オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり
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15 幕間、流れは途絶える事無く

ダグバが死んだ。

いや、万が一の可能性として残された下半身から復活する可能性もあったのだが、奇妙な確信がある。

ン・ダグバ・ゼバは死んだのだ。

例え、あの場で復活する事ができたとして。

決してそれは選ばれなかったのだろう。

 

相手を殺して勝つ。

負ければ死ぬ。

 

俺がそう望んで。

奴もまたそう望んだ。

完全な決着。

 

「……」

 

目を開けると、白い肌、白い髪。

細められた赤い瞳があった。

優しげな顔だ。

ぼうっとしてるか、歯をむき出しにした子供のような笑顔ばかりが印象に残っているが、こういう柔らかい表情もできるらしい。

横向きに見える優しげな笑顔に、意識せず言葉が口からこぼれた。

 

「ただいま」

 

『おあえい』

 

視界が暗くなる。

前屈みになったジルに頭を抱えられているらしい。

慎ましやか……というには、些か良好に発達した柔らかな双丘が顔面に押し付けられ、膝枕をされていたのだなぁ、と理解が及ぶ。

息を大きく吸い込むと、嗅ぎ慣れたこいつの匂い。

使っている石鹸は異なれど、浸かる湯船は同じなのだ。

匂いが混ざるのは仕方のない事だろう。

しかし、それでもこいつからは自分にはない、元の種族を考えれば似つかわしくないと言わざるを得ない心が安らぐ匂いを感じる。

 

帰ってきた。

勿論、当初の予定では余裕で勝って帰ってくる予定だったのだけど。

予定が崩れて、想定よりも苦戦して。

それでも、帰ってきた。

 

これから、まだまだ続けていかなければならないのだけれど。

それでも、最初の山場を乗り越えた事に安堵を覚える。

 

……いや、待て。

帰ってきたって、何処にだ。

俺はあの九郎ヶ岳で意識を失って、ギリギリのところで五代さんに抱えられて……。

その場で目覚めた訳ではないはずだ。

 

あの日、東京に無数の白い未確認が現れた、というニュースを聞き、流石に一度東京にジルを連れ出す言い訳が思いつかず、自宅に置いてきた。

理想はジルを東京の父さんのアパートに預けてから長野にマシントルネイダーで向かうことだったのだが……。

ジルがあの時点で自宅から長野まで移動する手段は無い。

 

ぐい、と、手で押して伸し掛かっていたジルの上半身をどけて起き上がる。

周囲は見慣れた木々の中。

稀に魔化魍が現れるものの、沢もありキャンプなどで人が訪れる場合もまぁまぁある地元の隠れた癒やしスポットだ。

最近は熊などの目撃情報があったりなかったりするのでそれほど人の入りは良くないが、お蔭で鍛錬を積む場所の一つとして重宝していた。

ベンチ代わりにしていた倒木の上に寝かせられていたらしい。

 

「ジル、俺はどうやってここまで来た。お前はなんでここに居る」

 

俺の問に、ジルはしばし考え、口を開こうとしてやめ、立ち上がり、なにやらウネウネと怪しい踊りを……あ、ジェスチャーか。

わたし、一人で、散歩に来たら。

空から、でかい……長い? 手首クイッ……バイクが。

だらけた猫……倒れた? 俺が、落ちてきた。

 

ふむ。

こいつの証言を信じるのなら、どうやら朝からゆっくりと休憩を挟みながらいつもの散歩コースを歩いていたら、折り返し地点のこの森の中にマシントルネイダーが降りてきて、そこから意識を失った俺が転げ落ちてきた、らしい。

 

なるほど、言われてみれば、視界の端には俺がスクラップから組み上げたバイクが無造作に転がっている。

あの状態で五代さんから逃げられた理由がわからんが……恐ろしい事に、アギトは無意識の内に身体が動いて敵を倒したり、という事もやってのけてしまう。

絶対に正体バレをおこしたくないが故に、無意識の内にマシントルネイダーを呼び出して五代さんを振り切って逃走した、という事も無くは無いだろう。

一度も使ったことはないが、俺も一応はゴウラムに対して干渉が可能なはずだ。

追跡されたとして、マシントルネイダーの飛行形態の速度と妨害を合わせれば振り切るのは難しくない。

 

