オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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193 意義ある戦い

コーヒー、である様に思われるものが注がれたカップに口をつけ傾ける。

うん。

毒ではなく、現代人の消化器官に不具合を起こすようなものではない。

上にたっぷりと乗せられたカラフルなクリームも、良くは無いが酷くもない。

 

「これは個性的な味だなぁ」

 

淹れた人物が悪いという訳では無い、これは備え付けのドリンクサーバーから注がれた出来合いのコーヒーだ。

出来合いのコーヒー、の筈のものだ。

インスタントコーヒーという訳でもなく、透明な液体がカップに注がれると一瞬にしてホカホカのホットコーヒーになる、という映像は実に不安と好奇心をそそる。

一応はコーヒーの味がする飲み物として扱われているが、現代基準のコーヒーとは異なる飲み物のようだ。

少なくとも成分は蟹とカニカマ、いや、肉とがんもどきくらい違うようで……。

 

様々な時代から様々な人種が乗り合わせてくる事を考えると、とりあえず飲める、というのは重要なのだろう。

時代によっては人間の胃腸が処理できる限界値も変わってくるものだし。

味の美味い不味いに至っては時代が同じでも地域によって変わってくる事を考えると、美味しくはないが吐き出すほど激烈に違和感がある訳でもない、というのは良い落とし所である様に思う。

 

「ありがとうございまーす!」

 

輝く営業スマイルのアルバイトさんにカップを掲げて声を掛ける。

別に褒めてはいないのだけど、そういう微妙な意見を褒めとして受け止めて好意的な反応を示す、というのは接客業では必要なことなのだろう。

この子が単純にネアカなだけ、というところもあるが。

 

「店員さん、ジャム頂けますか、いちごジャム」

 

「あら、可愛らしいご注文。でも私、店員さんじゃなくて」

 

くるりとその場で回る。

 

「客室乗務員のナオミでーす。気軽にナオミちゃんって呼んでくださいね?」

 

かわいいね。

 

「ときめくお名前です」

 

「やだーお上手なんですから!そんなこと言っても、オマケは付きませんからね?」

 

ケラケラと笑いながら下がっていく店員さん改めナオミちゃん。

年齢不詳なので年上とも年下ともわからんので、本人が呼ばれたいと言った呼び名を受け入れるしか無い。

一応公式情報によれば、性別女性、種族人間ではあるらしい。

しかしそれ以外はデンライナーにアルバイトとして勤めている、という設定以外何一つわからん。

時をかける列車にアルバイトとして雇われてる時点で只者ではないのは確かだ。

そもそも種族人間というならアギトだって鬼だって種族的には人間だし、イマジンも状態でしかないので種族が何かと言われれば人間なので、なんもわからんに等しい。

 

俺が彼女について確信を持って言えるのは現代基準で可愛らしくそしてお尻のラインが綺麗だなというところだろうか。

お尻にまつわる変なあだ名とかつけられた上に写真集とか出てそう。

顔は似ているがたぶん風谷真魚とは関係ないと思う、あっちと違ってアギトの力を不思議と感じないし。

ともあれ、ヒップラインが綺麗な美人で明確に人類に敵対する素振りが無い。

それはとても素晴らしいことではないだろうか。

 

渡されたいちごジャムを受け取り、たっぷりとコーヒーの中に落として飲む。

うん、いちごジャムの味がして、美味しい。

美味しいという程ではないが、いちごジャムそのものの味は現代のそれに近いと思う。

ドリンクと違って固形物は適当な時代から取り寄せているのか?

 

コーヒーをカップに注ぐ直前にゲーミング風キーボードで何かしらを入力していたので、何かしらのベースとなる液体をその場で成分調整して提供しているのだろう。

じゃあそれはコーヒー風飲料なのでは?とも思うが、歴史上コーヒー豆使わない代用品なんて山ほど作られてるからこれもコーヒーの分類で良いのだろう。

 

Originalcoffeeと刻まれた蛇口の横にOriginalteaと刻まれた蛇口があるのでお茶系のドリンクもコーヒーと同じ成分調整前提の謎液体である可能性は高い。

