オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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仮面ライダー電王 2007年〜
190 未来の国からはるばると


仮面ライダー電王という作品は恐ろしく長い事擦り倒されるコンテンツであった。

主役は大成した為に滅多に呼ぶ事も出来なくなってしまったが、マスコット的立ち位置にあり、更に声優ファンのお姉様方も大いに巻き込んでファンとしていった味方側のイマジン四人が便利だったのだろう。

作劇的に考えて、その時その時の現役ライダーに憑依する、という名目でメッシュを入れて声優さんに吹き替えさせれば良い、というのも手軽さを加速させていた。

役者さんの成長、という意味でも、各タロスっぽい動作や表情の演技をする、というのは良い経験値にもなるのだろう。

デンライナーという時間を越える乗り物もまたクロスオーバーにおいて万能接着剤の如く作用して、後には戦隊ロボと合体まで果たす始末。

 

言わばスパロボで言う居るだけ参戦とか原作消化済み設定だけ拝借参戦とかイベントは再現しないけど都合良く敵味方入り交じる舞台だけ使う為に参戦に近い事を長らくやっている訳で。

じゃあそもそも電王ってどんな話?というのを忘れている人も結構多いのではないだろうか。

ダンクーガの原作がどんな話かわからん、みたいに、そもそもクロス先でしか知らないみたいな人もそう少なく無い筈だ。

ダンクーガノヴァも原作見てない、という人も居るはずだ。

キャラ可愛いよね、というノリで原作に手を出した人も多いだろう。

最後まで履修できたかは問わない。

視聴者はあらゆる作品を完走してもいいし、挫折してもいい。

所感を言わせてもらえば、スパロボのライターさんは大体の場合与えられた材料を口に入れやすく消化しやすい形に調理してくれているとつくづく感じるところだ。

なに?アトリームでも上手く原作を消化してました?それも地球のシナリオライターよりも面白く?

そんなんだから母星が滅ぶんだよ。

 

それはともかく。

イマジン四人のわちゃわちゃで誤魔化されそうになるが、電王の話はそれなりに重い、その上で独自の時間解釈により成り立っているのでややこしい部分もある。

更に言うとまぁまぁ人が死ぬ。

死んだ、という具体的な描写こそ少ないが、歴史修正の過程で無かったことになる過去の話でなく、現在の時点でイマジンがあっさりと人に死ぬような暴力行為を行うのだ。

 

いやまぁ、野上良太郎の不幸イベントで明らかに常人なら死ぬ不幸があるので、リアリティラインが低いか、電王世界の住人は恐ろしく頑丈なのだ、という弁護も出来ないではないのだが。

ともかく、殺人が目的である訳では無いが、目的達成に殺人やそれに類する行為が必要とあれば何のためらいもなくそれを実行してくる。

何を当たり前のことを、と思われるかもしれないが、そこのところを勘違いしていると痛い目を見る。

イマジンというのはゆるキャラの一種ではなく、通年通りの人類敵対種族の一種にすぎないのだ。

 

イマジンは基本的に、時間遡行において元の肉体を置いて精神だけで過去の世界に飛んできた連中だ。

そして、基本的にどいつもこいつも元の肉体に関する話を一切しない。

戻る肉体の有無はひとまず置いておくとして、彼等はそもそもの話、自分達の居る世界を産み出す為の過去改変をしに来てはいるが、その後に元いた未来に帰る、という考えは持っていない。

 

その行動は大概恐ろしく野蛮で粗暴で粗雑ではあるが、それでいて私利私欲に繋がるものではない。

そういうレアな私欲で動く個体が居ない訳では無い。

派手に暴れたい赤いやつだとか、デンライナーの車掌になりたい紫のやつとかがそれにあたる。

あとは本編外に出てくる連中などが挙げられるが、テレビ本編に出てくる敵対的イマジンはたった一つの目的の為に動く。

 

彼等は決死隊なのだ。

自分達の住む世界を守る為に自らの命も省みずに肉体を捨て(或いは肉体を失ってから)過去の世界に来ている。

そこだけ聞くと同情的になってしまうかもしれないが、基本的に彼等は現代世界と相容れない。

少なくとも今現在、西暦2007年の住人からすると妥協点を見出すのも現実的でないレベルだ。

 

