オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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150 異界の気

カーマネフィリム──祝は()()()()()()らしきものへ駆け出しながら、事前に交路に教わっていた魔化魍に纏わる一連の知識を思い出していた。

鏡を備えた牛の首を持つ水玉模様の肉塊。

大きさとして見れば10tトラックを一回り大きくした程度。

これは如何なる魔化魍だろうか。

 

(レア個体……じゃない。都市伝説型かな?)

 

都市伝説型の魔化魍はその存在が極めて不安定で、一度物理存在として結実した後も、発生条件から外れる事で元の穢に戻る場合がある。

明確に個体として結実する型以外、現象型、あるいは空間型とも分類されるものはそもそも真っ当な方法で清める事ができない為に、時として通常の魔化魍とは異なる対処方法が要求される。

空間型、現象型の類型としてコダマという魔化魍も記録に残されているが……。

コダマにおけるコダマの森の中にある古木などの様なものがあると考えるのは早計だ。

 

肉塊との距離を詰めながらトランスチームガンの引き金を引き続ける。

銃として見れば比較的小さな発射音。

打ち出されるのは高熱硬化弾スチームビュレット。

ギリギリで法に反しない程度の威力しか持たない一般販売予定の普及型トランスチームガンのそれと異なり、単純な威力のみで瞬間的に下位のグロンギの手足程度ならば一時的に弾き飛ばせる程度の威力を備える殺怪人兵器だ。

或いは複数運用で頭部に集中的に着弾させればメ階級ならば再生よりも早く死亡に持ち込む事も可能かもしれない。

ネフィリム……天使と人間の間の子の体液を元に作られた成分がボトルに詰められている為に、ある程度の神秘存在にも有効打が期待できる、とされているが……。

 

(駄目か)

 

肉塊下部、中部、上部、牛の首、牛の角の間の鏡。

弾丸は間違いなく命中し、着弾部に大穴を開けた。

弾けた魔化魍の体液は瞬く間に枯れ葉や土に返り、しかし、些かも痛痒を与えられていないかの様に、肉塊は走り続けている。

あわやその巨大な質量が激突、という寸前、カーマネフィリムが跳躍。

或いは生身の人間であれば消えたようにも見えただろうか。

一瞬にして50mにも迫る高さまで飛び上がりながら、眼下の肉塊に関して冷静に分析していく。

 

(人が走るくらいの速度、遅くはない。すごく脆い訳でもないけど、固くもない。肉が弾丸を飲み込んだりするタイプでもない。部品がちぎれても分裂はしない。でも、それらしい弱点は見当たらない)

 

緩やかな落下。

眼下では肉塊が、銃撃で気を引いていたカーマネフィリムが目の前から居なくなった為に移動先を変え、もうひとりの少年へと向かい始めている。

 

(上を認識していない……索敵が大雑把?目も良くはないかも)

 

腰の後ろにマウントした柄と刀身が同等程度の長さを持つ刃物、スチームブレードを手に取り、トランスチームガンの銃口を上空に向ける。

体内か、或いは難波祝という存在の中に蓄積された大質量を気の運用により限りなく0に。

赤心少林拳黒沼流師範である義経ですら舌を巻く渾身の軽身功。

放たれた弾丸の反動で勢いよく地面に向けて押し出されるカーマネフィリム。

肩部、肘、前腕に配置されたスチームパイプから吐き出される蒸気により姿勢を制御。

独楽の如く高速で回転しながら軽身功を解けば、その身は既に肉塊の真上。

超高速で回転する大質量と化したカーマネフィリム。

その手にしたスチームブレードが触れるより早く破裂音と共に肉塊が裂ける。

音速を突破した事により発生した衝撃波だ。

 

だが、それだけでは済まない。

音速を超えて衝撃波を放つ程に加速した大質量の刃が、肉塊に直撃する。

如何ほどの威力か、というのは、文字通り真っ二つになった……というより、半ばからすり潰された肉塊を見れば一目瞭然だろう。

或いは周辺で身をかがめていた少年、明日夢が無事であるかの心配をする必要があるかもしれないが、奇妙な事にその威力は肉塊にのみ注がれ、周辺被害は殆ど無い。

気、力の流れを制御する赤心少林拳の妙と言えるだろう。

 

