オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) 作:ぐにょり
二十二号が走り出すのと、白いゼブラロードが走り出すのはほぼ同時だった。
明らかに異様な圧を放つ二十二号に対し、ギルスにすら怯み一方的に殺されたゼブラロードが一切の躊躇い無しに立ち向かったのには、幾つかの理由がある。
一度肉の器を打ち砕かれ、マラーク達の呪いを受けて変異した人間──オルフェノクの身体を無意識の内に乗っ取る事で、ダメージがリセットされ、万全な状態にあること。
未だ超能力すら発現させていない一般人を襲おうという油断しきった状態でバイクで繰り返し跳ね飛ばされたダメージが無ければ、先日のギルス相手でもまともな戦いになっただろう。
更に言えば、オルフェノクの肉体を乗っ取る形の復活は、本来想定されていないイレギュラーな復活であり、再生したゼブラロードの意識が曖昧な状態にあること。
ぼんやりとした記憶の中、主である闇の力、テオスの命令により『誰か』を殺そうとしていた、という事だけを覚えている。
対象も、あるいは今の時代が何時なのかすら曖昧な状態で、眼前に敵意を放つ異形が存在する。
ゼブラロードの意識は、あるいは現代において無力な人間を抹殺するのではなく、古の時代、裏切り者の火のエルと人間の間に生まれた子供達と殺し合っていた時期に立ち返っているのか。
答えは無い。
漠然とした形でしか再生できていないゼブラロードの精神と記憶は、既に本人ですらどうなっているのか理解できない。
或いはテオスが魂を回収でもすればわかるのかもしれないが……。
並のマラークであるゼブラロードにとって、死は再生にも再誕にも繋がらない。
確かなものは、『殺せ』という命令のみ。
今ある全てを持って、目の前に現れた敵を抹殺する。
駆け出すゼブラロードの手の中に、円盾と槍が現れる。
それは元からゼブラロードが持っていた武器なのか、或いは、乗っ取った肉体が使っていたのか。
どちらであるかに関わらず、騎兵の如く盾を構え、槍の切っ先を前に突き出して突撃。
速い。
この世界のあらゆる馬……とまではいかないが、シマウマのモデルであるゼブラロードの脚は並の野生馬どころか、バイク、自動車すら置き去りにできる。
その速度を乗せた刃物による突撃は、生半な守りは容易く貫き命を奪う。
戦う力を持たない人間だけではない。
或いは嘗ての時代においては多くのギルスを討ち取ったかもしれない。
対する二十二号は無手。
いや、よく見ればその前腕が肥大化しているのがわかるだろう。
肘から先、指先に至るまで膨らんで見えるのは気の所為ではない。
装甲厚が増している。
速度と全体重を乗せたゼブラロードの突撃。
明らかに受け流しを狙う二十二号に対して、ゼブラロードは躊躇いなく槍を突き出す。
ゼブラロードの肉体は、基本的には人間と、或いは創造主である闇の力の肉の器と同じく二足歩行。
移動速度こそ速いが、仮に同じだけの力を持つ存在が四足であれば速度で負ける。
しかし、小回りでは圧倒的に優れる。
騎兵の突撃に似てしかし切り返しの速さにおいては地に足を付けた歩兵と変わらない。
過剰な速度故に背後を取られる、という事も無く、避けられたとしてもシールドで押しのける事も苦ではない。
その戦法がゼブラロードのものかオルフェノクのものか、或いは両者に共通する戦法であったかは不明だが、それ以外をする必要がない、という程に絶対的な信頼があった。
交差、いや、正面からの激突。
ゼブラロードの予想に反し、二十二号は受け流す事を選ばなかった。
槍の切っ先と二十二号の突き出した拳……いや、手刀の指先が、かち合う。
拮抗は無い。
槍が手刀を、ではなく、鋭く尖った指先が槍の穂先を
紙でも裂くように槍の穂先を、柄を斬り裂き迫る手刀に、ゼブラロードは槍を捨て、横殴りに盾で殴りつける。
ダメージを期待して、というよりも、仕切り直しを行う為の動き。
勢いよく相手を押し込むようなシールドバッシュ。
「盾か」
押し込まれながら、盾の向こうから二十二号が何事かを呟く。
同時、ゼブラロードの爪先に激痛。