……出来すぎた話だ、とは思うのだが。

そも完全なアギトへの目覚めからして戦闘中に頭蹴っ飛ばされたショックで、という、出来すぎたミラクルで成してしまっている以上、完全に否定するのは難しい。

 

「携帯持ってるか」

 

こくりと頷き、家に置いてあった俺の携帯を手渡してきた。

費用の関係、というより、だいたいの場合は一緒に行動している為に俺とジルの携帯は共用だ。

ジルのリハビリが進み、完全に一人で出歩けるようになったらジル用の携帯も契約する予定なのだとか。

俺は今使っているので不便ないのでそのままでいいのだが……。

スマブレを無事に滅ぼせたらファイズフォンなりカイザフォンなりが欲しかったりもする。

いっそ一般機種の外装を弄って自作してしまうのも手か。

それはともかく、携帯の画面を確認。

日付は……日曜日。

なんと、ダグバと戦ってからまだ四分の一日しか経っていない。

疲れから丸一日経過している、とか、気付けば一週間経って天使がアギト狩りを始めていた、なんて事態もありえるかと思っていただけに少し拍子抜けだ。

 

「……あ、母さん? うん、ごめん。……うん、大丈夫、用事は終わったから。お昼作っちゃった? ……いや、今日は外で食べてこようかなって。……うん、うん、わかってる。レシートね。ありがと。それじゃ」

 

急ぎ家に電話を繋ぎ、結局無断での外泊になってしまったことを謝る。

が、予想外になんでもない風に流されてしまい、そのまま昼は作らなくても良い旨を伝える。

……前の親の時は無断外泊とかはなかったからわからないのだけど、東京で謎の怪人軍団が現れた日に外に出かけて、結局なんの連絡も無しに一泊して帰ってきた子供に対する反応はこれで正常なのだろうか。

 

何かがおかしい気もする。

気もするが、気にしても仕方がない部分はどうしても出てくると思う。

いっそ、母さんが昭和組織のどこかの幹部級怪人で組織の壊滅と共に足抜けして主婦やってる、くらいの方が安全面に気を使わなくて済むのだけど、流石にそこまで大事ではないだろう、たぶん。

肉体を大きく改造しているのなら、流石に身体が出す音に違和感を覚えるくらいはあるはずだ。

……そんな違和感とか人間態での無改造体との差異を完全にごまかせる程の技術力なんだよ、と、言われてしまえばそれまでなのだけど。

 

逆にそうなら頼もしいので良しとする。

もう、オルフェノクとかファンガイアとかワーム系列と関わりが無いならなんでもいい。

いっそ白くて細身のゼクロスみたいな変身体だったりすると大変助かる。

黒沼流の師範代の人が生き残ってる上にバダンシンドロームなどの言葉が出ていない以上、あっちの方のややこしい話は無いものと見ていいし。

そうなると父さんの方が心配になってくるが……。

たぶん、昨日の騒動を生き残っていたとして、今は事後処理で忙しくて家族からの電話とか受けられないだろう。

というか、そういう訃報があったりしたら母さんの声がもっと沈んでいるはずだ。

 

グロンギは滅んだ。

いや、多少の生き残りは居る。

何処に居るかも判る。

だが、奴らは手の内だ。

目が覚めてから、奇妙とも思えるほどに魔石ゲブロンへの探知範囲が広がっている。

近い内に最低でもゲゲルリングは破壊しにいかなければならないし、運営側であるラの二人は抹殺しなければならないが、それもそう問題にはならない。

現状、まともにゲゲルを遂行できる基準に達したグロンギは存在しないのだから。

 

「んー……」

 

大きく背筋を伸ばす。

それなりの時間を睡眠に費やしたからか、身体には不自然な程に疲れが無い。

勿論、裂けた腕、もげた腕、貫かれた首も背骨も、半分くらいになった頭も、死に際のマモちゃんみたいになったお腹も、一切ダメージは無い。

倒木に寝かせられていたというのに、こりもほとんど無い。

枕は心理的な諸々を無視すれば極めて良質だったのも大きいのかもしれないが。

 

「終わった」

 

終わってはいないのだけど。

決して終わってはいないのだけど。

まだまだ人類を脅かす、俺の平和な人生を脅かす諸々は健在なのだけど。

それでも、今だけは言っていいだろう。

終わったのだ、ひとまず。

 

空を見上げる。

雲ひとつ無い青空、とはいかない。

むしろ雲の方が多いけれど。

雨雲というわけではないし。

隙間から少し青空も覗いていて。

太陽も運良く雲の隙間から日差しを見せている。

 

