド……ジョーカーはゆっくりと振り返った。

 

「ああ、後始末も頼んできた」

 

薄っすらとした笑みは無い。

硬めの表情からしてヒューマンアンデッドというより、相川始、ジョーカー寄りに見える。

 

「人任せか」

 

硬い表情に、薄っすらと笑みが浮かぶ。

ヒューマンアンデッドだ。

 

「誰かを頼れるのも、人間の強さだよ」

 

そうとも限らない。

役割分担を行う生物というのは集団生活を行うタイプの生き物なら珍しくも無い。

だが、ヒューマンアンデッドの、あるいはジョーカーの言葉はそういう事ではないのだろう。

 

「思わせぶりな態度で人を煙にまくのも?」

 

「酷いな、君が勝手に疑っていただけじゃないか」

 

ヒューマンアンデッド、ジョーカー。

そのどちらも、ここ数ヶ月の間、まともにバトルファイトに関わってはいない。

レンゲルの一件を含めても数える程度にしか戦っていないだろう。

更に言えば剣崎さん達ともそこまで悪い関係にはなっていない。

剣崎さん達との会話に関してはところどころヒューマンアンデッドが口出しを行い、正体を明かしつつも決定的に敵対はしない程度には穏やかな関係でいられたらしい。

 

「人間としての生活は楽しかったか?」

 

「ああ……悪くは無かった」

 

ジョーカーが答える。

返事に毒は無い。

心の底からの答えだろう。

ジョーカーを内部から半ば支配していたヒューマンアンデッドが何をしていたか。

結局のところ、ヒューマンアンデッドは特別な事は何もしていなかったのだ。

やった事と言えば、旧知の組織を頼り、ジョーカーがすべきことを減らし、ジョーカーに可能な限り長い時間、人間としての穏やかな時間を与えただけ。

バトルファイトとは一切関係のない、それこそ、自分が常に表に出ていれば良いだけの事を、ジョーカーにさせていた。

 

「前回優勝者とジョーカーが、よりにもよって一番バトルファイトに不真面目とはね」

 

「幻滅したかな」

 

「それが今の人類の究極って言うんならね」

 

「究極ではないよ。総意、あるいは、平均かな」

 

これが、俺のヒューマンアンデッドに抱いていた誤解の一つ。

人間の集合無意識の寄せ集めで、なおかつ人間にできることはだいたいできる。

それなら酷く卑怯卑劣な手段と智謀で悪辣な企みを持っているものと思うだろう。

最終的な目的地はともかく、その為の手段は選ばない筈だ。

 

「持てる手段を尽くしてするのが、バトルファイトのサボタージュか」

 

「サボりではないよ。『何もしない』をしていたのさ」

 

黄色いクマのアンデッドかな?

だがしかし、よくよく考えてみれば何も不思議な話ではない。

あらゆるアンデッドはその性質上、常に最適行動をとれていた訳ではない。

バトルファイトの上では不利な、あるいは無意味な本能に引きずられたりもするのがアンデッドだ。

なら、人間の集合無意識の集合体であるヒューマンアンデッドが、何かしらの言い訳をして『怠ける』あるいは『仕事を人に押し付ける』事も想定してしかるべきだった。

結果的に、バトルファイトの結末はヒューマンアンデッドの想定する通りのところに収まった訳だが……。

 

「それは予知か何かで想定して?」

 

「いや? 『上手いこと転がってくれたらいいな』とは思っていたけど」

 

「俺が転がり上手で良かったな」

 

皮肉を飛ばす。

このバトルファイトの中で、ヒューマンアンデッドの想定通りに事態を転がし続けていた俺は、良い道化だったのだろう。

態々ゴルゴムとの繋がりを見せてみせたのも、俺に危機感を抱かせて自発的に動かす為か。

 

「俺もそう人間に詳しくはないが……お前よりわかっている、いや、天音ちゃん達と暮らしていてわかった事がある」

 

俺の皮肉に、ヒューマンアンデッドは……いや、ジョーカーだろうか。

もはやどちらとも付かない一体のアンデッドは小さく笑った。

 

「何?」

 

「人間は、君が思うほど真面目にはやっていられないし、お前が思うほどやわでもない、という事だ」

 

「だから、大人しく封印される、と」

 