二十二号の爪先が、杭を打つ様にゼブラロードの脚の甲を地面に縫い付けているのだ。
肉の器が伝える痛みに僅かに怯んだ為か、脚を文字通り踏み抜かれ重心移動に支障を来したからか、或いは元からのスペック差か、押し込み遠ざけようとした盾の縁を掴まれ、スライドさせられる。
盾の向こうから、薄っすらと赤い金の瞳が覗く。
「真面目にやれ」
ぐしゃり、と、掴まれた盾の縁が粘土のように握りつぶされた。
槍を捨て無手になった手で、フック気味に脇腹を狙い反撃を試みる。
脇腹に突き刺さる寸前、二十二号の膝と肘に挟まれ不発。
そのまま片手を押し潰され、しかし爪先から足が解放され、ふらふらと距離を取ろうと後ずさる。
が、後ろに下がった分だけ二十二号が前に踏み出した。
「ガドラより遅い」
膝を横から蹴り抜かれる。
横から曲がらない方向に曲げられ、かくんと下がった視界が暗くなり、顔面に衝撃。
距離を取る為に手放した盾の縁で目元を殴りつけられたのだ。
「ジャーザなら避けたぞ」
からん、と、二十二号はゼブラロードを殴りつけた盾を投げ捨てる。
顔面を強打されふらつくゼブラロードの長い鼻元を握り潰すように掴み、持ち上げる。
もう片方の手には、山刀程度の長さのフレイムセイバー。
横薙ぎに振り抜く。
ぴっ、と、勢いよく水気の有る何かを切り裂く音と共に、どさりと重みのある音がトンネルの中に響く。
ぼう、と、青白い炎を上げて燃えだすのはゼブラロードの首なし死体。
次いで、二十二号が持つゼブラロードの生首が炎を上げ、どちらも程なく跡形もなく燃え尽きた。
―――――――――――――――――――
もう、身体の弱さ、脆さに文句を言うつもりはない。
さっき見た通り、オルフェノクの肉体に無理矢理憑依している、というのなら、いろいろと劣化する部分もあるのだろう。
それを考慮した上で評価するなら。
弱い。
何が悪いかと言えば思いきりが良くない。
自分の武器はこれだ。
だから、こう使って、こう殺す。
そういう基本となる部分がふわふわとしている。
別に、俺は目的意識が実際の行動に強く影響するだなんて考えちゃいない。
だが、自分からやりたい、と思った事をやるのと、偉い人からこれをやれ、と言われてやるのでは大きくモチベーションが変わってくるのは間違いない。
では、こいつらに人間を殺す上での個人的な理由が無いのかと言えば、そうではない筈だ。
『見よ、人間の動物どもを家畜とし、従えしを。我ら人間どもを家畜とし、従えん。さもなくば滅ぼすべし』
という様に、こいつらにも人間を殺す、という意思がある。
いや、或いはその意思が嘗てはあった、くらいの話なのだろうか。
何しろ、エル達が起こした洪水で当時の人間もその他生物達も男女一組ずつを除いて滅んでいる……という事になっている。
実際、テオスを全ての起源とした神話がこの世界の根底にあるとすると、俺が幼稚園に入る前くらいに東京を中心に起きていた大災害とか、都市伝説的に語られるマンモス怪人などの出身組織、五万年前に人類文明を滅ぼしている組織などの経歴がどうなのか分からなくなる。
多少の嘘、誇張、彼等視点であるが故の見えない部分などもあると考えれば、もっと多くの人間が生き残っていた、と考えても可笑しくはない。
いや、それはともかく、彼等視点で彼等の子供とも言える動物たちと人間は、最終的にはテオスの手によって平等に救われた訳だから、意外と人間を積極的に殺してやろう、という気持ちは無いのか。
殺してもいいけど、別に積極的に殺す程ではない、という程度の感情しか無いのかもしれない。
もともと、互いに二億居た状態で、四十年掛けて戦っていたのだ。
人間を家畜化する、という試みを行っていたとしても、マラークと人間の差を考えれば長過ぎる時間だ。
殺すよりも時間を掛けて苦しめるのが好みか、或いは、途中からモチベーションが下がってきたか。
或いは、そんな戦いと進歩に積極的でない彼等の欠点を改善したのが、かつてのグロンギなのか。
片手に持ったフレイムセイバーを消し、ゼブラロードを持っていた手を叩く。
灰も残さず消えたが、オルフェノクを殺した後の事を思い出してついやってしまう。
