オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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140 猫?の忍者?に襲われる?・前

猫の忍者に狙われている。

というのが一部界隈で有名なネットミームだったのは、今は昔……ではなく、これから少し未来の話だ。

当然ながらこの世界にこのミームの元ネタになった書き込みは未だ存在していない。

だから、このカラテカ女子が仲村くんの人の良さにつけ込んでからかって遊ぼう、なんて考えている不届き者ではない、というのは確かな筈なのだが……。

 

「猫の集会で不審な会話がなされているのに遭遇して、その後に黒い布切れを身体に巻いて、手にギザギザの刃物を持った二足歩行の猫と、同じ格好で鎌を持った猫に狙われている、と」

 

「は、はいぃぃ……」

 

何故か怯えているカラテカ女子の返答を聞き流しつつ、挙げられた特徴を元に猫相書きを描いていく。

趣味と調査を兼ねて少し出入りさせて貰っている研究室の先輩から『プリンターみたいだね』と言われる程度には精密な描画能力を備えているので、イメージに違いが無ければこれで良い筈だ。

インテリアとして窓際で寝そべる一匹に猫相書きを見せると、鷹揚に頷いてみせた。

猫視点でも大丈夫なようだ。

 

「この様な?」

 

スケブに描いた猫相描きを渡す。

 

「す、すごい、やっぱり……あ、いえ、なんでもないです」

 

遠慮気味に言葉尻を濁してスケブを返してきた。

さっきから妙に歯切れが悪い。

視線も何故かスケブと窓際をチラチラと交互に見ていて集中力も無いように思える。

それなりに武術の心得がありそうだし、ファッションから予想できる人間性からは少しズレているように思えるのは気の所為だろうか。

そんな彼女を気遣ってか、テーブルの下から伸びてきた猫の手が彼女の前に温かいココアを置いた。

 

──うにゃぉん

 

世間一般でイメージされる一般的な猫言葉だ。

店に出ている時にあまりリラックスしすぎて崩れた猫言葉を喋られると猫を求めてやってきた客にがっかりされる恐れがあるため、仕事中はそれっぽい猫言葉でしゃべる様にして貰っている。

ニャンニャンアーミー達は寮完備送迎あり時給500円で正式に従業員として登録している為、福利厚生をしっかり行う代わりに仕事は猫なりにしっかりやってもらっている。

この仕事に就かず、日中ブラブラと歩き回る猫も居れば、帽子を小銭入れにして大道芸で稼いでいる猫も、なんなら室内でごろごろし続けている猫も居る。

当然、ニャンニャンアーミーの所在は全て追跡可能だ。

彼ら彼女らが問題を起こした場合、飼い主である俺の責任という事になるので管理で手抜かりはできない。

 

「あ、どうも……」

 

ぺこ、と、足元に向けて思わず頭を下げるカラテカ女子。

ココアを持ってきた一匹はなんてこと無い、と言わんばかりに尻尾だけ振って答えて見せた。

ちゃんと伝票も置いていっているので本当に礼を言われる筋合いは無いのだが。

ご覧の通り、彼女のカラテカとしての本能もニャンニャンアーミーを敵と見做していない。

つまり、ニャンニャンアーミーは直接的に猫の忍者と関わりがある訳ではないという事になる。

 

「妙だな」

 

「今の状況がな」

 

そう、仲村くんの言う通り、現状がまずおかしい。

彼女の証言する猫の忍者なる存在は、刃物を持ち、二足歩行で歩いてみせて、それでいて人を追尾する事ができる程度の能力を備えている、という事になる。

通常、閉所における猫と人間の戦力差は、人間側に刀をもたせてようやく対等になるかならないか、という程のものだ。

もちろん、俺は刀を持った人間と猫を閉所に閉じ込めるような無意味な行為はしたことがないので実際どれほど正確かはわからないが。

 

「鎌の方はともかく、刀らしき刃物を両手保持して行動できる程度に膂力のある猫が、それとわかる距離から人間を狙って攻撃したなら、人間側は無傷でいられる筈は無いと思うのだが……」