彼等の世界が如何なる歴史を辿ったかはわからないが、それは少なくともこの世界のそれとは大きく異なるものだ。

彼等は2007年を起点にしてそれより過去に飛び、大規模な破壊活動、大量殺人などを行うことで自分達の世界に歴史が分岐するように企てている。

何故過去に戻って破壊活動をしているのか、と言えば、おそらくは分岐点の鍵が何処に居るかわからないので、とにかく当てずっぽうに殺し回って運良く分岐点の鍵を殺せる確率を上げよう、というものだと思われるのだが……。

結局それで何が起きるかと言えば歴史改変だ。

それ即ち、彼等が抹殺しようとしているのは特定個人、種族、団体などに留まるものではなく、正しい歴史そのもの、今この時代に住まう汎ゆる生き物全てを殺そうとしているのである。

 

或いは、その歴史改変によって現在より幸せになる人ももしかしたら居るかもしれない。

例えば、未確認による儀式殺人を全て防ぐ歴史改変を行ったとしたら、マラークによる超能力者の抹殺を阻止したら、人死そのものは減るだろう。

しかし、それら被害の結果として生まれた人間関係、或いはその人間関係から産まれた命そのものは消滅する。

トニー・スタークの娘が消えなかったのは歴史改変ではない方法で消えた人々を取り戻したからなのを忘れてはならない。

 

新幹線理論だ。

そしてそれは、一人の駄目な少年の結婚相手を変えるなんていう規模には留まらない。

のび太がしずかと結婚した事で消滅したジャイ子との間に産まれた筈の子供たちと同じ様に、不幸な死を切っ掛けにして起きた出会い、そこから産まれた子供たちは霞のように消えて失せる。

歴史改変者が大虐殺者である、という俺の主張はそういう部分を根にしている。

運命的に別の歴史でも別の形で出会う、なんてのは疑問でしかない。

それは同じ顔同じ身体を持った別人に過ぎない。

 

旅人でなく議員になった歴史でも彼の胸元には赤い羽根が飾られている、なんていうのは、感動する場面ではない。

それはただの虚しい偶然の一致に見る者の感傷が意味付けを行なっているだけ。

意思があるだけの物が死ぬところまで行く、という歴史は消滅した。

その歴史で産まれたありとあらゆるものは無に帰したのだ。

 

より良い歴史になる、被害者も減る、人死も少ない、悲しむ人は減った。

戯言である。

歴史の書き換えはどうしようもない殺戮であり、略奪だ。

奪われることは悪で、理不尽で、否定されなければならない、絶対に。

 

一方で。

イマジン側の行動を否定することはできない。

君たちの歴史は正しくないので消滅してくれ、などと言われて素直に消えてやる理由はイマジン達にも、彼等が居た未来に存在したどんな存在にも無い。

正しい歴史を書き換えてでも自分達の世界を護る、というのもまた正しい。

言わば、彼等もまた、正しい歴史なるものに生存権を奪われていると言っても良い。

奪われることは悪で、理不尽で、否定されなければならない、絶対に。

 

仮面ライダー電王のテレビ本編の本筋には野蛮人や破滅主義者は居ても明確な悪の組織、といえるものは存在しない、とも言える。

電王というのは悪の組織に立ち向かう自由の戦士の話、というよりも、正しい歴史とイマジンの歴史による絶滅戦争と言ったほうが近い。

イマジンとは、正しさという圧制者に立ち向かうレジスタンスなのである。

 

無論、俺は運良く正しいとされる歴史の側に居ることができているらしいので奴等のことも残らず殲滅するつもりだ。

正しい歴史側としてレジスタンス的なイマジンを排除していくのでターダタダタダ!みたいな尾田漫画の悪役みたいな笑い方をする覚悟すら出来ている。

その多くを電王こと野上良太郎が抹殺してくれる筈なので、俺が無理に出しゃばる事は無いと思われるが。

 

そう思われたのだけれど。

考えてみれば、野上良太郎がしっかりと確認できる範囲で抹殺したイマジンの数は百にも満たない。

未来世界からやってきたイマジン未満の精神体は観測された範囲でも約3000。

そう、数が合わない。

 

2007年にやってきたイマジンはすべてカイと契約しているためにその死と連動して消滅するので最終的に辻褄は合うのだが、最終決戦まで何してたのお前ら、自らの世界を守るための決死隊だろ?