周囲を見渡せば、殆ど動き回らずに戦ったおかげか、ゼブラロードに憑依されたオルフェノクに殺された人間の残骸、灰に塗れ焼け焦げた衣類が落ちている。
プラズマ化し片付け。
後に残るのは、ゼブラロードの脚を爪先で踏み抜いた時の地面の穴。
念動力で手近な石を手元に寄せ、空いた穴の形に手で削り、埋める。
振り返れば、
「セバス、くん、なんだよね?」
幸か不幸か、難波さんはまだ逃げずにその場に留まってくれていた。
難波さんは頭も悪くないので、逃げることの無意味さを理解しているのだろう。
顔に浮かんでいるのは、戸惑い、恐怖。
逃げていないのは、俺が難波さんの家を知っているからだ。
俺が殺すつもりなら、何らかの危害を加えるつもりなら、逃げたところで意味がない。
或いは、恐怖で足が竦んでいるのか。
可哀想に。
彼女は暴力に忌避感を抱ける人だ。
他人の暴力にも、自分の暴力にも。
それは先日の戦いとも言えないような戦いを見ればわかる。
怖がらせるつもりは無かった、なんて、何の言い訳にもならない。
視線の有無、カメラ等の機械音、人の呼吸、心音、全てが感知範囲内に無い事を確認し、変身を解く。
「このベルトは、俺や四号のベルト、未確認達のベルトの構造を参考に作った。変身……身体を作り変える機能の一環で、老化や体調不良は起きなくなる」
カバンから再びベルトを取り出し、踏み出す。
難波さんが身体を震わせ、後退った。
難波さんからの視線がある。
難波さんから受けたことの無い視線。
二十二号なら受け慣れた視線と感情だ。
なんという事もない。
「万が一戦いに巻き込まれても殺されないよう、逃げ出せるように、幾らか変身後の姿を調整もするようにしてある。けど、一番良いのは、変身しないこと。人気の無いところには近寄らない事、怪しい奴や危ない奴には近寄らない事、戦わない事」
少し歩いて、足元にベルトを置く。
「戦える力があるなんて考えない事。変身するなら、人前ではしないこと。まず、自分の命を第一にする事。……前の公園の時でわかってると思うけど、ギルスも、ああいう奴らに狙われてる。一々戦ってたらキリがない。難波さんは、戦える人ではないしね」
このままだと難波さんがベルトを拾えないので、振り返り、背を向けて歩く。
「あと、できれば、俺の秘密はバラさないでくれると嬉しい。けっこう好きなんだ、学校生活」
証拠も無しに言えば鼻で笑われるかもだけど、彼女にはベルトを渡してしまった。
ベルトを装着せず、証拠品として警察にでも渡してしまえば、それでレントゲンでも取られてしまえば、一発でバレる。
彼女の人の良さか、或いは、彼女が二十二号に抱く恐怖心に期待するしかないだろう。
どちらも期待できるから、たぶん、大丈夫だと思いたい。
「それじゃ」
振り返って、挨拶をして、そのまま立ち去る。
難波さんの顔は見ていない。
見るまでもないだろうし、それなら別に、見なくてもいい。
しばし歩いて、難波さんから見えなくなったであろう辺りで、適当に転移してその場を離れた。
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適当に転移したからか、本当に適当な位置に跳んでしまったらしい。
人気のない山の中。
雪は半ば解け地肌が見える。
「九郎ヶ岳か」
うっかり幾つか県をまたいでしまった。
もう一月以上も経過しているからか、或いは明確にここで何が起きたか知る人間が殆ど居ないからか、警察が警備している様子も無い。
少しばかり、見える範囲の山が削れていたりするけれど、自然豊かで良い場所だと思う。
適当な大石に座り込む。
ポケットの中に飴ちゃんが幾つか入っていたのを思い出し、適当に石を幾つか積んで、そこに飴ちゃんを供える。
ダグバが甘味に対して何かしらの感想を抱けたかは知らないが、気持ちの問題だ。
死人は物を食べないし、何かを言うわけでもない。
たとえ死体を埋めたちゃんとした墓があっても、その前で何を言おうが独り言でしかない。
だから、気持ちがあればいい。
「ありがとう」
口をついて出たのは感謝の言葉だ。
誰に、という訳でもない。