逆に、この時期はこれくらいの方が風情があるし過ごしやすい。

 

「行くぞ。まずは昼飯だ」

 

手を伸ばす。

手を掴まれる。

掴まれた手を握り返し、歩き出す。

 

さあ。

久しぶりの、休日だ。

 

―――――――――――――――――――

 

・未確認生命体二十二号/セバスと呼ばれる少年

『死にたくない』という願いから試製アークルを巻いた超能力少年。

オルフェノクを殺し、魔化魍と戦い、グロンギを滅ぼした。

片手の中には現時点での最強の敵、ン・ダグバ・ゼバのベルト、ゲドルードのバックルとゲブロン。

もう片方の手には、自らが殺し損ね、多くを損なったまま生かしてしまった少女の手を握り、束の間の休日を楽しむ。

積み重なったままの諸々の問題について考えを巡らせるのは、また明日以降になるだろう。

 

―――――――――――――――――――

 

・ジル/かつてズ・グジル・ギであった少女

元ゲゲルムセギジャジャにして脱落者。

背を裂かれ、腹を裂かれ、ゲドルードを砕かれ、ゲブロンを奪われた。

変身能力、再生能力を失い、後遺症として記憶すら無くし、身体は虚弱体質に。

ズ・グジル・ギであったことを知るものは少ない。

身体の傷は残り続け、しかし、確実に快方に向かっている。

彼女の身体が彼女の意のままに動く日は、決して遠くはない。

今日も彼女は少年に手を引かれ、背を眺めながらゆっくりと歩く。

背を見つめる彼女の表情は、楽しげである。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

一月二十一日、東京。

狂乱の一夜が明け、東京にもまた夜明けが訪れていた。

崩れ落ちたビル、そこいらに転がる無残な死体の山、白いグロンギが変じた灰の山。

 

「終わった、か」

 

がしゃ、と、コンバットナイフを腰部にマウントしながら、一条が呟く。

全身に血液の代わりに鉛が流れているのではないか、と思う程の疲労感。

後頭部にあるスイッチを押し、頭部装甲を外す。

むわ、と、汗が蒸気の様に吹き出した。

忙しさにかまけて伸ばしっぱなしの髪が汗でべたつく。

一月の冷たい大気が僅かに心地よく、しかし、それを上回る程に不快な匂いに眉をしかめる。

 

それは血と臓物の匂い、何かが焦げる匂い、何かが燃える匂い。

鳴り響くサイレンは聞き慣れたパトカーのそれではなく、救急車や消防車のそれだ。

大量の未確認の出現により出動できずに居た彼らが、ようやく動き出せる様になったのである。

 

無線から聞こえるのは、出現した全ての未確認撃退の知らせ。

東京都内、警察の感知できる範囲での未確認の活動は終わったらしい。

少なくとも、現時点でまだ活動している未確認を警察は確認できていない。

 

「……」

 

ぐ、と、手を握る。

今、一条には力があった。

それは五代雄介の、クウガのそれを模した力。

仮にここから新たに未確認が出現したとしても、一条が多少の無茶をすれば、幾らかは撃退できるだろう。

だが……。

手の中に、感触が残っていた。

 

それは拳が肉を打つ感触であり、骨を砕く感触であり。

手に握った刃物が肉を断ち、命を断つ感触。

余りにも生々しい、生き物を殺す感触。

 

警察という職業柄、暴力に関わることは多い。

一条自身、剣道、柔道を修め、銃器などを用いずとも人間の犯罪者を無力化し確保することは可能であるし、幾度となく職務として熟してきた。

だが、これは違う、あまりにも違う。

これは、殺しだ。

生命の本質に近すぎる、最も原始的な暴力。

 

相手が殺人を繰り返す怪人である、という事実はある。

説得が不可能である、という事も。

殺さずに無力化する事が難しい相手である事も理解して、しかし、それでも。

手に残る感触は、生き物を、人に近い生き物を殺すものだ。

 

この強化服を着て戦って、改めてわかった。

自分はわかった気になっていただけなのかもしれない。

生き物を、あるいは人と呼べるかもしれないものを殺しているのだと。

それを、あんな、こんな事に関わるべきではない、気のいい旅人に押し付けるべきではなかったのだ。

 

「五代……」

 