圧倒的なオーバーキル。

だが、地面に降り立ったカーマネフィリムは銃と短剣を構え直し、肉塊だったものの残骸に向き直る。

まだ終わっていない。

あるいは先の一撃すら、この個体に攻撃が通用しない事を確認するついでに明日夢へ向きかけたヘイトを自分に向け直す為だけに放たれたものでしかない。

予測通り、肉塊は何事も無かったかの様にぼこぼこと膨らみながら元の体積に戻っていく。

 

(魔化魍の一部、触覚みたいなものかな。それならまだ猫の群れの方が良かっ、いや、猫を攻撃するのは気が引けるし)

 

刀身と柄の境に取り付けられたバルブを半回転。

 

《アイススチーム!》

 

刀身が冷気を帯びる。

走り寄る肉塊を迂回する様に走りながらトランスチームガンによる銃撃で注意を引き、すれ違いざまに斬りつけていく。

足元……地面に接する部位を凍結させられ肉塊の動きが鈍る。

だが、それも僅かな時間のみだ。

凍結した部分を置き去りにその上の部分の肉塊がずるりと地面に降り、再び走り始める。

 

(普通の魔化魍だと、結構ダメージ入るんだけど)

 

だが、想定の範囲内でもあった。

想い人の手助けの為、一般に広める事のできる護身具の一種として開発がスタートした装備ではあるが、それはあくまで一般販売予定品での話。

自分が常に持ち歩くものとして考えた場合、そして、彼の隣で戦う事を考えた場合。

過不足無いものを作りたい。

安心して一緒に居られるように。

 

走り出そうとする肉塊に再びスチームブレードを突き刺し、バルブを一回転。

エレキスチームを省略し、スチームブレードに搭載された奥の手を発動する。

 

《デビルスチーム!》

 

肉塊が大きく震え、崩れ始める。

表面を覆っていた斑点から漏れ出るガスはネビュラガス。

本来ならば人間にのみ作用し、その身を異形の怪人、スマッシュへと変貌させる恐るべき気体なのだが……。

既に複数人の人間を捕食しその身に取り込んでいた肉塊、実体を持たない、恐ろしさだけを備え、決まった形すら持たない『牛の首』は、その構成物を異形に変えられ中身を決定された事で魔化魍としての体裁を保つこともできない。

 

一度融解し再び固まったスマッシュの断片の塊を前に、カーマネフィリムは悠々とスチームブレードを分解し、トランスチームガンの前後に接続していく。

トランスチームライフルを肉塊だったものに向け、あっさりと引き金を引いた。

 

《スチームショット! ネフィリム!》

 

トランスチームライフルの銃口から伸びた、尖端に鉤爪の付いた触手の如き破壊エネルギーが肉塊だったものを貫き、そのまま明日夢へ──未だ言われるままに目を閉じていた明日夢の背後に迫っていた片足の怪童子を、遠くから車の様な何かに乗って近づいてきていた姫を次々と貫き、粉砕していく。

都市伝説型、空間型は周囲の全てが敵くらいに思って、動くもので確実に無害だとわかっているもの以外は全部壊しておいた方が良い。

怪談話と同じ様に、複数人で遭遇した場合は孤立した者を狙ってくる筈。

そう事前に言い含められていた為、明日夢がどこかに行かないようにその場に留めさせ、あえて離れて戦う事で生き餌の様に扱ったのである。

 

残るのは、電柱すら無い田舎道に佇むカーマネフィリムと明日夢のみ。

遠くからは無人の青いトライクが静かに走り寄ってきている。

この怪異……魔化魍が完全に無力化されたかはわからない。

しかし、厳然たる事実として、この魔化魍では、今回取り込んだ獲物を食らう事はできない。

故に一先ずの解決として、カーマネフィリムは変身を解き、トランスチームガンを鞄に収め、運悪く巻き込まれた被害者である明日夢へと声をかけた。

 

―――――――――――――――――――

 

「……っていう感じかな。倒しきれなかったけど」

 