だけど、今となっては感謝するべきだ、とも思う。
仮に、グロンギが居なければ。
リントはアークルを作らなかっただろう。
そうなれば、今の俺は無かった。
或いは、アギトの力にも未だ目覚めず、戦う力も無く、藁束を刈るようにマラークに殺されていたかもしれない。
去年の未確認関連事件の被害者達の前ではとても口にできないような話だが。
それでも、俺はたぶん、このプロトアークルが作られるきっかけになったグロンギに感謝をしたい。
或いは、その背後に居る者にも。
それに、難波さんだって、助けられたかわからない。
アークルを付けて戦い続けて、モーフィングパワーを使いこなせるようになったからこそ、老化した肉体の再生なんていう真似もできるようになった。
ダグバを倒し、ンとして、バルバからグロンギの持つ知識を受け継いだからこそ、あのベルトを作る事ができた。
あのベルトを、難波さんが付けてくれるかはわからないけど。
老化現象と天秤に掛けて、たぶん、巻いてくれると思いたい。
それに、だ。
精神的にも頑丈になれたのは大きい。
だから、俺は悲しんでいないのだろう。
悲しくなくて、友達も救えたのだから、俺はたぶん、とても嬉しい。
きっと、ようやく、アマダムから伸びた神経が脳に届いてくれたのだ。
これでもう辛くない、苦しくない、悲しくない。
晴れ渡る青空のように清々しい気分だ。
胸のつかえが取れた。
空を見ればこの心の様に澄み渡る青空が……無い。
どんよりとした曇り空だ。
今にも雨が降り出しそうな黒々とした曇天。
肘から先が瞬間的に黒の装甲に包まれる。
「今日は、快晴っ」
ぶん、と、空に向けて薙ぐ様に腕を振る。
なんとなくでモーフィングパワーを空に向けて放つ。
振った腕に掻き分けられる様に雨雲が真っ二つに割れ、左右にずれていく。
後に残るのは雲ひとつ無い青空。
簡単な事だ。
青空から大量の雨が降ってくる。
適当にどかしただけだから、雲がそのまま全て雨粒になったのだろう。
「はは……、ははは、ははははっははははは!」
ばしゃばしゃと振り続ける雨に打たれている内に、なんだか笑いがこみ上げてきた。
バカみたいだ。
楽しい。
面白い。
きっとそうだ。
地元は今日雨の確率0だったか。
びしょ濡れで帰ったら何事かと思われるな。
雨が止んだら、乾かしてから帰ろう。
寄り道もしていくか。
タイミング的にマラークも居ないから、東京に寄ってもいいかもしれない。
ポレポレのカレーを食べに行くか。
いや、一度帰ってジルも連れて行ってやろうか。
どうせまだ休日は始まったばかり。
心配事が一つ減って、それで、楽しいことはまだまだたくさんある。
「あははははははは!!!」
冗談みたいに降り続ける雨に、何故だか笑いが止まらない。
笑うことができて、楽しいことがたくさんあって、それを楽しむ事ができるんだから。
楽しくて嬉しいに決まっているのだ。
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「ひっどい顔ね」
とりあえず服と髪を乾かしてから家に帰ると、母さんに出会い頭に罵声を貰った。
「父さん母さんに良く似てるって言われる」
造形は悪くない筈なのだけど。
でもこの言い方だとげんこつの一つも飛んできそうと思ったけど、そういう事も無い。
溜息と共に、お風呂の方を指差す。
「お風呂湧いてるから入ってきなさい」
「えー、たいして汗かいてないからいいよ」
「適当に乾かすだけだと、臭うわよ?」
「温まってきまーす」
そこは考えてなかった。
火で乾かすにしてもモーフィングパワーで水分飛ばすにしても、皮脂汚れとか雨に含まれる雑菌とかゴミには何もしてないものな。
部屋に戻り、着替えを用意。
部屋を出る時には、何故かジルが付いてきた。
横で何かごそごそしてると思ったら自分の分の着替えを用意していたらしい。
「お前は夜入れば良いだろ?」
首をふるふると横に振る。
『いっおいおうお』
一緒にお風呂、か。
別に、昼間にお風呂に入っちゃいかんというルールも無いわな。
そのまま風呂に移動しようとすると、ジルが手を握ってきた。
足元が不安定なのだろうか?