 

「それは、空手をやってますので」

 

「なるほど」

 

「納得するのか……?」

 

空手には対刃物を想定した技も存在するのは知っての通りだ。

そして、武術を深く学んだ人間ならば、不用意に刃物を振り回す相手であれば無力化も容易。

実践的な空手を長年学んだ人間であれば、逆に刃物を持った猫を撃退する事もありえなくは無いが……。

 

「逆に、そこまでできるなら猫の忍者も撃退できるのではないか? 人に頼る理由がわからん」

 

「それが、殴っても蹴っても、全然平気みたいで」

 

ふむ。

つまり、彼女は襲い来る猫の忍者に反撃をしてみせた訳だ。

当然、通常の猫であれば人間のカラテカの攻撃を食らってしまえばただでは済まない。

 

「おい」

 

仲村くんが肘でつついてきた。

 

「なんだいワトソンくん。まだ推理中だぞ」

 

「誰がワトソンだ。いい加減白状するべきではないか」

 

「何をだ」

 

「この猫屋敷の主以外で誰が猫の忍者など人にけしかけられる」

 

「ここは猫屋敷ではなく猫喫茶だ」

 

──わぁぁぁぉ!

 

レジの後ろで丸まっていた一匹も声を上げた。

 

「見ろ、三号もそうだそうだと言っている」

 

「わからん……!」

 

仲村くんは猫の言葉がわからないので頭を抱えてしまった。

仲村くんは多言語を習得するマルチリンガルではあるが、人間以外との会話を想定しない一般的な猛士メンバーなのだ。

つまり人外殺すマンの卵という事になる。

当然似た立ち位置に居る俺も猫の言葉はあまりわからん。

しかし、猫の言葉がわからずとも仲村くんが何を言いたいかはわかった。

 

「何かと思えば、猫を飼っているだけで人を犯人呼ばわりするつもりだったのか? ならば証拠を見せてやろう。おい! 話は聞いていたな! 仕事は一旦中止! 集合!」

 

店中のニャンニャンアーミー達が仕事を中断し、俺達が座るテーブルの周辺に集まる。

そして同時に閉まるカーテン。

なお、窓には特殊な加工が施されている為、外側にはこの時点で何事もない店内の様子が映し出されるようになっている。

入り口の鍵が自動で閉まる。

カラテカ女子が息を呑んだ。

 

──にあ

 

窓際の猫が香箱座りのまま。

 

──おぁん

 

ココアを持ってきた猫がとことこと歩み寄り。

 

──みぃぃ

 

レジの裏の猫が椅子の背を飛び移りながら。

 

──わぉん

 

厨房の猫が手を手ぬぐいで拭きながら。

 

──ゴロゴロゴロゴロ……

 

足元の一匹が腹を見せながら俺の足に絡みつき。

 

──ギャァァァァァッ!

 

またある一匹はカラテカ女子に背を向けたまま店内備え付けの爪とぎを一心不乱に引っかき。

 

思い思いに店内の猫が俺の声に反応したりしなかったりしつつ。

しかし、一斉に二足歩行形態に移行したニャンニャンアーミーが、その懐からズルリと長大な刃物を取り出したのである。

警察の方に見つかった時に言い訳ができるよう、普段は刃引きした状態であり、柄尻を回すと先端からボールペンのペン先が出てくるようになっている。

これも、変身と同時に展開する全身装甲と同じ様に、改めて刃が形成される、という仕組みな訳だ。

これは、普段は全ての装備を粒子化してベルト内部に収めているBOARDのバックルの技術を応用したものだ。

全てのアンデッドとBOARDのライダーシステムを解析した結果の暫定的最終改造が終わった結果のカモフラージュである。

 

一斉に大剣を構えた二足歩行のニャンニャンアーミーの、薄っすら輝く瞳がカラテカ女子に向けられる。

 

「うわぁ!」

 