別れ際に、顔を合わせる事すら出来なかった。

それで良かった、もうこんな事件に関わらず、旅に戻って貰うためには。

だが、もう少し、何かを言ってやれたのではないか。

この一夜の中で現れた、四十前後の未確認。

それを上回る数を、実質一人で撃退してのけた……殺してしまった事を、きっと五代は抱え続けてしまうだろう。

なら──

 

「一条、無事だったか!」

 

自らの拳をじっと見つめる一条に、同僚である杉田が駆け寄る。

頭に血の滲む包帯を巻き、服も所々ボロボロになっている姿は、一条以外の合同捜査本部の面子も奮戦を繰り広げていた事を物語っている。

そして、戦っていたのは合同捜査本部だけではない。

通常装備しか充てがわれていない所轄の刑事達ですら、逃げること無く未確認に立ち向かい、身体を張って市民の避難を続けていたのだろう。

それは、未だに弔う事すら出来ずに転がされている制服姿の死体を見れば嫌でも判る。

 

「はい、杉田さんもご無事で」

 

答えながら、思う。

無事だったのは、幸運だったからに過ぎない。

幸運にも、自分でも使える装甲服の試作品が完成していて、持ち出す事ができた。

幸運にも、素性の知れない助っ人が手を貸してくれ、全体の負担を減らす事ができた。

 

これまでだってそうだ。

幸運にも、得た力を正しく使える、五代の様な男がクウガになれたから。

幸運にも、五代と同じ力を持ちながら、最低限人を巻き込むこと無く戦う程度の良識を二十二号が残していたから。

 

「疲れてるところ悪いけどな、これから補給を済ませてから事後処理だ。ようやく鑑識も入れるだろうからな」

 

「その前に、救助が入らなければならないでしょうが……」

 

杉田に先導されながら、一条は思う。

先を見なければならない。

戦って、勝って、生き残って終わりではいけない。

運良く勝てた、運良く生き残れた、では。

 

運良く居合わせた、不運にも力を得てしまった民間人に頼るのではない。

自分達が、可能な限りの力を尽くさなければならないのだ。

あの気のいい旅人が、ただの旅人で居られる様に。

あるいは、二十二号が、二十二号ではない、本当の名前で居られる様に。

 

―――――――――――――――――――

・一条薫警部補/仮面ライダーG1

長野県警からの出向で未確認生命体合同捜査本部へと配属になった警察官。

古代の戦士の力を受け継いだ五代雄介と協力し、未確認生命体への対処にあたる。

雄介との交流を経て人間的に柔らかくなり、また、心を通わせた雄介がどの様な思いで戦い続けていたのかを、別れた後に改めて思い知る。

警察官としての活動の範囲を大きく逸脱することは無いが、その心には重く、硬い決意が宿る。

なお、数々の試験装着者に重症を負わせていた強化装甲服G1使用後も、極度の筋肉痛に数日悩まされるのみで、スーツ稼働による過負荷から来る負傷は一切存在しなかった。

 

―――――――――――――――――――

 

「何よ、使えるんじゃない」

 

警視庁、未確認生命体合同捜査本部に充てがわれた、専用装備開発室。

そこで、モニタ越しにG1の戦闘記録を確認していた、ウェーブがかった髪の女性が唇を尖らせながら呟く。

いきなりやってきて、封印予定のG1をあれよあれよと言う間に持ち出していった時は何事かと思ったが、どうやら思ったよりも近くにG1を使いこなせる人材が居たらしい。

 

「G2も付けてあげれば良かったかしら」

 

外され、小脇に抱えられた頭部装甲のカメラの動きから、やはり肉体的に大きな負担が掛かっていたのが判る。

全身の筋力を増幅する関係でそれ単体での機動力も高いG1ではあるが、戦闘時により万全な状態を維持する為には機動力は別に確保するべきだろう。

そういう理由もありG2──武装無人バイクも開発はされていたのだが、AIの調整が上手く行かず、現在は解体、武装とAIを取り除き、新型(・・)の為のバイクとして調整中で使えなかった。

 

「まぁ、搭乗員の事も含めて、まだまだ発展途上、ってところね」

 

悔しい話だが、今の技術力では神経断裂弾抜きで未確認に対抗するには多くの試行錯誤を積み重ねていくしかない。

噂に聞くI.X.A.程、一着に資金を掛ける事はできない。

だが、自分にとっては、資金面でも設備面でも不足はない。

 