「私の役目はとうに終わっているし……俺が守るよりも、こうした方が、天音ちゃんは幸せになれる」

 

勝手な言い分だ。

しかし、今のワイルドカリスになれないジョーカーが何時までヒューマンアンデッドの力で人間のふりをし続ける事ができるかわからず、何時統制者による支配種族シフトが起こるか分からない状態よりは、安全ではあるのだろう。

 

「無責任なやつらだ」

 

「責任、という言葉を作り出したのはテオスではなく、人間だよ」

 

「だから、無責任にもなれる?」

 

に、と、ヒューマンアンデッドの胡散臭いものでもない、ジョーカーの作り物じみた笑みでもない。

相川始が笑う。

手元には、何時取り出したのか、ブランクのラウズカード。

腰にはアンデッドラウザー。

斑に赤と緑の混じった、半ば黄に染まったそれが、カードを滑らせるスリット部分を境に、自ら左右に割れる。

 

「人間なら、そんなものさ」

 

割れた面から覗くのはハートの2。

相川始がブランクのカードを宙に放り投げる。

ひらひらと空を舞うそれを見ながら、俺も傍らに置いたギラファ入り旅行かばんにブランクのカードを差し込む。

吸引音と共に旅行かばんが軽くなり、手元にはダイヤのカテゴリーキングのラウズカードが。

空を舞うブランクのカードが引き寄せられる様に相川始の身体に突き刺さり、人間一人分の質量と交換する様に、幾枚かのラウズカードがその場に落ちた。

ジョーカーの所持していたラウズカード。

その中に一枚、見覚えの無いカード。

ハートの2、SPIRIT。

鎖越しに立つヒューマンアンデッド。

鎖に繋がれたハートの中身は、緑色のカミキリムシに見えた。

 

―――――――――――――――――――

 

こうして、数年に渡る、一人の人間が企んだ偽りのバトルファイトは一応の決着を見た。

終わってみれば特にトラブルらしいトラブルも無く、俺の足掻きもヒューマンアンデッドにまんまと転がされた結果でしかないという恥ずかしい結果になった。

だが、成果としては上々だろう。

アンデッドから派生するトライアルシリーズの技術は生物の兵器化という面で見れば極めて優秀なものであり、技術を習得すればモーフィングパワーによらない生物の長寿化、あるいは死にかけの生物の治療にも役立つ。

兵隊を増やすにはもってこいの技術だし、アンデッドの性質を生物の機能に落とし込んだトライアルシリーズはそれだけで追加研究の価値がある。

更にラウズカードを用いた融合型とも言えるBOARD式ライダーシステムの技術も限定的な形ではあるが新装備に組み込むことに成功した。

剣崎の持つブレイバックル以外のライダーシステム……俺預かりのレンゲルバックルと橘さんのギャレンバックルはオリジナルのラウズカードを封印する為に擬似ラウズカード式への改造が施され、今後も改良を続けていく事になる。

嶋さん……タランチュラアンデッドは疑似ラウズカードを製造した上で統制者の圏外、他惑星にお仲間のタランチュラ達と共に移住させてあるので、アンデッドの安全な追加研究だって難しくない。

 

失われた人類側戦力はそれでいて皆無。

ヒューマンアンデッドとの談合により、バトルファイト終了のタイミングを決めていたお陰でダークローチの発生すら無い。

野良アンデッドによる一般市民への多少の被害だけで済んだのは、これまでの中でも屈指の戦果ではないだろうか。

 

だが、冷静になって考えてみて欲しい。

繰り返しになるが、アンデッド全封印ルートを辿る場合、アルビノジョーカーが発生し、バトルファイトの再開を統制者が自ら進め始める。

そして、このアルビノジョーカーの発生時期、発生場所は特定できない。

知る限りでは四年後に事態は動き出す筈だが、アルビノジョーカーはそれ以前から活動を開始しているし、この世界を認識したアルビノジョーカーがどういう動きをするか、というのも不確実だ。

 

そも、仮に四年後だったとして、それは2005年から見た四年後なのか、2004年から見た四年後なのかもわからない。

そして、2008年であればまだ敵が殲滅が難しくない相手だから良いが、2009年だとするとこれが厄介だ。

世界の破壊者がこの世界にもやってくるかは不明だが、やってくるという前提で動いていた場合、同時に全アンデッド封印解除、というのは面倒くさい。

いや、今更アンデッドが全部出てきた程度ではどうにもなりはしないが、それと同時にディケイドや大ショッカーと事を構えるとなると話は変わってくる。

 