などと思ってはいけない。

彼等は必死だが、どこまでの事を自分事として受け止められていたか、というのは未知数なのだ。

それは、メインヒロインの役者が急遽出れなくなった為のシナリオ変更の余波などという生易しい理由では勿論無い。

 

彼等には守るべき自分達の歴史がある。

より正確に言えば、彼等は歴史改変を成立させる事により初めて自分達が生れ育つ世界を取り戻す事ができる。

歴史改変が成る、つまり、分岐点の鍵の抹殺が成功した時点で初めて彼等はその存在が確定し、自分達の歴史、自分の時間軸を手に入れる。

逆に、歴史改変が成立するまで彼等は『もしかしたらあり得るかもしれない未来』などというあやふやな世界を立脚点にしなければならないのである。

 

過去に接続されていない可能性世界には、当然過去も未来も存在しない。

現在に辿り着く道筋が無いのだから過去は無いし、存在しない世界に当然未来は生まれない。

産まれてもいない為に生きてもいない、静かに横たわる死体の如き世界、それが現状のイマジンの世界なのだ。

 

逆に、彼等が一部イレギュラーを除いて揃いも揃ってキチンと歴史改変を目標として行動しているのは奇跡にも見える。

無論奇跡ではなく、彼等の行動規範を定める道標が存在する。

イマジン世界の特異点であるカイだ。

 

電王世界における特異点とは、歴史改変による影響を受けない、時間的因果から切り離された存在だ。

なので、例え歴史改変で自分の両親を殺されても存在する事ができる。

クライシスの亡霊にもわかりやすく説明すると、過去に戻って仮面ライダーブラックこと南光太郎の誕生前に両親を抹殺したにも関わらず、現在に戻ったら平然とRXが待ち構えていてリボルケインを受けてしまう、と言えばどれほど理不尽かわかるだろう。

まぁこれは叙述トリックで、RXの中身が別人になっていた、という形でもありうる話なのだが、特異点であれば中身はそのまま、ということになる。

たぶん日食の日に産まれた適性ある子供とか他にも居ただろうし、予備くらい居るだろ。

 

特異点の能力にはもう一つ、その記憶を起点として改変された歴史を元に戻す、というものがある。

あるとされている。

それは外付けの機器であるデンライナー由来の力、という訳でもない。

 

そもそもの話として、作中人物は訳知り顔で特異点について語るが、その能力にはかなりのブレがあるように感じる。

特異点は時間的改変を受け付けない、存在した時間軸が消滅しても存在し続ける訳だが、完全に消滅した時間は特異点の記憶からでも修復できない。

消えた歴史の特異点であるハナ或いはコハナが存在できているのにも関わらず、同じく未だ存在出来ていないイマジン世界の特異点であるカイは過去を持たない非常に不安定な状態にある。

 

これはハナ、コハナが分岐点の鍵である、という事実と、少しだけ関係する。

分岐点の鍵である、という事実そのものにではなく、彼女の存在した時間がこの世界の近似値であったが為だろう。

分岐の鍵である、つまり、分岐のどちらとも近い位置に彼女は居るのだ。

 

特異点は歴史改変に対する耐性を持つ。

しかし、物理的な危害に対しては普通の生き物と同じ強度しか持たない。

作中で言及される事だが、特異点はその誕生日、産まれた瞬間を消されると消滅する、という説がある。

説に留まっているのは実際にそれで特異点が消滅する場面を誰も目撃していないからだ。

劇場版ならではのガバ、とは言えない。

牙王の経歴や口ぶりからして同じ手口で何人もの特異点を消滅させていたのだろう。

少なくとも彼の経験上は特異点はこのやり方で消せた。

 

だが、本来特異点が無効化出来る歴史改変とはどこからどこまでを指すのだろうか。

そもそもの話として、歴史改変により人間が消滅するのは物理的な理由によるものだ。

産まれるためには男と女、最低でも精子と卵子が必要になる。

それが出会わないので特異点の肉体が形成されない、なので消滅する。

つまり特異点の弱点である物理攻撃なのだ。

これを言い出すとどのタイミングの歴史改変であろうと最終的には物理攻撃であると結論できる。

これが物理攻撃判定であると考えた場合、特異点は歴史改変で消滅する。

特異点が自らを歴史改変で消そうとした場合の特殊な挙動に関してはひとまず置いておく。

 

