オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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142 種も仕掛けもある魔法の種を作っていく

大学生活もこの春から三年目に突入する。

長い長いと思っていた四年という期間も既に半分を消化してしまった。

世に結構数あるであろう古代遺跡の中からピンポイントでグロンギの封印場所を掘り当ててしまった豪運にあやかろうと、そして研究資料を漁りその他古代文明、或いは失われたテクノロジーの痕跡などを探そう、という目論見は……。

まぁ、これは今形になりつつあるから良しとする。

可能であればプロトタイプの一本も欲しいところではあったのだが、この時点では現存していないのだろう。

 

おそらく、世界線が違う。

俺の知る限りで大きく歴史が、或いは世界の成り立ちすらもが書き換えられる様な出来事が幾つかある。

カブトによる歴史改変がわかりやすいが、意外と世界というのは容易く作り変えられてしまいがちだ。

まぁ、この世界だと明らかに渋谷隕石時点で複数の昭和の男たちが阻止に関わって成功した後のようなので、そも歴史改変の結果としての世界なのかは怪しいところではある。

ゴルゴムも半ば残っているなら地球外侵略者を載せた隕石とか絶対迎撃されるやつだ。

あの創世王が当時時点で活動していた、というのなら、ワームの乗った隕石やその尖兵など物の数ではないだろう。

時間操作が主軸にあるタイプの戦士にとって創世王や創世王候補達は天敵も天敵だ。

 

また、世界を作り変えたかもしれない出来事として、リ・イマジネーション問題がある。

世界の破壊を防ぐためとして大ショッカー大首領でもあるDCDが渡り歩いた世界だが……。

そも、異世界を渡り歩くDCD……門矢士の特殊能力が既に限定的にではあるが大ショッカー関係者にも使用できている時点で、ある程度の解析が成されていると見て良い。

この世界の中だけでも、時間の運行を護る為の存在が必要とされるのだ。

異世界から時間や空間を超越して干渉してくる勢力があるとすれば、知らぬ間に世界が書き換わる危機は確実に存在する。

俺は既にある程度通常の因果律から逃れる術を確保しつつあるし、ある程度近しい存在ならば影響下に置く事もできる。

これで、歴史改変で人間関係がまるっと作り変えられてしまう悲しみからは逃れる事ができるのだが……。

 

大ショッカー、スーパーショッカー、財団X、タイムジャッカー、そしてその全てを牛耳るこの世界からは決して干渉できない謎の黒幕財団B……。

最後はちょっとしたジョークにしても、俺の知覚範囲外で行われた世界そのものに対する歴史改変に関してはどうしようもない。

というか、それをどうこうしようというなら、それはもはや神の領域の話だ。

俺のようなちっぽけな一個人がどうこうするべき話ではない。

なんならそれこそ時間の運行を守ろうとする連中の仕事の範疇だろう。

技術提供をして戦力を増やしてくれ、という話なら幾らでも対応するが、彼らの仕事を奪おうなんて気にはならない。

それをやり始めると文字通りキリがないからだ。

 

俺にできるのはもっと小規模なものだ。

極論ではあるが、根本的にこの世そのものを脅威から遠ざけようと思うのなら、体と技を鍛えて強い戦士になるのではなく、政治を学んで政治家になるなり、技術を学んでエンジニアになるなり、発明家になって優れた戦闘システムを作るなりした方が良い。

基本的に、物事の解決法に単純暴力を用いる輩というのは短絡的で自分の周辺のことしか考えようとしない個人主義者だ。

だからこそ、俺は先達の戦士達の事を、()()()()()尊敬している。

そして彼らの私生活に関しては一切興味を惹かれない。

それは彼らが根本的に自らの幸せを追求しようとしない、俺とは相容れないタイプの人格の持ち主だからだ。

無論、彼らにしても休日、戦いのない日に楽しむ趣味の一つ二つはあるだろうが……。

 

彼らは、自らの人生を使い悪を倒し続けている。

人類の自由と平和を護るために。

それがいわゆる仮面ライダーというものだ。

素晴らしい事だと思う。

人格者と言っても良いだろう。

 