つまり。

後の安全性、安定性を考えた場合、勝者を出して一度完全にバトルファイトを終えなければならない。

勝者を出さなければならない、という事だ。

 

「君もそう思うだろ」

 

山中に横倒しに置かれたモノリスに語りかける。

車輪を溶接して持ってきたそれを前に、バックルを出現させる。

天王寺ラウザー、バージョン2,2。

腕への接合型ではなく、魔石を使用したベルトの技術と融合させて作った取り外しの効くバックル型の半融合式ラウザーだ。

形式としてはジョーカーラウザーやカリスラウザーに近い。

BOARD式のバックルの完成形の一つ、と言ったところだろうか。

 

ラウズカードを取り出す。

チェンジケルベロス。

 

『チェンジ』

 

ラウズすれば、電子音と共に全身が変化する。

手足を見れば、細部はBOARD式のライダーに酷似して、鋲打ちベルトの様な装飾があちこちに見られる。

精神的拘束具のようなもので、BOARD式ライダーのような機能は無い。

精神攻撃を行う魔化魍への対策として存在する呪術を折り込み、ケルベロスからの認識逆侵攻を防いでくれる。

半融合、半強化服の様な形態だ。

ケルベロスと一時的に完全融合を果たした天王寺とは少し方向性が違う。

俺がアンデッドになった、というより、アンデッドをきぐるみの様に着込み、脳と神経を俺が代替している形になる。

戦闘力というものは想定していないが……。

モノリスに願いを告げるだけなら、何も問題は無い。

 

ゆっくりと、溶接された車輪をそのままに、モノリスが浮き上がる。

俺が、唯一の生き残りのアンデッドとして認識されている、という証左だ。

 

適当な願いを言えば良い。

バトルファイトの齎す願いの強制力にはそれほど期待もしていないのだ。

取り敢えず、このバトルファイトに勝者が生まれて完全に決着した、という事実が生まれれば良い。

例えばワームとネイティブを人間が一目で見分けられるようになりますように、とか。

ファンガイアを全て消してください、とか。

オルフェノクの因子を全てアギトの力に置き換えてください、とか。

そこまで便利な事が可能ではないと思う。

 

思うが……。

似たような事はできるかもしれない。

人間を少しだけアギトになりやすくしてください、とか。

生物としての強度を上げてください、とか。

欲張った真似もできるかもしれない。

無論、それで少しばかり人間社会に混乱は生まれるかもしれないが。

そこは、緩やかに変化していくように指定すれば問題無かろう。

むしろ、私利私欲の為に願いを使おうと思わないだけ真っ当というか、本来のバトルファイトの意義にも反しない。

 

「統制者よ、俺の願いは」

 

車輪の付いたねじれたモノリスに語りかける。

と、願いの内容を口頭で伝えようとした所で、モノリスが変形した。

いや、違う。

それは、モノリスの上面背後から、突き刺されたのだろう。

 

赤い、透明感のある、赤い刀身。

両刃の刃。

異様な威圧感を備えるそれに、俺は見覚えがある。

 

瞬間。

統制者の端末が、霧散した。

だが、モノリスはあくまでも端末であり、地球上全生命体の集合無意識が消滅でもしない限り、再び再生する。

筈だ。

だが、十秒、二十秒、待てども待てどもモノリスは復活しない。

砕いたものを嘲るようにたやすく復活する筈のそれは、消えたまま。

 

いや、そんな事はどうでもよい。

俺の目は、モノリスを貫いた刀剣の姿に釘付けになっていた。

赤い刀身、金の、ナックルガードの付いた、西洋剣。

 

「サタン、サーベル」

 

俺の言葉に反応する様に、サタンサーベルらしきものは投擲されたと思しき方向へと戻っていく。

次いで、足音。

特徴的な、懐かしい、いつかの時代、俺ではない俺が幾度となく、テレビのスピーカーから聞いた、重苦しい金属音。

がしゃん、がしゃん、と。

 

警戒するべきだ。

チェンジケルベロスを解いて、ムラマサでも陽炎でも二十二号でも良い、完全戦闘形態になるべきだ。

だが、目を離せない。

森の影、闇の中から現れるその姿から。

 