完成させてみせよう。

G1を運用できる可能性は名残惜しくはあるけれど、あれを普及させるのは難しいだろう。

一流の中の一流、奇跡の肉体とも呼べるああいった例外で無ければ使えない、というのは、警察の装備としては論外だ。

鍛え抜かれた警察官であれば、無理なく使える、普及型の特殊強化装甲服。

その叩き台としての、新型。

 

「頼むわよ、G3、氷川君」

 

事件は収束した。

しかし、その後、次の事件までの間にこそ戦う者が居る。

彼女もまた、その一人だ。

 

―――――――――――――――――――

・小沢澄子/Gシリーズ製作者

時を経る毎に凶悪化していく未確認の被害に対抗する為の装備開発を任された。

赤い四号と同等のスペックを叩き出せる強化装甲服を開発するも、あまりの性能に装着員が付いてこれず実用化出来ず、大幅にスペックダウンし無数の装備で性能を補った新型を開発中。

が、大量の未確認の同時出現という未曾有の事態に半ば強引に持ち出されたG1が何故か無事に運用された事で、『完全な性能の特殊装甲服』への未練が残る。

それが後に大きな問題となるのだが……。

それはまた後に語られる事になるだろう。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

歩きながら食べられるものとして、ふと商店街に立ち寄りたい焼きを買う。

具はハムマヨネーズ、海鮮。

これに自販機で買ったお茶を合わせれば昼食としてまぁまぁ成り立つ。

お昼ご飯というよりも軽めのおやつだが、今日は腰を落ち着けて食べるよりも歩き回る日にしたい。

ゆっくりと、休み休み歩く分には、ジルもそれなりに付き合えるはずだ。

 

付近の公園でベンチに座り、小休止。

手の中で遊ばせていたダグバのゲドルードとゲブロンをポケットにねじ込み、空いた片手でたい焼きにかぶりつく。

具は……タコ、そしてソースとマヨ、カリカリしているのは刻んだ沢庵か。

実質たこ焼き。

 

見れば、隣に座るジルもがつがつとたい焼きに齧り付いている。

海産物がお気に入りらしく、こいつはハムマヨではなく海鮮を二つ。

もうこいつが水絡み海絡みのものが好きなのは気にしなくていいのではないかな、とも思う。

そういう人も居るだろう。

よく漫画とかで出てくる真っ黒に日焼けして髪を逆立ててねじり鉢巻に白いタンクトップをして両親が漁師だったりする海属性の人らの亜種と考えればなんの不自然も無い。

今日だけはそう思う事にしよう。

頑張れ明日以降の俺。

今日の俺はとにかく頑張らないぞ。

 

さて、次は何処に向かうか。

ハムマヨというハズレのない味を堪能しながら思うのは、この休みをどう過ごすかだ。

ゲーセン、という選択肢。

無いではないが、少なくとも最終的にクレーンゲームは大事になってしまうのでやめておこう。

いい加減質屋や中古ショップにゲーセンからラジコンやネズミの国のチケットを流すのも難しくなってきた。

そうで無ければ、今のところ欲しい景品も思いつかない。

音ゲ、シューティング、レースなども不味い。

人類では不可能なスコアを出してしまう。

やはりゲームをするなら自宅というのが時代なのかもしれない

 

本屋で立ち読み、というのも地味に時間を取れていなかった選択肢だ。

だがジルを立たせっぱなしにするのも問題だろう。

歩きっぱなしと立ちっぱなしでは負荷の掛かる部分がかなり違うのだ。

まぁ、別に店内の適当なとこで座らせて休ませてもいいのだが、それは店側に迷惑になるしマナーの問題もある。

手当たり次第に買って読んで覚えたら古本屋に流せば済む話ではないか。

まぁ立ち読みをじっくりしてしまうのは、有る種の非効率な楽しみの一つではあるからそのうちやろう。

 

……花屋、花屋はどうだろうか。

近場にいい感じの、滅多に立ち寄らない花屋があったはずだ。

店先で意味もなく季節の花の香を数分掛けてじっくり堪能する。

これはなかなかできる事ではない。

最終的に適当な花束でも買っていけばお店の人も文句は言えない、言わせない。

 

「あ、石焼き芋」

 

遠くから聞こえる録音の音声に気を引かれる。

買っていこうか。

半分ジルに食わせれば楽に腹に入るだろう。

なんなら母さんにも一本二本と買っていってもいい。

お土産だ。

花屋はその後。

 