俺には無理だ。

俺は俺個人の幸せの追求しかできない。

見ず知らずの人間の自由だの幸せなどの為に粉骨砕身など考えただけで首を傾げる。

俺ができるのは俺の命を護ること。

俺の家族や友人知人を死ににくくすること。

彼らの生きる環境が生きにくい形に激変しないように努めること。

その程度のものだ。

それも結局は俺の生活環境や個人的交流の中で過剰な悲しみや喪失が無い様にしたいという、俺の幸福度を高い位置で維持する為の手段でしかない。

最悪、悪の組織の策略で日本以外全部沈没とか起きた場合、難民問題が発生する前に日本以外をプラズマ化しても良いとすら思っている。

俺の生活範囲外への気持ちなどその程度のものだ。

 

話がそれた。

おそらく、いつか、この世界はまたしても大きく変革を迎える事になるのだろう。

それは劇的なものかもしれないし、人知れず起きるものかもしれない。

覚えのない大事件が俺の記憶の範囲内で起きていた事になるかもしれないし、いつの間にか世界は分断されているかもしれない。

鉄拳7の発売日が年単位で大幅に早まり、明らかに大ヒットするとは思えない幻夢コーポレーションのチープなゲームが何故かファミ通クロスレビューで不自然な高得点を叩き出して猫も杓子も時代錯誤な大型カセットのゲームをありがたがっている奇妙な世界になるかもしれない。

知らぬ間に人型機械が大量に普及する時代が過去になっていたりするのかもしれない。

 

が。

 

それは。

俺は。

知らん!

 

無論、歴史改変者など知覚範囲に来たら問答無用で抹殺するが。

近場の人間関係とか社会の根幹が破壊されるような歴史改変でもないのなら、探してまで関わろうとも思わん。

 

思わんが……。

探せば探すほど、これ、少し過去に手を加えたらこの連中が発生するんだろうなぁ……という痕跡は日本の中だけでも結構ある。

アシモ先輩の出来損ないの発展機みたいなのを作って頑張っている飛電インテリジェンス。

会長室にキッチン設備の無い鴻上ファウンデーション。

娘と仲睦まじく暮らしている結構引き締まった体の物理学者。

クリス・ペプラーに激似の科学者、ただし運命的な出会いの後に大恋愛を経て結婚した妻子持ち。

某超有能弁護士の秘書の人が最近フルーツドリンク作りにハマっているのと、ついでに地方都市の開発とかしてないユグドラシルコーポレーション。

 

古代に存在した魔法の痕跡についてもその一つと見て良いだろう。

これは猛士の古い資料に載っていた、海外からやってきた呪い師と魔化魍を相手に共闘した、という話を精査した結果だ。

映像資料なども一切無い状態だったが、彼らの術を再現しようとした当時の研究資料を元に幾らかの術の再現が可能になった、その成果が先の猫騒動で使用したものだ。

情報が足りずに不足している部分をラウズカード・ダミーや現代呪術で補ってはいるが、少なくとも物理学者が作り上げた現代式の魔法のベルトの再現は近い。

歴史改変などで指輪の魔法使い関連の事件が発生したとして、先んじて関連技術を掌握しておけばメタを張って圧殺しやすくなる。

 

問題となる、魔法使いの内部に存在する魔力の発生源に関しても、先の偽りのバトルファイトの中で代用品になりそうなものを既に幾つも作り上げているし、猫騒動で得た新たな知見を持って生成術の実験も開始している。

餌が必要ない、という点で言えば疑似ミラモンより扱いやすく、作り方さえ覚えれば誰でも作れるという点ではアギトの力を核とするよりも量産性に優れる。

俺もずっと猫ばっかり改造していたが、本音を言えばかっこいいファンタジー系のモンスター的なものを作ってみたかったのだ。

完成したら友人らにも搭載して新たな術を使えるようにしてあげよう。

 

―――――――――――――――――――

 