「赤い、RX」

 

いや、いや、いや。

違う。

そうではない。

細部には、シャドームーンに似た装飾がある。

ボディラインはたくましくも、しかし、どこか女性味がある。

違う。

間違いなく、そんな程度のものではない。

あれは、あれこそは、正しく……。

 

「創世王……!」

 

声に答えるでもなく。

マントを羽織った赤い戦士は、サタンサーベルを構え直した。

 

 

 

 

 

 





いやー、バトルファイトは無事に終結して、()()()()()()綺麗に何事もなく終わりましたね
くう塚
なこ俺君

☆持ち運びに便利なコンパクトギラファアンデッド
ここまで来てギラファの戦闘シーンってのもなぁって事で省略された
ケルベロスを相手に苦戦してる所で遠距離から範囲殲滅攻撃食らって捕獲された上で邪魔なパーツを剥がされて抵抗も思考もできない形で箱詰め
その手を向けたら辺り一面の発破がばーんってなる範囲攻撃って敵側がするものだしそれで戦闘不能になるほどの火力は無い筈じゃん……

☆ヒューマンアンデッド/ジョーカー/相川始
強大なバックを見せつけて真面目そうでかなりの戦闘力を誇りそうな主人公に仕事を押し付けて残り僅かな時間でジョーカーに人間としての時間をたっぷり味合わせてやっただけー
隠れ蓑として使っている間にヒューマンアンデッドさんがジョーカーに愛着湧いてしまった面もある
冷徹で残酷な真似ができるのも人間なら変に愛着が湧いて仕事が中途半端になってしまってその後始末を他に投げてしまういい加減さも人間らしさなのでヒューマンアンデッドはこういう事をする
結果的に主人公しか損をしていないし得もあったから誰一人不幸にしてないし、やっぱヒューマンアンデッドなんだよなぁ!
後始末を任せた
どこに?
主人公ではなく古くから馴染みのある組織にだよ!
ジョーカーが封印を受け入れたのは無期延期よりも確実なバトルファイトの終結法をヒューマンアンデッドに教えられたから
終盤は半ば人格が融合気味だったぽい
結果としてラウズカードも変質している

☆最後のアンデッドきぐるみで人類改造計画企てマン
別に全ての生命を入れ替えるんじゃなくて少しアップデートするだけだから……
可能なら異種族見極められてある程度戦えて進化しやすくて強くて死ににくい感じでそれでいて人間から大きく外れるには社会に混乱が出ない程度に時間をかけてそれでいて俺や周辺に危害が出ないようにならある程度精神性もいじっておくかなぁ……
とかやってたら草むらから創世王っぽいのが飛び出してきた!
創世王はバッタモチーフだから草むらから飛び出してきても何もおかしくないから仕方ないね
虫ポケモンの一種だよたぶん
まぁ多分炎弱点どころか全属性耐性持ちだけど

☆赤いあいつ
通りすがりのサタンサーベルを持ったちょっとシャードームーン味もある女性っぽいラインのボディを持つなんの変哲もないRX似の人
風もないのにマントがはためいている(王者の風格)
何者なんだ……
シャドームーン?
シャドーセイバーがありゃ十分じゃろ!

☆車輪付き穴あき統制者くん
消滅したっきり復活する気配もない
馬鹿な、あらゆる生命の集合無意識であり、何故かバトルファイトの駒を四種十三段階に分けていた如何にも人工物ですよ感あふれるお前の消し方をいつかのイルカばりに検索されていたねじこんが消えたなど……
まるで何らかの理由で製造されたシステムがその主によって貴様はもはやこの時代においては用済みよとばかりに消されたようではないか
でも何万年かしたらやっぱ必要じゃね?って事で再開発されるかも
結局このSSというかこの世界における統制者ってどういう役目の物体だったのってのは
これを読んでいる読者諸兄はすっかりお察しの事だろうと思うけど
ぐにょりが忘れていなければ次回のあとがきで書いたり書かなかったりします





ブレイド編無事完結
なので、次の話は所詮は幕間なのだ
時系列の問題でブレイド編のエピローグ扱いになるけれども
次回
エクストラステージ
『VS創世王』

ぶっちぎるぜぇ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。