まぁ、体調とかは波があるからな、リハビリが進んでいてもそういう日もあるか。
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なんか変だ。
別に、ジルと風呂に入る事が、ではない。
俺がジルを洗うことでもない。
かといって、ジルが自分で身体を洗ったという訳でもない。
ジルが、俺の背中を洗ったのだ。
普段は普通に自分で洗ったり、或いは念動力の訓練でたわしを浮かして洗ったりするのだが。
洗うとジェスチャと口パクで宣言してから徐に身体に石鹸を付けて背中に抱きついてきた時の違う、そうじゃない、という内心から湧き出たツッコミに流されてしまったが、如何にも不自然ではないか。
風呂を上がり、髪を乾かして部屋に戻った後、ふとジルに告げる。
「なぁ、こんな事されても、ベルトはやれんぞ」
いわゆる、年頃の娘さんがお小遣い欲しさに父親に甘えたりするのと同じ行動なのだろうと思う。
パパー、私も新しいゲドルード付けて次世代ゲゲルに挑戦したーい!
みたいな。
むーん。
パーパはそんな子に育てた覚えはありません!
いや、こいつの実年齢がわからんから俺がパパってのはおかしな話なんだけど。
あと次世代のゲゲルはまだルールも決まってないので事前登録しか出来ない。
恐らく内容的にはオルフェノクとかワームとか魔化魍相手にしたエンドレスもぐらたたき(柔らかめの比喩表現)になると思うが、どれくらいの規模でムセギジャジャを募るかは決めていないし。
安全面とかを考えれば、ワームとかオルフェノクの存在を広く知らしめ、アギトやギルスに市民権が保証された状態でやりたい。
あとは囲って棒で叩いて殺す形式のチームプレイ推奨。
でも万が一孤立した時というか上位個体を相手にするために個々人の能力向上も強く強く推奨します。
……やれたらいいよな、そういうの。
人類総仮面ライダー。
負担は分散される訳だし。
現時点じゃ人類総旧型グロンギしかできないのが悩ましい。
成長する前に死にそうなのが難点か。
魔石をオルフェノクやワームに奪われるのも嫌だし。
そんな事を考えている間に、ジルは俺の言葉を無視し、布団に潜り込む。
そして、掛け布団を半分程めくり、自分の隣のスペースを掌でぺしぺしと叩いた。
『おいうえ』
叔父上?
いや、お昼寝だろうとは思うんだけど。
『おいうえ、いっおい』
「いや、せっかくの休みに昼寝ってのもなぁ」
もったいない。
まだ昼も回っていないのに。
そう思っていると、ジルがびしりとカレンダーを指さした。
今日は、土曜日。
そう、まだ学校週五日制が土曜授業によって実質廃止される前、それどころか開始される前の時期の、第二、第四土曜日の休みなのである。
……つまり、別に明日も休みだから、一日くらい昼寝してもいいだろう、と、言いたいのか。
じっ、と、こちらを見つめながら、一定間隔で隣のスペースをぺしぺしと叩き続けている。
嫌に頑なというか、そこまで強要するような事か?