しかしそれでも、産まれた瞬間を消されると消える、というのは迂遠な話だ。

特異点は物理的な害には無力なのだから、今日にも産まれるという段階にあるのなら、時間を消すなんて真似をしなくとも産まれる直前の本人を殺せば特異点は死ぬ。

時間を消すよりも妊婦の腹を破壊する方が倫理的にはともかく物理的には容易い筈だ。

だが、わざわざ特異点である野上良太郎を消すために牙王は誕生日の時間を消そうとした。

なんとなれば、生の野上良太郎なんてあのムキムキマッチョマンならその場で本人を物理的に殺せただろう。

 

特異点は不死身ではない、とはオーナーのセリフだが、実のところこれはある種の欺瞞だったのではないだろうか。

生まれる前の特異点、或いはその親を殺しても特異点は消えない。

その体内にあと少しで産まれる特異点が居てもそれが変わらないのだとしたら。

実のところ、例えば、十歳の野上良太郎を殺しても、死ぬのはあくまでも十歳の野上良太郎であり、それ以降の時間軸の野上良太郎は存在し続けるのではないか?

不死身ではない、死にはする、だが、特異点はその後の時間に存在し続ける。

発言と矛盾しない。

 

ブロックユニバース理論、というものがある。

簡単に言えば、宇宙が産まれた瞬間から終わるまでの全ては最初に形成されており、時間の流れというものは人間の脳機能が齎す幻覚である、というもの。

この理論に基づけば、世界の始まりから終わりまで、この変化し続ける世界のすべてが、我々の認識する時間の長さの分だけ最初から存在していて、それを我々が認識する順番こそが時間なのだ。

 

この宇宙がそうなのか、と言われると……なんとも言えない。

別にそうだったとしてもこの世界は成り立ってしまうからだ。

歴史改変が可能である、という事はなんの反証にもならない。

歴史改変がなされる、あるいはそれも覆されて元の歴史に戻る、そんな流れすら最初から予定されていたものだとすれば否定する事はできない。

実際重要でもない。

 

だが、過去改変の影響を受けない、という特異点の在り方はこれに似ているようにも思う。

特異点という一個人分の世界が、その発生から終了までを産まれたときから全て形成済みであるとするならば。

特異点に過去改変が影響を与えないのは、パラパラ漫画のコマを一つ抜いたとしても大きな影響がないのに似ている。

特異点が自らの歴史を消す時に発生する莫大なエネルギーとは、特異点の生まれてから死ぬまでの世界そのものを変換したエネルギーに他ならない。

誕生日の時間を消す、というやり方が重要なのも、特異点が発生した、という事実を作らせないのが重要であり、特異点になるかもしれない産まれてない肉塊を殺すのでは意味がない。

特異点が産まれたという事実を消すことで、産まれるはずだった特異点の時間全てが発生しない。

産まれるという事実を消された時点で特異点は特異点でなくなるので過去改変により消滅する、ということなのだろう。

 

特異点の持つ歴史を修正する力なるものもこれを軸に考える。

特異点の一生をパラパラ漫画として、本人以外の歴史、世界が消滅したとしよう。

消えた世界の中で特異点の動きだけは残される。

歩いているような動き、服を着ているような動きの制限、呼吸をしている、物が見えているような視線の動き。

無の中では出来ない動きをする特異点の、その記憶の矛盾を修正する為に、世界は歩く為の地面を、服を、大気を、光を、そして時間の流れまでもを近いページを元に作り出し、辻褄を合わせる。

これこそが世界を修復する力の正体だ。

 

となると、やはり、イマジン世界を修復できなかったカイの存在が気になる。

これは、ハナの歴史が修復されなかった事とも同時に考える。

 

特異点の記憶に矛盾が生じないように世界は辻褄を合わせるのだとすれば、矛盾が産まれない、特異点が活動できてしまう世界がそこに存在したなら、当然修正は起こり得ない。

ハナの産まれた世界は基底現実とそう変わらない世界、歴史だ。

二人の男女が幸せに結ばれるか否か、という程度の差でしか無く、時代もそれほどずれ込む事はない。

これは、辻褄合わせが少ない手間で可能だからこそ起きた歴史修正の失敗と言える。

 

逆に、正しくない歴史とされるイマジンの歴史はどうか。

恐らくこの歴史とはかけ離れた流れを持つイマジンの世界をそのまま修復するのは、かなり大掛かりな辻褄合わせが必要になる。

何しろ、ライダー世界は平行世界、似た異世界などを許容する。

その世界においても否定された歴史がイマジンの世界だ。

それが故に電王の歴史に介入してくる。

 