思わず、といった風に、カラテカ女子が拳を振るう。

腰の入った良い正拳突きだ。

が、その一撃がニャンニャンアーミーに当たる事はない。

拳の射程距離内にわざと居た一匹は、そのカラテカの一撃を大剣の腹で受け、なおかつカラテカ女子の拳が傷まない様に半歩後ろに飛んで受け流してみせたのだ。

そして、カラテカ女子の首に金属のひやりとした冷たさが伝わる。

拳を一撃入れる間に背後に回った一匹が、カラテカ女子の首に大剣を押し当てたのだ。

周囲の数匹は刃の切っ先をカラテカ女子に向けているが、これが実際に女子を無力化する為の戦いなら、向けられていたのは麻酔弾なり電気弾なりを装填したガトリングガンの銃身だっただろう。

 

──にゃおん?

 

大剣で拳を受けた猫が首を傾げる。

 

「ま、参りました……」

 

猫言葉がわからずともニュアンスで意味を察したのだろうカラテカ女子が頬に冷や汗を流しながら降参を宣言する。

 

「と、ちょっとしたアクシデントもあったが、これで俺が無罪というのは理解して貰えたと思う」

 

「一連のやり取りもこの猫らの装備も諸々の法律に引っかかりそうではあるが……、そうだな、少なくとも、猫の忍者は彼らではあるまい」

 

集団的に怪人に変身する人間を所属させた上にそれらの為の武器を製造する組織に所属している仲村くんが、一応の納得を見せてくれた。

それに大剣の刃からゆっくり離れながらカラテカ女子が首をかしげる。

理解しきれていないようだ。

 

「まず、ウチのニャンニャンアーミー……猫達の武装は、見た目上は全てデザインを統一している。まぁ、細部の意匠は違うところもあるが」

 

大体が、片刃、両刃の違いはあれど、西洋風のシンプルな大剣だ。

少なくとも、ギザギザ刃どころか、日本刀すら存在せず、鎌なんてかすりもしない。

高速戦闘時に猫の挙動で操作するなら、鋭さで切るような刃物は不都合が多いし、そもそも鋭利な刃物なら彼らの手に内蔵した合金製の爪の方がよほど鋭いし、自己再生機能もあるので使い勝手が良い。

というか、鋭さ問題はブレイラウザーを元に加工したので別に刀にする理由が無い。

そして人間の身長ほどもある西洋大剣というデザインを猫が両手で抱える事で、非現実的印象を与え、いざという時に目撃者の記憶をくちゅくちゅするのに便利なようにしている。

あれは夢だったのではないか、と、実際の現場の記憶を印象づけるところから記憶操作は始まっているのだ。

 

「そして、うちの猫が二匹も居たなら、貴方は勝てないし、捕獲の意思があったなら、逃れられない」

 

「う……」

 

まぁ、ここでドヤっても仕方がない。

ニャンニャンアーミーは基本的に人間を単純スペックで凌駕する生物と敵対する事を前提に調整された生物兵器だ。

一般的な、長年良く鍛えている格闘家程度でどうにかできる様なものではない。

というより。

 

「んで、俺がこの件を解決できない、とは言わないけど……たぶんこれ、どっちかって言えば仲村くんの方の案件だぞ」

 

「何?」

 

「俺の知る限り、彼女の証言する猫の忍者という情報をそのまま再現できる種族は魔化魍しか居ない」

 

滅びた連中、隠れた連中、そもそも猫のサイズではない連中は除外。

ドッグオルフェノク、なんていう例外も居るが……あれもサイズ感は明らかに人間のものとなっている。

猫のサイズを損なわずに、それでいて猫の姿を残したまま現れる人類敵対種族、となれば、それはこの時期においては魔化魍をおいて他にあるまい。

 

「そんな魔化魍が居るのか……というか、居たか? バケネコはデカイと思うが」

 

「前例が無い訳ではない。信憑性は薄い資料だったが、江戸時代あたりに通常の猫がバケネコの姿に変じた、という記録があった筈だ」

 