何時ものように家に夕食を家に食べに来た難波さんが、お茶を飲みながら少し前に電話をしてきた空間型、箱庭型っぽい構造の魔化魍との戦いの顛末を教えてくれた。

聞く限りはきさらぎ駅型の都市伝説だったのだろうが、実体化が早い。

まだオカ板以外には殆ど広まっていないような話なのだが、どうも他の魔化魍を共生させる事で実体化を早めているフシがある。

 

「いや、それは別に良いよ。俺も難波さんも猛士でも鬼でも無いんだし」

 

どちらかと言えば、いつの間にか完成していたトランスチームガンの方が情報としては衝撃がでかい。

開発に葛城某の親の方が関わっていたりした、という事もそうだが、問題はネビュラガスだ。

出てくるのが十数年早い……というか、なんならビルドが存在する世界ですらこの時点でネビュラガスは地球上に発生していなかったのではないだろうか。

この世界では火星探査など夢のまた夢とされているし、事実として現在開拓中の火星においてパンドラボックスの類は未だ発見できていない。

ここから二年前後で俺以外の手によって火星探査が行われパンドラボックスが発見される可能性は極めて低いと言って良いだろう。

……まぁ、そもそも問題のネビュラガスが具体的に何処を起源とした何由来の物質なのかはっきりとはわかっていないので、実は地球上では発見されていないだけで宇宙を探せば結構噴出地点が存在する、という可能性も無いではないのだけれど。

 

「この……ネビュラガス、いったい何処の穴から吹き出してきたの」

 

チャプチャプと難波さんの持っていたボトルを振りながら中身を睨めつけていると、難波さんはふんすと鼻を鳴らしながら胸を張った。

 

「レイちゃんのエンジンあるでしょ? 試作パワードスーツの動力にしたくて小型化したり、逆に大型化したり、連結してみたりしてたら」

 

「してたら?」

 

「空間に穴が空いて、そこからぶわーって」

 

「あぶないあぶない」

 

レイちゃん……レイブレード・インパルスのエンジンとなれば、それは勿論他のヘキサギアや俺のロードインパルスと同じくインフィニティパワーユニットになる。

理屈の上で、インフィニティパワーユニットの動作原理を利用して次元の壁とでも言うべきものに干渉する事は不可能ではない。

これは、ほぼ無尽蔵に供給されるエネルギーが次元エネルギーとも呼べるもので、それはいわゆるこの世界ではない、世界と世界の間に滞留しているよくわからん力を利用している。

言ってしまえば無限のエネルギーを得るとか言いながら持ち主不明由来不明出所不明の謎エネルギーを他所から持ってきているわけだ。

その出処は少なくともこの世界の中ではない、つまり、これはほぼ確実に他所の世界、或いは世界の外側に干渉する機構が備わっていると言えるだろう。

 

なるほど、それなら実質的に無限のエネルギーを持ってきていると言っても過言ではない。

開発者は今ちょっとした過労から正気を失って妹さんと共に誰にも邪魔されない場所でゆっくりと静養しているが、彼の研究目的がミラーワールドという一種の異世界で活動し、新たな生命を作り出すものだった事を考えれば、こういうものに手を出す事もあるだろう。

だが、俺はこのインフィニティパワーユニットを元の開発者以上に大量生産し大型化し小型化しありとあらゆる施設や装置に搭載して利用しているが、これまで一度たりとも次元の壁が壊れる兆候は見られなかった。

 

というか、危ないのでそういう可能性がある運用はしなかった、が正しい。

この世界ならずとも、仮面の戦士はともすれば初期フォームの少し使ってから消える武器などで軽々に空間を切断したりしがちだが、何らかの形で破壊した空間や次元が元通りに戻る保証はそんなに無い。

この世界で幾ら安全性を確保した作りにしたところで、物理法則の異なる世界に接続などされてしまえばどうなるかわかったものではない。

更に言えば異世界、別世界、平行世界といったものが割と普通に存在している可能性が高い以上、そこから侵略者が現れる危険性は決して無視できるものでもないし、無視して良いものではない。

 

「やったのは葛城さんだからたぶん大丈夫だよ」

 

「じゃあ大丈夫なのかもしれんけども」

 

恐らくこの世界に数多居る天才の一人だし。

いや、まぁ、だいたいの場合、やらかすのもその天才たちの中の一人だったりするので完全に信用もできないのだけど。

でも、そうか、葛城パパとの繋がりが難波さんにはあるのか。

親戚の家が町工場してるって聞いてたから、少なくとも重工ルートとは関係ないと思っていたが……。

 