だけど、こいつが自分からこういう自己主張する事はそんなに無い。
だから、偶には、付き合ってやってもバチは当たらないだろう。
「母さんが昼飯作ってくれてるから、それまでな」
ジルの隣に横になる。
自慢じゃないが、今更寝込みをオルフェノクに襲われた程度ではどうにもならない。
殺気を感じる、なんて、一年ほど前なら何いってんだお前、みたいな真似もできるようになった。
だから、力を抜いて、枕に頭を乗せ、目を瞑る。
布団を肩まで掛けられて、顔に柔らかい何かが押し付けられる。
嗅ぎ慣れた匂い。
珍しくもない感触。
頭に腕を回されている。
抱きまくらにされているのか。
首元を、ぽんぽんと、軽く、心臓の鼓動に近いリズムで叩かれる。
まだ昼間で、疲れてる筈も無いのに、今日は、妙に、眠い。
意識が、鈍くなっていく。
ああ。
明日は、まだ、休みだけど。
明後日からは、ちょっと、気まずいなぁ……。
―――――――――――――――――――
母に当たる女性と、兄であり王である少年が家を出た後、少女はいつも一人だった。
未だ不自由な身体を引き摺り、狭くは無いが限られた空間で半日を過ごす。
それに、不満を持った事はない。
彼女にとって、家の外を自由に歩き回るのは、見返りの少ない重労働だ。
もっと遠くへ、もっと自由に、もっと気軽に。
そう焦る気持ちが無いと言えば嘘になるが、気長にやろう、という気持ちの方が強くあった。
記憶にある、自分でない自分に比べて、少女は物覚えが良くなく、身体も頑丈ではない。
焦ったからと言って、どうにかなるものではないと理解するのに時間はそう必要無かった。
傍に居られる時、常に共に有ってくれる人が居るからだ。
それが、純粋な親切でない事も知っていた。
或いは、観察するような、警戒するような視線を向けられている事も知っていた。
だが、それだけでは無い事を、他ならぬ彼女だけは知っていた。
はっきりとした実感。
警戒され、或いは自分の背後に、何時かの、自分以外の何かを見ているとしても。
温かみがあった。
何かしでかすのではないか、という警戒と共に、大丈夫なのか、という、少女自身の身を案じる感情が必ず混じる事に気がついたのは、或いは彼女が、少年が世話をする少女から、少しだけピントがずれた存在だったからだろうか。
常に、共にあった。
『彼女』にとって、或いは生まれた時から共にあったと言ってもいい。
兄のような、王のような。
しかし、同時に母であり父でもあった。
全てを失い、或いは、全てを持たずに生まれてきた少女に、多くの事を教えたのは、やはり少年だった。
この世界での生き方を、知識を教えられた。
人間らしさは何かを教えられて、そうある事の尊さを教えられた。
そして、他ならぬ少年自身から、常にそうあれる訳ではない事を教えてもらった。
暴力はいけないことだ。
糧を得るためでない殺しはいけないことだ。
どちらも兄の口から似たような言葉が出て、兄自らが破っていた。
常識の全てを教えられて、原理原則の全てを教えられて。
常に、どうしようもない例外が存在するのだと、その背中から学んだ。
せせら笑う声があった。
自分以外には聞こえない声。
ただ、背後から、どこからか聞こえる声。
道理を教え、しかし、道理に背かなければ生きていけない様を無様と笑う声。
生き足掻く様を嘲笑う声。
その声が、次第に静かになっていくのを、少女だけが聞いていた。
戦って、戦って。
ゲゲルをしているのではない、と、知っていて。
それでも、その戦績は認めてやる、と。
戦いに全力を注ぐ姿に、たぶん、真摯さを感じていた。
声を聞いていた少女だけが、その声に共感した。
卑劣だったかもしれない。
だけど、そんな事は関係無かった。
彼は殺し続けた。
自分の為だ。
誰かを守る為、殺させない為という事すら、彼にとっては自分を守る事だった。
一切の偽りは無かった。
自分の為だけに、倒すのでなく、封じるのでなく、容赦無く殺していった。
少女はその背中を見続けて
それが華やかな戦いでも、名誉有る狩りでもない事を理解していた。
上り詰める為の戦いですら無かった。
ただ、生き残る為に、死なない為に、自らの心を傷つけない為に。
無様で、泥臭く、冷酷で、残酷で。
剥き出しの、彼の『真実』から出た戦いだった。