これは童子と姫がバケネコを密かに成体まで育てる為の試行錯誤の一つだったのではないか、という推測も残っている。

そもそもの話として、魔化魍の生態というのは非常に不安定だ。

一定の気温湿度気圧を満たした場所に現れると言うが、最近ではその条件から外れて出現する魔化魍も増えてきている。

これは、童子と姫とはまた異なる、人間的姿を持った何らかの超常的存在が干渉した結果だ、とも言われているが……。

そもそも、魔化魍は人為的に発生させる術がある。

こればかりは完全に調べられる限りの資料からは発見できなかったが、化身忍者を生み出した一党も、陰陽術によって魔化魍を発生させていたという記録がある。

洋館の男と女、というのが、ただの何らかの陰謀を抱えた古の陰陽師かその末裔、という可能性だって無いではないのだ。

鬼、音撃、というシステムを構築したのも当時の陰陽師である事を考えれば、全てが当時の安倍晴明含む陰陽師達の壮大な陰謀によって成り立っている、という可能性だってある。

 

「童子に姫というシステムが主流になってはいるが、そもそも魔化魍は自然発生物だ。最近では人型に近い魔化魍も増えているだろう、夏でもないのに」

 

「人もまた自然の一部、人心の乱れが自然法則の乱れにも繋がる、という事か」

 

流石優等生、飲み込みが早い。

最近、世に隠れて猛士界隈を騒がせているのが、未確認型、アンノウン型、或いは大きめのマッドアーク型などの、モチーフが新しい魔化魍だ。

近年の人間が恐れたもの、実害があったもの、現実には無いものとされていたもの、というのが、魔化魍として結実してしまったのだろう。

 

そもそもの妖怪变化に似た魔化魍にしたところで、その元を辿れば古い時代の人間が恐れた、或いは理解できない自然現象に理由を求めた結果だ。

カマイタチは皮膚の乾燥からの血の出ないひび割れを、転ばせ切りつけ薬を塗って去っていく小さな獣と捉え。

そして後年には空気中に発生した真空の刃が皮膚に傷をつけているのだ、という俗説とまじり、魔化魍のカマイタチにその力を付与したとも言われている。

或いはシャリバテ……血糖値の急激な低下による立ちくらみ、脱力感、頭痛などを、人知れず行き倒れて死んだ人間の怨霊と捉えてヒダル神である、と解釈したものなどもそうだろう。

天狗が自然発生したのは、極まった修験者を自分達とは違う生き物である、と恐れた結果か、或いは、逆に当時の修験者が本当に人間から離れていく事を目的として動いていたか……というのは少し話がズレてしまうが。

もともと存在していた大気中の神秘的なエネルギー……動植物、或いは無機物に至るまで持っている、変化を迎える可能性に対し、人間の思念が強く結合して生まれてしまったのが魔化魍だ。

恐れが魔化魍を作り出す、と言い換えても良い。

 

「ここ数年、人間でないものに人間が襲われ殺される、という事例が後を立たないからな。それに、何らかの形で猫の忍者という風説が混ざって魔化魍が自然発生したんじゃあないか?」

 

「無い話ではない、か。猫の忍者、なる噂は聞いたことも無いが……」

 

確かに、謎だ。

そんな愉快な生物の噂が流れてきたなら、とりあえずなにかに使えるかもしれないからサンプルとして捕獲しに行く筈だし、俺の記憶にも間違いなく存在していない。

仲村くんと共にむむむ、と考え込んでいると、カラテカ女子が声を上げた。

 

「猫の噂、っていうなら、最近ちょっとよく聞く噂がありますよ」

 

「どういう?」

 

「なんでも、大道芸を披露して小銭を稼ぐ猫が居る、とか、猫を満載した船が沖合を凄い早さで泳ぐ猫と並走していた、とか、最近その手の噂が多いんですけど……お二人とも、聞いたことありませんでした?」

 

「ふむ……」

 

「…………」

 

仲村くんの視線が突き刺さる。

仲村くんの手がぶれ、次の瞬間にはスリッパを振りかぶっている。

その手首を掴んで阻止。

 