「…………あのさ難波さん、その葛城パパの知り合いに、浦賀って名前の研究者が居るかどうか、聞いてみて貰っていい? それとネビュラガスの吹出口後で見せて」

 

―――――――――――――――――――

 

現在二十代半ば、新進気鋭の……とは行かず、研究費も貰えず鳴かず飛ばずで燻っていた浦賀研究員は晴れて素晴らしき青空の会の一員として迎え入れられた。

のだが、少し野心家の気があったので周囲に馴染め無さそう、という事で、彼の為に専用の会社を設立して貰いそこの支配者として君臨してもらう事で事なきを得た。

 

何しろ今の青空の会には橘さんが居る。

橘さんが新人である彼に何か面白いこと(誤解からの拉致、暴力、謎の機械への接続、グラサン)をしてしまう危険性を考えれば、ビルド世界屈指の大天才になる予定の彼の頭脳を護る為に隔離するのは当然の事だ。

 

因みに難波さんの親戚が経営する難波製作所に行ってもらうのは俺が止めた。

何しろ葛城忍が居るし。

なんとなく意図は読めるけど読まない限りただの悪魔の所業でしかない実験からの排除とかいうルートを出来得る限り避ける為には近づけないのが一番だろう。

 

「しかし、驚いたな。まさかあのスマートブレインの社屋をそのまま買い取るとは」

 

社長の椅子に座って嬉しそうにくるくると回る浦賀さん。

権力欲も満たされたようで何よりだ。

 

「嶋さんに頼んでキープしてもらってたのを譲ってもらったんだよ」

 

金を出したのは俺だけど。

何しろ嶋さんは警察にすら顔が利く富豪だ。

ぽっと出の一般人である俺が大金を振り回せば何かしらの記録に残ってしまう事を考えれば、普段から青空の会経由で金と権力を振り回している人を経由すれはそれほど記録にも残らない。

 

「あと、この子を常に連れ歩くように。護衛の為に新造した改造猫だ」

 

──んまお

 

机の上にちょこんと座りふてぶてしく鳴く白いニャンニャンアーミーを見て、浦賀さんは訝しげな顔をした。

こういう反応をされるのは予測済みなので、事前に打ち合わせていた通り、指を鳴らす。

するとニャンニャンアーミーの体がムクムクと膨らみ、金色部分が白くなったブレイドキングフォームへと変化する。

待望の剣持遺伝子配合ニャンニャンアーミーだ。

浦賀さんは一度眼を大きく見開き腰を浮かせ、そして腰をおろし、咳払いをした後に口を開いた。

 

「俺は動物の世話はできない」

 

こころなしか声が震えている。

 

「自分の世話も人間の世話もできるように教育してある。私生活面もサポートしてもらうと良い」

 

──おあぁぁん

 

「料理とかも作れるぞ、と言っている」

 

言っているかは知らないが作れるように教えてはあるので作れはする。

だが、見た目キングフォームのまま猫音声で喋る姿は少しシュールな気がする。

まぁ猫状態で手足を伸ばして料理するよりは毛とか落ちなくて良いのかもしれない。

何故か浦賀さんの眉間には激しくシワが寄っている。

不満、という表情ではない気がする。

 

「とりあえずの社員一同を紹介しておく。付いてきてくれ」

 

社長室を出てデカ目の部屋に連れて行く。

かつてはアギトの力を与えられて多くの社員たちが大はしゃぎしていた広間だ。

部屋に入った瞬間、浦賀さんがそのままの表情で十センチくらい跳ねた。

 

「紹介しよう、茶髪のがアサルトさんチーム、金髪のがスカウトさんチーム、黒髪のがスナイプさんチーム、白髪猫耳褐色八重歯のがグラップルさんチーム、完全武装しているのが猟兵型のエーデルワイスさん。社屋の大きさに比べて少ないかもしれないが能力的には一人で常人の五倍くらいは働ける。減ったら補充するが、なるべく大事に運用してくれ」

 