だからこそ、彼はダグバを殺し、越えた。
少女が、少年から学んだものの中で、一番信頼を置く法則があった。
勿論、例外がある、と、理解した上でのものだ。
だが、そうありたいと思い、そう有るべきだと願った。
ある種の信仰心。
認められないかもしれない。
排斥されるかもしれない。
だけど、彼は、彼の意思は絶対に止まらない。
どれだけ醜くとも、どれだけ犠牲を産もうとも、真実から出た、誠の行動である限り……決して滅びる事はない。
……だからこそ、少女は、ジルは、憤りを感じていた。
彼の教えた道理で考えれば無理のない話だとは思う。
だけど、それでも。
あの日、帰ってきた彼の顔を見て。
抱きしめずには居られなかった。
そんな顔をしないで欲しかった。
貴方は正しいと。
お前は正しいと。
言ってあげたかった。
例え、彼がどんな形であれ、納得していたとしても。
「あの……ごめんね、変な時間にお邪魔しちゃって」
眼の前の、親切な、常識的な、親しくあれると思っていた相手に、苛立ちが募る。
今更だ。
どの面を下げて。
何故、私のところに。
口を開こうとも思えなかった。
知らない仲では無かったし、無碍に追い返すのも、相手のレベルに合わせるようで嫌だった。
だから家に上げたけれど、ジルは、来客に向けて返事になりうる反応を返そうとは思わなかった。
お茶を出し、適当に茶菓子を出し、テーブルを挟んで、座る。
ちく、たく、ちく、たく、と、居間の掛け時計が刻む秒針の音だけが響く。
気まずい無音を気にする事無く、ジルは来客に視線を向ける事無く、手元の本に視線を落とす。
一分か、十分か。
幾らかの時間が流れた時、来客が、難波と呼ばれる少女が口を開いた。
「ジルちゃんは……、お兄さんが、今まで何をしてきたか、知ってる?」
ちらり、と、ジルの視線が難波の顔に向く。
それは、私は知っているけど、お前は知っているか、という類のものではなかった。
純然たる問い、質問。
自分が知らないが故に、知るであろう相手から聞こうとする、探求者の目だ。
視線に込められた感情は、恐怖ではない。
それが、どういう類の感情であるか、ジルの知識では、はっきりと理解する事は出来なかったが。
声が背中を押す。
教えてやれよ、と。
どうしてやるかは、それから決めても遅くないぜ、と。
口を開きかけ、ポケットの中を探り、溜息。
溜息をどう受け取ったのか、目の前の客がびくりと肩を狭め小さくなるのを横目に、台所へ向かう。
手にとったのは、メモを貼り付けたりするホワイトボード。
専用のマジック。
長話になるなら、これが一番効率的だ。
居間に戻り、どっかとソファに腰を下ろし、ホワイトボードに文字を書き連ねる。
何時か、王……兄と話した様に、やはり専用の携帯電話が欲しいなと、そんな事を考えながら、一つの文章を書き上げた。
『戦士クウガ、
端的な説明、或いは、長話の枕として。
『彼が戦いを挑む相手は、人類の存続を脅かす敵性種族である』
『覚醒者アギトは、自分の人生の平穏の為、戦うのだ』
☆二十二号なのでそういう視線とか感情向けられるの慣れてる膝関節をしめやかに横から破壊するライダーローキック炸裂おっぱいに挟まれて安眠マン
慣れてると宣言したからには慣れてる
悲しいなら泣くのが人間なのできっと悲しくないか人間じゃない
休み明け、学校に難波さんが登校していないのを確認してちょっとほっとして、その直後にクラスメイトが学校これてない事にホッとした事に自己嫌悪
おっぱいに顔を突っ込むという癒やしにより無意識に安らぎを得る
でもお前の想定だと長くて十年前後でそいつ死ぬけど大丈夫?
このままだと事情を知る友人も恋人も無い妹分との二人暮らしで心を許した妹分の死に際をひっそり看取るルートだけど
実際どうかは別だけどな
なんかテンション低かったり親友と書いて強敵と読むような相手の墓参りに無意識に訪れたり直後に無理やり脳内テンション上げたり忙しいね
次の話でたぶん直る感じ
あと名前決まりました
響鬼編をどうするかは未定だけどとりあえず名字と名前の頭文字を同じにしつつ
名字にはまだ出てない母親関係の設定を込めて、生まれた子供にどんな思いを託したかを考えて名前を付ける……
実際キャラの名前考えるのは大変だよなぁと
そりゃ名前出るまでに二十話掛かるよ
え、掛からない?