じゃあお茶もお茶風飲料なのではと思われるかもしれないが干し草とか絵の具でお茶を水増し販売してた歴史から見ればちゃんと飲んでもお腹を壊さないのであれば問題なくお茶分類の筈だ。

 

固形物の混ざったドリンクとか、成分調整で対応しきれない飲み物なら既製品を出してくれるのかもしれない。

でも成分調整でコーヒー作れるならドロリッチレベルのものならこのドリンクサーバーで作れそうではある。

なので、味を寄せた液体ではどうにもならない、半固形果物であるジャムがトッピングとしては安牌、だと思う。

 

視線をコーヒーから上げる。

やたら細長い窓から見えるのは時の砂漠と呼ばれる超空間だ。

この砂漠の砂、そのひと粒ひと粒が時間そのものであり、電王、デンライナー周辺の解釈においてそれは記憶と=で結ばれる。

時間とは記憶の積み重ねであり、逆もまたしかり、という訳だ。

詩的な世界観のようでもあり、しかし、どれほど重要な時間、大切な記憶であってもその価値を知らない人間からすれば風に巻き上がり地に落ちていく砂と変わりない、というとドライな捉え方をしているようでもある。

 

「あの……」

 

目の前の青年が、机の上のコーヒーに手もつけず、うつむき加減の姿勢から見上げるようにしながら声を出した。

 

「君も飲むと良い。この時代の日本向けの味ではないけど、飲めないという程でもないから」

 

「いえ、そうじゃなくて」

 

「たぶん君は色々と説明して欲しいだろうし、そこの」

 

一度言葉を区切り、視線を青年の横に座る少女に視線を向ける。

 

「君は彼に色々説明したい、というのもわかる。ただ、今回の話は少し入り組んでいるんだ。ここのオーナーにも話を通しておきたい。説明はそこで纏めてしようと思うんだけど、どうかな」

 

気の強そうな、少なくとも俺の記憶の中では気の強い筈の少女は妙に緊張したような面持ちで膝の上に手を乗せ、神妙な顔でコクリと頷いた。

散々頼っておいてなんだが、パッケージされた記録というのは時として当てにならないものだ。

この時期のこの少女、ハナはもう少し粗暴で押しの強い人間であったように思うが、何をそんなに緊張しているのだろうか。

 

いや、俺の知る電王世界は敵対種族による人類大量虐殺複数回とか地球総人口大幅に減る全世界同時多発大規模噴火とか起きてないから、変化はあって当たり前なのだけど。

冷静に考えたら、こんだけ色々起きてて分岐点の鍵の母体が少なくとも子供産めなくなるレベルの被害を受けてないの、とんでもない幸運ではある。

俺も気を配って無かったとは言わないが、多少護衛つけたところでヤマタノオロチの首がズドンしてきてたら何もできんからな……。

本当に守りたいならやっぱり最低限変身アイテム渡すしか無いんだよこの世界。

 

ゼロライナーがあれば大規模な災害は収まった後まで連れていけばスルーできるのでそうしたのかもしれないが。

だが、謎の男が自らを囮にしてる事を考えると接触は最小限にしたい、というところもあるのだろう。

母体、野上愛理が時の列車を始めとする現代からズレた存在と接触したデータは殆ど無い。

なんなら、この時代において謎の男がカイに敗れたとされる戦いは俺の把握する範囲では観測できなかった。

 

通常時空に現れた時の列車は常人でも観測できるが、それ以外の時は姿を観測できない。

時間と時間の間、時の砂漠を行く間に起きた戦いは同じく時の列車で並走でもしない限りは記録に残りようが無い。

だからこそ、話し合いを行う、というていで彼女のライダーパスを使って堂々とデンライナーに乗り込んでいる訳だ。

 

タイムマシンを作って運用できたとして、時の列車と同じ時間移動ができるという訳では無い。

時を止める、時を巻き戻す、なんていう単純な時間操作一つとっても技術者一人一人アプローチが異なるのだから当たり前の話ではある。

無論、歴史改変者に詳しい人と情報を共有し、確認したい事がある、というのも事実ではあるが……。

 

そもそもの話として、オーナーと約束を取り付けている訳でもなく、ナオミちゃんにオーナーを呼んでくれと頼んだわけでもない以上、オーナー側が俺に好き好んで接触しようと思わなければこの場に現れる事は無い。