よろしくおねがいします、社長。

と、大広間いっぱいの社員達が一糸乱れぬ動きで頭を下げた。

急増である為に種類は四種類プラス1だけだが、研究員として活動するのに必要な知識は刷り込んである。

エーデルワイス以外はそれぞれ20人くらい居るので、諸々の活動にて不足するという事は無い筈だ。

浦賀さんの顔が青褪めている。

体調不良だろうか。

 

「か……のじょ、達は」

 

「人造人間。だが安心して欲しい。さる協力者のお陰で全員戸籍を用意してある。彼女らから、表の現行技術で人間由来の物質は検出できないからね、法には触れていないよ」

 

「合法の人造人間……」

 

「あいや、どっちかと言えば脱法だからできれば派手に損耗しないようにしてくれると助かる。公安とかそういうところには関わってほしくないからね」

 

浦賀さんの顔が白い。

ぶるぶると震えながら首を振っている。

 

「お、俺は、こんな期待に応えられる程の技術は……」

 

「ある」

 

今にも逃げ出しそうな浦賀さんの両肩をがっしと掴み、まっすぐに眼を見つめる。

 

「あなたならできる」

 

それだけで浦賀さんの体の震えは止まり、引いていた血の気は戻った。

続けて語りかける。

 

「あなたのその優れた頭脳を、ただ、若いから、実績が無いから、そんな理由で腐らせておくなんて、世界の損失だ。そんな事はあってはならない。そうだろう?」

 

これもまた赤心少林拳黒沼流アクガタ式臨気制御技術のちょっとした応用だ。

肉体的接触を行った常人の生理作用を操る程度の事は造作もない。

彼からすればまるで、重い期待に怯えていたら、相手の励ましによって恐怖が引っ込んだ、みたいな体験だろう。

脳作用はいじらず体にのみ作用しているのがキモだ。

期待に応えられるだけの自信はなく不安もまたあるが、体の震えは止まった。

彼は自分の技術力を心の底から信頼しているのだ!

そう思って貰えたかもしれない。

見れば、浦賀さんの眼には力強い光が宿っていた。

 

「何を……」

 

「うん」

 

「何を作ればいい、俺はここで、何をすればいい」

 

「我々に不足しているものを、補って欲しい」

 

「不足しているもの?」

 

「テクノロジー。世界の破壊を防ぐ為、平和な時間を護る為、そのためには力が、テクノロジーがまだまだ、まだまだ足りない」

 

浦賀さんの肩から手を放す。

一歩、二歩と浦賀さんから離れる様に勿体つけるように歩き、大広間の社員たちを背にする形で振り返り、迎え入れるように両手を広げる。

 

「人類が次の二千年へ踏み出す為に、どうか、あなたの力を貸していただけませんか」

 

―――――――――――――――――――

 

勢いにまかせてそれっぽい口説き文句をこしらえてしまったが冷静に考えてちょっと宗教観強くて怖いな。

まぁ浦賀さんは無事説得できたしあの後から積極的に研究を始めてくれたので良しとする。

勿論、ネビュラガスが現れた以上、俺の方でも研究を同時進行で進めていく必要が出てきた。

ある程度人を食った魔化魍に対するネビュラガスの投与実験もそうだが、日本国内、ゴムボートで漂流してたどり着ける範囲の無人島は改めて再調査する必要がある。

現状そのままネビュラガスが噴出しているわけはないだろうが、噴出する可能性がある区域なら穴を開けやすいだろうし、そういう場所をピックアップしていけばガスの圧縮の目処も立ちやすくなるだろう。

 

トランスチームガンはどうなるかな……。

難波さんはあの方向性のまま研究を進めてもらうつもりらしいけど、あれを一般販売というのはどうなるだろうか。

少なくともネビュラガスを噴出する機能に関しては厳重に封印しないと難しいだろうが。

だが、こちらの実験の結果如何では警察に新装備として採用してもらう、というのもありかもしれない。

変身後のスペックに関しても現行の警察装甲服と比べてかなり高いし……。

 

あとは……。

スズキ輪業に電話だな。

 

「あ、もしもし太刀川のおじさん? ちょっとゴルゴムの方に問い合わせとかできる? 火星とか、他の惑星に探査機とか向けた事あるかって、大至急。店を空けられない? 店番できるやつ送るよ。猫でいい? 駄目? なら熊と猿と鹿とバイクじゃあどれがいい? 駄目? わかったよバイク整備できる人型送るから、はやくね、急いでよ」