―――――――――――――――――――

 

バスに揺られながら、窓の外を眺める。

マシントルネイダーで走る時とは比べ物にならない程にゆっくりと流れていく、見慣れた町並み。

東京などに比べれば明らかに田舎ではあるのだけど、普通に生活する分には何の過不足も無い。

 

「ジル、行儀」

 

一番後ろの席を陣取り、楽しげに後ろを覗き込むジルの尻を叩いて注意。

利用者もそう多くは無いのだけど、中学生くらいには見えるジルが子供の様にはしゃぐ姿は注目を集めやすい。

 

目的地に到着し、誰よりも早く降車ボタンを押す。

押そうとして先に押された時のちょっとした悔しさとそれに倍する気恥ずかしさは耐え難いものがあるが、今の俺には無縁だ。

多くのグロンギの屍を越えて成長した俺の反射神経はタイミングを逃さない。

 

料金を払い、先に降りてジルが降りてくるのに手を貸し、そのまま手を引き大きな建物の中に入っていく。

こういう大きな病院は、入り口まで直付けする様な位置にバス停があって利用しやすい。

まぁ、俺の今の肉体では特に自分で利用するような事態には陥らないだろうが。

俺の恐ろしいまでの、お蔭でまともにCTもレントゲンも撮れなくなってしまった健康体とは裏腹に、目を瞑っても移動できる程に通い慣れた院内を歩く。

途中、ジルが立ち止まる。

またか、と思いきや、その視線は院内に備わった売店……というより、おしゃれな喫茶店風の場所に釘付けになっていた。

喫茶店に、というより、その入口にディスプレイされている商品サンプルのドーナツに、だろうか。

 

「俺の分もな」

 

ピッ、と、財布から千円札を二枚程取り出して渡しておく。

に、と笑い、

 

『おうっうい』

 

と口を動かし、ててて、と小走りに駆けていった。

最初は色々と純朴な雰囲気だったような気もするが、色々学んできたお蔭で性格に方向性が見えてきた気がする。

元の性格、というのが出てきたのだとしたら……明日の俺がどうにかするだろう。

 

手に下げていた花束を、花が傷つかない様に、ぶらぶらと揺らしながら、軽くノックをし、返事を待たずに病室に入る。

家族が来ていない、というのは、入る前から確認済みだ。

部屋の中に生き物の気配が一人分しか無かったのを確認している。

ずかずかと部屋の中に入り、花瓶の中の古くなった花(俺が持ってきたもの)を捨て、内部の水を綺麗にしてから、新しい花束を刺していく。

 

「実は、お見舞いに花束って、あんまり良くないらしいんだけど、まぁ、定番だし」

 

この時代ならまだありなのかもしれないけれど、十年もすればお見舞いに花束を禁ずる病院も多くなる。

感染症のリスクもそうだが、水が悪くなれば悪い菌が発生したりして危険だし、そもそも花の匂いがダメ、という事もあり得る。

枯れた花の処分でナースなどに負担が掛かる、なんてのもあるか。

だけど、まだそんなに表立って禁止されている時代ではないので、お目溢し頂きたい。

どうせ、明日も来るだろうし、枯れた花とか水の交換とかはやるので。

 

「花も色々迷ったんだけど、送りたいのは花束よりも鉢植え向きでさ。調べたら手入れ次第じゃ一年中咲くとかで、じゃあお見舞いには持ってけないなって。結局店員のオススメ通り」

 

返事はない。

まぁ、返事を期待してのものではない。

気長に待とう。

幸いにして、意識云々を抜きにすれば延命に関しては手段がある。

……そうなると、彼女が目覚めるまでは、死ぬわけには行かない、が継続なわけだ。

別に、元から死ぬつもりなぞ毛頭ないのだけど。

 

「じゃあ、早く、退院しないと、ね」

 

…………………………………………………………。

……?!