オーナーには先のバットイマジンについて確認したい事がいくつかあるので来てくれるのに越したことはないのだが……。

来てくれなかったとしてもそれはそれで利点がある。

 

初めての新幹線で浮かれる昭和キッズの如くデンライナーの中を探検に行ったジルとグジル。

そのジルとグジルが服の下に仕込んでいたニャンニャンアーミー隠密形態仮称ニャンニャンシノビ部隊。

そして俺自身がさっきから透視でデンライナーの物理的な構造を確認している。

もちろん、部品の一つ一つまでつぶさに観察したとしてそれをそのまま複製しただけでは完成品にはならない。

ハードがどうにかなってもソフトの再現はなかなかの難物になる。

デンマインドに向かわせたニーくんが上手くやってくれれば或いは、とも思うが、取らぬ狸の皮なんとか、というやつだ。

 

現時点で、神崎士郎原案俺製作の現行のタイムマシンの改良に役立つ位にはデータが集まっているので、ここに来れたことが無駄になる事は無い。

少なくとも、デンライナーが走行する時の砂漠への安定した侵入は可能になる。

時空の狭間の世界、怪魔界宇宙、そして時の砂漠へと航行可能になれば取れる行動の選択肢に幅が生まれる。

この世界の未来から来たカイとイマジン軍団を相手に、野上良太郎の電王とゲームを作らない方の桜井ゼロノスだけで勝てるかは未知数なところがあるからな、最終決戦のタイミングで横槍を入れられるようにしておくのは大事だ。

 

しかし。

 

「良太郎くんに憑いたイマジン、小さくなって一言も喋らないけど、無口なタイプなのかな?」

 

小さくなって、というのは比喩表現ではあるが、全体的に赤い角つきのイマジンは、デンライナー備え付けの椅子に身を屈めて息を潜めている。

見た目は俺の知るモモタロスと同じだが、ああいう振る舞いをするタイプだったろうか。

一年どころではない長期に渡る登場でも、作中での人格面での成長こそ多少あれど、振る舞い自体に変化は無かったと思うが。

 

「お、俺は何も知らねぇ!俺達ゃ未来の事は殆ど覚えてねぇんだ!身体がねぇからって聞いた!嘘じゃねぇ!信じてくれ!知らねぇから何も言えねぇんだ!」

 

「なるほど、そうやすやすと仲間は売らない、良い心がけだ、感動的だな」

 

「ちげぇよ!俺はちょっとカッコよく一暴れしに来ただけ……!」

 

ハッとしたように両手で自らの口を塞ぐ赤いイマジン。

まずい……!という心の声が聞こえるようだ。

何がまずい?言ってみろ。

いや、みなまで言うな。

近年の出来事で並の人類敵対種族相手なら殺傷できるだけの装備がそこらの店で手に入り、なおかつ人々の人間以外への引き金は軽くなる一方だ。

そんな現代人相手に異形のものが『未来から暴れに来ました!』とか宣戦布告でしかないし、現時点で人類と共存できている異種はほぼ居ない。

 

「なるほど一暴れ」

 

懐からスチームブレードの柄をちらりと覗かせる。

猛士経由で警察に届けを出して携行を許可されている法的にやましいところのない武器の一つだ。

サイズに余裕のあるコートでも着ていれば懐に忍ばせられ、更に分割してコンパクトにもできる。

更にこれ一本で溶断、冷却と電撃、兵隊の作成まで可能な超有能武器である。

攻撃力自体はただの刃物でしか無いが、頑丈であり、単純に強い力で正確な刃筋で切れば威力を上げられるので取り敢えず1本は懐に入れておきたい現代人のマストアイテムと言える。

この冬の最新コーデに取り入れてみては如何だろうか。

 

「や、やんのかコラ!タダじゃやられねぇぞ俺は!」

 