 

電話を切る。

つまり店を空けないとゴルゴムとの連絡は取れないのか。

何時でも店を空けられる様に猫も熊も猿も鹿もバイクも全部送っておこう。

 

これが終わったら、俺も含めて変な寄生生物とか持ち帰ってないか、改めて知人全員の検査だな。

まったく。

オロチ現象も近いだろうに、ここに来て更に忙しくなるとは。

やはりこの世界、一筋縄ではいかないものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 





喪中だからあけおめできない
ので、今年もよろしくおねがいします

☆魔化魍・きさらぎ駅
ネット怪談、きさらぎ駅が元ネタ
作中時間で言えばだいたい一年前くらいに投稿されたもので魔化魍の中でも段違いに若い
オロチ、地脈の中に不自然に溜まったエネルギーと社会不安、インターネットという不特定多数の意識が集まる媒体が普及した事によって発生した
実はこれ単体の場合は人間を捕食する手段が無いが、体内に別の魔化魍を飼う事で『きさらぎ駅にたどり着いた後に行方不明連絡不能になった』という事実を作り出す事で強大になっていく
体内に飼った魔化魍が童子と姫を連れていた場合、その童子と姫に自分の童子と姫としての特徴を与える事ができる
童子は片足になった上で老けるし、姫は車のようなものとセットになり、被害者を連れて行く
弱点として、駅が起点である為に移動できず、徒歩が自前の移動手段で山を越えられると自力で追いかける事ができない
駅そのものを破壊すると崩壊するが、適当な地方駅に寄生して育つ為、破壊すると寄生先の駅も破壊されてしまう
鬼が遭遇した場合は駅舎の適当な位置に音撃を叩き込むのが最速討伐方法

☆魔化魍・牛の首
実在が確認されていない魔化魍
どういう魔化魍かは伝わっていないが、恐ろしく強い魔化魍であると伝えられている
……という特性を持った魔化魍であり、実は精神制御術を持たない戦士だとまだら模様を眼にした時点で恐怖に囚われ、その記憶を持ち越す事ができない
記録でも同様の為に遅々としてその性質の解明は進んでいないが、大体の場合は相対した鬼にとって恐ろしい、つまり戦士として馴染みのある脅威として形を作る為にこれに鬼がやられる、という事も少ない
今回は未成熟個体であったが、性質としてはぬっぺふほふに近い個体だった
相対する相手の恐怖するものに化ける、という性質上、元は不定形なのかもしれない

☆葛城忍博士
現在は難波製作所所属の天才博士
たぶんエボルトの研究に積極的に協力していた研究者だったから隙を見て実験台にする名目で始末した、みたいなことなんだろうけど、作中では浦賀に対してちょっとうろたえるだけで謝罪するでもないし罪悪感を抱いてる風でも無かった
そんだけ悪いマッドサイエンティストだったんでしょ、って事なんだろうけど、やっぱりやり口は悪魔的だなと思わないでもない
原作においてはビルドドライバーとかを作っているが、今作では参考になるエボルドライバーが無い為、未だ制作には着手していない……筈
世にも珍しいインフィニティパワーユニットを眼にしてマッドな面が出たが基本的にラブアンドピースの人
でも浦賀さんを目の前にしたら何をするかわからないので浦賀さんに与えられた会社には出禁
別に浦賀さんに悪意があるとかではない筈
そこんとももう少し掘り下げて欲しかった気はする
怪人に変異させた上で焼き殺すとか処分方法が本人の信条とは裏腹にマッド過ぎる