「まぁ待て」

 

「聞こう」

 

「良い手がある」

 

集まったニャンニャンアーミーのうち一匹を掴み、背中に指を差し込み、弄る。

持ち上げる動作の中で不自然の無い程度にニャンニャンアーミーの身体が縮み、成長途中の子猫くらいのサイズに変化する。

 

「こちらをお守りとしてお預けしますので、とりあえず今日のところは様子を見て下さい。何事かあれば其奴が対応しますので」

 

「護衛、ですか」

 

「そこらのボディガードよりは役に立ちます。ターゲットの近くに仕事をしない同類を見かければ何かしらの変化が」

 

ばんっ!

 

と、入り口の戸が叩かれ、衝撃で来客を知らせる鐘がちりちりと小さく鳴った。

どんっ、ばんっ、ばぁんっ!

繰り返し戸が叩かれる。

 

カラテカ少女が身をすくめている。

仲村くんと視線を合わせる。

店の周囲に仕掛けた監視カメラの映像を手元のタブレットに映す。

店の入口の前、小さな、50から60センチ程の背丈の何者かが戸に手をついてもぞもぞと動いている。

だが、大きく動いている訳でもないのにはっきりと像を結ばない。

カメラに映らない頃のアギトやアンノウンを見ているようだ。

防犯装置を起動。

入り口のドアに仕掛けた高圧電流罠が起動し、フギャアッ!という鳴き声と共に何者かはドアから離れ、しかし、距離をとったままじっとドアから視線を離そうともしない。

 

「対人レベルに押さえておくべきでは無かったか」

 

「そんな事を言っている場合か?」

 

「あの、もしかして……」

 

恐る恐るという風に言うカラテカ女子。

カーテンを開ける。

窓の外、歩道には無数の猫……らしきものが犇めき合い、通行人が通る隙間も無い。

だが、奇妙な事に、窓の外の光景の中に人の姿を確認する事もできない。

猫好き垂涎、集合体恐怖症失禁物の光景の中、黒装束に身を包んだ二足歩行の猫が数匹。

 

「なるほど、猫の忍者」

 

「あれで間違いないのか瀬戸さん」

 

仲村くんの問いかけにコクコクと頷くカラテカ女子。

その視線の先、猫の忍者が手に手裏剣らしきものを構え、投擲。

猫の膂力ではありえない速度、そして回転数で電動ノコギリの様に回転しながら、店の外壁へと突き刺さる。

 

は?

 

「出るぞ」

 

「えぇ!?」

 

カラテカ女子が驚く。

これに驚くなら何故こちらに相談に来たのだろうか。

まぁ、俺がネコマスターで猫の忍者とも話し合いで解決できる、という可能性に賭けていたのかもしれないが。

あれがニャンニャンアーミーでなく魔化魍であるかもしれない時点で事は荒立てるしかない。

 

「店が壊れるし……籠城しても時間が過ぎるだけだ」

 

「地下にロボタフ軍団が隠してあるくらい言っ……いや、言わなくて良い! わかった! わかったからスイッチを離せ!」

 

俺が期待に答えようとすると仲村くんが何故か大慌てで制止してきた。

俺を制止するその手にはウルトラギア。

使い込まれて端の塗装が剥げているが、それを取り出す手付きは実に手慣れている。

 

「玄関は空いているのだろう。正面から行く」

 

立ち上がり、玄関に堂々と歩いていく背中に恐れは無い。

 

「おお」

 

たくましくなったなぁ……。

この戦士ワシが育てた。

でも不満点が一つ。

 

「鬼弦は使わないのか」

 

「まだ仮免だ。本体を見つけるまでは温存したい」

 

「なるほど」

 