赤いイマジンは観念したように椅子の影から出てきて赤い青龍刀、モモタロスウォードを構えている。

怯えを見せながら身体に震えはない。

構えもかなり我流寄りだが剣の扱いに慣れているのがよくわかる。

戦いの中で磨かれた、そして生来のセンスの良さがあり、しかし何処かで正統な剣の振るい方を教わった事もあるように見える。

基礎の無い我流ではない、基礎を知った上での我流の剣士。

本当に良い戦士だ。

そもそも記憶すら定かでない精神体になった上でも使い慣れた武器を顕現できるのは人間だった頃の彼がそれだけその武器に習熟していた証拠だ。

具現化系の修行並に己の武器と向き合ってきた結果と言える。

彼もまたカイのよりすぐった上澄みの一人、という事だろう。

 

それはそれとして、妙に覚悟が決まり過ぎているというか、覚悟を決めないと喧嘩を売れない、くらいに怯えすぎというか。

戦いはノリの良い方が勝つ、とまで言った彼にしては、何もしていない段階でかなり及び腰に見える。

表に出してる情報だけだとここまで怯えられる理由が思い浮かばない。

俺は猛士協力者の中小ベンチャー企業の若社長に過ぎないのだけど?

公的記録に残るのは鬼形態と劔冑による武者形態、よくよく調べて影狼の通常形態が出てくるくらいの筈だというのに。

 

情報漏洩か、或いはイマジンに何らかの特殊な感覚器があり、それで力の差を理解してしまったか?

本人の言葉を信じるなら未来の記憶は無いんだから、精神エネルギー体であるイマジン特有の感覚なのだろうが。

護身と擬態の為に並の超人くらいの出力はあるが、人混みに紛れれば探し切れない程度の気配に抑えているのだが。

イマジン全員にそんな感知能力があるとすると厄介だな……。

野上良太郎に憑いたこいつが今更裏切るとは思えないが、生態を確認するために一当てしてみるか?

 

「双方、そこまで」

 

しゅっ、と、開いた自動ドアからナイスミドルが現れる。

 

「車内であまり騒がれては、私も色々と考えなければなりませんよ?」

 

じろり、と、視線が何故か俺に向けられる。

最初に騒ぎ始めたのは赤いイマジンなのだけど、俺に向けてだけ言うのはなんか違くない?不公平じゃない?

そりゃ、デンライナーの乗客は野上良太郎とタロスズ一行を除いて皆静かに過ごしているようだけれども。

なんだろう、赤いイマジンが騒ぎ出すよりも早く首でも刎ねれば良かったとでも言うのだろうか。

 

という、内心の不平不満はあれど、俺はTPOへの配慮ができる男だ。

この時この場所、デンライナーの中においてはオーナーこそがルールなのだから、大人しく従っておこう。

一発退場など食らいたくもない。

 

スチームブレードを分子レベルで分解し、コートの素材に再分配する。

オルタリングの人体への格納をモデルにした最新の暗器術だ。

人体のアギト化は超能力の集合体である以上、行使可能な超能力を完全に制御下に置いていればアギト化に纏わる事象は全て体外でも応用が可能になる。

科学や呪術の進歩と同じく超能力も日進月歩なのである。

 

非武装である事を示す為にヒラヒラと両手を掲げて見せる。

実態を知ってる者からすれば、ヤッパ一本消して非武装を気取るなんてのはちゃんちゃらおかしいと思われるかもしれない。

だが大事なのはポーズ、或いは心意気なのである。

今時代の人間はそうやすやすと完全な武装解除などできないのだからして。

 

「どうせなら、先のコウモリ型のイマジンについてこそ考えて欲しいところではあるんですが」

 

「なるほど」

 

オーナーは鷹揚に頷き、既に出来たてのチャーハンがセットされた特等席に腰を下ろす。

 

「確かに、今回ばかりは私共ができることはありません。彼の死は正しい歴史の一部として組み込まれてしまった。そこに至るまでの道も」

 

「それが歴史改変だとしても?」

 

「そうです。彼の行った改変はその全てが、歴史の分岐に関わらない、何一つ結末を変えることのない些細なものばかり。命と引き換えにするには余りにも小さな仕事と、そう言えるでしょう」

 

カチャカチャと小さく音を鳴らしながらチャーハンの山を崩していく。

一口、また一口とスプーンですくうごとに山は小さくなっていく。

 

「だからこそ恐ろしい」

 

ぱたん、と、チャーハンの上に刺された旗が倒れた。

 

「まさしく」

 