☆謎の権力を振るう年若い男によってベンチャー企業の研究主任兼社長に抜擢されてしまった若き研究者浦賀啓示
時代的にまだライダーシステム開発のゴタゴタが無いというか世界融合も無いので焼かれていないキレイな顔
才能を見込んで、みたいな話にほいほい乗ってしまったばっかりに明らかに巨大な力が働いている流れに乗ってしまった
常にそこらの未確認すら目じゃない力を持つ猫に付きまとわれ、明らかに違法なのに合法であるらしい人造人間軍団に囲まれて過ごす事に
うーん離反フラグ、と思われるかもしれないが、知識だけ植え付けられた人生経験0の美少女人造人間チームに囲まれる中で情緒とか絆とか学んで欲しいという主人公の思いやりの犠牲者でもある
技術力はあったけど一人ぼっちだったんだなとかそういう評価をされていたのでこんな事に
明らかに最後洗脳っぽい操作を受けているが直接思考能力とかを弄った訳でなく錯覚を利用したものなので安心して欲しい
逆境に置かれたからあそこまでの技術力を得るに至ったのでは、という疑問もあるが実際成果物ができるかどうかは今後次第

☆きさらぎ駅の哀れな犠牲者だった安達明日夢くん
レイブレード・インパルスに乗った難波さんによってお姫様だっこされた状態できさらぎ駅の範囲外まで連れて行かれ、そのまま放流された
トレーニングでバッキバキになった数年後の中の人ばりにバッキバキになった明日夢くんの明日夢くんが収まるまでその場を動けず途方に暮れる事に
放流されたのが駅近だったのが唯一の救い
今後女性の人から女性を感じる度にフラッシュバックして明日夢くんの明日夢くんが明日夢くんになってしまうかもしれないが命が助かった事を考えれば軽い軽い

☆謎の新ベンチャー企業
怪しさ満点
社員は全員髪型とか化粧でごまかしてるけど顔のバリエが四種類くらいしか無い
遺伝子検査とかされると人間ではない事がバレる
社長が常に引き連れている猫を検査すると人間由来の遺伝子が検出される
スマブレ社屋が買収された、という事で注目されるところだが嶋さんの、素晴らしき青空の会経由でマスコミに口止めがされた為にそれほど騒ぎにはなっていない
表向きは素晴らしき青空の会所属の組織の一つ、という事になっているが、嶋さんが名義貸しをしているだけで実際は……
暫くは私費で運用されるが、一般用にデチューンしたヘキサギアやらが販売されていくので少ししたら軌道にのって普通に運営できるようにはなる
社名は本編中に出すが、一応スマートブレインから部分的に引き継ぐ予定

☆ファントムリキッドが欲しいばかりに本編中で最大級の豪腕を振るってしまった男
最悪、他所の星でネビュラガス穴の開通実験を行った上で同じ操作を行った別の惑星を物理的にぶつける、くらいの事はやりかねない
ので、そういうふうに考えたら今回はまだまだ大人しい方法を取っていると言ってもいい
自分の身の回りに含まれるので地球とか人類とかの未来は大事だけどそのためになら他の星とか他の種族の未来はいくらでも閉ざしていくやつ
新規読者の方々がクウガ編とかアギト編を見て明るめの感想を言ってくださる度に、話が進むとこいつこんなんなってしまうんですよと申し訳なくなる
でもそれがこいつなので仕方がない
だいたいそれ言ったらクウガ編ではグロンギの未来を閉ざしたしアギト編では神の威光に背いたし
元からそういうやつが境遇からいい感じに見えていただけなんやで

☆スズキ輪業
ゴルゴムの実験体から現在では何故か再改造を経て構成員に成り上がった太刀川のおじさんが経営するバイク屋
なんでスズキ輪業かと言えば現ゴルゴムの首魁が圧倒的SUZUKI信者である為
バトルホッパーのベース車がSUZUKIのやつなのでこの世界においてSUZUKIはゴルゴム傘下なのではないだろうか
最近店の前に助手席に猫を乗せた猿が運転している熊の入った檻が乗ったトラックがやってきたが、後に丁重にゴルゴムによって引き取られた
鹿を引き連れた量産型オートバジンが人型状態で店の前で棒立ちしているようになった


響鬼編なんだ、このSSは今、誰が何と言おうと響鬼編なんだ……
というお話
今後は裏でネビュラガス関連の開発が進みながらも響鬼編が続いていくので誤解なきよう
この時代だと原作主人公ら居ない……いやタイミング的に万丈は居る可能性あるけど
悪魔の科学者ですらこの時点でまだ中学生だからね
どこをどういじってもビルド編にはならないのだ
ちゃんと魔化魍と戦っていくよ
それを了承してくれたものとして、次回も気長にお待ち下さい
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