そういう訳で、動物実験を開始した。

人体に作用する術の実験で一番効率的なのは人体実験だが、人体を利用した実験というのは法に触れる。

人間とそう変わらない肉体、精神構造を持つ下僕……手下も居るが、これは他に使い道があるし、むしろこの実験で成果が出た場合フィードバックする先であるために消費したくない。

 

使うのは猫だ。

東京にもたくさん居て、それなりの大きさがあり、なおかつニー君考案の簡易改造手術を使えば知力が向上する。

たとえば、公園で少しベンチに座り鮭おにぎりなど食べていると、隣に座って猫なで声で鳴き始めた茶トラ。

おにぎりの断面から覗く鮭に目を取られている間に首筋を撫でる……ふりをして、モーフィングパワーを流し込み、改造後の形に作り変える。

生き物を作り変えるのがモーフィングパワーの本来の使い方であるため、この程度ならば容易い。

人間を怪人態に作り変えるよりも変化する部位は少ない。

 

一種の脳改造、或いは俺が自分に施した脳開発の延長線上にあるようなそれを施しても、施術後の猫に即座に変化は無い。

改造が済み、放流し、暫く野良として生活する中で、向上した知性で生きていく中で、徐々に学習を繰り返し賢くなっていく。

脳性能を向上させた結果として何が生まれるか、と言えば、やはり強い感情だろう。

彼らは自らの命を護るとか怪我を恐れるとか、そういう自然に元から備わっていた感情を、ただ生きて繁殖して増えるだけなら不必要とも思われるような余分な欲望でもって増幅する。

 

つたない大道芸を披露していたという野良猫などがその一例だ。

彼らは芸で人間から金を巻き上げて、それで買い物をする程度の知性を得てしまった。

より安全で美味な食事の味を知った。

ダンボールやビニール袋、或いは薄い木材などを使って小さな巣を作り、雨風を安全に防げる寝床の安心感を知った。

それらを失う事への恐ろしさを、喪失感を知った。

前なら死ぬよりはマシと思えていた小さな怪我、これのせいで金を巻き上げる手段が失われる事を恐れる様になった。

倫理観の無い子供のおもちゃにされ、意味もなく攻撃される事への恐怖心を、或いは怒りを知った。

 

それらは当然、ただの猫だって持っている恐怖だろう。

どんな原始的な生き物でも、生存本能という形で恐怖を持つ。

害為すものから遠ざかる為の機能だ。

 

だが、知性を、情動を強化された生き物であれば、それはよりはっきりと対象を結ぶ。

自らの何倍もの身の丈の、高速で動き回り仲間たちをひき肉に変える鉄の箱。

自分たちがネズミを嬲る様に自分たちを嬲る人間という生き物。

或いは長く続く雨ですら。

恐怖の対象として強く認識していく。

そして、強い恐れは明確な像を結び始める。

 

これを繰り返すことで、いつかは猫発の魔化魍が生まれるだろう。

人間の形をした魔化魍?

車の形をした魔化魍?

或いは人間が自然現象に理由を求めた様に、自然環境をキャラクター化したようなものまで。

 

当然、それらはしっかりとした実像になるまでに長い時間を必要とするだろう。

魔化魍として顕現するにはこれらの強い感情、恐れが自然環境の淀み、穢と混じり合わなければならない。

しかし、実像を持たないものとして作り上げるというのであれば、話は変わってくる。

恐れの持ち主の想像の中にしか、頭の中にしか存在しない、持ち主にしか知覚できないものとしてなら、より素早く形成できるのだ。

 

タルパ、というものがある。

人造霊体、というべきもので、ざっくばらんに言えばイマジナリーフレンドの一種だ。

これはここではない、前の俺が生きていた世界でも存在していたもので、自らの脳内にもう一つの自立した人格を作り出すというものだ。

別人格、というわけではなく、これを実際に作り上げる事ができればタルパの宿主は作り出した人格の姿を見ることも触れ合う事もできる、という。

これは、本来なら自主的に作り上げるもので、術者が必要とする理想の人格を形成するものなのだが、これが勝手に生えてくる現象というものも存在する。

一部の、過度なストレスに晒された結果としてそうなってしまった多重人格者などがこれに近い。

或いは霊的存在だと思いこんでいたら実はこれだった、という事もあるだろう。

 