そっかぁ(思考放棄)
☆ゼブラロード君
首チョンパ
別にこいつに限った話じゃないけど、アギトの敵怪人のマラークって殺人方法に個性あるけど、アギトとの戦いだと途端に無個性になる奴多くないですか
アギト側に居たのならともかく、ギルス側に居たのって実質原作でもただのサンドバックじゃないですか
明確な武器とか戦法が無いと戦いが書きにくいんですが
でもそもそもテオスがマラークを作った理由がはっきりしてないし、戦いに向かない連中も居たのかも
じゃあ水分消して殺すのはなんだったんだろ
元は木材から水分抜いて燃料にするためとか?
そういえばテオスの天使って植物モチーフ居ないな
テオスが人類とか幾らかの動物作ったけど世界も地球も色んな生き物も元から居た可能性がある……?
これはゴルゴムとかテオスの格下じゃない説ワンチャンありますねぇ!
そんな訳で武器持たせたりするかもだけど、それやるくらいなら今後は戦い方がちゃんとしてる相手出すと思うので
高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に戦わせていきたいと思います
☆クラスメートの難波さん
女神でも大天使でも聖女でもなくギルスだが人間なのだ
人間で沢山だ!
実際恐れるななんて無茶を誰が言えるというのか
これが普通のリアクション
最終的にどういう心境なのかは次の話で書けるんじゃあないかな
彼女は人の痛みも悲しみもわかる人だから安心してね
恐れは乗り越えるのが仮面ライダーだしね
☆ママン
最初、主人公を九郎ヶ岳に転移させたあと、何の説明も無くその場にすっと現れて
「なんで居るの」
「母の愛よ」
みたいな話をさせようかとも思ったけど
そこまでベッタリフォローするのは流石に甘やかし過ぎなので家でお風呂を沸かしておく程度の優しさに留めた
なんで風呂を沸かしていたかって?
母の愛だよ(強弁)
☆初モノローグヒロイン
こういうキャラがふわふわしてるキャラはそいつ視点とかで何考えてるか出すと人気下がるよって誰かが言ってたような言ってないような
でも出す
現状いきなり人を害する事がないだろう、ってとこだけは確定したっぽくて残念に思う方も居るとは思うのですが
やろうと思えばやれるから
やるかどうかは知らないが
ちょっとだけ明言された内なる虚枠の謎の声ちゃんがいざとなればいざとなるから
だから今は安心して普通のやや巨乳失声症ちょっと虚弱健気妹娘キャラとして受け取ってくれて構わないです
あと、拾ってから一年くらいたったから髪もけっこう伸びてる
髪伸びてるのをここで明言したのは作者が長髪ビッキーみたいな、元がそんな髪長くないキャラが髪伸ばした時のギャップとかにドキッとする性癖を持っているからだからそんな気にしなくていいです
実際ちょっと髪伸ばしたレ級って良いよねって思う
ロン毛好きなだけじゃないかって?
いけませんか?(強気)
☆いただきもの
ナナス様より、現時点での主人公の変身後イラストを頂きました!
【挿絵表示】
実質この後姿を見ていくら好感度高くても即座に受け入れるのは無いなと確信した結果この展開みたいな部分もあります
挿絵機能初めて使ったので貼れてなかったらごめんなさい
今回でクラスメイト関連終わりと言ったな
あれは嘘だ
というか嘘になった
でも最初からハッピーエンドの映画なんて三分あれば終わっちゃうってマイ・フェイバリットな曲でも歌われてるので
疑ってみたり不安だったりさせて、次回でどうにかまとめます
いい加減東京に攻め込ませたいですしね
ラブコメとか痴情のもつれとかいい加減食傷気味でしょうし
まったく関係ないけどSD仮面ライダーのアニメの冒頭の戦闘シーンちょっと見たんですけど、ライダーの本来のスペックでの戦闘ってああいう作品から描写引っ張ってこれそうですよね
キャラも可愛いし
あと、感想返しはゆっくりやったり歯抜けでやったりするかもですが、ご了承ください
どうやら自分は全レスマンではいられなかったようです
理想郷で生を受けたSS書き失格ですね……
あとキン肉マン最新話が激アツなので、読んでない方は是非読みましょう!
そして誰かレオパルドンの能力を最大限拡大解釈した状態でヒロアカ辺りで主人公にしてSS書きましょう!
そんな訳で、次回も気長にお待ちいただけたら幸いです