 

「……起きてた?」

 

背後からの不意の声に、ゆっくりと振り返る。

ベッドに横たわったまま、顔だけをこちらに向けている、クラスメイトの人。

少しだけやつれたようにも見える。

俺の問いかけに、クラスメイトの人ははにかむように笑みを浮かべた。

 

「んーん、おはよう、セバスくん」

 

「あ、あー、……おはよ、う?」

 

唐突過ぎて、変なアクセントを付けてしまった。

目覚めてくれたのは嬉しいけれど、いきなり過ぎたので、なんとも言えない顔になっているかもしれない。

そんな俺のリアクションが面白かったのか、クラスメイトの人はくつくつと小さく笑いだした。

笑われる事自体は、それほど喜ばしい事ではないのだけど……。

暫く振りに見た、クラスメイトの人の楽しそうな顔を見て、釣られて少しだけ、口の端が上がるのを自覚できた。

 

―――――――――――――――――――

・クラスメイトの人/眠りから目覚めた人

クラスメイトであり友人でもあるセバスと呼ばれる少年の秘密は何一つ知らず、普段の彼との接触から興味と好奇心、自覚しつつも意識するには恥ずかしい感情を抱く。

何の変哲もないごくごく平凡な一般人であったが、運悪くトラックに跳ね飛ばされ、後遺症の残りかねない重傷を負う。

が、異様なほどの回復力でみるみるうちに身体を直していき、後に医者や看護師からは奇跡だと言われる程の短期間で退院を果たす。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……。

与那国島で発見されたオーパーツが動き出す時。

新たな戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アギト編スタート、ではなく
クウガ編エピローグなのです
こんな詐欺の様な真似をして、本当に……すまないと思っている
傲慢かもしれないが、エピローグ特有のキャラ別短め紹介みたいのをやらずにはいられなかった
ここからは助長で真面目でない紹介という名のチャチャ入れ

☆ついにおっぱいに顔を突っ込むもリアクション薄いマン
毎日素手で洗ってる部位だからリアクションの薄さも多少はね?
ジェスチャを使った言いくるめを成功されてしまったのはアギトという存在が割と自動で動いたりと制御を離れる事があることを知っているがゆえの過ちなのだ
ダグバを殺したので今日ばかりは自分を徹底的に甘やかす
明日の俺頑張れと言って今日の問題を投げたからには翌日から頑張る(ガチ)
クラスメイトの人に送りたかった花はカランコエ

☆怪しくないヒロイン
かーっ! 偶然散歩してたら偶然空からバイクで降りてきた義理の兄ひろっちまったい!
しかたねーなー膝枕だなー! 起きたならおっぱいだ!
怪しいところはないが、ガツガツとたい焼きを食べてる様な図の時は歯がギザギザだったりすると絵的には可愛いと思いませんか
色々とあるけどその辺は次回から
デザイン上の元ネタにしているキャラの公式絵を見れば胸は無いとは言えないのではないだろうか。
これなるはスレイヤーズ世界においてはリナが貧乳と呼ばれてしまうのと同じ現象である
納得できないなら単純にここのヒロインは普通にあると思ってもらえれば

☆一条さん
クウガと同等の威力のパンチとナイフでグロンギを殺して始めて五代に押し付けていた役目の重さをはっきりと理解した
決して民間人に重荷を背負わせてはいけないのだ、という決意に満たされた
たぶん最初期イクサを装着しても疲れる程度で済む可能性がある

☆焼肉さん
自他ともに認める天才だけどコミュ力もある、すごい
この世界だと、仮に未確認出現当初から開発をしていたとしても一年でG1を開発した挙げ句、そこから数ヶ月でスペック的にはそう劣っていないG3-Xも開発してしまえる天才
何が天才って、総合スペックではG1は軍用ベースのイクサに匹敵し、イクサが十数年掛けて安全性を確保した所をスペックを落とし装備で補う形とはいえ一年程度で問題なく運用可能な状態にまで持っていった事
これでIQ180オーバー程度とか、それじゃあIQ600とかだとどんな危険物を作り上げてしまうんだ!
答え V3を作ります
並の天才はG3を作る
天才の中の天才はV3を作る
つまりはそういう事なのだろう
三倍超の頭脳があればアギト編も楽勝だったかもしれない……
助けて警視総監!
V1システム?知らない子ですね……
二つ違うだけで大違いではないだろうか

☆クラスメイトロインちゃん
無事復活、めでたい
なんで目覚めたって?
アギト編ではかなり出番があるからかなぁ
この世界で楽に生きる方法は死ぬ時は諦めてざっくり死ぬ事
苦しんでも生きる方法は死ぬような目に合いながらも絶対に諦めない事
諦めてはいけない
諦めるのが許されない位置にこれたよ


次回、今度こそアギト編
お楽しみに、でも期待しすぎずに、気楽に気長にお待ち下さい







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