イマジンの世界は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という形で再構成された世界なのではないだろうか。

特異点であるカイは歴史改変で消滅こそしないが、存在できなくなった、発生しなかったイマジン世界でカイは記憶を紡ぐことはできない。

ありものの世界でカイという存在の辻褄を合わせようとするなら、ただ行き先と目的を与えてやれば良いだけの話になる。

これならば、既に存在している正しい歴史を大きく修正すること無くカイの持つ独立した時間の流れ、歴史に対応できる。

 

カイの歴史は、修正された結果として3000の契約イマジンと共に過去に侵略するという形で存在しているのだ。

勿論長く続けば矛盾は産まれてくるが、もともとのカイの人生が短命に終わっていたのならば、侵略者として戦って死ぬ、という歴史でも問題なく帳尻を合わせる事ができる。

これが事実である、という訳では無い。

事実かどうかはカイを殺してみた時に初めてわかるだろう。

 

無論、妄想の類だ。

しかし、これが妄想でない場合は更に酷い。

ただ特異点が歴史改変で消滅せず、世界が消えたままなのだとしたら。

世界が消滅した特異点は無の中に転げ落ちる。

破壊された歴史の特異点ならば時の砂漠に放り出されるのかもしれないが、そもそも正しく無く存在しない世界の特異点は時の砂漠に辿り着けるかも怪しい。

 

自らの過去も未来も、無の中で彷徨う内に本人の記憶の中ですら定かではなくなり、無の中から存在したかもしれない歴史の人間の不確定な可能性を掻き集め、時を遡る術を身に着け、今に至る。

 

これはかなりの超人だ。

超人にならざるをえなかった類の超人だろう。

彼の様々な時間に纏わる特異な能力にも合点がいく。

特異点なる異常体質者が時間も空間もない無に放り出され、思い出す過去にすら確かな証拠も確信もなく。

時間の流れという幻覚に囚われて生きる人間が時間という概念のない世界で正気を保とうとするのなら、自ら時間そのものを生み出すしか無かったのだろう。

それは自分の細かな差分を作り出し、順序を決めることで擬似的に時間の概念を模倣するところから始まり、やがて自らの手で本来の時間の流れに手を掛けるまでに至る。

そうして、ただ、生きたい、生きていける世界が欲しいと、この世界にやってきたのだ。

 

時間すら存在しない虚無の中で取り残された特異点は、自らの存在を確立するために時間を制御する力を得る形で進化せざるを得なかった。

逆を言えば。

時間という軸のない特殊な次元にこの世界のアギトが放り込まれた時、そのアギトはカイに類する時間を制御する力を得られる可能性がある、という事ではないだろうか。

無論、並のアギトではただの放逐刑になってしまうだろうが……。

ある程度時間をどうにか出来る段階まで鍛えた上で試す分には、良い修行になる。

これは新たな知見ではないだろうか。

 

「えっ、と」

 

つらつらと、イマジンだの特異点だのに纏わる思考を重ねていたが。

眼の前に居る砂、恐らく未契約のイマジンに直接話を聞いてしまえば良いのだ。

幸いにして、目を付けられたと思しき難波さんはまだ願い事を口にしていない。

だから、ここで難波さんに『イマジンの居る未来について知っている限りのこと全てを教えて』と願ってもらえばすべての謎は明らかになる。

 

「あのね、たぶんわたし、貴方のご期待には添えない、というか」

 

「俺が何を期待してると?」

 

「未来のお話でしょ?」

 

見透かしたようにイマジンが返す。

 

「つまり俺がお前達の情報を知ってる、というところまではわかるんだな?」

 

「だって貴方、親しい戦えるお友達にはイマジンの話してるし」

 

そう言えばそうだ。

対抗手段として『願わない』というのがそれなりの時間稼ぎになるので伝えていた。

何らかの強制力で願わなければならない、という時には、俺の前に現れて何らかの決めポーズを取りながら十秒間くらいの名乗り口上を上げた上で戦いを挑むように伝えている。

イマジンはある程度勝手に願いを解釈して無理やり叶えたことにも出来てしまうが、ここまで具体的なら取り敢えず確殺の間合いには誘い込めるだろうという考えからだ。

 