違う、というものも居るが、本質的には変わらない。

特にこの世界においては、ある程度の異能の持ち主であれば、逃避のために作り出した別人格が本格的に力を持った別人格になってしまうという事を俺は知っている。

神崎優衣などがその一例だろう。

言わば、超能力の擬人化だ。

 

そして。

この世界では、神の似姿である人間がトップかもしれないが、それ以外の動物にすら異能の種が宿っている。

彼らは天使の似姿であり、なおかつ、その集団無意識を統合することで不死生物を作り上げてしまう事すら可能なのだ。

 

今回は、これらのメカニズムを応用する。

本来なら自然界の穢などと交わり魔化魍を生み出す恐れ。

これを、恐れを抱く本人……本猫達の中にある異能の種、異能の才能と結びつけることで、微弱な霊体の形に収束させる。

集合無意識がアンデッドを形成するメカニズムを応用した術だ。

これは、多くの場合は大した力を持つことは無いだろう。

或いはこれで霊感の一種などが発達し、常から恐れの対象が近くにあるように感じてノイローゼにかかるかもしれない。

だが、初期ではどれだけ頑張ってもその程度だ。

しかし、恐れは蓄積される。

何しろ本人の中に恐れの対象が存在するのだ。

忘れる事もなかったことにする事もできない。

微弱な霊体は、穢が恐れを収束させて魔化魍となる様に、宿主の恐れ、不安を巻き込み、徐々に強大になっていく。

 

これが、宿主に実害が出るレベルにまで強まるかは個体差が出るだろう。

恐れは蓄積されもするが、克服もされるものだ。

成長どころか時間経過で消え去るものも多くある。

しかし、これの成長を外部環境を調整する事で促進することは不可能ではない。

或いは、消えない様に、より力を持ちやすく加工する事すら可能なのだ。

霊体加工技術は既に猛士が何年も前にディスクアニマルを作り上げた時点で完成している。

 

理論上、これらは何らかのきっかけで宿主の精神に致命的な亀裂が生まれた場合、宿主の壊れた精神を食い尽くし、肉体を乗っ取る事すら可能になる。

乗っ取りは霊的な力を持たない別人格ですら起きるが、これは宿主の魂が事実上消滅するので取り返しもつかない。

だが、宿主がこの人造霊体をはっきりと認識し、食い破られる事なく、乗りこなす、或いは、自らの一部と化す事ができたなら……。

その時こそ、新たな異能者の誕生である。

彼らは、一種の魔化魍、或いはアンデッドの類と霊的に一つの体に同居する形になる。

 

アギトとは異なる、しかし、超自然的エネルギー炉を体内に宿し、そこから生成されたエネルギー……ここでは仮に魔力と言おうか。

単純に、これを放射するだけでも結構な事ができる筈だ。

一般的なサイキックの様に念動衝撃波を放ったり、相手を燃焼させたり。

しかし、このエネルギーを然るべき理屈を伴って運用すれば、その応用力は無限大だ。

アンデッドの様に人を洗脳もできれば、飛ぶことも、植物を自在に操る事も。

まさに魔法と言って良い。

 

この技術が完成すれば、この人造霊体は人造ファントムとなり、超自然的エネルギー炉を宿しこれを効率的に運用するものを魔法使いと呼ぶことができるようになる。

未だこの世界に存在しない脅威への対抗策が完成するのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

そうして、しばしおにぎりを食べさせている間に猫の魂を加工し終え、保健所避けの為にキレイな首輪も付けて放流する。

消化器系もついでに改造しておいたので、食べるに困ることはそう無くなるだろう。

ぺい、と地面に落とされた茶トラは一瞬ふらついた後、こちらを一度振り向き一目散に逃げていく。

悲しい……未来の選択肢を増やしてあげたというのに。

やはり簡易改造ではなく完全な俺の尖兵(ニャンニャンアーミー)に改造しておくべきだったか。

そうすれば撫で放題だし。

 

「ドク?」

 

「げっ」

 