今回警察による撃破が観測されたイマジンがやろうとしていることは、オーナーのチャーハンチャレンジと似たようなもの。

あのイマジンが数年の時間をかけて行った、何の運命も変えられない些細な歴史改変は、チャーハンの山からスプーン一匙分米粒をすくい出すのと同じ。

回数を重ねるだけで、いつか絶対に旗を倒せてしまう。

 

しかも、連中はご丁寧に外側から山を崩している訳では無い。

おおよその範囲を決めての盲撃ち。

なんなら、奴らの歴史改変はそれで誰かを殺す必要すらない。

分岐点の鍵。

それが生まれる為の母体に何らかの影響を与えて、正しい形で産まれなくしてしまえば良いのだ。

 

少なくとも、連中は一度分岐点の鍵が産まれた歴史そのものを消している。

忘れられがちだが、分岐点の鍵であるハナの歴史は消滅している。

奴らは決定的な歴史改変を成功させた上で、更なる改変により自分達の存在する未来に歴史を接続しようとしている、分類的にはストーリー開始時点で地球を征服済みの悪の組織と同じような立ち位置にあるのだ。

 

そう考えると、カイの手下である3000のイマジンというのは、ハナの歴史を破壊した上での残存戦力なのだろう。

我々は幸運だ。

分岐点の鍵が特異点であったが為に、奴らの戦力が目減りした状態で戦うことができる。

無論、そんな目減りした戦力の中にあっても、目的の為に数年を俯して待ち自らの死を以って目的達成に組織全体を近付ける優れた尖兵がいる、というのは恐ろしい話ではあるが。

 

「そして」

 

「彼等は契約を完了するまでは、ほぼ無限の回復能力を備えると言っても過言ではありません」

 

「そして契約を完了した瞬間過去に戻り、そして此度のように潜伏されれば……」

 

契約者のイメージによる肉体の修復。

これは契約者の元に戻る前に魂魄も残らない様に徹底的に破壊する事で防げる。

が、そんな弱点はイマジンも理解していると見て良い。

昨年度に更新された最新の神経断裂弾を身体の複数箇所に受ければ体内から粉々に炸裂する程度の強度である事は証明されているのだ。

契約完了後と前で、イメージの暴走が無い限りは肉体強度に変化は無いのなら、イマジンは警察に敵対された時点で不味い。

歴史改変を成した上で歴史に自分の死を刻むタイミングでも無ければそうそう姿を現さない筈だ。

逆に、自分を公の場で記録に残る形で殺して欲しい時には警察に任せられる、というのも強みではあるが。

 

「私たちには、もはや彼をどうにかすることはできません。えぇ、それは間違いの無い事です」

 

「そんな……」

 

「なに、まだ歴史は正しく流れているのです。最後に勝っていれば良いのですよ」

 

何でもないことのように敗北を宣言するオーナーに、ハナは消沈する。

なるほど。

 

「有意義な話ができました。お時間いただきありがとうございます」

 

「いえいえ、こちらこそわざわざご足労いただき、と、そうそう」

 

チャーハンを食べきり、口元を上品にナプキンで拭いたオーナーがカードを一枚差し出してくる。

 

「これを()()()しましょう」

 

ライダーパスだ。

 

「自家用車を飛ばすよりは便利ですよ」

 

「ありがたく」

 

言い回しがやや不可思議だが、ここはデンライナーだ。

互いの時系列がどうなっているかを考えれば、どんな可能性もありうる。

このライダーパスを返却された、という歴史が後に改変される事のない様に、今は祈っておこう。

 

「あのー」

 

恐る恐る、という風に野上良太郎が声を上げる。

連れ出しておいてずっと放置していたからな。

理屈の上で歴史改変への耐性はできているが、万が一、という事もある。

最後の切り札になりかねない彼には、じっくりと事情を説明させてもらおう。

 

「まず最初に一つ、この世界は狙われている」

 

―――――――――――――――――――

 

自分たちでは今回のイマジンをどうにもできない。

最後に勝っていればいい。

途中経過はどうでもいい、という訳では無い。

これは歴史改変を行う敵と戦う上での心得だ。

 

目には目、歯には歯。

歴史改変で奪われた歴史は更なる歴史改変で奪い返す。

その上で、相手が更に奪い返せないように殺しておく。

これが定石。

最後に勝っていれば良い、というのは、相手が勝ったならそれを途中経過に置き換えてしまえば良い、という事なのだ。

 

だからこそ、あのバットイマジンは死んだ。

その歴史において正しい流れにある相手に殺される事で、自らの死と共に限定的な範囲での勝利を確定させたのである。

死んだ相手を殺すことは出来ないし、勝って死んだ相手をそこから負かす事はできない。

 

バットイマジンは死んだ。

現地の警察組織による周到な包囲、鮮やかな狙撃によりその身を四散させ跡形もなく滅びた。

 

――本当に?