「じゃあ、それを知った上でなんでお前は難波さんと契約をしに来た」

 

「契約しに来てない。あと、カイとも契約してない、貴方の言うはぐれ、ってやつ」

 

「ふぅん」

 

まぁ、無い話では無い、筈だ。

この時代に来たイマジンは数が限られている関係上、最終的にはぐれイマジンの方が多くなる。

言うまでも無い事だが、必ずしも本当ということは無い。

イマジンは元々人間なので普通に嘘を吐ける。

 

が、こいつは俺が友人にイマジンへの対処法を話している、という事実を知ったうえでこの場にいるのだ。

自殺志願者か、さもなければ、殺されないだけの自信があるのか。

下手に刺激するのは得策とも思えん。

或いは……、

 

「もしかして俺と顔見知りだったりする?」

 

「ンミッ」

 

「或いは、俺の家族(子孫)とか……」

 

「かっ、家族とか、そんな、いや、私はぁ、それでも良いんだけどぉ……」

 

未契約である為に灰の塊である腕で、頭を掻くような、顔を隠すような動きをしながらしどろもどろになるイマジン。

未だ難波さんの脳内からイメージを参照出来ていないからなのかデザインがあやふやでボディランゲージがわかりにくい。

難波さんがそんなイマジンをチベスナマンみたいな眼つきで見詰めているのも印象的だ。

 

このイマジンが俺の知り合いに連なる者なのか、というのはわからないが、只者でない、という事だけはわかる。

イマジンは未来に肉体を置いてきている、或いは肉体を維持できる未来がないので肉体がない、という状態にある訳だが、逆に言えば精神体、魂魄への施術はそのまま引き継げるのだ。

歴史の消滅による記憶喪失などが無ければ積み重ねた技術も覚えておけるだけ持ってこれている、ということになる。

 

少なくとも、人間の魂魄ではない。

極まったアギト、或いはそれに類する進化人類のもので、なおかつ陰陽道の流れを組むものをはじめとして神秘的な術が幾重にも編み込まれている。

このイマジンの言動がどこまで嘘でどこまで本当かは不明だが、契約をしていない、契約を目的としていない、というのは有り得るようにも思う。

この場に存在する為にイマジンという形式で出力されている、というだけで、眼の前のこれの元は今まで遭遇してきた中でも五本の指に入る程に存在としての位階が高い。

やろうと思えば肉体ごとこの時代に単独顕現できるだろう。

 

実は何らかの理由で性転換した俺自身?

いや、流石にそれなら気付くか。

将来的にこれくらいの事ができる野良アギトが増える公算は高いが……。

 

こほん、と、実体のない咳払い。

 

「ともかく、私はこの子への助言以上の事をするつもりは無いよ。あなたへの未来情報の開示も含めてね。だから実体化もしないし、過去にも飛ばない。縛りを結んでも良い」

 

しばしうねうねしていたイマジンは腕を組む様な形で落ち着く。

これ程に洗練された進化を遂げた魂魄なら、この世に影響を与えるのに必ずしも実体化が必要とも思えない。

だが、同時に感じていた事として、こいつの魂魄は薄い。

今研究中の技術の中に、アギトの力を用いた魂魄そのものの一時的な株分け、所謂分霊を作る術がある。

解除時に修行の成果が本体に反映される、所謂白目の女の子のからだが好きな狐の化け物の小僧が得意なあれを目指したものなのだが、あの術の完成形を使っているのかもしれない。

 

この術の良い所は、可処分レベルの消耗で完全に自分と同じ判断を下せる分体を作れる事と、実体を持たないが故に物理法則にそれ程縛られないという点がある。

つまり、このイマジンをどうにかしたとして、未来にいる本体が無事なら同じ目的を持った個体が延々送られてくる事になる。

 

……この術の使い手である、という時点でカイの手先ではないな、とも思う。

このレベルの使い手をカイが普通の兵隊として引き連れている、というのであれば、そもそも歴史の消滅という問題はクリアできる筈なのだ。

歴史改変のための戦いすら必要無い。

或いはこの世界に来たカイは元のカイとは異なる目的意識を持ってこの時代に来ている、という可能性もあるが。

 

「一つ聞きたい」

 

「なあに?」

 

「未来の俺は?」

 

「かっこいいよ!」

 

「ありがとう」

 

じゃなくて。

 