可愛らしい声と嫌そうなイケボが同時に響く。

顔を向ければ、そこにはリードを手にした轟雷と、荷物満載の買い物袋を下げたいにゅいがこちらに顔を向けていた。

リードの先に居るのは猫と……、

 

「おお、だいしゅりょうだ」

 

その猫の背に跨るデフォルメされた小さな轟雷、ウェアウルフ・スペクター。

WWSが手を上げ、

 

「こんにちは!」

 

「おお、挨拶ができるようになったのか」

 

WWSが猫の上でえへんと胸を張った。

 

「いにゅいを追いかけてるあいだに、あっちこっちの人におしえてもらった!」

 

「そうかぁ偉いなぁ、偉い子には風船をあげよう」

 

すっと鞄から取り出すふりをして鞄の中からモーフィングパワーで形成したヘリウム入りの風船をWWSへ差し向ける。

ドンチュワナバルーン?

いらなくてもやるけど、WWSは目を輝かせて小さな手で風船の紐を掴んだ。

 

「うわあぁぁ、うかぶ、うかぶ! 誰か!」

 

リードに繋がれたままのWWSが空に浮かび上がり、跨がられていた猫が不承不承といった顔でその頭を咥えてキャッチした。

猫の口の中でWWSは何事か喚いているようだが、モゴモゴとしか常人の耳には聞こえないだろう。

俺には聞こえているが大したことは言っていないので気にしない。

以前から頭脳に相当するパーツが存在していなかったので思考は結構ゆるゆるだったが、魂の大半を轟雷に返した上に器もチープになったおかげで少し退行しているようだ。

アギトの力が成長したらどうにかなるのだろうか。

それより。

 

「げっ、てなんじゃい」

 

「なんでもねぇよ、ついだよ」

 

ついでも友人だと思っている相手に出会い頭に嫌そうな顔されたら傷つくものだぞ。

だが、いにゅいがどうしてそういうリアクションを取っているかはなんとなくわかる。

轟雷は左手でリード……WWSに繋がった非常用電源ケーブルを掴んでいる。

いにゅいは右手に重そうな買い物袋を掴んでいる。

そして、当然の様に、轟雷の右手といにゅいの左手は繋がれているのだ。

指まで絡んでいる。

恋人握りというものだ。

俺に見つかって嫌そうなリアクションをしながらもその手を離そうとしない辺りは実に……。

実に。

ワーオ。

って感じだ。

それをあえて口にする程野暮天ではない。

そう、出会いというものが運命ではないとしても、惑星同士の重力の如く惹かれ合っているという事実が揺らぐことは無いのだ。

 

「よろしく頼むぞ」

 

「……わかってるよ」

 

と、こういうやり取りをするとまるで。

轟雷は以前言った通り俺の創造物でありある意味では娘のようなものなのだからくれぐれもよろしく頼むぞ、娘をよろしく頼むぞ。

という風に言われたいにゅいが、短い沈黙の中に色々と潜ませながらも否定しきれないデレを垣間見せているように見えるかもしれない。

しかし、俺は何をよろしくとも言っていないので、ここで取った言質を使って後に色々と頼み事をする事が可能になるのである。

もちろん、俺はこの会話を録音済みだ。

実効力のあるものではないが……。

いにゅいをからかって遊んだりするのに非常に便利になるので欠かしてはいけない。

 

「? どうかしたんですか?」

 

「なんでもねーよ」

 

「そうそう、どうという話でもないのさ」

 

「むう……これが、お友達同士のわかってる感じなのですね」

 

轟雷は少し不満げだ。

そこまでガッツリ手を握り合って買い物に行っているのにそういう部分で嫉妬心を覚える辺り実に成長著しいとも取れる。

逆にこの一年でその程度しか進展していないのか、とも思うが。

そもそも手を繋いでいるのだって、轟雷の魂であるアギトの力がいにゅいの魂と半ば溶け合っていることから来る肉体的接触を求める作用の結果だろうし。

 

しかし……。

こうして野良生物の魂を改造する段階になってくると、いにゅい・轟雷・WWSの三人の状態というのは極めてレアな状態なのだなと感心する。

彼らが友人であり手駒でありその派生物でなければ是非とも実験体に欲しいくらいなのだが……。

 