 

時を遡ること、バットイマジン撃破の瞬間。

爆発四散したその肉体、その魂魄が大気に霧散する寸前。

 

かち、と、世界が凍りつく。

 

モノクロになった世界の中、四散したバットイマジンの肉体が逆再生の如く元の肉体を取り戻す。

その足元にはレール。

デンメタル製のレールと枕木がほんの数メートル分だけ敷かれ、何者かがその肉体を世界の外に押し出した。

 

落ちる先は荒涼たる異空間。

時の砂に満ちた砂漠。

 

バットイマジンが動き出す。

警察の狙撃を甘んじて受け入れた筈の我が身が砕けていないこと、景色がまるで変わっていること、そしてこの場が時の砂漠であることを確認する。

死を前に弛緩していた意識が一瞬のうちに張り詰め、時の列車すら見当たらない荒野の中に、自分以外の気配を発見する。

 

「やはり、こっちではフリーズが正常に作用しないか」

 

気配を消すこともなく、姿を隠すこともなく、それは居た。

白いローブを羽織り、揺らめく臨気を纏う鬼。

黄金の切先を備えた笛剣を手に下げ、クリスタル状の複眼をバットイマジンに向けている。

 

バットイマジンの警戒レベルが上がる。

彼自身に未来の記憶は殆ど存在しない。

だが、カイから伝えられていた警戒対象である、と思い出すよりも早くその身が無意識のうちに構えを取らせた。

既に、或いは今はまだ存在しない未来の時間の中、確かに積み重ねた経験がその身体を動かす。

 

攻めにも受けにも回れる攻防一体の構え。

最初に習う基本の型。

立てた利き腕、その肘に指先を当てるように倒したもう片腕。

バットイマジンの構えを見た鬼が、ふん、と感心したように鼻を鳴らす。

 

「遺憾だが、お前の勝利は確定している。ここでお前が殺し直されても、せいぜい情報が抜かれるだけだ。数年分の活動を無かったことには出来ない」

 

す、と、笛剣の切先がバットイマジンに向けられる。

 

「抵抗しなければ、苦しむことは無いと約束しよう」

 

バットイマジンは構えを解かない。

数度口を開き、出すべき言葉が、存在しない記憶から滲み出す。

 

「アクガタの拳士に、降伏は無い」

 

「そう学んだ、そう学ぶ、筈」

 

バットイマジンの答えに、鬼が頷く。

揺らめいていた臨気がローブを巻き込むように結着し装甲と化した。

臨気凱装。

現代の獣拳、黒沼流アクガタにおける奥義にして臨戦時の基本形態である。

 

向かい合う鬼とバットイマジン。

武器の有無、取る形態の違いを除けば、その構えは鏡合わせの如く。

 

「黒沼流アクガタ拳士、小春交路。残るイマジン殲滅の為、貴様には跡形も残らぬほどのインタビューを行う」

 

「黒沼流……黒沼流、そう、俺は」

 

バットイマジンから黄金の気が溢れ、その異形を締め付けるように装甲が纏う。

 

()()()()()()()()()()()()のカマソ!我らが未来の為、貴様を殺し、あの場に戻り禍根なく死なせて貰おう!」

 

制御された互いの生命エネルギーは体外に溢れることなく、風すら吹かない時の砂漠で、二つの戦意が激突した。

 

 

 

 




あけましておめでとうございます(2025)
今年もよろしくお願いします

そして意義ある戦い(戦いとは言ってない)
予告なんてあてにならないことが、よーくわかったろう(強気)