「冗談冗談。()はこの時代に来ないよ。()()()はそういう主義だし、私達の未来への分岐点はもう少し先だし、イマジンの未来みたいに消える歴史でもない。ただ無数に分岐する先から、少しお話に来ただけなんだ。こう説明すれば敵対する理由は無いでしょ?」

 

まぁ……現時点の俺の過去が改変される訳では無いし、その改変も会話による行動の誘導程度なら、嫌悪感も少ない。

ここまで来ると、俺からこいつに何か、というのは無い。

 

「難波さんはどう?」

 

「わたし?」

 

実害レベルの歴史改変でない、というのであれば、いちいちタイムトラベラーに関わる必要もない。

全てのタイムトラベラーを抹殺する!とかやるならまずデンライナーを完膚なきまでに破壊しなければならないし、時間移動を行う相手を完璧に消滅させる、というのは難しい。

だから、こいつをどうこうする理由があるとすれば、直接的に付き纏われている難波さんの方だ。

 

「なんか、ほら、炊き込みご飯にして宇宙に放逐するとかなんとか」

 

「あ、あれは言葉の綾みたいなもので……」

 

「そうそう、この子、遠慮がない相手にはそういうとこあるから」

 

言われてみれば。

難波さんは相手に害ありとなれば未改造の一般人であろうと全身の骨という骨を粉砕する事も辞さないパワーファイターだ。

アギトでなくギルスである為に超能力は上手くないが、猛士から学んだ技術のお陰で霊的存在相手でも直感的に攻撃する方法が幾つもある。

その難波さんが『あったまきた!』なんて言うまで手が出てないのだから、それほど相性は悪くないのかもしれない。

少なくとも、即座に物理的に破壊されていない時点で強姦魔の類よりは善良なのだろう。

スナッてたから物理的に叩かれてはいたんだろうけど。

 

「なら……こいつは任せて大丈夫? 変なこと吹き込まれてない?」

 

「だ、大丈夫大丈夫!お話も、ちょっとヒートアップしちゃったって言うか、そういうのだから!」

 

「それなら、まぁ。あ、これ、屋久島のお土産、置いてくから」

 

―――――――――――――――――――

 

小春交路が帰宅し、家に残された難波祝はお土産の地酒をちびちびと舐めていた。

余人の知るところではないが、難波とイマジンの奇妙な共同生活は既に一月近く続けられている。

先程のやり取りにしても幾度となく繰り返されたものでしかなく、その危険性の低さは難波からすればもはや再確認する必要すら無いものなのだが……。

 

「やっぱひ、しなきゃダメかな、こくはく……」

 

対面、砂状のイマジンが酒のグラスを掴めず、グラスに直接口をつけようとして失敗し、あやふやな輪郭のまま平坦な口調で返した。

実体化していないイマジンは当然飲食を可能としない為にあらゆる返答はシラフでのものとなる。

 

「引き出物のバームクーヘンも食べずに、着の身着のままお酒も飲めない時間旅行に行きたくないならね」

 

「う゛ぅ゛ぅ゛……ぅぇ〜」

 

酒のグラスを手に机に突っ伏して泣く難波の背中を砂の手がぱさぱさと叩いた。

元を正せばイマジンの齎した未来の知識、いずれ辿る一つの結末が元なのだからマッチポンプも良いところではある。

更に言えば、告白したとして必ずしも……いや、それは言わぬが花だろう。

 

あぁ、と、声に出さぬ嘆息。

難波の背中をさすりながらイマジンが見上げる、窓の外の空。

一つの光球、未来人の精神体が地上に落ちていく。

覚えている限りでの話になるが。

難波祝は、既に取り付いている自分の影響でイマジンに目を付けられる事もなく、一連の事件に関わることは無かった。

急かすような事を言ったが、時間はまだ、そう焦る事もない程度にはある。

 