鬼への変身は体力を消耗するし……物理的にそれほど強固、という訳ではない。

ロートルに差し掛かった鬼の方々もウルトラギアで消耗を抑えつつここぞ、という場面で変身する、あるいは重ね着する、という使い方をしているらしいが。

仲村くんの様に歩上がり、と上がりの見習いは最初からウルトラギアを使い慣れているので、これを初手に出していく戦法が定着しつつあるのだろう。

サナギマンとイナズマンみたいなものだ。

ウルトラギアも劒冑とは別方向で拡張性が残されている装置なので、そのうち鬼としての音撃は必殺技みたいな扱いになるかもしれない。

 

「まぁ俺は使っちゃうんだけどね」

 

そう立ち上がり、仲村くんの隣に立つ。

袖を捲くり、手首に巻いていた鬼弦を晒す。

アギトの力を隠したまま魔化魍を滅ぼせる為に鬼化の術は便利なのだ。

しかし仲村くんは呆れ顔。

 

「猛士でも無いだろうに……」

 

「猛士じゃないからこそ、師匠の許可とか関係なく変身しちゃうんだなぁ、これが」

 

お師さんから、無闇に禁術を増やすな、術の実験であたら被害を増やすな、非常事態を除いて本人の意思を無視して人体改造をするなとは言われているが、鬼への変身に関しては何も言われていないのだ。

つまりそれは実質免許皆伝とまではいかないが、変身に関しては黙認されていると言っても良いだろう。

 

「あの、何かできることは」

 

「とりあえず、その猫を鞄に入れたまま付いてきて。あ、何か武器使える?」

 

「空手ができます!」

 

ふんす、と、拳を構えて答えるカラテカ女子。

パワーアクセレーター、本気で作っておけば良かったかな……。

まぁ変身せずに使える武器作るくらいなら変身装置研究した方が効率良いから仕方ないか。

 

―――――――――――――――――――

 

喫茶寿の入り口前。

電撃を警戒して距離を置いていた猫たちの目の前で、その扉が開く。

中から出てきたのは、猫たちが標的としている人間の女ではない、人間の男が二人。

 

「変身してからで良かったろう」

 

「店が焦げるし」

 

軽口を叩き合う二人が一歩進む。

電撃が出た箇所からはみ出す。

距離を置いていた猫たちが身をかがませ、飛び掛かる態勢に入る。

それを気にした風も無く、男の片割れが目を瞑りながらペンダントを胸元に。

もう片割れが手首に巻いた腕時計の様な器具──鬼弦を指で掻き鳴らし、額に。

 

その動作に何かしらの警戒心が掻き立てられた猫達が、一斉に二人に飛びかかった。

無数の猫が一斉に飛びかかり出来た肉の壁が二人の視界を遮る。

その様子を、背後から猫の忍者が見つめている。

 

猫の壁が吹き飛んだ。

突如として天から降り注いだ雷が。

壁の向こうから放たれた衝撃波が。

物理的には並の猫の群れでしかないもの達を蹴散らしたのだ。

 

吹き飛ばされた猫達が思い思いに着地し、後には二体の戦士の姿。

 

「先ずは道を作るか」

 

全身を銀と差し色の赤の装甲で包んだマッシブなシルエットの戦士。

その両手にはブーメランを半分に割った様な、極厚の片刃短剣が。

 

「なるほど人の気配が無い……実に興味深い」

 

顔面を余さず覆う、シンプルに鬼としての特徴を記号化した鬼面。

鋼の様に鍛え上げられた身体を、厚手のズボンとフード付きローブで隠し、片手には両刃の刀身を備えたシンプルな横笛を下げている。

 

その姿を見留めて、猫たちの挙動が変わる。

四足のまま、身体を二周り大きく肥大化させるもの。

すっくと二足で立ち上がりながら、皮膚をマントの様に引き剥がし、その下から忍び装束を顕にするもの。

既にそれは猫というより、猫に似た何かにしか見えない。

 

「気をつけて、来ます!」

 

足元に二足歩行する猫を数匹引き連れた少女が、二人に庇われる様な位置取りのまま声を上げた。

 

 

 

 

 