☆ケツの話ばっかりだけどよくよく見るとエロいパーツしかない服装の客室乗務員さん
と思ったけど現代人の格好だって十二単とかと比べたら露出狂みたいなもんなのでこれくらいは逆に無難な服装なのかもしれない
それにしてもエッチ
深読みのしようもないというか、オーナーと同じく「そういうもの」で現代人の尺度で探りを入れるのは恐らく無駄と思われる
人間だからといって地球人なのかはまた別のお話になる、みたいな考えで言えば、ブラッド族だって彼らの母星での言語では自分達を人間と読んでいたと解釈しても良いわけで
つまり性別以外は実際のところなんもわからん
変身体は今のところ存在しないのでヒューマノイドタイプの人種ではある筈

☆コーヒー風飲料
でもたんぽぽの根っこを炒ったものもコーヒーなんだからコーヒーと誰かが呼べばコーヒーになるんだよ
電王においてデンライナーを除けば珍しいわかりやすい未来要素
現代でも少し前にクリアコーヒーとか存在したので実際はそんな不思議なものでもない
つべでたまに見るどんぐり炒ってコーヒー作る動画は好き

☆ライダーパス
作中で一般タイムトラベラーが複数存在してるのでまあまあ気軽に配られている疑惑はある
電王が他作品に度々出てくる関係でデンライナー関係ないタイムマシンが存在する世界にも行くのでチケットを出し渋る意味が薄い
パス配る理由?
免許返納した人にタクシー券配るようなもんで、知らんとこで時間旅行させるよりは定期便出して時間の行き来を見張ってた方が管理しやすいんやろなって
自前のタイムマシンとかは整備費用とかかかるだろうからライダーパスあったらデンライナー積極的に使うだろうし

☆歴史改変(済)
後にハナが産まれてくる、という話で忘れがちだが、本来ハナが生きてた歴史、生きてた時代は破壊されてる
なのでイマジンは歴史を破壊する事そのものは簡単で、今回は自分達の歴史に分岐させる為の試行錯誤の中にあるという話
でも特異点は歴史改変で消せない、誕生日を消すと消せる、という条件を考えると、誕生日含む歴史そのものを消された特異点の分岐点って殺しようが無くない?
原作的には物理的に殺せば死ぬんだけど
やっぱガオウが何か特異点について勘違いしてるって考えるのが一番丸い、野蛮人ぽいし

☆休憩を挟みながらイマジンとか歴史改変とかの解説を受けた野上良太郎
原作と違い無数の絶滅級災害を乗り越えてきたのでそこまでショックは受けない
しいて言うなら去年とか一昨年に来なくて良かったー、くらいのもの
この時代の生き残りは総じて原作よりも図太くならざるを得ない

☆私たちにはなんもできん
なので上手いこと始末つけといてや!
くらいのノリ
なんでライダーパス渡してきたかなんて考えるまでもないよね(発掘できる場所も時代も分かってるガオウライナーとかいう危険物)

☆未来の事は知らんけど未来の為に死ぬべき場所死ぬべきタイミングで死ぬためにこの場で死ぬわけにはいかないバットイマジン改め幻獣カマソッツ拳の拳士
野衾とかよりはカマソッツの方がハッタリが効いてるなって
伝承がろくに無いマイナー幻獣だがなんでか武器は記述があるので次回ちゃんと戦闘描写が可能になる
どれくらいの上澄みかって言えば格で言えばいきなりヘルガデムが出てきたくらいの上澄み

☆赤い上澄み
この世界だと順当に武器術を学んだ形跡がある
原作と同じ騒動を起こすかは未定
怯えてるのは状況的にいっちょそこらじゅうで暴れたる!ってしようと思ったらいきなりヒグマに首根っこ噛まれて巣穴に連れ込まれたくらいの危機的状況にあるから
たぶん生身時代にも青龍刀があればヒグマくらいならギリ行けたくらいの精鋭
なお自分の歴史とかどうでもいい狂人
基本的にイマジン裏切って現代人に付いてるやつは倫理観狂ってるものと考えていい

そんなわけで今度こそバトル回
2ヶ月かけて電車の中でだべる話が1話だけ
そんなSSですが、今年も良ければ気長にお待ち下さい

次回
バチバチ!臨獣対幻獣!
お楽しみに
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