彼女にとって、見知った一年が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




反省により目茶苦茶平成を振り返る
振り返ってはいるけれども
原作キャラの姿形は無いのだ

なので次回は原作キャラを出す
出なかったりセリフが無かったりしたら木の下に埋めてもらってもいいよ

でもオタクはみんなタイムパラドックスの話が大好きなのでクソ長モノローグで延々別ルートの考察を挟んだり挟まなかったりする
あと主人公チームを原作チームにけしかけてダル絡みさせたりしたい
なのは二次創作でフェイトが散々絡みに行かれたり、Fate二次創作で桜救出が半ば義務化されていたり、IS二次創作でシャルロットの実家が毎度の如く凸されたりするあれで
なんか痛い目に合ってるキャラは構図として殴るやつと殴られるやつが居るので百合よりも間に挟まりやすい上に反感を買いにくいのだ
百合の間に男を挟んではいけない
しかし百合を男で取り囲む事で百合の根源を維持しながら踏みにじられ汚されるる美しい花を描く事ができる
百合に挟まったのではない、男の群れの中にすっぽりと百合が挟まってしまっただけなのだ
実際、どれだけ汚されても百合の花が形を保つ様というのは美しいと言えるのではないだろうか
何もかもが台無しにされてしまうような状態でこそ試される絆、美しいですよね
今作にそんなものを求める人は居ないと思うので今のはただの雑談です
趣味の話です
泥中の蓮こそが美しいんですよ
だから百合しか存在しないまほあこ世界は生半可な手段では男を挟むことはできないのです
何しろあの作品諸々の性描写こそあれ雄しべと雌しべの話は一切存在しないので普通に女性と女性がまぐわって子供が産まれる可能性がありますからね……
絶対出ると思ったんですけどね取りあえずまほあこ世界に放り込まれる男主人公恐らく男の娘ものSS
同人ゴロの人達もトレスマジアのみんなやエノルミータのみんなが汚いおっさんに汚される本とか描いてると思ったんですよ
口調すら再現せずに、あ、これ公式のキャラ紹介のとこだけ見て描いてるな!みたいなのが欲しかったんですよ
たぶんやる夫スレとかだと出始めてるでしょ男と絡まされてる話とか
ぐにょりは難しい事を言っている訳では無いのです
エロはちゃんと竿を画面に写して使ってくれないと盛り上がりに欠けるし、フィニッシュ直前に画面に映すのは男のイキ顔ではなく女の方を写せというだけの話をしているのです
男のイキ顔を盛り上がる場面でしっかり描こうとする人は恐らくそのケがあるものと見做します

☆特異点とかリーディングシュタイナーとか
歴史改変に耐性があるとか元の世界線の記憶を持つとか言うけどそれって歴史改変に取り残される側だとも言えるので実は戦わずに普通に生きる分にはデメリットスキルでしかないのでは?みたいな話
例えば歴史改変が効かずにそのまま肉体も精神も保たれるとして地球が発生しない世界に切り替わったら宇宙に投げ出されると思うんですよ
そもそもこの歴史でわざわざ野上良太郎を電王にする意味とは?
戦力ではなく保護のためだよね歴史修正のための安全装置だもん……
物理的には死ぬ(死ぬとも死なないとも言ってない)ので前線に出すのはNG
あと桜井侑斗もこの世界でわざわざゼロノスるな!せめてゼイン持って来い!
嘘♡持ってこないで♡
でも解析したいからやっぱり持ってきて♦
という複雑な気持ちは主人公には無い
だって桜井侑斗が歴史から消滅しても痛くも痒くもないし……
もしかしてゼロノス装備を完全破壊したらゼイン装備生えてくるかな?
つまり、絡まれたり不幸な目に合う野上良太郎は善意を装って助けやすいので恐らく登場シーンで悩む必要はそんな無いよねって話

☆まるで姉妹みたいに仲が良い、一般人でも犯罪者なら生き地獄レベルに人体破壊ができる難波さんとノスタルジィなイマジン
抱け!抱けぇ!
抱かれてはいるので、恐らく今の関係を壊してしまうかもしれないという恐れを抱きながらでもその胸には結ばれる未来を信じる勇気を抱けるんだよ、という意味と思われるがそれを伝えようとした本人がそういう勇気を抱くことができたかは不明
トランクスが過去に戻って悟空さを助けてもトランクスの未来になんも影響は無いけどその思い自体は尊いものだし定命のものが時間移動に手を出すなんて生意気なので償いの為にタイムパトロールとして働こう、みたいな
生身の肉体の方はちゃんと未来(仮)にあるしそっちではお酒も飲める


そういう訳で次回は原作というか野上良太郎に絡みに行く
パス拾う良太郎に同行して電車に乗るキセルルートなら必須イベントだが
デンライナーは空飛んでる時は普通にその時間から認識も接触も可能なので実はデンライナーとの接触という点では必須イベントではない
その他何もかも未定ですが次回も気長にお待ち下さい
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