これ……幕間じゃなくて実質響鬼編では?
まあまあエアロ
オリキャラしか居ないからライダー要素は薄いし
響鬼編に入ったらきっと原作キャラとも絡められるさ

☆地下に執事風ペイントの成されたロボタフが隠してある純喫茶寿
警察のガサ入れが入っても大丈夫な様に武装類の一切が搭載されていない
黒沼流再現用の装置は搭載されているが現行の標準装備なので武装にはカウントしない
地下の配管を勝手にモーフィングパワーで弄って空間を作っているのでそこは違法

☆猫の忍者に狙われている謎の少女
なんで狙われているのか、という部分は元ネタのキャラにまぁまぁ準じるけど響鬼編でやろうとしている事につなげる為に元ネタまんまという訳ではない
しつこいけど響鬼編は二十二号としての正体とか陽炎としての正体とか気にせず外部協力者として関わる話なのでオリキャラやらクロスキャラを増やす余裕は無いのだ
鳥子も空魚も居ないけど忍者に狙われる理由は除去できるのかは次回
一般的な空手熟練者クラスのパワーはあるけど、クウガで雑に殺されてる一般警察官だって格闘有段者揃いであろう事を考えれば仕方ない
実は解決しなくても変身アイテム一つ渡せば解決したも同然だけど……

☆守りながら猫の群れを突っ切る中ではぐれて猫にどうこうされてしまえばそこで話は終わりだから変身アイテムが流出するよりは利点も多いよねとか思っちゃうマン
そんな事より噂の類が魔化魍にどれほど影響を与えるか、特定個人を即座に餌にせず付け狙うタイプの魔化魍というものの珍しさにワクワクしている
変身態(鬼)の顔面は全面を覆うタイプの鬼面だがデザイン的には鉱物から鬼の彫刻を削り出している最中、鬼っぽいレリーフ、みたいなデザイン
変身態の顔を見た時のお師さんは『まぁ……そうなるな』という顔をしていた
顔面が鬼面全開だと猛士連中は警戒するぞ、というアドバイスにより変身後に展開する特殊素材のローブを装備している
要するに各種ライダースーツのボディスーツ部分を布製っぽい見た目にしてるだけなのだ
デザインを頑張れば変身しても燃えない破けない鬼の方垂涎の普段着ができる
なお着心地
見た目がどこぞの愛に殉じて東京くらいは平気で犠牲にする物理学者みたいだが物理学は専門ではない
武器は片側に両刃の刀身をくっつけた笛だけど全然関係無いぞ!
ただサタンサーベルを目指す過程で作っている試作品の一つに過ぎないのだ

☆放任主義に見えるお師さん
古文書とかあさって証言とか元にして実験繰り返して禁術を増やしていく事を考えたら鬼に変身するくらいは別にええやろ
肝心な部分で手綱を握ってはいる師匠の鑑

☆相棒枠に収まっている様に見える仲村くん
書いてて使いやすいんですよね……
雑多な魔化魍退治に関わる主人公でないので、こいつが響鬼編で猛士と主人公を仲介してこの世界ならではの問題に関して関わっていく、みたいな話になる
鬼形態が露出せず、音撃のみスーツが変形してちょっと中身の鬼が見える、みたいな形式になるかも
ほら、アクティブレイドの昇華機構みたいな感じで……
三期……

☆噂の源
当然の様にニャンニャンアーミー……ではあるのだが
噂が元で魔化魍が増えるなら魔化魍クチサケオンナとかジンメンケンとかハナコとか出てきても可笑しくないのでもう一手間あると思われる

原作キャラもライダー要素も殆ど無く
これライダー世界でやる必要無くね?
原作表記詐欺じゃね?
とか言われそうだけど
そういう人は141話もこんなSS見ないだろうから……いっかな!
次回で猫の忍者関連の話は終わります
まぁ猫の忍者が発生した理由とかに関しては珍しく響鬼編にまで引き継がれますが
引き継がれますが、という発言をぐにょりが途中で忘れる可能性もあるので
そういうライブ感しかないSSでもよろしければ、次回も気長にお待ち下さい
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