「あ、そうだ」

 

良い事を思いついた。

 

「二人ともさ、キャンプとかってする?」

 

「いや?やんねーよ、家があんのにわざわざ……」

 

「バーベキューとかだと、いにゅいさんがすぐに食べられないので……」

 

二人とも反応が悪い。

まぁいにゅいは結構長期間サバイバル生活していたからうんざりしているのかもしれないし、轟雷は良妻っぽい判断だから良いとして。

 

「あらそう。多分いにゅいはもう遭遇してると思うんだけど、キャンプとかに向いてる森とか河川敷って妖怪とか出て危ないんだよ」

 

「妖怪、ですか?」

 

「でかいカニとかか?」

 

「食えないから気をつけてね」

 

「食わねーよ!」

 

「でもバケガニに限らずあの手の妖怪は人間を食べるから危険なんだ」

 

「だろうな」

 

「そこでこれだ」

 

ポケットから飴の包を取り出す。

 

「これを食べると、気持ち程度だけど、そういうものと遭遇しにくくなる」

 

「なんだそりゃ」

 

「魔除けとかおまじないの類だよ」

 

へい、と、轟雷に向けて投げる。

服の中を通して袖口から出しているケーブルを手放し、轟雷がキャッチ。

 

「待て、本当に大丈夫なんだろうな」

 

何の疑いも無く包を開けて口に含もうとした轟雷をいにゅいが手で制し、こちらに疑いの目を向ける。

まるで信用されていない。

悲しくなってしまうなぁ。

俺が変なものを渡したことがあっただろうか。

 

「いにゅいと轟雷なら二人で一粒で大丈夫だろうから渡しただけで、最終的には知り合い全員に渡すつもりだから安心してくれていいよ」

 

「神に誓って?」

 

「神には誓わないけど……黒髪ロングで骨格がしっかりしてる格闘のできる美人のお姉さんに誓って」

 

「ならいいか」

 

「いにゅいさんは心配性ですね。ドクが変なものなんて渡すわけ無いじゃないですか」

 

クスクスと笑う轟雷。

いにゅいの視線は恐らくファイズフォンGを入れてあるだろうポケットにちらりと視線を向けている。

お前の大切な人の脳みそ相当の部分じゃろがい。

 

「あ、美味しい」

 

轟雷が飴を口にして小さく呟く。

物質的な面で見れば何の変哲もないいちごミルク味の飴なので不味いという事はあるまい。

 

「良かったな」

 

「いにゅいさんも食べます?」

 

ぺろ、と、舌を出して舐めかけの飴を見せる豪雷。

お前いつの間にそんな小悪魔ムーブを……!

いや何の照れも無いから天然なのかもしれんが。

 

「いらねーよ! さっさと食っちまえ!」

 

あぁ^~。

 

「いにゅい」

 

パパだよ。

そしてこれは。

パラッパラッパーの主人公の、パラッパ。

 

「なんだよ……マジでなんだよそれ」

 

「ぬいぐるみだ。進呈しよう。WWSのおもちゃにでもするといい」

 

「お、おう……。ありがとな」

 

戸惑いを見せながらもパラッパのぬいぐるみを受け取るいにゅい。

猫を飼い始めたのかとか色々聞きたいことはあるが。

都合三つ分の意識が魂レベルで繋がっている人間なら、全員いっぺんに絶望したりしない限りは間違いなく踏みとどまれるだろう。

これで歴史改変でファントムが暴れだしても、いにゅいは猫舌の魔法使いとして存分に対抗する事ができる筈だ。

いにゅいと轟雷は安全を。

そして俺は貴重な実験データを。

ウィンウィンの取引、というワケだ。

良いことをした。

 

 

 

 

 

 

 





警察が街で噂の大道芸をする猫をもしかして新たな火種かと真面目くさって調査したりする予定だった
が、それは無くなったのだ
という話

☆基本的に悪気はないやつ
なんなら猫を改造する前に人造ファントム予定のものは自分で実験済みではある
なおテオスの欠片の影響で魂レベルでは人間とも猫ともそう近くないのでサンプルとしての信用度は低い
まだ見ぬ敵への対策は既に結構しているのでまだ居ぬ敵への対処方としてまだ居ぬ敵の雛形の作り方を学ぶ段階に来た
意外と知られていないが、ファントム自体は本来仲間を増やそうとはしないので唆す黒幕が居ない間はそれほど害は無い


☆歴史改変に関して
本人やら周辺で起きたら原因を潰しに行くけど、知らんとこが少し改変される程度ならいちいち反応したりはしない
というか、細々とした歴史改変とかを全部察知していたら本気で何もかも手が回らなくなるとう話
本当はディケイドが来た時点で世界が破壊されてごっそり過去改変が……みたいな予定だったが
実際リ・イマジって別に元の世界が破壊されて再構成された、みたいな話ではない筈なのでこういう事になった
大ショッカーも使っているオーロラカーテン使って世界どころか時間移動までし始めたもやしが悪い
そもオリジナルのオーロラカーテンを使っているもやしにしたって本当に一人?
変身者の異なるライダーが居る世界が無数にあるんだから、本格的に脅威としての側面しか持たないリ・イマジDCDとかも居るのでは?
やっぱDCDは世界の破壊者なんやな……
という事になった
二期やる事になったらおのれディケイドって感じでバリバリ歴史改変入る
恐らくキバ時点で社会人になってる主人公らをこれで学生まで巻き戻してフォーゼに絡ませるか……?
でもこの世界アギトいっぱい居るから歴史改変がどこまで適用されるかなぁ……
少なくともこの世界の金色の翼を持つホモは改変されたら知覚できる
相棒枠であるアーキテクトもなんやかやそれに付いてく形になる
昭和ライダー辺りもなんかのガバで歴史改変を知覚しそうとも思うけど、二期だと結構うっかり封印されて変身アイテムにされがちだからいまいち信用ならない

☆試作人造ファントムと現代魔法と厄災の種ども
敵を知り己を知れば百戦殆うからずという言葉がある
だから……なっちまえばいいじゃん、黒幕に
という訳でファントム及び魔法技術を先んじて開発しておく名采配
名采配かどうかは自分で決めることにしたらしい
本来の黒幕はまだ幸せな日々を送っている
ちな死人の蘇生法があれば懐柔できるので二期があってもウィザード編は短くなるんやろうなって
とか、一期もまだ終わってないのに二期の話をすると響鬼さんが笑う

☆なんか猫とか飼い始めた事実婚カップル
ペットはこいつだけで十分だろ、とか言いながらいにゅいがWWSをつまみ上げている様子が浮かぶようだが
この謎の猫は巧妙に雨の日に豪雷の視線の先で雨にうたれてぐったりしてみたり、餌を貰って回復した後はトイレの場所も教えられるまでもなく覚えたり、害虫を駆除したり、大道芸で小銭を稼いできたり、近所の魚屋の覚えが良かったり、掃除を手伝ったり、ごみの分別をしたり……
人の家になし崩し的に住み着いて家猫になろうとする猫がこの東京では増えつつあるのだ
バケネコというよりぬらりひょんかもしれない
家庭内ヒエラルキー的にWWSより上に猫が居るがWWSはサイズ相応の知力になってしまったので気付いていない
いにゅいと轟雷の距離が普段より更に近くなった時には部屋から出ていく気遣いができるレベルの知性を備える



もう一回幕間やってその後に響鬼編が始まるので幕間は別にいいやって人はもう少しお待ち下さいな
最近はなんだかモンハンが楽しいので更新は遅めになるけどごめんやで
あと粉だか塵だかが一つ集まればバゼ笛ができるんじゃ……
バーゼ笛……
バーゼを笛に?
まぁ探せばFAGバーゼラルドのキットを上手く使ってオリジナル狩猟笛とか作ってこれがバゼ笛じゃいとかやってる人居るでしょ
まぁこのSSにはバゼルギウスもバーゼラルドも出てこないんですけども
それでも宜しければ次回も気長にお待ち下さい

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